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約60日のスーパーサイクルを持つピリオドギャップ中のSU UMa型 矮新星 Var73 Dra (= MN Dra)

Var73 Draはモスクワ写真乾板アーカイブを使って変光を発見され、 2001年8月から10月のCCD測光観測でSU UMa型矮新星であることが示された (Antipin & Pavlenko 2002)。我々はこの星の素性をより詳しく調べるために VSNET (http://vsnet.kusastro.kyoto-u.ac.
jp/vsnet/ 参照)上で 観測キャンペーンを張り、2002年8月から2003年2月の期間に飛騨天文台を 含む7ヶ国10ヶ所の観測所にて観測が行なわれた。

左下図はその期間の全体の光度曲線を表している。 HJD 2452560, 2452620, 2452680あたりで長く続く スーパーアウトバーストが観測されている。右下図は 最初のスーパーアウトバースト時に飛騨天文台60 cm反射望遠鏡で 捕らえたスーパーハンプである。スーパーハンプ周期は約151分と 求められたが、一般にスーパーハンプ周期は軌道周期より数%長い 程度で、ほぼ軌道周期と考えて良い。激変星の軌道周期分布では、 2時間から3時間あたりのところに極端にその存在の少ない領域があり、 ピリオドギャップと呼ばれている。このスーパーハンプ周期は、 Var73 Draがピリオドギャップのほぼ真中に位置する、非常に珍しい系で あることを示している。

またスーパーアウトバーストを繰り返す周期(スーパーサイクル)がほぼ正確に 60日であることも特筆に値する。これはSU UMa型の中でも極端に 短いグループER UMa型星のもの(50 日)よりは少し長いが、 通常のSU UMa型でこれまで最短とされていたV503 CygやBF Araの 約90日よりも短い、それらの間を埋める系ということになる。

スーパーハンプ周期()の変化を調べると、 という、 これまでで最も速く変化するとされていたものよりも1桁近く 大きな変化率を示していた。

このようにVar73 Draが非常に特異な性質を持つことを明らかにしたが、この ことの詳しい議論についてはNogami et al. 2003 (A&A, 404, 1067)を参照さ れたい。

(野上 大作 記)



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