CMO#203
Communications in Mars Observations
The OAA Mars Section, JAPAN
#203
-- 25 May 1998 --


- From #203 we cite three articles -
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* 1996/97 Mars Sketch (5)
--White Hellas, from Its Brightest through its Decline, Observed in 1997
* Letters to the Editor
-- from CMO #203--
* 10 Years Ago (33) (Japanese)
-- CMO #051 (10 May 1988) & #052 (25 May 1988)-

1996/97 Mars Sketch (5)

* White Hellas, from Its Brightest through its Decline, Observed in 1997 (English)
* 顕著期から衰退期に掛けてのヘッラスの動向(Japanese)


Letters to the Editor -- from CMO #203--

From Sam WHITBY   (English)
From Gianni QUARRA   (English)
From 森田行雄   (Japanese)


From CMO#052 10 Years Ago (33) (Japanese)
-CMO #051 (10 Mayl 1988) & #052 (25 Mayl 1988)-

 現在1998年では、五月13日に火星は太陽と「おひつじ座」で「合」になった。以後は太陽の西に移り明け方の空に回ったが、火星との地心距離最大は来月(六月)のことで、まだまだ近付いてこない。
他の大きな惑星達もすべて朝方の空にある。金星は外合に向かって視直径を落としている。木星は太陽との離角も出てきて、そろそろ観測シーズンの始まりであろうか。
 (以上「現在の天象」)

 十年前の1988年五月には火星は「やぎ座」にあって順行を続けていた。五月31日には「西矩」となって、いよいよ連続観測の開始時期を迎えていたわけである。視直径も五月なかばには9秒角を越えて十分な大きさになり、火星の季節も五月下旬には200゚Ls に達して、南半球の春も盛りになっていた。南極冠は溶解を始めている。

 OAA MARS SECTIONには、四月下旬と五月上旬の観測報告が両号に分けて纏められている。この期間の報告は、阿久津富夫(photo)・長谷川久也・岩崎徹・南政次・宮崎勲・中島孝の各氏から寄せられた。R Neel氏・日岐敏明氏からの期間外の追加報告があった。
 火星面は視直径が大きくなって、詳しく捉えられるようになってきた。180゚Ls〜195゚Lsにかけての季節で、Syrtis Majorの朝方から東回りに S Sabaeusの夕方までが観測された。南極冠は明るく燦然とみえているが縮 小は始まっており、形態に注意を払うようにとの観測指針がある。
 記事は「ピク・ドュ・ミデイ天文台滞在記(抄訳)上・下」・「夜毎餘言[」(#051)・「チョット小言」(#051)・「1988年の火星(8) ミッチェル山の分離」(#052)と多彩である。

 「ピク・ドュ・ミデイ天文台滞在記(抄訳)」は、J Dragesco, R McKim両氏が1986年夏に ピク・ドュ・ミデイ天文台で惑星観測をしたときの記録で、BAAジャーナル(JBAA, 97巻(1987))に掲載されたものである。ベストシーイングの大型望遠鏡(106cm鏡)による惑星眼視観測の描写がある。また写真観測では、このときに使用したフィルムと現像処方についての印象も述べられている。中島孝氏による抄訳で#051と#052に分載された。
 「夜毎餘言」は八話目となり、タイトルは「南中老人早朝観測回想」とあり、南・中島両氏がこれまでに行ってきた共同観測について語られている。福井市自然科学博物館(旧)天文台における、「集中連続観測」と称しての観測は現在も続けられているが、気力と体力がなければ続くものでないことは、一読すればお判りになることと思う。
 「チョット小言」にはスケッチ観測の解析における南氏の所感が述べられている。特に数値の取り扱いについて、「数字というものは実体の精度にぴったり当たっていなくてはならない。」「粗い精度のものに細かい数値は要らない。」「スケッチには相関関係が描かれている、数量化の難しい情報が詰め込まれていると考えなければならない。」「統計的に淘汰されたものは万更でもないからである。」「スケッチに数値を持ち込むのは余程注意が要る、寧ろ無用と考えた方が良い」等の、スケッチを「読む」上で留意しなければならない事が記されている。#051をお持ちの方には是非再読をお勧めする。
 「1988年の火星(8):ミッチェル山の分離」は、南極冠縮小の過程で現れる極冠の分裂現象についての解説である。此の分裂片は火星の季節にして230゚Lsから270゚Lsにかけて、火星面経度 Ω=330゚W、火星面緯度 Φ=70゚S〜77゚S辺りに観測されるもので、初めは半島状に極冠と繋がって明るく見えるが、融解が進むに連れて極冠より分離して、最後には消滅してしまう。1988年には、日本では七月の下旬(240゚Ls)から観測期に入るとして、観測時の注意を促している。

 来信は、国外からは A Sanchez-Lavega氏(Spain)・蔡章献氏(ROC)・R Neel氏(France)・L Aerts氏 (Belgium)から寄せられた。ドルフュス氏からはフランスの天文誌(l'Astronomie)の火星特集が南氏に送られてきて、コラム記事で紹介されている。蔡章献氏からのお手紙には天文台新館建設準備でお忙しい様子が記されている。この新館の開館は氏の退官後、殆ど十年後(1997年)になる。

 国内からは、阿久津氏・長谷川氏・宮崎氏・沼澤茂美氏からお便りがあった。沼澤氏からは、火星の青色光撮影に役立ちそうなフイルムの紹介とシャッターぶれテストの結果が報告された。

 五月の連休に福井で開催されたワークショップのレポートもある。四月末から十日間にわたって催され、福井の南・中島・西田・横川秀紀各氏の他、岩崎徹氏が九州から参加した。異なる望遠鏡・アイピースでの見え方の比較など観測三昧の様子が記されている。天候は生憎落ち着かず、隔日に観測出来ただけだったとのことである。

(Mk) 村上昌己


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