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リコネクション流入流の観測の再吟味
太陽フレアのエネルギー解放メカニズムが磁気リコネクション(磁力線の
つなぎかわり)であることは、40年以上も前から当時の地上観測に
基づいて提唱されていました。サイズの小さいコンパクトフレアは、
太陽内部から浮上してきた磁場とコロナの磁場のリコネクションで
説明でき、線で2本のリボンが観測されるような大型のフレア
は、噴出するフィラメント(プロミネンス、紅炎とも呼ぶ)の下で
起きるリコネクションで説明できます。またフィラメントの噴出
自身も、浮上磁場とフィラメント周囲のコロナ磁場とのリコネクションが
きっかけであるというモデルも提唱されています(Chen & Shibata 2000)。
このようなフレアのリコネクションモデルを指示する観測的証拠としては、
フレアループの外側でエネルギー解放が起きていることを示す
上空の硬X線源や、リコネクションモデルから理論的に予測される軟X線
噴出物、つぎつぎと磁力線がつなぎ変わることを示すフレアリボンや
フレアループの運動などがあります。
リコネクションのより直接的な証拠は、Xポイント(磁力線が つなぎ変わる点)へのガスの流れ(=リコネクション流入流)の 検出です。最近横山らはSOHO衛星搭載の 極紫外線望遠鏡(EIT)の観測データから、フレアループの上空で プラズモイド(プラズマの塊)の噴出に伴い、2本の細長く明るいパターンが 毎秒5kmの速さで互いに近付いて、X型の構造を形成する様子を発見し、 リコネクション流入流の証拠だとしました(Yokoyama et al. 2001)。 図1の上段がEITによる極紫外線像です。このフレアは太陽の縁で起きて おり、暗い構造が上に上がって行くのは恐らくプラズモイドの噴出と 考えられます。噴出したプラズモイドの下で明るい構造が両側から 近付き、その下にはさらに明るいフレアループが見えています。 我々はこの観測結果を吟味するため、数値シミュレーション(Chen & Shibata 2002)の結果を下に、EITで観測される極紫外線像を計算しました。図の2段目に シミュレーションの結果を示します。明るさは紫外線の強さ、 実線は磁力線、矢印はプラズマの運動速度を 表します。プラズモイドの噴出や、その下で細長い構造が近付き、X型の構造 を形成する様子など、EITの観測がよく再現されています。 図中の白い実線に沿った明るさの時間変化を示しているのが図の下段です。 左側がEITの観測、右側がシミュレーション結果で、どちらも明るい構造が 互いに近付いているのが分かります。しかしシミュレーション結果を 調べた結果、この内向きの動きは実際のプラズマの流れそのものではなく、 みかけの移動速度はその場所のプラズマの流れの速度の程度であること が分かりました。また、内向きに動いて見える細長い構造は、リコネクション に伴う電磁流体衝撃波(スローショック)の上流側に位置し、熱伝導に よってEITで観測される温度(約150万度)まで加熱された領域に相当している ことも分かりました。紫外線像中の内向きの動きには、Xポイントが上昇することに よるみかけの動きも含まれており、撮像観測からだけでは、リコネクション 流入流の本当の速度を測ることはできません。 このようにして本研究では、EITで観測された構造がリコネクションの 証拠であるという横山らの提案を裏付けただけでなく、 観測された構造の物理的な実体を理論的に説明することができました。
(陳 鵬飛 記)
(磯部 洋明 訳)
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