2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#08

2014年四月前半の火星観測 (λ=110°Ls~117°Ls)

CMO #422 (25 May 2014)


 

・・・・・・火星は2014年四月に、いよいよ今期の対衝と最接近を「おとめ座」で迎えた。今回は四月前半の半月間の観測をまとめる。観測レポートは八回目となった。メーウスの接近表によれば、対衝は821h (TD) 、最接近は1413h (TD)のことで、0.618AUまで近づいて、最大視直径はδ=15.16"に達した。季節はλ=110°Lsから117°Lsとすすみ、大きく此方に傾いている北半球の夏の期間の観測であった。視直径は月初の14.7"から増加して、最大となり期間末の15日でもδ=15.16"を保っていた。位相角はι=07°から9日にι=02°の最低となり、欠けは朝方に移り15日にはι=06°まで大きくなった。中央緯度はφ=21°Nから22°Nと少し傾きが増加した。

 

・・・・・・この期間には以下のように、35名の報告者から206件の報告を拝受した。国内から770観測、アメリカ大陸側から830観測、ヨーロッパから1359観測、オーストラリアから645観測、中近東から12観測であった。

 

   レオ・アールツ (LAt) ベルギー

       2 Colour Images (5, 10 April 2014)  36cm SCT with a DMK21AU618

  デーヴィッド・アーディッチ (DAr)  ミドルサセックス、英

       3 Colour Images (14, 15, 15n April 2014)  36cm SCT with a Flea 3 

    ドン・ベーツ (DBt) テキサス、アメリカ合衆国

       1 Set of RGB Images (12 April 2014)  25cm Spec with an ASI 120MM

    リシャルト・ボスマン (RBs) オランダ

       2 Sets of RGB Images (1, 5 April 2014)  36cm SCT with a Bsaler Ace

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

       3 Sets of RGB Images (6, 13, 14 April 2014)  40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04

    ブラスチラフ・チュルチック (BCr)  メルボルン、オーストラリア

       7 Sets of RGB Images (5, 6, 13, 14 April 2014)  28cm SCT with a QHY5L-II

    グザヴィエ・デュポン (XDp) サン・ロック、フランス

       5 Sets of RGB + 2 Colour Images (1, 5, 9, 10, 14 April 2014)  18cm Spec with an i-NOVA PLA C+

    ピーター・エドワーズ (PEd) ウエストサセックス、英

       3 Colour Images (8, 15 April 2014)  28cm SCT with a DMK21/618

    サデグ・ゴミザデ (SGh) .ルーデヘン、イラン

       2 Colour Images (7, 12 April 2014) 36cm SCT with a DMK21AU04.AS

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

       5 Sets of RGB + 5 IR Images (1,~3, 6, 10 April 2014)  36cm SCT with an ASI 120MM

    石橋 力  (Is)  相模原市、神奈川

      11 Colour Images (1, 7, 8, 14 April 2014) 31cm Spec with a SONY HC9 VideoCam

    マーク・ジャスティス (MJs)  メルボルン、オーストラリア

      13 Sets of RGB Images (13,~15 April 2014) 30cm Spec with a DMK21AU618

    マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ

        2 Sets of RGB + 3 Colour Images (2, 6, 8, 12, 14 April 2014) 28cm SCT with a DMK21AU618

    ジョン・カザナス (JKz)  メルボルン、オーストラリア

       1 Colour Image (5 April 2014) 32cm Spec with an ASI 120MM 

    近内 令一 (Kn) 石川町、福島県

      12 Colour Drawings (1, 7,~9, 13, 14 April 2014) 30cm SCT, 600×, 500×

    熊森 照明 (Km)  堺市、大阪府

      9 LRGB + 9 B Images (1, 4, 7,~9, 11, 12, 14, 15 April 2014)

                                  28cm SCT @ f/45 with an ASI 120MC & Basler Ace acA1300-30gm

    マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、英国

       2 Colour Images  (9, 15 April 2014) 45cm Spec with an ASI 120MC

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

       9 Colour Images (6, 10 April 2014)   25cm SCT with a ToUcam Pro II

    南 政 (Mn)  坂井市、福井県

       9 Drawings (8, 14 April 2014)  400×20cm ED refractor  福井市自然史博物館天文台

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       5 Sets of RGB Images  (1, 9, 12, 14, 15 April 2014)  31cm SCT with a Flea 3

    森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

      15 Sets of RGB + 15 LRGB Colour + 15 L Images (1, 2, 4, 7,~10 April 2014)    36cm SCT with a Flea 3

  村上 昌己 (Mk)  横浜市、神奈川県

       5 Drawings (8, 9 April 2014)  320× 20cm Spec

  西田 昭徳 (NS)  あわら市、福井県

       9 Sets of RGB Images (8, 14 April 2014)

                         20cm ED refractor with a DMK21AU618.AS   福井市自然史博物館天文台

  ドナルド・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国

       1 Set of RGB Images (2 April 2014)  36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM

    デミアン・ピーチ (DPc)  バルバドス (ウエストサセックス、英国)    

       2 Sets of Images (14, 15 April 2014)          (36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)

    クリストフ・ペリエ (CPl)  ナント、フランス

       8 Sets of RGB + 1 R + 2 IR Images (7/8, 8/9, 13/14 April 2014)  25cm Spec with a PLA-Mx

    ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス

       1 RGB Colour + 1 R + 1 B Images (9 April 2014)   35cm Cassegrain @f/29 with a Basler acA640-100gm 

    ヘスス・サンチェス (JSc) コルドバ、スペイン

       2 RGB Colour Images (6, 15 April 2014) 28cm SCT with a Basler acA1300-30gm

    クリス・スメト(KSm) ベルギー

       2 Drawings (9, 15 April 2014) 30cm spec, 210× 290×

    ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ   

       2 Sets of RGB + 1 Colour Images (1, 6, 12 April 2014)  28cm SCT @f/25, 30 with a QHY5L-II and Flea 3

    チャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア

       3 Colour Images (13 April 2014)   25cm SCT @f/28 with an ASI 120MM

  デーヴ・タイラー  (DTy) バッギンガムシャー、英国

     16 Colour Images (4, 7, 8, 11, 14, 15 April 2014)  36cm SCT with a  Flea 3

    モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

      20 Sets of RGB + 17 IR Images (5, 13,~15  April 2014)  36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM

    アンソニー・ウエズレイ(AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

       8 Colour Images (2, 4, 8, 10, 11, 14 April 2014)   (37cm spec) with a Point Gray Grasshopper3

  デーヴィッド・ウェルドレイク (DWr) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

       1 Set of LRGB + 1 L Images  (2 April 2014)  13cm refractor @f/70 with an ASI 130MM

  フレッディ・ウイッレムズ (FWl) フロリダ、アメリカ合衆国

       2 Sets of RGB + 2 IR Images (1, 3 April 2014)  36cm SCT with a DMK21AU618.AS

 

・・・・・・ 四月前半の観測を時刻順序に整理し、短評加える。観測者の名前はコードで示すが、初出の場合はフルネームを入れる。上の名簿を参照してほしい。

 最大視直径となったこの期間に捉えられた現象は、融解が進んだ北極冠内部と周辺の様子。オリュムプス・モンスの衝効果。ヘッラスの内部で輝きを落とすところが見えてきたところ。マレ・セルペンティスの淡化。エリュシウムから湾曲してシュルティス・マイヨルに及ぶ夕霧はシュルティス・マイヨル北部に斜めに入って居ること。また、前期に引き続いて、午後の山岳雲の様子。朝方の高山の暗点に見える様子。エリュシウムの内部の雲とアエテリア暗斑に沿う地肌の色彩の違い。淡化しているマレ・アキダリウム、暗色模様の詳細などである。 

 

1 April  (λ=110°~111°Ls)                         

    グザヴィエ・デュポン(XDp)氏の画像はω=165°Wで、タルシス山岳雲が夕縁近くで、少し離れてオリュムプス・モンスの雲が見える。詳細はない。朝霧はエリュシウム内か。プロポンティスIは見える。オリュムピアが北極冠の北西に見える。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/XDp01Apr14.jpg

 

   エフライン・モラレス(EMr)氏の画像はω=205°Wでオリュムプス・モンスは真っ白で夕縁近く。エリュシウムは南中前だがエリュシウム・モンスの雲は出ている。Rではエリュシウム・モンス頂上が白く見えるようだ。朝霧は強い。シュルティス・マイヨルは未だだが、ノドゥス・アルキオニウスは朝霧の外に見えている。 オリュムピアは北極冠の上に重なっている。南にはマレ・キムメリウムがアリンコの足と共に見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/EMr01Apr14.jpg

 

    フレッディ・ウィッレム(FWl)氏のω=207°Wの像は酷く暈けているが、中央付近のエリュシウムの雲と地肌の色合いの差は出ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/FWl01Apr14.jpg

 

   ピーター・ゴルチンスキー(PGc)氏像はω=230°Wで撮られていて、シュルティス・マイヨルが出ており、エリュシウムはCMを過ぎた邊りだが、全体にシャープさがたりない。但しディテールだけならω=233°WIR像に詳しい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/PGc01Apr14.jpg

 

    熊森照明(Km)氏のL+カラー像はキレの悪い無理なところもあるが、重要な處は好く活写されている。夕霧はシュルティス・マイヨルに斜めに入って居るし(Bでも明白)、ホイヘンス・クレーターが割と明確で、それに比較してマレ・セルペンティスは淡い。ヘッラスは夕端で白い。朝方では、アリュンの爪の右側の爪が更に二股になる風景が暗示されているし、オクシア・パルスの形も良い描冩。北極冠はカスマ・ボレアレの下に更に北極冠の成分が暗示される。朝霧は濃い。         

