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(6) 飛騨マグネトグラフの改良とそれによる観測

飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡に付設の、太陽光球表面の磁場ベクトルを 測定する「マグネトグラフ」においては、13年度も引き続き下記の3点を主 要課題として開発を進めて来ました。

(1) 光学素子、モータ、カメラ、コントローラなどのハードの連動・自動化、高速化

(2) 光学系による偏光の擾乱分のより精密な把握とその補正

(3) 観測された偏光データ(Stokes Parameter)から 磁場ベクトルへのInversion Method の開発

特に今年度は、課題(2)において、望遠鏡光路中の2枚の平面鏡の屈折率、 吸収係数、コーティングの特質、による太陽光中の偏光に変化を及ぼす成分 を、高精度の観測によって検出する事に成功し、その影響を補正するための パラメータを導出するに至りました。 さらに、課題(3)において、本来500ガウス程度までの弱い磁場に適応可能と 言われている近似式を帰納法的に発展させ、ある条件の下で、1500ガウス程 度までの磁場を精度良く再現させることが可能な方法を開発しました。 これらの結果、それまで Stokes Parameter に乗っていると思われたエラー が格段に減少し、より精度良く磁場ベクトルの各成分の大きさが算出できる ようになってきました(下の図は、磁場ベクトルの各成分の算出結果の例)。 これらの結果は日本天文学会秋季年会 (於姫路市)やワークショップ「偏光 による太陽プラズマ診断」(於国立天文台三鷹)などにおいても発表を行な ってきています。そして、これらの成果を発揮すべく、今年度も8月から9月 に掛けて国立天文台乗鞍コロナ観測所との磁場偏光協同観測を実施しました。 この協同観測の目的や得られたデータについてのレポートは、(21)節の『飛 騨・乗鞍協同観測』のページを御参照下さい。    

(上野 悟 記)



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