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巨大アーケード現象(1992.1.24)に伴うスロー衝撃波とファスト衝撃波

近年の衛星観測によって、 太陽フレアやフィラメント噴出といった太陽で起きている様々な活動現象では、 磁気リコネクション(磁力線のつなぎ換え)によってエネルギーが解放されていると 考えられるようになりました。 ここで着目している巨大アーケード現象も、磁気リコネクションによって 引き起こされている現象の1つと考えられています。 ところが、今までに磁気リコネクションを示唆する証拠は数多く発見されていますが、 理論によって予言されている磁気リコネクションに伴うスロー衝撃波の証拠は 発見されていませんでした。 この衝撃波の有無や存在する場合はその構造といった情報は、 磁気リコネクションの詳細な物理を解明するうえで重要な手がかりとなります。

本研究では、活動現象中の構造を調べるために次のような手法を取りました。 まず、1992年1月24日に発生した巨大アーケード現象の 人工衛星「ようこう」軟X線観測を解析しました。 次に、その結果をもとに現実に近い条件の下で数値シミュレーションを行いました。 そして、可視化したシミュレーション結果と観測と比較しその対応を調べました。

比較の結果、巨大アーケード現象で観測されたY字型の噴出していく構造(図 a)が 磁気リコネクションに伴うスロー衝撃波による構造であることが示唆されました。 さらに、Y字型の中心の少し明るくなった部分はファスト衝撃波による構造である ことも示唆されました。 本研究は、太陽コロナ中における磁気リコネクションに伴う衝撃波の同定に 世界で初めて成功したと言えます。

2006年には次期太陽観測衛星Solar-Bが打ち上げられます。 Solar-Bに搭載予定のX線望遠鏡によって、より高感度で高分解な観測が行われることで リコネクション領域の構造がより明らかになることが期待されます。

(塩田 大幸 記)



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