2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#02

2013年十月の火星観測 (λ=029°Ls~043°Ls)

CMO #416 (25 November 2013)


・・・・・今期二回目の観測レポートは、2013年十月の一ヶ月間(λ=029°Ls~λ=043°Ls)の観測を取り上げる。視直径はδ=4.4"から4.8"とやや増大した。傾きはφ=21°N台から24°N台と大きく傾き、春の北半球と北極域が此方を向いている。位相角はι=26°から31°に増加して、夕方側の欠けが大きく午前中の火星面の面積は少なくなっている。十月には火星は「しし座」を順行してレグルスと並んで光っていた、上旬には話題のISON彗星も付近にあって、空間的にも火星に十月一日に0.07AUにまで接近して火星軌道の内側へ向かった。

 この期間に、イランのサデグ・ゴミザデ(SGh)氏から報告が入り始めた。日本からは森田(Mo)氏が、二度もの台風接近にかかわらず、多くの日に観測をしている。ほかの報告者からの報告数はまだ少ない。

 

・・・・・この期間に拝受した報告と報告者は次の通りである。

 

     阿久津 富夫 (Ak)  セブ・フィリッピン

       1 Set of RGB + 1 IR Image (18 October 2013)  36cm SCT @f/24 with a DMK21AU618AS

 

     サデグ・ゴミザデ (SGh) .ルーデヘン、イラン

       2 Colour + 1 B Images (17, 25 October 2013)   (28cm SCT with a DMK21AU04.AS)

 

     ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

       1 Set of RGB + 1 IR Images (19 October 2013)    36cm SCT with a ASI 120MM

 

     ジム・メルカ (JMl) ミズーリ、アメリカ合衆国

      1 Colour + 1 R + 1 B Images (27 October 2013)   45cm spec with a DBK21AU04.AS

 

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       1 Set of LRGB Images  (7 October 2013)  31cm SCT with a Flea3

 

    森田 行雄 (Mo)  廿日市、広島県

       12 Sets of RGB + 12 LRGB Colour + 12 L Images  (1, 12, 13, 16, 20, 27,~31 October 2013) 

                           36cm SCT with a Flea3

 

    ドナルド・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国

        1 Set of RGB Images (10 October 2013)   41cm Spec @f/26 with an ASI 120MM

                                                                 

    デミアン・ピーチ (DPc)  ウエストサセックス、英国   

        1 Set of RGB Images (6 October 2013)            (36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)

 

 

・・・・・森田行雄(Mo)氏の 1Oct(λ=030°Ls)ω=360°Wの像は未だδ=4.4"にも拘わらず(予告通り)秀逸で、アラムが明るく、シヌス・メリディアニの頭部が対岸のマルガリティフェル・シヌスとやや繋がっている風味もなかなか好い。オクススが斑点状に流れていて、マレ・アキダリウムとの間は明るく抜けている。マレ・アキダリウムは北部に黄塵溜まりを抱えているようだ。Rでは例の西北部の三角形が濃く出ている。アキッレス・ポンスも淡く認められる。盛りの北極冠は未だ縁が暈けている。像南端はやや明るい。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131001/Mo01Oct13.jpg

 

  6Oct(λ=032°Ls)のデミアン・ピーチ(DPc)氏のω=091°Wはソリス・ラクスが夕方にあり、アガトダエモンも見え、ポエニキス・ラクスなどが斑点状に分離している。夕方のクサンテなどには夕霧がBでも膨らんでいる。北極冠はかなりキリッとしている。φ=22°Nで見頃である。北半球のテムペの後続に靄だまりが複数個連なっているようである。南端は特徴がない。

      http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131006/DPc06Oct13.jpg

 

   7Oct(λ=032°Ls)にはエフライン・モラレス(EMr)氏のω=141°Wの像があるが、北極冠も含めて描写力不足である。

   10Oct(λ=034°Ls)にはドン・パーカー(DPk)氏が ω=128°Wで撮った。朝方、赤道あたりに白色系の大きな斑点があるが、R,G,Bの何處から來ているのか分からない。 北極冠のダークフリンジはかなり太く、その北の朝方には複雑な模様がある。像南端は些しふやけている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131010/DPk10Oct13.jpg

  

  12Oct(λ=035°Ls)にはMo氏がω=254°Wω=264°Wの二組を作った。ウトピアに黄塵溜まりがあるようだ。 ヘスペリアは切れている。シュルティス・マイヨルは明確。北極冠の輪郭はすっきりしないが、B像がやや大きく、ブレが入るのかも知れない。

     http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131012/Mo12Oct13.jpg

 