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/Km01Apr14.jpg

 

   石橋力(Is)氏のヴィデオ像から造ったカラー像はω=335°W345°W335°Wと刻まれているが、主な模様が判るだけである。    

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/Is01Apr14.jpg

 

   近内令一(Kn)氏のカラースケッチはω=340°W。ヘッラスは夕端で明白に描かれているが、シヌス・サバエウスなどは朧気にしかみえないようだ。夕霧はシュルティス・マイヨルに押された形だが、シュルティス・マイヨルの北部を越えて沙漠に出ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/Kn01Apr14.jpg

 

   森田行雄(Mo)氏のω=348°Wの像は何時もの様にLRGBRGBRGBL像からなっているが、RL像が詳細を示している。アリュンの右爪は二股である。朝方のブランガエナやオクシア・パルスなどの格好は良く描冩されている。夕端の夕霧とシュルティス・マイヨルの関係はGに好く出ていて、RGBではシュルティス・マイヨル北部で綺麗である。ヘッラスはLRGBRGBで似た白さを夕端で示す。カスマ・ボレアレを含んだ北極冠も両者似た描冩。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/Mo01Apr14.jpg

 

  オランダのジョン・スーセンバッハ(JSb)氏の像はω=107°W113°Wの二像。位相角がι=6°なので、オリュムプス・モンスに衝効果が期待できるが、ω=113°WR像では明確にオリュムプス・モンスがリング状に見え、これは衝効果を示す今期第一号であると思う。但し、Gで示される様に、少し西側に雲が出かかっているかも知れない。兩像とも夕縁近くのソリス・ラクスやティトニウス・ラクス、ニロケラスの鋏の詳細を傳えている。パーシスも出ているかも知れない。北極冠もカスマ・ボレアレが南からの切れ込みとして窺え、オリュムピアも西側に昇ってきている様子が好い(特にω=113°W)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/JSb01Apr14.jpg

 

    同じくオランダの リシャルト・ボスマン(RBs)氏は少し遅い ω=121°W で、すでにオリュムプス・モンスの西側の雲は明確で、衝効果を見るのは難しくなっている。アスクラエウス・モンスの西側の雲も明白で、ティトニウス・ラクス北側の夕霧も強く描冩されている。暗色模様は少し暈けた描冩だが、北極冠域はカスマ・ボレアレの砂塵など魅力があり、オリュムピアに先行する白斑點も複数個見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/RBs01Apr14.jpg

 

 

2 April (λ=111°Ls):                              

  ドン・パーカー(DPk)氏の像はω=187°Wで撮られている。夕端にはタルシス山脈の雲とオリュムプス・モンスの多分西側山腹の雲が濃く見える。エリュシウムは可成り朝方だが、エリュシウム・モンス起源と思われる雲が白く出て、これはアエテリアの暗斑を越えて朝霧と繋がっている。その為アエテリア暗斑に沿う地肌は綺麗には出ていないと思われる。暗色模様は控え目の描冩で、マレ・キムメリウムの蟻ンコの足は描冩されない。その代わり眼の穴は明瞭である。プロポンティスIも南中だが、弱く見える。オリュムピアは少し暈け気味で、實際、先行部に靄が出ているかも知れない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/DPk02Apr14.jpg

 

   PGc氏の像はω=223°Wで。シュルティス・マイヨルは既に出て、少し蒼味。エリュシウム内に雲と地肌の違いが少し見える。オリュムピアは暈けて見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/PGc02Apr14.jpg

 

   デーヴィッド・ウェルドレイク (DWd)氏は高橋の13cm屈折で参加。このセットはω=282°Wで撮られている。シュルティス・マイヨルとヘッラスがど真ん中だが、微細は無い。ただ、エリュシウムが夕端に真っ白で沈むところで、そこから発する霧の帶がシュルティス・マイヨルに達するのがGBで確認出來る。シーイングは7/10だそうだが、オリュムピアなど探せば見つかるか、と言った程度。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/DWd02Apr14.jpg

 

   アンソニー・ウェズリー(AWs)氏はω=334°W338°W343°Wのカラー像の羅列。ヘー、こんな描冩もあるんだ、という処理法が採用されている。まず、全体が霞に覆われているように見えながら、微細が見える。ヘッラスは夕端にありながら、内部の明暗がでている。 シヌス・サバエウスなど斑點に分解されて異様。北極冠も平面図を作圖したくなるような微細がある。シュルティス・マイヨルの夕霧の被さり方も面白い。夕端に來てもシュルティス・マイヨルの北端の描写が優れている。 ω=338°Wはホイヘンスの様子を好く傳えている。注目の影像。この人は使用器械を明記しないが、2009年の木星衝突痕を見つけたときの望遠鏡なら37cm反射である。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/AWs02Apr14.jpg

 

  Mo氏の観測はω=349°W354°Wで行われている。夫々平均以上の出来である。ι=5°で、ヘッラスもシュルティス・マイヨルも余裕がないくらいにターミネータに追いつめられているが、 シュルティス・マイヨル北部を斜めから太い霧の筋が横切る様子は残している。 アリュンの爪の右の爪のぼやけなど出ているし、北極雲内で亀裂の片方が立っている様子も面白い。ω=354°WRは濃い部分の分布など好い描冩で、落ち着いている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/Mo02Apr14.jpg

 

   最後にマノス・カルダシス(MKd)氏のω=082°Wの像がある。 大きな像だが朝方にオリュムプス・モンスが緩く出ておりアスクラエウス・モンスとの間にはアスクラエウス雲が殘っている。その北の晴れているところも興味がある。ソリス・ラクスは南中過ぎと言うところだがティトニウス・ラクスの関係などボンヤリながら覗える。アウロラエ・シヌスも要素を見せており、オピルにはクリュセを起源とする霧が入り込んでいるように見える。北極冠の濃淡・形も複雜。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140402/MKd02Apr14.jpg

 

 

3 April (λ=111°Ls

   FWl氏の画像はω=182°W で、夕方の綿毛形のオリュムプス・モンス(IRで見ると西側だけ)と縁にへばり付くタルシス山脈の雲を示している。エリュシウム内のガスは強くないが朝霧と連動している。北極冠は明るいだけで、オリュムピアも見えるという程度。フロリダでもこういう事があるんだ。 Rは比較的好く、從ってRRGBなどを作っている。IR742は詳細を出している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140403/FWl03Apr14.jpg

 

   PGc氏の像もω=182°Wで同じ。FWl氏像より少し締まりがあるか、といったところで、特別好くはない。マレ・キムメリウムが少し好く、エリュシウムの内部も北部が少し肌色に見える。 IR742では可成り詳細がみえる。オリュムプス・モンスは矢張り西側に雲が固まっている。アエテリアの暗斑は北のフォークが出ている。エリュシウム・モンスの邊りが明るい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140403/PGc03Apr14.jpg

 

 

4 April (λ=111°~112°Ls): 

   Km氏がω=317°Wで撮像、夕方のヘッラスは明るし。Bでは凸型に膨らんで立派。夕霧は強くないが、シュルティス・マイヨルを跨いで、沙漠に出ている感じ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140404/Km04Apr14.jpg

 

 

   AWs氏が殆ど同じのω=319°Wで撮像。 ヘッラスの輪郭がクッキリしている。内部の若干の濃淡も明確(近内令一氏がこのAWs氏の像に氷床の出現が顕れていると指摘している。LtE6日付けを見られたい)。ホイヘンス・クレータがこれまでの他の像に比べてクリアーである。シュルティス・マイヨルの北部の描冩も優れている。 シヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニの分解もすざましい。北極冠附近も詳しい。この像は稀に見る秀像だが、見かけは霧が掛かったようで、何處にも暗色模様は威張っていない。夕霧もさほどに濃くはなく、 沈んだエリュシウムから南寄りに出てカーヴを描いて シュルティス・マイヨルの北部を侵しているのは判断できる。どんなB像かみたいものである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140404/AWs04Apr14.jpg

 

   Mo氏の像がω=324°W で續く。夕霧がシュルティス・マイヨルの北部を斜めに侵すのが見える。ヘッラスからガスが洩れ出でているように見えるが、AWs氏ではそうでないからハレーションかな。注意が必要。 クリュセ起源の朝霧は強い。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140404/Mo04Apr14.jpg

 

   デーヴ・タイラー(DTy)氏の遅すぎる登場。ω=083°W087°W091°W でカラー像の連写。ω=083°Wの像では、タルシス山脈の中に小さな明るい光斑點が見える。雲のコアであろうが、何處か位置が難しい。イウエンタエ・フォンスが孤立して見え明確。ソリス・ラクスの南に雲の流れがある。ω=087°Wではソリス・ラクス邊りが割と詳しい。アウレア・ケルソのあたりが好く出ている。アスクレアウス雲は二番目の像まで明白。オリュムプス・モンスの邊りは大きく褐色の圓形。北極冠はどれもカスマ・ボレアレ邊りの擾亂が興味深い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140404/DTy04Apr14.jpg

 

 

5 April (λ=112°Ls): 

  XDp氏がω=133°W150°Wでカラー單像を作像。前者はオリュムプス・モンスを中央で狙ったものか。但し、然程雲は強くない。後者ではやや強くなって、西側山腹であることは明白。その先にはタルシス雲の流れとその先のクサンテ雲と分離している。南ではマレ・シレヌムか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/XDp05Apr14.jpg

 

