前ページ 目次 次ページ

(13) フィラメント消失現象とコロナアーケイド生成の 相関について
(修士論文要旨)

線という波長で太陽を見ると、彩層からその上層であるコロナに突き 刺さる「ダークフィラメント」と呼ばれる黒く細長い構造が数多く見られます。 これらダークフィラメントは、しかし、絶対的に安定に存在しているわけではな く、時折、何らかの原因で活動し、大きく形を変えることがしばしばみられます。 このような活動には、すぐに停止し元の状態に戻るものや、その一部ないし全体 が太陽面に落ちてしまうか、逆に上昇し惑星間空間に飛び出して(噴出型)、消え てしまったように見えるものがあります。特に、最後のものはその噴出方向によっ ては、地球近傍に到達し、人工衛星や宇宙飛行士に悪影響を及ぼしたり、地上に おける電波障害を及ぼすことが知られており、近年太陽面からの噴出現象を含め た「宇宙天気予報」研究が進んでいます。

本研究では、飛騨天文台フレアモニター望遠鏡の線(0.0,0.8 )像を用いたフィラメントの速度導出方法を開発し、フィラメントが噴出 型であるかないかの違いを、コロナにおける軟X線アーケイドの形成の様子と比 較する研究を行いました。軟X線アーケイドとは、フレアやフィラメント消失等 の現象後に、コロナ中に形成される明るいループ構造の連なりのことであり、現 在はコロナ中でおこる、磁気再結合現象により生み出された熱エネルギーによっ て、磁力線の形が浮かびあがるものと考えられています。

研究の結果、噴出型フィラメント現象はほとんどの場合、軟X線アーケイド形成 を伴うのに対し、噴出型ではない場合、軟X線アーケイド形成が伴わない現象が 多いことが明らかになりました。また、噴出型フィラメントに限って言えば、噴 出速度が大きな程、また静穏領域よりも活動領域の方が、磁気再結合現象を通し てアーケイドに供給される熱エネルギー率が高いことが示されました。これらの 結果は、(1)フィラメントが噴出型であるかどうかを、コロナのアーケイド形成 の様子から推測することを可能する、(2)最近の太陽フレア理論を支持する観測 的証拠、という点で新しい結果でありました。

[

(森本 太郎 記)