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空間分解された電波スペクトル分布と粒子加速

太陽フレア(太陽面爆発)における粒子の加速メカニズムは未だ解明されておら ず、大変チャレンジングな研究テーマです。太陽フレアでは高エネルギー粒子 はある場所で加速され、伝播した結果、電波、硬X線や線を放射する、 と考えられています。フレアでの高エネルギー現象を理解するためには、 加速過程-伝播過程-放射過程を含めて理解することが重要なのです。 本研究は、放射過 程から、伝播過程や加速過程に制限を与え、粒子加速のメカニズムに迫ること を目的としています。太陽フレアにおける粒子加速の研究は、主に硬X線や電 波の観測によってなされ、それぞれ数keV - 100 keV、300 keV以上のエネル ギーを持つ加速電子によって放射されると考えられています。また、加速のタ イムスケールは硬X線の時間変動の観測から1秒程度、加速粒子数は硬X線強度 から 10の33-35乗 electrons/sec程度だとされています。高エネルギー粒子 は、観測機器を破壊する程のエネルギーを持つこともあるので、CCD等で撮像 観測することは難しく、実際には、観測されたデータからコンピューターで像 合成されています。

今回、我々は2000年11月25日に活動領域NOAA 9240で起きたM8.2クラスのフレア を、硬X線(ようこう)、電波(野辺山電波ヘリオグラフ、偏波計)、 (京都大学フレア監視望遠鏡)のデータを用いて、多波長解析を 行いました。これらのデータから電波や硬X線のスペクトルを求めることに よって、加速された粒子に同一の加速メカニズムが働いているかどうかに 迫りました。スペクトルは、ある時間にどのくらいエネルギーの粒子が 何個解放されたかを意味しています。その結果、 硬X線放射源の強度変化と、電波放射源の強度変化は非常 によく似ている(右図)、更に、各々の放射源から求めた加速電子のスペクトル 値の時間変化も極めてよく似ている、ことが分かりました。但し、電波のスペ クトル値は硬X線に比べて、1.5 - 2.0程度小さい(左図)。今後、これらの結果 を解析することによって、数keV - 100 keVのエネルギーを持つ粒子と 300 keV以上のエネルギーを持つ粒子の加速メカニズムに新たな知見が 得られることが期待されます。

(高崎 宏之 記)



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