   ブラチスラフ・チュルチック(BCr)氏はω=290°Wで観測:北極冠が興味深い形。オリュムピアは東に沈むところ。北極冠はGでも好い形。ヘッラスは南中だがRでは殆ど見えないのに対し、Bでは甚だ真っ白。まだエリュシウムが夕端に見えるから、霧がカーヴを描いてシュルティス・マイヨルに落ちている筈だが、GBで推測できる程度。却ってRGBで明白。シュルティス・マイヨルの内部は詳しく描冩されている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/BCr05Apr14.jpg

 

   モーリス・ヴァリンバーティ(MVl)氏がω=293°W296°W 303°W306°W315°W 319°W325°W329°Wで連写、 36°W幅で眼視観測の基準では4葉程度。廿分観測として7囘の観測。 ヘッラスが南中だが、輪郭は後半ω=315°W以降、すっきりする。後半シーイングが良くなる所爲もあるかもしれない。ヘッラスは縁に來ているが内部の描冩も後半好くなる。内部西端方で褐色の切れ込みがある。とにかく、ヘッラスの西端の様子は見極める必要がある。北極冠の様子も面白く考察が今後必要。全体、シュルティス・マイヨル(ホイヘンス・クレータなど)やシヌス・サバエウスの内部、シヌス・メリディアニ(G P カイパーの三本爪など)の描冩も優れている。但し、水蒸氣の希薄さが出ているのかシュルティス・マイヨル以東の夕霧の描写がBで著しくない。朝方の人工的な筋の處理も良くない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/MVl05Apr14.jpg

 

   ジョン・カザナス(JKz)氏の観測はω=324°WMVlシリーズの中に含まれる角度。單像でIR-GBコンポである。標準以上の出来と思うが、ヘッラス西端も示唆的。夕霧についてはBが欲しい。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/JKz05Apr14.jpg

 

   RBs氏の画像はω=091°W で、RGBは極めて綺麗な像である。午後のソリス・ラクス、ティトニウス・ラクス、アウロラエ・シヌス附近、ニロケラスの鋏など、可成りそれらの内部の様子を詳細に写し出している。アウレア・ケルソも見えている。アスクラエウス・モンスの西側山腹は白雲をためており、アスクラエウス雲の名残もある。オリュムプス・モンスはRGBでも寧ろ弱い褐色の領域の中に少し明るい円盤とその中の斑点状の山頂を見せて、衝効果を顕していると思える。ι=3°である。R像にもリング状は好く出ているが、GBではアスクラエウス・モンスの雲は出ているものの、オリュムプス・モンスは殆ど覗えない。RGBでは夕方のマレ・アキダリウムの南部はガスの所爲か弱く(Rでも弱い)、北部のみが濃い。ヒュペルボレウス・ラクスは夕方でも濃く、接する北極冠内の亀裂など可成り詳しい。         

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/RBs05Apr14.jpg

 

   レオ・アールツ(LAt)氏はω=096°W で撮った。カラー像が二葉並べてあるが、左側の像は白雲が目立つように処理したと思われる。ソリス・ラクスなどの暗色模様は少しコントラストが高い。地が明るい所爲かもしれない。その為かアオニウス・シヌス邊りがRBs氏の場合より明確に見える。矢張り、マレ・アキダリウムの南側は靄が掛かっているようだ(佐伯恆夫氏はマレ・アキダリウムはガス無しで沈むと書いていたように思うが)。オリュムプス・モンスの金環は好く見える方。アスクラエウス・モンスの雲は小さくやっと見える(地が明るく処理されているので、その所爲か)。タルシス三山も淡く見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140405/LAt05Apr14.jpg

 

 

6 April (λ=112°~113°Ls, δ=15")

   JSb氏の像はω=097°Wで、 前日のRBs氏やLAt氏の像と比較できる。夕方にソリス・ラクス、ティトニウス・ラクス、アウロラエ・シヌス、ニロケラスの鋏など暗色模様を同じように辿れるが、やや甘い。アウレア・ケルソも見える。ただ、特にマレ・アキダリウムの先の夕縁の處理が好くない。R起源であろう。朝方のオリュムプス・モンスの金環は衝効果で捕捉しているようである。 RGでは北極冠の西側のコアから南西に向かって筋が出ている。Bでは一寸不明。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/JSb06Apr14.jpg

 

   フランク・メリッロ(FMl)氏は二時間に亙る連続観測で、カラー像がω=156°W163°W170°W178°W187°Wで撮られている。タルシス山脈を含む夕端は真っ白だが、明るい斑點のオリュムプス・モンスは少なくとも最初の二像では白くはなく、地肌を明るくしたような状態。オリュムプス・モンスの南西の領域の明暗は面白い。最後の二像は少し白くなったか、という感じ。プレグラに繋がるプロポンティスIはどの像にも濃く、最後の二像ではエリュシウムが全体ディスクの中に入り、アエテリアの暗斑の北部も明確。エリュシウムも然程白くはないが、明るい方である。プレグラの外側(東側)もやや明るくて、プロポンティスIを取り囲むような感じ。ケブレニアは然程明るくない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/FMl06Apr14.jpg

 

   PGc氏はω=161°Wで撮っている(IR742ではω=163°W)ので、FMl氏像の第二像に近いはず。オリュムプス・モンスは可成り白く、矢張り西側山腹に雲が貯まっている。オリュムプス・モンスは然し、IR像では金環として見える。案外IRでは透けて衝効果が現れるのかも知れない。ι=3°。アスクラエウス・モンスの雲は更に白い。パウォニス・モンスの雲とは切れている。北のアルバの白斑が見える。プロポンティスIは形好く(IRでは更に詳しい)、プレグラやアエテリアの暗斑も見えていて、エリュシウムは完全にディスク内である。ただし然程の明るさはない。オリュムピアは明白。南ではマレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの接合部分が見えている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/PGc06Apr14.jpg

 

   BCr氏はω=287°W302°Wの二セットを獲ている。RGBでは二像とも、ヘッラスは青味がかった白。夕端のエリュシウムも青味がかる。但し北極冠のコアは白である。暗色模様は褐色系で、中央のシュルティス・マイヨルの北部など青味が見られない。ω=287°Wでは夕端のエリュシウム内部が好く分離されている。エリュシウムから西に出る霧の幅広くシュルティス・マイヨルの方に向かう様は好く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/BCr06Apr14.jpg

 

   スティーファン・ブダ(SBd)氏の画像はω=303°Wでしっかり安定している。ヘッラスの内部で輝きを落とすところの様子は好く描冩されている。シュルティス・マイヨル(ホイヘンスや北端)からシヌス・サバエウス(東部の北岸など)に掛けての詳細も好い。シヌス・メリディアニは出て來ていて アリュンの爪は分かれている。Bではエリュシウム近傍の霧は好く出ているが、所謂赤道帶霧はよわまっているかもしれない。北極冠の形にも注目。オリュムピアは東に沈むところ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/SBd06Apr14.jpg

 

   MKd氏の像はω=052°Wの單像。全體に亙って可成りの詳細があまり呆けることなく出ている良像である。但し、色彩は好いとは思えない。シヌス・メリディアニが夕端だが、爪は出ているし、 マルガリティフェル・シヌスの北側が 鳥の嘴に挟まれたような形も出ており、更にエオス(+エレクトラ、オレステス)からアウロラエ・シヌス、ティトニウス・ラクスの西端まで好く描冩されている。その先は朝霧である。ソリス・ラクスは不完全であるが、アウレア・ケルソの邊りの様子は完璧である。マレ・エリュトゥラエウムの邊りの濃淡もこんなものであろう。朝霧に関しては アスクラエウス・モンスとパウォニス・モンスの山頂の飛び出しは褐色で明確。オリュムプス・モンスも這入って來たようである。北半球では淡いマレ・アキダリウムが好く描冩され、西北角の暗部は濃い。ニロケラスの鋏も明確である。この圖を見る限り、テュミアマタから西へ走る赤道沿いの霧の帶はマレ・アキダリウムの南部を掠めて朝霧に繋がっているように見える。北極冠もカスマ・ボレアレを示している。尚、南端には白い霧がでている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/MKd06Apr14.jpg

 

   ヘスス・サンチェス(JSc)の観測はω=083°Wで、二像からなる。一方は褐色系、他方は青色系。細かい斑點は少し流れながらも好く出ているが、暗色模様の地が潰れているところがある(特に青色系)。マレ・アキダリウムは夕方だが弱い感じ。朝霧は濃いがタルシスの描冩は無いに等しい。北極冠周邊は複雜で、チェックの要あり。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/JSc06Apr14.jpg

 

 

7 April (λ=113°Ls

   Km氏がω=282°Wで撮像。シュルティス・マイヨル中心で、夕端のエリュシウム白雲からの霧がシュルティス・マイヨルに向かっているが、L+カラー像でもB像でも少し不鮮明。但し、カラーではシュルティス・マイヨル北部は紫系の暗部。ヘッラスは些し青味がかっている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/Km07Apr14.jpg

 

   Kn氏がω=290°W300°Wでカラー・スケッチ。前者ではシヌス・メリディアニが未だ円内になく、後者には既に見えている。最も濃いシュルティス・マイヨルでも淡く描かれているが、形はしっかりしている。カシウスは捉えられている。ヘッラスも明るい方ではない。但し、前者ではエリュシウムが夕縁で白く明るく、霧がここからシュルティス・マイヨルの方に揚がっていると思う。北極冠周邊も白いが、形は捉えられていない様だ。シーイングはぎりぎりの處であろう。なお、Observing Notesの一部は#422LtE (13 April 2014 at 00:02 JST受付のWeb)に出ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/Kn07Apr14.jpg

 

