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(12) 太陽フレアにおける速い磁気リコネクションと3次元構造

太陽フレアは、「速い磁気リコネクション」によって発生しています。 そしてそのためには、 向きの違う磁力線どうしで作る「電流シート」が、 太陽フレアの大きさ(1万km以上)に比べてはるかに 薄く(1m位)なる必要があります。 しかし「どのようにして電流シートが充分に薄くなるのか」については、 まだ分かっていません。 そこで我々は、非常に高分解の2次元電磁流体シミュレーションを行ない、 電流シートが薄くなっていく様子を調べました。 本研究では、従来の研究と違い、充分に小さな計算グリッドを使うことで 数値誤差の効果を抑えることができました。 その結果、電流シートは、2段階の「テアリング不安定性」 (電気抵抗の効果で電流シートが契れる現象)によって段階的に薄くなり、 最終的に「速い磁気リコネクション」を起こすことが分かりました。 実際の太陽では、数値シミュレーションとは違って、 段階のテアリング不安定性を経ることで 「速い磁気リコネクション」が起こることが、理論的に求められます。 また太陽の磁気エネルギーは、 太陽フレア中に繰り返し発生する高温のガスの塊の動くことによって 解放されることも分かりました。 さらに同様のシミュレーションを3次元で行なったところ、 3次元方向に新たな構造ができることが分かりました。 それは、太陽上空で発生する拘束のガスが太陽表面の磁気ループと 衝突することで発生することで、作られます。 この現象が、X線衛星で観測されている「磁気ループ振動」や、 インパルシブフレアの硬X線源である高エネルギー粒子の 発生・閉じ込めの原因となっている可能性があります。

(田沼 俊一 記)



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