10 Years Ago (62)
10 Years Ago (62) (Japanese)
-CMO #094 (10 October 1990) & #095 (25 October 1990)-

 火星は1990年十月には「おうし座」にあって、20日にヒアデス星団の北で「留」となり逆行へ移った。赤緯は22゚N台まで高くなり、南中高度が非常に高くなる好条件になった。南中時刻も月初めの午前四時台から月末には午前二時台と早まって、観測好期の到来である。
 火星の暦は、十月はじめにはδ=13.7"、Ls=308゚、φ=3゚S となって、細部の観測にも十分な大きさになってきた。十月中旬には視直径が15"を越えている。

 #094には、九月後半の観測がまとめられているが、台風と秋雨前線の影響で天候が悪く、全体に観測はふるわず、見開き四頁立てである。この期間には火星面はS SabaeusあたりからSyrtis Mj、M.Cimmeriumまでの様子が見られた。
 前の期間に注目されていた南極冠とフードの様子は、中央緯度が落ちてきたこともあり、見難くなっていたが、この期間にはフードは殆ど消失していた。Noachis、Hellasなども黄雲がらみで注意されたが、異常は捉えられていない。S Sabaeusが褐色系に濃度を増しているのが、Hk,Iw,Nk,Nj,Mn各氏に注目された。
 この号には、OAA MARS SECTIONから二つの記事がある。始めの記事は「NEWS?/浅田正氏」で浅田氏の許へCompuserveを通じてJeff BEISH氏から入った塵雲のアラートで、「ALPOのメンバーがEos辺りに、3,4,5 Octとdust cloudを観測したが、6 Octには治まっていた。」という内容である。あとの記事は「お知らせ/中島孝氏」で、浅田正氏がこの翌年にアメリカ留学する事が決まったので、浅田氏が受け持っていた『火星通信』事務局の業務を漸次縮小していくとのお知らせである。

 #095には、沖縄からの九月後半の追加報告と十月前半の観測報告が紹介されている。沖縄での観測は、本土の天候の悪い時期をうまくカバーしていて、宮崎勲氏のTP写真が威力を見せ始めてきている。また伊舎堂氏はM.SirenumとPhoenicis Lの間に暗点を観測し、比嘉氏のビテオ画像にも捉えられていた。南氏もひとまわり後に確認されて注目している。
 十月前半は、Syrtis Mjの西端から現れる景色から始まり、Argyreが夕端に見える所までであった。#094のアラートにあった地域はまだ視野に入ってこないが、Argyreあたりからの夕霧の張り出しが明るく捉えられている。南極地はω=200゚以東で再び靄っぽくなって来るのが観測された。
 この号には、「1990/1991年の火星観測暦表(その4)」として、1990年12月の暦表が掲載されている。

 此の期間に観測を報告された方は、阿久津(Ak) 比嘉(Hg) 日岐(Hk) 岩崎(Iw) 南(Mn) 中島守正(Nk) 中島孝(Nj) 伊舎堂(Id) 宮崎(My) 矢木(Yg)の各氏に加えて、筆者(Mk)も初登場している(10cm屈折、TP photo)。
 海外からは、Régis NÈEL(France, 31cm反射),Gérald TEICHERT(France,28cmSC),Jean DIJON(France,20cm反射),Marc A GÈLINAS(Canada,15cm屈折),Christian M SCHAMBECK(Germany,15cm屈折)の五名の方々から寄せられた。

 来信は#094には、筆者と日岐敏明、岩崎徹両氏のものが、#095には、Don PARKER、Kermit RHEA、Frank J MELILLO、筆者、Jeff BEISH、伊舎堂弘、宮崎勲、Jean DIJON、日岐敏明、阿久津富夫、岩崎徹、矢木英樹の各氏からのお便りが紹介されている。

村上昌己 (Mk)