   Is氏のヴィデオから起こした像は、ω=298°W307°W。全体褐色気味。ヘッラスも白くは浮き上がってこない。後者ではアエリアがやや明るい様子。シヌス・メリディアニは見えている。北極冠は暗帯で囲まれている。北極冠の夕方方向にオリュムピアが幽かに見える。                               

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/Is07Apr14.jpg

 

   Mo氏はω=304°W309°Wの二セット。両方ともシヌス・メリディアニをディスクの中に入れている。ホイヘンスがやっと見える程度のシーイングのようで、ヘッラスも然程明るくはない。シュルティス・マイヨルの東半分は夕霧の影響を受けている様子。前者ではマレ・キムメリウムが若干東端近くに殘り、ヘスペリアの切れ目も些し残っている。マレ・アキダリウムの西端から這入ってくる様子は穏やかな感じ。朝霧が未だ擴がっていない所爲か。北極冠は複雑な形であるが明確ではない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/Mo07Apr14.jpg

 

   サデグ・ゴミザデ(SGh)氏はω=050°Wで單像。SGh氏の像の中でも比較的良像で、沈むシヌス・メリディアニから朝方のアガトダエモン邊りまで暗色模様の特徴を出している。ティトニウスあたりまでは朝霧が占領している。マレ・アキダリウムやニロケラス、ヒュペルボレウス・ラクスも主な點は出ている。北極冠が白くないのは構わないとして、些し赤味を帯びるのは解せない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/SGh07Apr14.jpg

 

   DTy氏はω=055°W (22:22GMT)で撮った。カラー單像である。暗色模様は肉太で、黒ずんだ感じであるが、特徴を出している。シヌス・メリディアニは夕端で、その西方はティトニウス・ラクスまでみえている。その先は明るい朝霧。ソリス・ラクスは明確でなく、アウレア・ケルソ邊りもキレが悪い。マレ・アキダリウムの南半分は誠に淡い。ニロケラスも然り。なお、テムペの核はやや明るい。但しヒュペルボレウス・ラクスは濃く、北極冠の切れ込みも見えている。朝霧の中ではアスクラエウス・モンスの褐色斑點などは見えている。オリュムプス・モンスも這入ってきている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/DTy07Apr14.jpg

 

   クリストフ・ペリエ(CPl)氏はω=075°W083°W090°Wで三セットを撮った。ω=075°WではCPl自身がマルガリティフェル・シヌスの北端の直ぐ東側のターミネータに白雲の膨らみがあることを指摘している。夕霧はこれとは別にマレ・アキダリウムの南部の東側にも見えている。暗色模様はアウロラエ・シヌスやティトニウス・ラクス、ソリス・ラクスなど好く見えていて、アウレア・ケルソも出ている。マレ・アキダリウムの南部は極端に淡い。マレ・アキダリウムの西北端は濃く、ヒュペルボレウス・ラクスは更に濃く、割れ目(カスマ・ボレアレ)のある北極冠を抱いている。朝霧や朝雲の様子も好く捉えていて、アスクラエウス・モンスは褐色部分が可成り大きく、雲を挾んでパウォニス・モンスがその西南にあり、アルシア・モンスも褐色の拡がりを見せていると思う。アスクラエウス雲もまだ十分に存在し、オリュムプス・モンスの所在も察しがつく。ω=083°Wでもオクシア・パルスの東側の縁からの雲の「ふくらみ」は未だ見えている。ソリス・ラクスはだいぶん這入ってきた。ポエニキス・ラクスが孤立點として見える。アスクラエウス・モンスなどは斑點としては明確ではないが、アルシア・モンスまで褐色の擴がりを持っている。アスクラエウス雲の名残はアスクラエウス・モンスの西側に在り、一部濃い。オリュムプス・モンスの邊りは入り乱れて複雑だが、B光で見ると暗い穴に見える。ω=090°Wでは、例の膨らみは大半が向こう側に回ったようである。マレ・アキダリウムも夕霧に包まれようとしている。アスクラエウス・モンスはぼんやりしてきたが附随する雲が明白、オリュムプス・モンスはBで暗斑として見えるところで、それはRGBでも確認出來る。殘念ながら衝に近いが衝効果は霧に遮られているようで、もう少し昼に近づく時が見たかった。こういう状況を、RGB像で見ると実に興味深い。アルバは三葉とも霧で明るく、後者二葉で些し強くなる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140407/CPl07Apr14.jpg

 

 

8 April (λ=113°~114°Ls, δ=15.1")  この日 8 April at 21hGMTに対衝となった。

   Kn氏は衝日三時間半に亙って、六葉、ω=260°W271°W281°W290°W300°W、および310°Wで観測した。シュルティス・マイヨルが朝方から夕方に動く構図である。ω=290°Wではシヌス・メリディアニがディスク内に入って居る。シュルティス・マイヨルも強く濃く描かないが、これが好ましい方法だと思う。ccd慣れした者にはシュルティス・マイヨルなど濃く処理する人達が居るが、矢張り眼視観測の經験がないからであろう。模様はシーイングの並みの時でもレンズ効果によって濃く見える時があるが、平均すれば然程ではない。ω=260°Wではエリュシウムの雲が明るく描かれるが、アエテリアの暗斑との対照が綺麗に描冩されている。この雲から淡い霧状の流れがシュルティス・マイヨルの方に向かっている。ω=271°Wでは、シュルティス・マイヨルの西側に抜けている。この帶の北側は些し赤味を帯びている。この赤味はω=300°W邊りでは主役である。ω=290°Wでエリュシウムの雲の沈むところは絶妙である。なお、ヘッラスは後半可成り平凡になる。Observing Notesの一部(ω=260°W271°W)#422LtE (13 April 2014 at 00:02 JST受付のWeb)に出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/Kn08Apr14.jpg

 

   我々のもう一人の筆者村上昌己(Mk)は昨年(2013)11 Octoberに初観測を行ったが、視直徑とシーイングの所爲で不如意であった。この一月にも数回、三月には一回試みたが、いずれも観測とは言えないものとなった。四月の對衝を待って、8Aprilに偶然Kn氏と同じペースで行って、ω=260°W270°W279°Wと刻んだが、ほぼ、次のようなことを掴んだだけであった:青白いヘッラスは確認、シュルティス・マイヨルが午前側から廻って來たこと、エリュシウムは午後側で明るさが出てくること。アエリアも明るい。ウトピアの邊りは濃度は低いこと。北極冠は判るが、小さい。

 

   AWs氏の像は、處理の違う像が並んでいるようだ。ω=272°W274°W 詳細は後者の方が好いようだが、北極冠の砂塵の色は前者の方が適當かと思う。北極冠の仔細は後者か。リマ・ボレアリスの外側の詳細も後者。ヘッラスの感じは前者が良い。シュルティス・マイヨルの北部やホイヘンスなどの詳細は後者、然し、これは色彩や處理のものだとは違うだろう。エリュシウムの内部の雲と地肌の色彩の違いは両者で見分けられるが、エリュシウム・モンスの雲は前者が好い。とにかくこの観測者の像には随一の處がある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/AWs08Apr14.jpg

 

  西田昭徳 (Ns)氏は筆者の一人(Mn)の半ば付き添いで、足羽山の天文台で31 MarchからMnがドーム操作やペンタプリズム装着などで世話になっているが、折角だからccd像を撮ってはどうかということで、この衝日にω=272°W286°W291°W308°Wで撮像した。Mnω=262°W282°W296°W306°Wで眼視観測を行った。時刻がバラバラなのは、Mnが体調の問題を抱えており、翌日以降一週間は休まなくてはならないので、前日、前々日との比較ということはあり得ないから、ccd装置の用意や着脱などを鑑みて、時刻をノンビリと設定した爲で、今後もこのようになる。この日の観測はMnω=262°Wが最初だが、概してシーイングは悪かった。この角度では勿論シュルティス・マイヨルが明瞭で、可成り明るいエリュシウムがアエテリアの暗斑と夕方に殘っていること、北極冠の外側にリマ・ボレアリスが見えていることなどが掴める程度は直ぐ確認できる。ヘッラスの形状はよく分からないが、Ns氏のω=272°Wではヘッラスの前方が滑らかでない様子が捉えられている。夕方のマレ・キムメリウムの北端のとんがり方も好く出ている。 Ns氏のω=291°W等ではホイヘンス・クレーターも明確でシュルティス・マイヨルの北部の写り方も好い。この望遠鏡(20cm ED F/12)1985年から使っているが、性能にはMnは満足している。眼視ではホイヘンスを見分けるほどのシーイングには出会わなかったが、ccd像のスタックに依って可成りの處まで写し込めることが判って喜んでいる。Ns氏の技術でもω=308°Wではシヌス・メリディアニの二股が実現できたが、眼視では無理というシーイングであった。なお、エリュシウムから湾曲してシュルティス・マイヨルに及ぶ霧の太帶はNs氏のB像で確認できる。肉眼でもω=296°Wで感じられた。然し、シーイングが整えば、AWs氏像の何割かはNs氏はこの20cmとスタッキングで再現できると思う。 Ns氏には冷却ccdの時代があったが、今は相當楽なようである。最後に一言:Ns氏のRGBはコントラストが高いと思うし、色合いもリアルではない。ω=272°Wは上のAWs氏の像と同じ角度なので比較してみると好い(必ずしもAWs氏像がどこも好いわけではないが)

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/Ns08Apr14.jpg

 

   Is氏の像はω=277°W287°W296°W。エリュシウムは沈んだ後。シュルティス・マイヨルとヘッラスの画像、ω=287°Wでは、北極冠が見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/Is08Apr14.jpg

 

