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ブラックホール近傍での準周期的衝撃波形成と quasi-periodic oscillationへの応用

マイクロクエーサー、X線ノヴァ、活動銀河核など中心にブラックホールが 存在すると考えられている 多くの天体から、X線領域での準周期的振動現象 (quasi-perioidic oscillation; QPO)が観測されています。 この現象を説明するモデルはいくつか提唱されていますが、メカニズムは 未だに解明されていません。 モデルの1つに、ブラックホールの周りの降着円盤で生じる振動で説明する モデルがありますが、それによると、降着円盤で生成した音波が降着円盤の 内縁近傍で音波がトラップされ、降着円盤のエピサイクリック振動数の 最大値程度の振動数での振動現象が現れる(加藤と福江 1980)ことが 予想されており、松本ら(1988)と本間ら(1992)により この現象が起こりうることが数値シミューションを用いて示されました。 この数値シミュレーションの結果は、降着円盤の粘性による摂動の結果生じる音 波が、降着円盤内縁近傍にトラップされることによって、コヒーレントな振動 現象が見られると解釈されています。 我々はQPOを説明するシナリオとして、音波のトラップによるものとは異なる シナリオを提唱しております。 具体的には、降着円盤での有限振幅の摂動により発生した音波の内、降着円盤の エピサイクリック振動数の最大値より大きい振動数の波のみが、ブラックホール へ達すことができることにより生じる、コヒーレントな振動で説明するシナリオ を考えています。実際、我々は、降着円盤の粘性を考えない一般相対論的流体力 学による数値シミュレーションにより、初期に有限振幅の摂動を与えると、エピ サイクリック振動数の最大値程度の振動数で、降着円盤からブラックホールへ繰 り返し伝播する準周期的衝撃波を得ることができました。 また、この準周期的衝撃波生成の振動数はブラックホールの回転に依存するた め、実際に観測されるQPOの振動数から、 中心に存在すると考えれらるブラックホールの回転を予測することができます。

(青木 成一郎 記)



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