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(14) 研究会「太陽表面磁場ベクトル導出法の確立」の開催

12月には上記タイトルの研究会を、国立天文台平成11年度研究会・ワーク ショップ経費の補助を頂いて、飛騨天文台のある岐阜県吉城郡上宝村に おいて開催しました。   この研究会は、飛騨天文台でのドームレス太陽望遠鏡用の高精度マグネトグラ フ(太陽表面の磁場を求めるために太陽光に含まれている偏光の成分を精度良く 検出する装置)の試験観測が始まった事を期に、国内的に今後大量の太陽光偏光 の観測データが取得されて行く状況を受けて、未だ日本において発展途上である、 「偏光の情報から磁場成分を逆算する、信頼性の高い変換方法の研究」を押し進 め、国内の様々な観測装置に共通の演算ソフトウェアを作り上げて行くための議 論を始める事を目的として開催しました。研究会のプログラムと参加者は以下の 通りです。

プログラム (敬称略)
 
12月18日 (土) 9:00 12:00
・三鷹フィルターマグネトグラフにおける磁場の算出方法
  (国立天文台 一本 潔)
・乗鞍液晶ポラリメータによる偏光観測結果とその検討
  (大阪市立科学館 川上 新吾)
・乗鞍ポラリメータによるプロミネンス偏光観測の結果について
  (大阪府立高専 當村 一朗)
 
12月18日 (土) 13:30 18:00
・飛騨マグネトグラフから導出した磁場ベクトルの吟味
  (京都大学 上野 悟)
・ドームレス望遠鏡のinstrumental polarizationについてのコメント
  (国立天文台 花岡 庸一郎)
・乗鞍・飛騨同時観測データからの導出磁場の一致性
  (京都大学 上野 悟)
・Solar-Bにおける機器的偏光誤差とその太陽面磁場ベクトルへの影響
  (国立天文台 一本 潔)
 
12月19日 (日) 9:00 12:00
・HAO(ASP)での磁場算出手法のレビュー
  (国立天文台 清水 敏文)
・フィッティング方法の違いによる導出ベクトルの違い
  (国立天文台 清水 敏文)
・Solar-Bで求められるインバージョンメソッドは?
  (国立天文台 一本 潔)
・インバージョンメソッド私論 (ポスター寄稿)
  (国立天文台 桜井 隆)
・飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡マグネトグラフでの偏光観測の見学

参加者 (敬称略 機関別 申込受付順)
 
高津 裕通、吉村 圭司、森本 太郎、石井 貴子、柴田 一成、 黒河 宏企、北井 礼三郎、上野 悟 (京都大学)、 久保田 諄 (大阪経済大学)、 當村 一朗 (大阪府立工業高専)、
川上 新吾 (大阪市立科学館)、 末松 芳法、花岡 庸一郎、清水 敏文、一本 潔 (国立天文台)、 以上15名。

当研究会には、様々な異なるタイプの観測機器に携わっている人々が集い、生 のデータを用いて磁場を導出するまでのアルゴリズムや解析過程を解説し合い、 それについて議論しあう事ができ、他機関どうしの研究者間の相互理解が大幅に 促進されました。またそのような議論を通じて、各々の観測機器において ハード・ソフト面各々で、どのような修正、開発を進めるべきかが 明らかにされました。

また、研究会の最後に飛騨天文台のマグネトグラフの仕組と、実際の 動作・データ取得過程を見学し、それに対する質議応答、議論も行なう事が できました。

これらの成果・発表内容は、3月に研究会と同名の「太陽表面磁場ベクトル導 出法の確立」と題した集録として製本出版致しました。その中から、飛騨天文台 と乗鞍コロナ観測所の共同観測による研究の一例を下図に示します。今後開発が 進められていく全国の各々のマグネトグラフにおける将来の解析者の方々には、 この冊子を磁場演算アルゴリズムの基礎参考書として、有効に利用し続けて頂け ればと思います。  

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(上野 悟 記)