   Mo氏はω=284°W289°W294°Wで、衝日にシュルティス・マイヨルがど真ん中の像を得た。最初のセットは微細に亙るわけではないが、ホイヘンスなども出て、全体像としては好い像である。ただし、後者二セットは 一寸過激である。ω=289°WR像は秀逸であるが、これに引き摺られたものか。エリュシウムは矢張り未だ可成り残しているがω=284°W像が好い。多分内部の雲のニュアンスが出ている。ヘッラスも最初の像で適当である。案外淡いと判断すべきであろう。Bで可成り強いから未だ雲が支配しているというべきだろう。後二者ではRG共に好いのだから、ヘッラス内部を狙って、もう少しマイルドに合成して欲しい。再処理を望む。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/Mo08Apr14.jpg

 

   Km氏はL-RGBω=300°Wで撮った。B像はω=298°Wである。カラー像は微細に関しては問題ないが、全體の色合いが、単色的である。ヘッラスは感じが良い。B像では夕方の霧がエリュシウムから南に揚がってシュルティス・マイヨルに落ちる様子が些し殘っている。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/Km08Apr14.jpg

 

MKd氏の像はω=021°Wで、大きいから暈けて見えるが、微細はなかなか見えている。マルガリティフェル・シヌスの北部が好く、マレ・アキダリウムの淡いのも描冩されている。北極冠ではカスマ・ボレアレが明確。夕端にはシュルティス・マイヨルから出た霧が殘っている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/MKd08Apr14.jpg

 

   DTy氏の像はω=043°W046°W060°Wの三カラー像の並列。どの像にも朝霧の中にアスクラエウス・モンスの褐色點が見えているが、ω=060°Wではパウォニス・モンスも見え 、アスクラエウス雲が濃い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/DTy08Apr14.jpg

 

   ピーター・エドワーズ(PEd)氏の像はω=065°Wの單像。シヌス・メリディアニが半分沈んだところで、朝方の霧の中にはタルシスが淡く出ている。暗色模様は強く描冩。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/PEd08Apr14.jpg

 

   CPl氏像は ω=070°Wの組畫像 マルガリティフェル・シヌスから西の微細は大抵出ている。夕端にはシヌス・メリディアニが些し見えるがその北は夕霧。一方朝霧は強く、その中にタルシスの山頂も見られる。特にオリュムプス・モンスはどの像でもピンク-褐色で大きく、GBでは大きな暗斑。特に ω=079°WB像は素晴らしく、オリュムプス・モンスやアルシア台地を暗く示すだけでなく、この邊りの地勢的な気象を語っているだろうと思う。アスクラエウス雲は ω=070°Wで濃いが、後の像はこれの變化を示している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140408/CPl08Apr14.jpg

 

 

9 April (λ=114°Ls

   ジャン=ジャック・プーポー(JPp)氏はω=083°Wで RGBR, Bの提供。 ソリス・ラクス南中だが、暗色模様の密度が足りない感じ。夕端から霧が太く朝方に流れているが、朝方の詳細はない。北極冠も複雑さは判るが肉付きが足りない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/JPp09Apr14.jpg

 

   XDp氏が ω=083°W098°Wで撮像。前者はJPp氏と同じ角度だが、朝霧の中にオリュムプス・モンスの痕跡が明瞭である。これはBでも言える。後者ではアスクラエウス・モンスの西壁に濃い雲片が見える。一時間間隔は長すぎる。40分ごとに三回撮った方が好い。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/XDp09Apr14.jpg

 

   EMr氏が ω=129°Wで一セット。夕霧が濃いが、これはタルシス山系の雲と離れている。更に離れてオリュムプス・モンスの西側雲塊が中央附近に見える。Rではリング状。アルバが可成り大きく白い。多分 Gの功績で 霧領域から離れた地肌の褐色系色の變化が好く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/EMr09Apr14.jpg

 

   Mkは前日に引き続いて、ω=262°W271°Wで観測を試みた。然し、矢張りシーイングが充分ではなかった。結局、視直径は今期最大に近いにも拘わらず、結局シーイングが悪く、細部は見えてこなかったわけである。

 

   Mo氏がω=274°W279°W284°Wで撮像。シュルティス・マイヨルがCMを通過するが、三セットで力作である。ω=274°Wでは、エリュシウム内の雲と地肌が辛うじて区別でき(特にRGB)、エリュシウムの未だ縁雲がある。Rではアエテリアの暗斑の南側の二股が見える。ヘッラスとシュルティス・マイヨルの間に、濃淡の繰り返される處があるのは面白い。なお、森田さん、ヘッラスの縁廻りのい縁飾りの原因は何ですか?

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/Mo09Apr14.jpg

 

   Kn氏が ω=280°Wでカラースケッチ。 久々に好いシーイングだったようで、中央のヘッラスやシュルティス・マイヨルの他、西側のシヌス・サバエウスや東のヘスペリアも捉えている。ウトピアの方も描き込まれている。ヘッラスも内部構造が在る模様。北極冠も複雜で、リマ・ボレアリスを挾んでオリュムピアの殘りも見えている。リマ・ボレアリスの南西の外側は些し淡く描かれる。カシウスに沿う西側はやや白い。エリュシウムの雲は夕端。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/Kn09Apr14.jpg

 

   Km氏がω=281°Wで撮像。ヘッラス内の内部濃淡が出ている。ホイヘンスが好く見える。確かにウトピアの西岸は些し明るい筋になっているようだ。リマ・ボレアリス の南西は些し淡く段になっている。オリュムピアの尻尾は複雜で、更に長く伸びている。このカラー像は少しブレがあるが、Km氏の中でも秀作になるのではないか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/Km09Apr14.jpg

 

   マーチン・ルウィス(MLw)氏の像はω=046°W。未だアリュンの爪を見せるシヌス・メリディアニが残り、ソリス・ラクスが這入ったところだが、暗色模様全体申し分の無い描冩である。マレ・アキダリウムは淡い姿がニロケラスも含めて良く描冩されている。濃いヒュペルボレウス・ラクスとは二本線で繋がっている。北極冠にはカスマ・ボレアレが見える。朝霧(白くないが)のなかにはアスクラエウス・モンスと大きなオリュムプス・モンスが幽かに見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/MLw09Apr14.jpg

 

   クリス・スメト(KSm)氏がω=047°Wでカラースケッチ: シヌス・メリディアニが夕端近くで、マルガリティフェル・シヌスから離れて居る。マレ・アキダリウムは中央だが淡くて全体像が捉えられなかったか、些し北部が異様である。濃いヒュペルボレウス・ラクスの認識は在るようだが、位置がずれているかも知れない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/KSm09Apr14.jpg

 

 

     10 April (λ=114°~115°Ls)

  LAt氏のω=062°Wの像。同じ画像が三様に示されている。後の二葉はエンボス効果が出ていて、それが何さというところである。第一葉が、ノーマルで色は冴えないが、詳細は可成りのものである。ソリス・ラクスからアウレア・ケルソ、アガトダエモンの邊りに注目。イウエンタエ・フォンスは久々に濃斑點として出ている。ただ、朝霧の中にタルシス山系やオリュムプス・モンスが在るはずだが、辿るのが難しいのは何故か(實際には探すとオリュムプス・モンスは出ている)。ティトニウス・ラクスの中には朝霧が入り込んで居るように見える。夕霧がマルガリティフェル・シヌスとマレ・アキダリウムの東岸を境にして円く見えるのは、不思議。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/LAt10Apr14.jpg

 

   XDp氏の18cmニュートンに依るセットはω=072°Wで撮られた。そこそこの画像で、朝霧の外にアルシア・モンス邊りの地肌が出ている様に見え、朝霧の中のオリュムプス・モンスも見えている。北極冠内にカスマ・ボレアレが見えるのは感心。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/XDp10Apr14.jpg

 

   FMl氏のカラー像が四點並ぶ。ω=116°W124°W131°W139°Wで撮られている。時間にして一時間半ぐらい。 オリュムプス・モンスの南中を狙った様だが、西山腹の雲がやや見えるだけで、白雲とも言えないし、衝効果も見られない。 最初の像にソリス・ラクスが見られるが、エリュシウムが近づいても暗色模様は冴えない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/FMl10Apr14.jpg

 

   ピーター・ゴルチンスキー(PGc)氏の画像はω=134°WRGBの合成像とω=136°WIR742像。オリュムプス・モンスの西山腹の雲は明らかだが、R IRでは光輪が見え、衝効果もある如し。夕縁近くには霧は濃く綺麗である。タルシス山系は西側に雲が見え、特にアスクラエウス・モンス近傍では強い。アルシアの地肌も見える。アルバも雲でやや白い(B)。夕端では、ソリス・ラクス、南ではマレ・シレヌムが見え、朝方ではプロポンティスIが濃い。オリュムピアは昇りつつあるが、北極冠との間のリマは濃い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/PGc10Apr14.jpg

 

   Mo氏はω=264°W268°W274°Wの三組。シーイングの所爲で、エリュシウム内の色分けが出來るかどうかの瀬戸際だが、雲の立ち方は依然保っている。ただ、そこから南への流れやシュルティス・マイヨルを越えての分布などは、ω=264°WB像で漸く見えるか、と言ったところ。シュルティス・マイヨルでもホイヘンスが見えるかどうか。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/Mo10Apr14.jpg

 

   AWs氏の画像はω=291°Wのカラー単独像。朝縁、夕縁の處理は些し感心しないが、シュルティス・マイヨルの仔細やボレオシュルティスの描冩は高水準。オリュムピアの尻尾が二つに分裂しているところや、北極冠の様子は注目点。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140410/AWs10Apr14.jpg

