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サージ発生領域における浮上磁場の存在の観測的検証

太陽を波長6563の赤い光(線)を使って観測しますと、主に黒点が 発達している領域(活動領域)で「サージ」と呼ばれる突発的な噴出現象が 見られることがあります。この現象が発生する仕組みについて近年、 太陽内部から新たに浮かび上がって来た磁場が太陽上層大気中の磁場と衝突して 相互作用を起こして磁気エネルギーを解放し、その結果サージが発生するという モデル(磁気リコネクションモデル)が電磁流体力学の数値実験の結果から 提唱されるようになりました。このモデルはX線太陽観測衛星「ようこう」の 観測から明らかになった太陽フレアや``X-ray Jet''のモデルと同じものであり、 太陽以外の天体の活動現象にも幅広く応用できる可能性を持っています。 私達はこのモデルを観測的に検証するため、飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡で 観測された高分解能の太陽像と北京天文台Huairou Stationの太陽磁場測定装置で 観測された高精度の磁場データを用いてこれまでにない高い精度でサージ発生領域の 微細磁場構造の時間変化を調査しました。その結果、私達はサージの根元に 周囲の磁場と反対極性を持った微細磁場構造が存在し、その磁場強度がサージ発生中 または直後に急激に増大している、という事例を複数発見しました (14例中11例)。 これらの事例はサージの根元に太陽内部から新たに浮かび上がって来た磁場が 存在することを観測的に捕えたものであると考えられ、このような事例を高い割合で 複数発見したということは上記モデルが一般的に成り立っていることを観測的に 裏付ける重要な結果であると考えられます。

(佐野 周作 記)



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