   13Oct(λ=035°Ls)Mo氏像は余程好く、ω=245°Wで、RLでノドゥス・アルキュオニウスが出ているのではと思う。アエテリアの暗斑が見え、エリュシウムが夕方にやや明るく検出される。シュルティス・マイヨルに沿って東側には些し明るいところがある。ウトピアは一様ではない。へスペリアは好く切れている。北極冠はRでは明確だが、やはり大きめのB像が合成では邪魔をするようである。 

      http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131013/Mo13Oct13.jpg

 

   次の16Oct(λ=037°Ls)ω=213°WMo氏である。Rでマレ・キムメリウムが濃い。アエテリアの暗斑が目立ち、エリュシウムはやや明るく、ケブレニアに続いているように見える。多分、ハート型であろう。

         http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131016/Mo16Oct13.jpg

        

   17Oct(λ=037°Ls)はサデグ・ゴミザデ(SGh)氏の登場で、ω=290°Wの像である。カラーではシュルティス・マイヨルが午後側に見えている。北極冠も程よい描写。

  18Oct(λ=038°Ls)ω=196°Wは阿久津富夫(Ak)氏の 落ち着いた像で、IRでマレ・キムメリウムが濃く、エリュシウム-ケブレニアはハート型である。ケブレニアはエリュシウムの明るさより弱いが、明帯。RGBでも見える。北極冠はRGBでこんもりとしている。

      http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131018/Ak18Oct13.jpg

 

   19Oct(λ=038°Ls)はピーター・ゴルチンスキ(PGc)氏で ω=036°Wの像、マレ・アキダリウムが南中である。R,G,BのほかR-RGBIR(742)が加わる。Mo氏も描写したマレ・アキダリウム東北部の筋状黄塵は未だ見えている。  夕方にアラムは見えているし、クリュセの中も明暗複雜。アガトダエモンは朝方に見え、オピールを押さえる。南端は目立たない程度に暈けている。

       http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131019/PGc19Oct13.jpg

 

   20Oct(λ=038°Ls)Mo氏で、ω=173°Wω=178°W。エリュシウムが朝方へ移った。ウトピアが朝方縁になるが、その西(ターミネーターに接するところ)は明るい。両者ともプロポンティスIとその後続斑点が見えている。

        http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131020/Mo20Oct13.jpg

 

   25Oct(λ=040°Ls)はゴミザデ(SGh)氏で ω=207°W だが、ぼけぼけ。

 

      27Oct(λ=041°Ls042°Ls)はジム・メルカ(JMl)氏とMo氏がそれぞれω=345°Wω=104°Wで撮った。前者はマレ・アキダリウムが朝方濃く、シヌス・サバエウスがぼんやり見えるという状況。マルガリティフェル・シヌスの北端はRで好く見えている。B光は模様が見えすぎ。Mo氏の像は模様の少ないところに出て、シーイングも伴わず生彩がないが、北部夕方にテムペの後方の複雑さがあるかも。

         http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131027/JMl27Oct13.jpg

         http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131027/Mo27Oct13.jpg

 

28Oct(λ=042°Ls)29Oct(λ=042°Ls)30Oct(λ=043°Ls)31Oct(λ=043°Ls)は連続してMo氏のみの活躍で、それぞれ、ω=093°Wω=084°Wω=074°Wω=069°W で撮られている。28Octの像はシーイングが優れない。しかし、翌29Octω=084°Wの像は濃淡に締まりがある。Rでソリス・ラクスは濃い。ニロケラスの北はRGBでやや明るい斑(まだら)である。LRGBではカンドールとその西北がやや明るい。北極冠は締まって來ている。南端は好い暈けである。30OctLRGB像は東端に失敗があるが、Rは見応えがある。ソリス・ラクスの前方端に明るい部分がある。アルギュレでしょうかね。ニロケラスの西北側はカンドールと連鎖して、明るい筋。31Octω=069°Wの像は濃淡に切れが良く、ソリス・ラクスの北にティトニウス・ラクスのアガトダエモン側が濃い。RLでルナエ・ラクスの西方に暗点が明確。アスクラエウスとも思えないが。ニロケラス内部からルナエ・ラクスにかけての濃淡はだいぶ出てきた。δ=4.9"の段階では好い像だと思う。293031Octの像は以下に引く。

            http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131029/Mo29Oct13.jpg

            http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131030/Mo30Oct13.jpg

            http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131031/Mo31Oct13.jpg

もう少しすると、北極冠の内部が気になるであろう。

(村上 昌己/  )  


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