2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#13

2012年七月の火星観測 (λ=133°Ls~148°Ls)

CMO #401 (25 August 2012)


・・・・・今期13回目のレポートは、七月中の観測報告である。火星は日没時の南西の空の「おとめ座」にあり、スピカ・土星と二等辺三角形を作り、間を縮めていった。季節λ133°Lsから148°Lsと進み北半球では秋が近づいてきた。傾きφは依然北に大きく、月末でも25°Nに戻っただけであった。北極域は引き続き明るく捉えられていて小さい北極冠の残滓がみえている。南縁にはヘッラス、アルギュレの明るさが認められている。位相角ι39°から37°と少し戻ったが朝方の欠けは大きい。視直径はδ=6.6"から5.8"とさらに遠ざかり、日没後の高度も低く観測時間も短くなってしまった。関東地方では7月中旬に梅雨明け宣言が出たが、梅雨明け十日といわれる安定した晴天とならずに曇天傾向が続いた。下旬になって暑い晴天が訪れたが、夕方の天気は曇りがちで観測の機会は少なかった。

 

・・・・・七月中には、以下の各氏から、報告を拝受している。

近内 令一 (Kn)  石川町、福島

        7 Drawings (10, 11, 31 July 2012)  750×,600×30cm SCT

 

フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

        4 Colour Images (3, 11, 13, 23 July 2012)   25cm SCT with a ToUcam pro II

 

森田 行雄 (Mo)  廿日市、広島

        6 Sets of RGB + 6 LRGB Colour + 6 L Images  (3, 8, 9, 17, 25 July 2012) 

                                                            25cm speculum with a Flea3

村上 昌己 (Mk)  藤沢市、神奈川

        2 Drawings (10, 30 July 2012)  400×20cm F/8 speculum

 

フレッディ・ウイッレムズ (FWl) ハワイ、アメリカ合衆国

        9 Sets of RGB + 27 Colour + 9 IR Images (1, 2, 4, 12, 13, 21, 27, 28 July 2012)

                                              36cm SCT with a DMK21AU04.AS

 

・・・・・1 July(λ=133°Ls) にはウイッレムズ (FWl)氏の観測ω=315°Wがあり、明るいヘッラスとシュルチス・マイヨル、シヌス・サバエウスを捉える。北半球も詳細が撮し出され、オリュムピアと北極冠の間のリマ・ボレアリスがはっきりわかる(δ=6.6")2 July(λ=133°Ls) ω=305°WにもFWl氏が撮影し同様の景色だが、シーイングが優れず解像度は前日のものがよい。

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3 July(λ=134°Ls) ω=215°Wにはメリッロ(FMl)氏の観測、像は小さく詳細は捉えられていないが、北極域の明るさとプレグラの濃度はわかる。日本からは森田(Mo)氏の撮像、ω=029°Wでアキダリウム領域。クリュセに明るさ、マレ・アキダリウムの朝方にも明るさ。北極冠は小さく西側にヒュペルボレオ・ラクスの濃度。アルギュレは明るさ目立たない。4 July(λ=134°Ls)にはω=286°WFWl氏が朝方のヘッラスの明るさを捉えている。解像度は良くないがIR光では、ノドゥス・アルキュオニウス、アエテリアの暗斑も写っている。北極冠の東にはオリュムピアの明るさも明確。

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8 July(λ=136°Ls)には日本からも明るいヘッラスが写野に入ってきて、ω=319°W, 324°WMo氏の観測がある。朝靄の明るさも感じられる。9 July(λ=137°Ls)にもω=315°WMo氏が撮影するが、像は前日より良くない。10 July(λ=137°Ls)には、近内(Kn)氏がω=279°W, 289°W, 299°Wで眼視観測。30cmSCT, 750倍。青味のあるヘッラスの明るさ、小さく白い北極冠を記述している。北半球が赤味がかるともしている。筆者(Mk)も久しぶりの観測となりω=294°Wで見ている。

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11 July (λ=138°Ls)にもω=276°W, 286°WKn氏の観測があり,シーイングは良いものの、雲の襲来に妨害されている。ヘッラスの明るさ、小さい北極冠を認め、夕縁側のエリュシウムの明るさも観測している。同日アメリカではFMl氏のω=145°Wの撮影がある。12 July (λ=138°Ls)にはハワイのFWl氏のω=209°Wの画像。RGB画像は不鮮明だが、IR光ではエリュシウムの明るさや北極域を取り巻く暗帯がわかる。13 July (λ=139°Ls)にもFWl氏がω=198°Wで撮影、前日より視相が良く、プレグラ、エリュシウム、アエテリアの暗斑などが判別できる。FMl氏はω=116°W、北極冠が小さく写っている。17 July (λ=141°Ls)にはω=235°WMo氏が撮影。エリュシウムの明るさを捉え、アエテリアの暗斑が中央。北極域に明るさがあり、南半球の大陸の明るさもわかる。

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 少し観測がとんで21 July (λ=143°Ls)にはFWl氏のω=120°Wの報告がある。暗色模様の少ないところでもあり、像が悪く詳細は写っていない、北極冠が小さくわかる。視直径はδ=6.0"となった。22 July (λ=143°Ls) ω=109°WFWl氏の像は前日より描写が良く、午後縁のクリュセの明るさ、ソリス・ラクス、マレ・アキダリウムの午後の様子、南縁の明るさ、オピル・タルシス・テムペのY字型、薄明るいアルバなどがわかる。小さい北極冠とヒュペルボレオ・ラクスの濃さも捉えられている。23 July (λ=144°Ls) ω=017°WでニューヨークのFMl氏の撮像、像は小さいがマレ・アキダリウムの濃度とクリュセから朝縁にのびる朝靄の明るさが写っている。

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25 July (λ=145°Ls) ω=159°WにはMo氏が観測、午後縁が明るい。北極域を取り巻く暗帯と小さい残留北極冠がわかる。南縁近くマレ・シレナムの濃度が感じられる。27 July (λ=146°Ls) ω=059°W, 28 July (λ=146°Ls) ω=049°WFWl氏の撮影、前者はシーイング不良でボケボケだが、後者はマレ・アキダリウム中央で、南縁にはアルギュレあたりが青く明るい。北極冠もはっきりしている。30 July (λ=147°Ls) ω=094°WにはMkの眼視観測、午後縁のマレ・アキダリウムの暗さ、小さい北極冠と、南縁の明るさを感じている。31 July (λ=148°Ls) にはKn氏がω=075°W,084°Wでスケッチ、北極域は明るいが北極冠は定かでないとしている。オピル−タルシス域、午後のリムと南縁の明るさを指摘している。月末には視直径はδ=5.8"であった。

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(村上 昌己/  )  


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