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平成11年度の主な改修改良事項

(1) 飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡 H CCD撮像 システムデータ記憶装置の増強

2K2KのKodak4.2i CCDカメラでは、full resolutionの画像の サイズは8 MBになります。 連続撮像を行う場合、既設の18 GBのハードディスクでは不足でした。 今回、37 GBのリムーバブルなハードディスクを2セット増設しました。 1セットは、撮像用PCに接続し、観測された画像を記録するようにしました。 他のセットは、別のデータ保存用のPCに接続し、これも新設のDDSテープ 装置でデータを出力するようにしました。 2個のリムーバブルディスクを二つのPC間で交換して行くことにより、データを DDSテープに保存しつつ、連続観測を行えるようになりました。

(2) 飛騨天文台内のLAN速度の増強

観測画像サイズおよび撮像フレーム数が大きくなってきたためLAN速度の 増強が必要となってきました。 今回、DST棟内のLAN速度を、10 Mbpsから100 Mbpsに高速化しました。 あわせて、研究棟内のLAN速度も100 Mbpsに増強しました。

(3) 飛騨天文台60 cm反射望遠鏡整備

これまで主に行われていた惑星、彗星、太陽の撮像は 露光時間が短くてすみましたが、最近行われるようになった 恒星の分光観測には、長時間露光が必要です。 そこで、60 cm反射望遠鏡の極軸を再調整することにしました。

恒星の日周運動に対する望遠鏡のずれを測定して、極軸の上下・水平方向の 調整すべき量を求めました。 それは極軸を177下げ、81西へふるというものでした。 架台北側部分の移動量誤差を 0.01 mm以下にしなければなりませんので、 ダイヤルゲイジをみつめながら作業は慎重に行われました。 この極軸の再調整により、望遠鏡の追尾精度はかなりよくなりました。

また、60 cm反射望遠鏡カセグレン装置の分解掃除とモーターの交換をしました。 以前はセルシンモーターを使って いましたがその入手が不可能となりましたので、ステップモーターを 組み込みました。このモーターによる副鏡の移動速度は0.13 mm/sです。

(4) 飛騨天文台60 cm反射望遠鏡分光器用窒素冷却CCDカメラの導入

分光器につけるCCDカメラは65 cm屈折望遠鏡プラネットカメラ用CCDカメラを 使用していました。したがって同時に両方で観測することはできませんでした。 またそのCCDカメラの選定は惑星観測を目的として行われましたので、冷却 温度が零下40度までしか下がらず、長時間露光には適していません。 そこで分光観測用の、長時間露光が可能な窒素冷却式CCDカメラを 購入しました。メーカーは PixelVision 社で、カメラの主な仕様 は次の通りです。

CCDタイプ Site SI003AB 背面照射フルフレーム型 MPP グレード1
冷却方式 窒素冷却 (冷却温度: 零下100度)
画素数 1024 1024
ピクセルサイズ 24 24 (m)
暗電流 1 e/pix/h
読み出しノイズ 3 - 5電子 (50 KHz)
AD変換ビット数 16ビット

(5) 飛騨天文台鏡面メッキ真空蒸着装置真空ポンプオーバーホール

飛騨天文台鏡面メッキ真空蒸着装置真空ポンプのオーバーホールが 平成11年12月に完了しました。

(6) 飛騨天文台65 cm屈折望遠鏡ドームの改修

飛騨天文台65 cm屈折望遠鏡ドームスリット開閉モーター取替等の 改修整備が平成12年3月に完了しました。

(7) 花山天文台70 cmシーロスタット太陽分光望遠鏡の整備

この望遠鏡は口径70 cmのシーロスタットと口径50 cm・焦点距離20 mの 対物鏡による水平式望遠鏡です。 有効径20 cm・1200 本/mmの回折格子を用いた焦点距離10 mの分光器と、 モザイク・エシェル回折格子分光器を持っており、主として学部学生の 課題演習と課題研究に用いられています。 次の点が改良されました。

  1. 太陽像光電追尾装置更新
    約10年前に作られた光電追尾装置が故障した為、新たに製作しました。 約20 cmの太陽像を4個のセンサーで追尾する方式は同じですが、追尾精度が 向上しました。

  2. スリット面監視装置の更新
    以前から使用を停止していたヘリオスコープを撤去して、新たに DayStarフィルターを用いたビデオCCDモニタ 記録システムを製作しました。    
  3. 偏光測定装置の新設
    スリットの直後に1/4波長板(6303 )と偏光板を回転機構に組み込ん で設置しました。 Zeeman効果による太陽磁場の測定が可能になりました。

  4. 鏡面メッキ
    70 cm平面鏡2枚、50 cm球面鏡1枚、30 cm平面鏡2枚を飛騨天文台に運んで、 真空蒸着装置でメッキを行いました。

(8)花山天文台計算機環境整備

今年度、花山天文台では、以下の整備を行ないました。

  1. 外部接続回線の1.5 Mbpsへの高速化
  2. 100 Mbpsケーブルとスイッチングハブの導入
  3. RAIDシステムの導入
  4. 高機能パソコンの追加導入

研究に使われるデータ量は、近年大変大きくなってきており、 それに伴ない、データ転送に使われるネットワーク回線も 大容量のものが要求されます。

これに対応するため、 花山天文台と京都大学大型計算機センターを繋ぐネットワーク専用回線を、 従来の128 Kbpsから1500 Kbps (1.5 Mbps)に高速化しました。 さらに花山天文台内のネットワーク回線を、10 Mbpsから100 Mbpsへと 高速化し、スイッチングハブを導入しました。

これにより、台内の研究環境が大幅に改善されると共に、 外部との大量のデータのやりとりが快適にできるようになりました。 花山天文台創立70周年記念事業における飛騨から花山へのリアルタイム画像転送 の実現もその成果の一つと言えます。 また、大量のデータを保存・解析するために、容量200 GBのRAIDハードディスク を導入し、高機能パソコンを追加導入しました。

(9) 太陽ビデオ・デジタル画像ムービー作成映写システムの整備

教育改善推進費(学長裁量経費)に申請していた、「ムービーを 用いた太陽宇宙プラズマ物理学教育の推進」が認められ、 液晶プロジェクター、デジタル映画製作用機器、A0プリンター等が 整備されました。 これらによって、太陽活動現象のダイナミックな姿を ムービーで見せて、理解させることがこと出来るようになりました。


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