 

 

11 April (λ=115°Ls)

   Km氏はω=256°Wで撮像。這入ってきた蒼白いヘッラスとは対照的に南アウソニアの沙漠色は見物である。エリュシウム内は色分けが出來るようだが、雲は強く出ていない。アエテリアの暗斑の南部の二股は見える。オリュムピアが直線状に矢鱈長い。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140411/Km11Apr14.jpg

 

   AWs氏の像はω=259°Wのカラー単独像。 驚くのはマレ・キムメリウムが可成り夕縁に近いのに蟻ンコの眼(ハーシェル・クレータ)が見えること。シュルティス・マイヨルも朝方なのに可成り詳細が出ている。エリュシウムのアエテリア暗斑に接する境の色が赤味を帯びて見えるが、エリュシウム・モンスに関わる雲は餘り強くない。 ウトピアの南端はとんがっては居ないこと(これぞフラクタル)、オリュムピアのしっぽの邊りの詳細、北極冠の形など注目点が多い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140411/AWs11Apr14.jpg

 

  DTy氏の單像はω=027°W。東端のシヌス・サバエウス西半分、シヌス・メリディアニ(アリュンの爪)から西端のアガトダエモンまで、すこし暈けているが、そつなく詳細が出ている。 マレ・アキダリウムは南中だが、北西端を除いて淡い。ヒュペルボレウス・ラクスは紺色系で濃い。 東端にはシュルティス・マイヨルが沈んだ後の霧が固まっており、西端には朝霧が濃い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140411/DTy11Apr14.jpg

 

 

12 April (λ=115°~116°Ls)

   EMr氏のセットはω=093°WBに詳しい霧の分布が出ているので、それを反映して、RGB像も霧だらけで、リアルな感じがする。暗色模様はマレ・アキダリウムが夕方に寝ころんで、ソリス・ラクスも夕方だが、ソリス・ラクスの南には霧が見える。マレ・アキダリウムの南部も夕霧に覆われ、ティトニウス・ラクスも曇っている。面白いのは、アスクラエウス・モンスの頂上付近やオリュムプス・モンスの廣い裾野は大きく晴れている様で、褐色の部分が露呈している。このあたりは、RでもGでもBでも面白い。また、アルシア・モンスの高台は雲が切れているようだ。オリュムプス・モンスの頂上附近はRで小さなリング状に見える。なお、位相が換わって、アスクラエウス雲は可成り殘って見えている。アルバは白い。北極冠の縁は可成り込み入っている。オリュムピアが一寸覗いているか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/EMr12Apr14.jpg

 

   ドン・ベーツ(DBt)氏の像はω=108°W。矢張り、雲が多いという感じで、オリュムプス・モンスの独特な様子はRGBで好く見える。オリュムピアは可成り出てきた。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/DBt12Apr14.jpg

 

   Km氏がω=252°Wで撮像。ヘッラスが這入ってきたところであるが、先行する南アウソニアは砂色。夕方のマレ・キムメリウムの描冩は優れている。エリュシウムも内部が色分け出來る。ただ、エリュシウム・モンスの雲は弱くなったか。前日のω=256°Wの像と同じく、オリュムピアが直線状で長く見える。ウトピアも淡いと言える。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/Km12Apr14.jpg

 

   MKd氏の像はω=343°Wで、シヌス・サバエウスがCMにある。ヘッラスは夕縁で真っ白。夕霧が夕方のシュルティス・マイヨルに斜めに食い込んでいる。その部分は蒼色。ホイヘンスが見えるのに対して、マレ・セルペンティスは存在が薄い。朝方ではマレ・アキダリウムが殆ど霧に覆われているのだが、一部南北に霽れているような色合いの處があるが、この部分はBで些し暗く見える處であろう。ヒュペルボレウス・ラクスも未だ 横向きだが、霧に覆われて淡く見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/MKd12Apr14.jpg

 

   SGh氏の像はω=354°Wの單像で、シュルティス・マイヨルが夕縁に寄っていて、ヘッラスは殆ど見えない角度である。その分、マレ・アキダリウムが中に這入っているが、全體に暗色模様が強く出て、霧などの描写が度外視されている。詳細は可成り出ているので、些しマイルドに処理した方がいいでしょう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/SGh12Apr14.jpg

 

   JSb氏の像はω=019°Wで、マレ・アキダリウムが南中前。ブランガエナや北極冠内のカスマ・ボレアレなど微細が出ているのだが、特に右半分が引っ掻いたような筋が幾つも見えるのは解せない。オクシア・パルスなども好い形をしているので勿体ない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140412/JSb12Apr14.jpg

 

   

13 April (λ=116°Ls)

   チャルレス・トリアナ (CTr)氏はω=083°W096°W112°Wのカラー像を並べている。 興味あるのは、矢張り、露呈し始めたオリュムプス・モンスの裾野の朝方の變化で、三葉で追っている。ω=083°Wではアスクラエウス雲が殘っているが、ω=112°Wでは消えている。アルシア台丘は三葉とも出ていると思う。暗色模様の描冩も優れていて、クリュセ南岸のリアス式微細模様はω=083°Wで夕方にも拘わらず、全部見せており、ソリス・ラクスとアウレア・ケルソ邊りも好く描冩されている。アガトダエモンからティトニウス・ラクス邊りもガスって居るが、好い眺めである。ニロケラスの描冩も好い。北極冠もカスマ・ボレアレを見せていて、オリュムピアの右側に昇ってくるところも、上手く追っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/CTr13Apr14.jpg

 

   MVl氏はセットでω=207°W217°W226°W235°W238°W241°Wと撮っている。エリュシウムの南中から始まるが、アエテリア暗斑沿いの赤い筋(地肌)は見えるものの ω=235°Wまではエリュシウムの雲は強く現れていない。これはこの期の成果である。ターミネータが右側に移ってからのシュルティス・マイヨルの追跡も興味深い。マレ・キムメリウムも蟻の目(ハーシェル・クレーター)も含めて好く出ているし、ω=238°W邊りでのオリュムピアの描冩も好い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/MVl13Apr14.jpg

 

   Kn氏はω=220°W230°Wでカラースケッチを行った。シュルティス・マイヨルが空色で出てくるところと、エリュシウムの南中を捉えた。オリュムピアも見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/Kn13Apr14.jpg

 

   BCr氏もω=223°W243°Wで二セットを撮った。前者ではエリュシウム内部西端の赤味の地肌と雲が分離され、エリュシウム雲からの霧の尻尾は太い弧を描いて朝方のシュルティス・マイヨルに向かっている。これはω=243°Wでも同じである。またエリュシウム雲には右側に蔭が無いだろうか? アエテリアの暗斑の形も出ている。蟻ンコの眼(ハーシェル・クレーター)も見える。オリュムピアの描冩も詳しい。なお、エリュシウム雲内のエリュシウム・モンスの雲も見えるような感じがある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/BCr13Apr14.jpg

 

 

   MJs氏もω=224°W236°W249°W257°Wと見事な刻みで追っている。シュルティス・マイヨルは既にディスク内に這入ってからだが、エリュシウムの追跡は美事。既に最初からCM附近で内部の色分けとエリュシウム・モンスの雲が分離されていて、ω=257°Wでも美事である。エリュシウム雲には蔭が出來ている。エリュシウムからシュルティス・マイヨルへの太い霧の弧は好く見える。アエテリア暗斑はω=236°Wで鮮明。最後の像では朝なのにホイヘンスも見えるし、 夕方のマレ・キムメリウムも細かい。オリュムピアの詳細も好い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/MJs13Apr14.jpg

 

   SBd氏はω=240°Wの組写真のみ。無理していない大きな画像で、マレ・キムメリウムの描冩など北西端に些し不満が残るだけ。エリュシウム内の描冩も好く、Bではエリュシウムからシュルティス・マイヨルに向かう太い帶が見えている。南端では南アウソニアが沙漠色。北極冠の割れ目、オリュムピアの詳細など。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/SBd13Apr14.jpg

 

   CPl氏の画像はω=022°W034°WRGBセットを二組、その他Rω=006°WIR685ω=027°Wがある。ω=022°WRGBは夕方のアリュンの爪の西側が好く捉えられ、ブランガエナも満点。マルガリティフェル・シヌスの北部は縁取りも好く、オクシア・パルスから西方の詳細は見事で、朝方のアウレア・ケルソも見える。マレ・アキダリウムが南中で南側の淡化の様子もはっきりしている。濃い西北部がイアクサルテスを含む二本の運河でこれも非常に濃いヒュペルボレウス・ラクスに繋がり、北極冠のカスマ・ボレアレ等に導く。ω=034°WRGB像は些し優しくなっているが過不足はない。朝のターミネーターに斑點が出てきている。Gではテムペに円い明部がある。ω=021°WBではその圓形を北から囲むように濃い模様がカーヴを描いている。その暗部の左側はマレ・アキダリウムの西北部の暗部が担う。尚、Kn氏はLtEの中でω=021°WB像に渦巻き型の雲が冩っているのではないかという指摘をしているが、小さいものは一寸判り難く、この場合、發展も見られないようである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140413/CPl13Apr14.jpg

 

 

   14 April (λ=116°~117°Ls) 火星はこの日12:54GMTに最接近、δ=15.16"

   デーヴィッド・アージッチ(DAr)氏はω=032°Wのカラー單像。マレ・アキダリウム南中で、赤道から南半球の暗色模様も好く捉えられているのだが、習熟度が振り出しに戻っているようで、慎重ではない。北極冠もくすんだ色で、價値半減。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/DAr14Apr14.jpg

 

