ISMO 2011/2012 Mars Note #02

2012年の朝方凸現象を2003年のそれと比較する

南 政 次・村上 昌己


今年の火星面現象の内際立っていたものは火星面朝方において突起「protrusion」現象が屢々觀測されたことである。多分突發的なものではなく、これまでも屢々起こっていたものであろうが、案外と見過ごされていたものだと思われる。

 われわれが2003Novにおいて觀測したものも、同じ現象だと思われる。また、Antoniadi1929316日、や1933414日にムードンで觀測したものも同種のものと思われる。

 われわれは是は黄雲ではなく、太陽風の活動による現象だと考えている。ただし、2003年が太陽活動の最盛期であるのに対し、1929年は極大からの下降期、1933年は極小期であった。實は2012年も、極大期ではなく、比較的低調であったことと幾らか符合する。われわれはCME(Coronal Mass Ejection、コロナ質量放出)の活動によると考えているが、コロナ質量放出は黒點の周期活動とは併行していないのだと思う。突發的な黒點活動の方が太陽風を好く發生するのかも知れない。

 2003年の場合は、10月下旬から11月上旬にかけて太陽活動は激しく、地球でも磁氣嵐に見舞われている。28Oct2003には大きなCMEが顕著であった。圖は人工衛星で觀測された高エネルギープロトンの1028日の様子である。CME(コロナ質量放出)は少し遅れて到達する。

 勿論火星には更に遅れて到達するが、2003年の場合われわれが最初に火星面朝方に突起をみとめたのは114日であり、7日にも同じように同じ角度から同じ現象を觀測している。日にちが抜けるのは、天候の所爲である。幸いなことに4日と7日には同じω=203°Wで観測できた。



これは重要な観測で突起はCMEの通過後に出来たものだが、少なくとも四日間同じ様な形をしながら暫く殘滓として殘っていることを示しており、所謂黄雲活動とは違うことを暗示している。勿論、前後するω角度での觀測もあり、07Novには森田行雄(Mo)氏がω=211°Wから224°Wまで追っ掛けており、宮崎勲氏は08Novω=168°Wから209°Wまで認めている。然し濃淡の變化は不明である。

 

 扨て今年の太陽活動は平均すれば低調と考えられていた。ただし、このところの太陽活動には幾らか異常があり、太陽北半球に於いて、磁場逆転が起こっていると考えられている。

 それは兎も角、突起の觀測で目立ったものとして、次のようなものがある。

Mar

12    ι=07°  Marc DELCROIX   ω=154°W

14/15  ι=10°  Damian PEACH   ω=152°W

20    ι=13°  Wayne JAESCHKE   ω=147°W

21    ι=14°  Don PARKER   ω=146°W

21    ι=14°  Jim PHILLIPS   ω=153°W

Apr

06    ι=24°  Don PARKER   ω=354°W

09    ι=26°  Yuri GORYACHKO ω=184°W

12    ι=27°  Yuri GORYACHKO ω=160°W

13    ι=28°  Damian PEACH   ω=185°W

25    ι=32°  William FLANAGAN   ω=180°W

()

Wayne JAESCHKE (PA, the USA) (20 Mar)の観測は

http://exosky.net/exosky/?p=1606

を見られたい、また

 Yuri GGORYACHKO (Minsk, BELARUS) (09, 12 Apr)の観測は

http://www.astronominsk.org/Planets/Mars/2012/Mars20120409_en.html  

http://www.astronominsk.org/Planets/Mars/2012/Mars20120412_en.html 

を参照されたい。

 

では今年の場合、CMEの動きはどうであったかというと、例えば、

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/CME_2012Mar13_19.gif

に見られる。ここに示す圖


は上の動画から切り取ったものである。

 Gif像に示した動画では例では、2012313日に太陽を出発したCME19Marまでの動きであるが、17Mar06:00に火星に到着している。これに對應する凸現象は

20 Mar   ι=13°  Wayne JAESCHKE   ω=147°W

に顕れているものであろう。殘念ながら14/15Mar以降20Mar以前の觀測はないから、20Marの觀測はこのCMEによって惹起された凸現象と考えるほかないわけである。この凸現象もCMEの通過後も殘滓として殘っていたはずのもので、上に擧げた

21 Mar   ι=14°  Don PARKER   ω=146°W

21 Mar   ι=14°  Jim PHILLIPS   ω=153°W

の觀測は同じ殘滓の觀測であろう。この殘滓がいつまで殘ったのかもハッキリしないが、PHILLIPS氏は21Marに於いて2:40GMTから3:50GMTまで連續して撮像しているが(396LtENow參照)、觀測期間が短く突起に角度の變化が顕れる事以外特に變わったことはない。寧ろ、同じ角度で翌日、または翌翌日に撮った方が幾らか發言が出來る。

 


 われわれの考えるところでは、火星面上の磁場の小さな(マッシュルーム状の)芽は速く移動することがないであろうから、翌日も同じように見えるはずである。少なくとも、Wayne JAESCHKEの角度ω=148°Wと合わせることが必要であったと思う。その意味ではPARKER氏の21Marの角度ω=146°Wが興味深い。ここに比較するが、突起は固定しているようである。ただし眼視が伴わないから、様子の比較は出來ない。

 


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