   XDp氏の像はω=048°WでのRVB像とRGB像のセット。シヌス・メリディアニが夕端近く、朝方はソリス・ラクスの這入ってくるところで、マレ・アキダリウムも含めて、暗色模様の描冩は標準以上。ターミネータ側の朝霧は綺麗で、タルシス三山の褐色斑點が各波長で出ている。マレ・アキダリウムに接するテムペの一部がどの波長でも明るい。北極冠のカスマ・ボレアレは暗示されている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/XDp14Apr14.jpg

 

   デミアン・ピーチ(DPc)氏がバルバドスで撮った会心の自信作といわれる画像群で、ω=062°W071°W073°W083°Wのカラー画像とB(ω=076°W086°W098°W)ω=083°Wの像が最初配信された像で、最も詳細に富むかと思われる。暗色模様はどれも黒っぽく、黒い斑点状に分解している。ソリス・ラクスをCM近くで狙っていると思われるが、些し朝霧の枝が掛かっている。タウマジアの境界が黒い筋で出來あがっていて、アウレア・ケルソの邊りは2003年の大接近の折り拝顔した様子が再現されている。ティトニウス・ラクスも霧を抱き込んで、小さい黒点で出来上がっており、イウエンタエ・フォンスも真っ黒な長円斑點で、アウロラエ・シヌスと連結する暗線が霧を含んでいるというのは驚き。クリュセ南端のリアス構造の斑點も真っ黒。但し、アスクラエウス・モンスとパウォニス・モンスの山頂は濃褐色に小さく出ており、アルシア・モンスの山丘も褐色、オリュムプス・モンスの山頂は白く、褐色のリングが取り巻いている。アスクラエウス雲はまだ出ている。 マレ・アキダリウムは南部が些し霧に覆われて居るようだが、マレ・アキダリウム自体は晴れたまま東に隠れそうな様子。 北極冠も白色を地盤として斑がある。カスマ・ボレアレも真っ黒な直線状。ヒュペルボレウス・ラクス内には極地の砂塵があるはずだが、茶系統の部分はなく、白雲片ないし雪片で、例えばオリュムピアに先立つ白斑點など(少なくとも五個出ている)も出来上がっている感じ。ここの詳細は、多分、既に北極冠の極小期にあるので、30 March 1997(λ=097°Ls)ω=105°WHSTの像の北極地と然程違わない筈と思うが、オリュムピア先行の雪片の様子は一見単純化が拙く、HST像の細部を暗示していないと感じてしまう(つまり恰も詳細が出ているように強調されているが、通常ならHSTに比べて暈けなければならないと思う)。以下のNoteの比較影像を參照されたい。霧状のものもω=086°WでのB像で見る限り、滑らかさは無く、霧か雲の細い棒状のものが並んでいる感じで、向きは東西のもあれば、南北のものもあり、幾何的には交差しそうな状態の處もある。ただし、そういうところでは棒状のものが斑點で出來ているかも知れない。先のHSTの像を見ると、そういう傾向が無いことはないが、DPc氏の今回の像は強調處理が出ていることは否めない。B像もHST像に比べると マレ・アキダリウムからルナエ・ラクスに掛けての暗部描写が浅いように思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/DPc14Apr14.jpg

 

  Editorial Note:  DPc氏の14 April像の北極冠部を1997年のHST像の北極冠部と比べる(ωが若干違う)見掛けの詳細とは何かを暗示する。この比較から判るように、ちょっと前者の例えばオリュムピアの先行部が後者像の詳細を暗示しているとは思えない。

 


 

   EMr氏のω=073°Wは角度が好く、朝霧の中にアルシア・モンスの台地が褐色系で明確で、これだけはっきり出ているのはDPc氏像が配信されるまで今期最初と思われた。オリュムプス・モンスもポーキングは明確。アスクラエウス雲も未だ濃い。この像は霧の描冩に過不足が無く、マレ・アキダリウムに先行する夕縁の霧は膨らみを感じさせるほど稠密だが、斑點系の内部構造も見える。南端辺にも朝霧に繋がる霧が出ており、クラリタスにも霧。アルバは弱い。北極冠は白く、カスマ・ボレアレ等顕著。北極冠の西側ではオリュムピアが些し顔を出し、先行する雪片が二個程見えている。なお、暗色模様も好く出ていて、朝方ではアウレア・ケルソの邊りがRで捉えられている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/EMr14Apr14.jpg

 

   MJs氏がフル画像の連続観測を試み、ω=199°W 206°W214°W223°W232°W241°W 三時間に亙って追跡した。労作である。ω=199°Wでは夕端に寄ったオリュムプス・モンスの雲が明るい。但しエリュシウム・モンスの雲は不鮮明。ω=206°Wではエリュシウム・モンスの雲を小さく捕らえ(以後、徐々に明るくなる) アエテリア暗斑に接する境界の赤味の筋とも分離し、エリュシウム域から南に昇る霧の太い帶が、カーヴを描いて朝霧と合流するのが判る。ω=214°Wではシュルティス・マイヨルが蒼く出ている。この邊り、マレ・キムメリウムの蟻ンコの眼(ハーシェル・クレータ)が見えている。またω=232°Wも含めて扁平になった北極冠の南に横たわるオリュムピアのしっぽが興味深い。尚、このシリーズの優秀な點は、どのようにエリュシウム雲が明るくなって行くかを示している點である。オリュムプス・モンスはω=232°Wでリムの上にあるように見える。最早こちら側(p)には欠けはないので最終回答である。Bで見る限り、エリュシウムから西方の霧と夕端からの霧はΩ=190°W邊りで途切れているようだ。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/MJs14Apr14.jpg

 

   Ns氏の四月二回目の撮像で、ω=204°W216°W229°W244°W256°Wでの撮像である。上の MJs氏と同じような試みになったが Ns氏はこの望遠鏡での習熟度に積み重ねが無く、口徑ももともと小さいから解像度は落ちると思う。この日も8 April同様、筆者の一人(Mn)が間に入る観測で、Mnω=198°W207°W220°W234°W249°Wで眼視で観測した。最初のω=198°Wでは充分オリュムプス・モンスの雲が内側で明るい。必ずしも観測を40分ごとにしなかったのは、体調の都合で 翌日の観測はしないことに決めていて、比較ということが問題にならないからである。Mnは然しシーイングは感じ取れる立場で、この日は概してシーイングが悪く、ω=234°W (14:10GMT) 邊りで些し好いかな、と感じた程度である。Ns氏の像で解像力を見るには、マレ・キムメリウムの蟻ンコの足や眼(ハーシェル・クレータ)を調べれば好いが、比較的好いω=216°Wでもこれらは充分には確認出來ない。更にエリュシウム内部の色分けがどの像でも出來ていない。但し、Mnの観測ではエリュシウムに雲らしい明るさが出ていないし、MJs氏の像でもエリュシウム・モンスの雲がピンポイントで出ているに過ぎないから、シーイングの所爲で不利であろう。なお、ω=216°Wでのオリュムピアは尻尾の複雑さが暗示される。また、エリュシウムから伸びる霧の帶が シュルティス・マイヨルの方へ流れているのがBで確認出來る。なお、これはω=234°Wの眼視(Mn)でも確認出來ている。オリュムプス・モンスが夕方に没するのはNs氏のω=244°Wで明らかだが、その前のω=229°Wと時間差(一時間)が空きすぎたかも知れない。Mnω=234°Wでは大凡見えない状態であったMJs氏の像ではω=232°Wがリム上だから、その邊りであろう。なお、画面に這入ってくるシュルティス・マイヨルの蒼い色合いは肉眼でも確認出來る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/Ns14Apr14.jpg

 

   SBd氏はω=219°Wでワン・セットを撮像した。マイルドな仕上げで、綺麗。シュルティス・マイヨルがターミネータから這入ってきたところで、夕方ではオリュムプス・モンスの雲が白く抜け出て行く處である。中央付近でエリュシウム・モンスの雲が局在化しており、アエテリアの暗斑の東側の筋は赤味の明るさを示す。マレ・キムメリウムもハーシェルが一応見えている。オリュムピアはCM近くだが、可成り複雑な様子。なお、南端の方で南アウソニアが沙漠色で明るい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/SBd14Apr14.jpg

 

   Kn氏がω=220°Wでカラースケッチ。シュルティス・マイヨルは蒼く淡くディスクに這入って來ている。些し明るいエリュシウムがCM近く。南アウソニアは南端で赤味を帯びて描かれている。夕端はオリュムプス・モンスの雲の名残りがあり、北極冠の上にはオリュムピアが出ている。過不足のない観測だと思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/Kn14Apr14.jpg

 

   BCr氏のω=220°W231°Wccdセットが續く。どちらもエリュシウム・モンスの雲が見えるのみで、エリュシウム内の雲の支配は弱いと思う。Bでも小さい擴がり。RGBではアエテリアの暗斑(南部の二股は明確)に沿う赤味の筋が可成り明るい。マレ・キムメリウムのハーシェルなどは両者とも見せている。オリュムピアも複雑な様子が見て取れる。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/BCr14Apr14.jpg

 

  Is氏のVideo像からの合成像で、ω=221°W230°W241°W40分刻みの連續像。色は多彩ではないが、可成りの詳細を写し込んでおり、習熟度が上がったものか。筆者達のスケッチより数段上の出來である。最後のω=241°Wではマレ・キムメリウムの描冩も好く、エリュシウムもそこそこ、オリュムピアも複雑さを暗示している。シュルティス・マイヨルは少し蒼いか。ノドゥス・アルキオニウスは完璧。ヘッラスも這入って來ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/Is14Apr14.jpg

 

  MVl氏の像はω=221°W240°W243°W248°Wの組影像。矢張り、エリュシウムはω=221°Wでは、エリュシウム・モンスの雲が見えるだけで、赤味の筋が目立つ。B像でもエリュシウムは小さく弱い。その後、雲は些し膨らむようだが、然程ではない。 マレ・キムメリウムはどの画像でも充分に描冩されているし、オリュムピアの尻尾も追求されている。オリュムプス・モンスの雲が消えるのはω=243°Wで、これはNs氏のω=244°Wに対応するかと思う。なお、他にω=224°WIR像がある。RIRではプロポンティスIは内部構造を示す。なお、時刻の選び方は前日のωと対応するようにする方がよい。MVl氏の場合前日とはω=240°Wが前日のω=241°Wと比較できるぐらいである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/MVl14Apr14.jpg

 

   AWs氏はω=229°Wの單像。マレ・キムメリウムなどは可成りの微細を示す。エリュシウムでは赤味の筋が顕著で、モンスの雲は些し擴がっている様子。エリュシウムからの霧帶のシュルティス・マイヨルへの流れは確認出來る。凄いのはオリュムピアの描冩で可成り複雜だが、確固としている。北極冠も縁側に寝たカスマ・ボレアレも見える程。カシウスの後方も好く描冩されている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/AWs14Apr14.jpg

 

   Km氏は夜半過ぎの撮像で、ω=256°W。シュルティス・マイヨルが可成り這入ってから。エリュシウムの内部は色分けが出來ている。雲の部分は些し膨らんだ感じ。オリュムピアも好い。ヘッラスは蒼白く這入って來ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/Km14Apr14.jpg

 

   MKd氏は歐羅巴だから、ω=327°Wの観測で、白いヘッラスは夕縁に掛かっている。夕霧は夕方のシュルティス・マイヨルの東半分を侵している。ホイヘンスは見える。朝霧少々。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/MKd14Apr14.jpg

 

   DTy氏がω=330°W335°W338°W343°W350°W355°W359°W004°Wの八像を撮る。カラー像の集合で、成分は示されない。20:44GMTから23:01GMTまでだからさほどの幅は無いのだが、像が八像とも安定しているので、シヌス・サバエウスが見かけ上 どのように姿を変えるかは見ていて面白い。シヌス・サバエウスの東端は淡く、矢張りマレ・セルペンティスは淡化していると思う。これは自転するに従い、顕著に覗える。シュルティス・マイヨルと夕霧も追えるが、最終的に、シュルティス・マイヨルも殘っている。ヘッラスもω=004°Wで未だ見えている。マレ・アキダリウムは最初から見えていて、二時間では些し這入った程度。北極冠の輪郭の凹凸も二時間ではさほどの動きはない。像はアリュンの爪など先鋭的ではないのだが、面白いのはマレ・アキダリウムに先行する例の明帯の中に、前回CPl氏のPicでの画像やDPk氏の画像に見られた「ブリッヂ」がこの影像群のどれにも冩っていることである。これは今までわれわれが勝手に見逃していた斑點で、探せば以前の画像にも見つかると思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140414/DTy14Apr14.jpg

 

 

15 April (λ=117°Ls)

   DAr氏のω=022°Wでの單像。シヌス・メリディアニから西へアガトダエモンまで細かな斑點模様は過不足無く好く出ているが、暗色模様の色が違うような氣がする。東端にはシュルティス・マイヨルの残した雲、西端には朝霧が濃い。マレ・アキダリウムが南中で、様子を傳えている。イアクサルテスなどの二本線で濃いヒュペルボレウス・ラクスに繋がる。北極冠の割れ目も瞥見でき、砂塵混じりも判る。なお、前日採り上げたブリッヂも弱いが瞥見できる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/DAr15Apr14.jpg

 

   DPc氏がバルバドスでのω=070°WRGB像とω=082°WB像。前者はノーマルな處理で、優秀な画像。ソリス・ラクスやアウレア・ケルソ邊りの描冩が好く、イウエンタエ・フォンス附近の詳細も傑出している。また霧から出たアルシア・モンスの山丘を三次元的に描いた今期初の影像であろう。夕霧は未だテュミアマタの北に結集している。Bでは未だアスクラエウス雲が強く出ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/DPc15Apr14.jpg

 

   EMr氏のω=071°Wの組畫像が續く。RGB像で一等眼に着くのは、タルシス三山の内アルシア・モンスの丘台地が褐色系でクッキリ大きく出ていること。アスクラエウス雲を挾んでオリュムプス・モンスの火口周辺が矢張り褐色で雲から突き出ている。あと詳細模様は暈け気味だが、揃っていて、朝霧はソリス・ラクスの北側にも進入している。夕霧はリムに近いテュミアマタに固まっている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/EMr15Apr14.jpg

 

   MVl氏の像は、RGB, R, G, B, IRの組画像群で、でω=184°W189°W198°W208°W216°W218°W224°W と三時間弱七回観測が続く。但し14Aprの観測と比較するに、同じ角度での観測はない。ω=184°Wの像は重要でエリュシウム・モンスの雲が不明なこと、さらにオリュムプス・モンスの西側山腹の雲もG, B,を參照して考察が必要であろう。ω=184°Wから208°Wまでこの雲特有の構造を示しているようだ。エリュシウム・モンスの雲はω=216°Wぐらいから小さな白斑點になる。マレ・キムメリウムの詳細もω=208°Wぐらいからハーシェルが見え始める(これはシーイングの問題であろう)。アエテリアの暗斑はどの画像にも出ているが、エリュシウムから出る霧状帶は最初のω=184°Wから西のターミネーターに向かっている。朝方のしっかりした蒼いシュルティス・マイヨルはω=218°Wω=224°Wに見られ、画像としてもこの邊りは秀作である。北極冠とオリュムピアはω=208°W以降、注目される。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/MVl15Apr14.jpg

 

   MJs氏は ω=204°W218°W223°Wで組畫像を得た。矢張りどの像でもエリュシウム・モンスの雲は、小さな白斑點で大きく擴がることはない。一方アエテリアの暗斑の東側の沿うピンク色の筋は明確。マレ・キムメリウムもω=223°Wで見事に描冩、ヘスペリアとの関係もω=218°Wが好い。エリュシウムからシュルティス・マイヨルの方に発する霧はBに描かれている。オリュムピアの描冩も可成り明確。オリュムプス・モンスの雲はω=204°Wでは縁雲から離れているが、ω=218°Wではリムまで続いている。最後の像にはヘッラスが現れる気配。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/MJs15Apr14.jpg

 

   Km氏のω=230°Wの影像でもエリュシウム・モンス雲は些か暈けているが、点像に近い。 マレ・キムメリウムとヘスペリアの描冩も好い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/Km15Apr14.jpg

 

   イギリスに渡ってDTy氏の像は100°W以上も進んでいる。ω=326°Wに続いてω=329°W334°W337°W341°W343°Wの画像が表示される。見所は夕霧のシュルティス・マイヨルへの侵入であろう。2°W3°Wの違いで大きな變化があるはずは無いだろうが、DTy氏の処方はノーマルで安定していて、いろいろ参考になる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/DTy15Apr14.jpg

 

   PEd氏の影像はω=338°W342°Wの並び。夕縁近くのヘッラスに違いがある。但し夕霧のシュルティス・マイヨル上での拡がりには違いがない。シュルティス・マイヨルには、然し、ゴースト線が両側に出ているが、EN端にはウトピアのとんがりが綺麗に出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/PEd15Apr14.jpg

 

   KSm氏のカラースケッチはω=348°Wで。ヘッラスとシヌス・サバエウスの線に落差がある。北極冠の大きさはどうか。マレ・アキダリウムはもう少し内側に這入っているだろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/KSm15Apr14.jpg

 

   JSc氏の画像はω=355°W乃至357°Wのカラー畫像。北極冠も含めて、微細が見えているらしいが、些し甘い感じの画像。例の「ブリッヂ」は見えている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/JSc15Apr14.jpg

 

   MLw氏は大きいカラーの單畫像でω=357°W45cm反射で、微細が見え、處理も秀逸。シュルティス・マイヨルはリム近くで、夕霧がシュルティス・マイヨルの北側に斜めに這入っている。端にも拘わらずホイヘンスは見える。ヘッラスはリム上か。シヌス・サバエウスの描冩も詳しく、アリュンの西爪は二本に分かれる。その南端はマルガリティフェル・シヌスと細い線で繋がっている。ブランガエナはOK。マルガリティフェル・シヌスの北部は濃い境界線で挟まれている。オクシア・パルスも詳しい。そこから北へ延びる暗筋は茫洋としているが、その暈けた筋とマレ・アキダリウムの間の明帯にある「例のブリッヂ」は明確。朝霧の白さは餘り感じられない。マレ・アキダリウムは全貌が見え、その西北端の濃い部分と濃いヒュペルボレウス・ラクスは明確。北極冠の構造も判る。クリュセは案外薄暗いが、南端のリアス式の微細は明確である。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/MLw15Apr14.jpg

 

   DAr氏、本日二回目の観測。最初は前夜半(00:17GMT)に行われた(今回は23:51GMT) 今朝の描冩と然程変わらず、そのまま引用できると思う。ただ、今回はシュルティス・マイヨルが人工的なゴーストになって表れている様な感じ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140415/DAr15Apr14n.jpg

 


・・・・・・参考

この期間の現象の解説は

CMO/ISMO #395 (25 March 2012)の巻頭解説 「2011/2012年の火星(そのII )」 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/395_MNN.htm

も参考にされたい。

 

(村上 昌己/  )  


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