ISMO 2013/14 Mars Note (#04)

ω=170°Wω=180°Wの窓から見た

 λ=054°Ls(2012) λ=141°Ls(2014)に観測された北極冠形状の推移

 

南 政 次・村上昌己


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  既に、CMO#413ISMO 11/12 Mars Note (16)として、ω=160°W~ω=180°Wから見た季節λ=066°Lsからλ=082°Ls迄の間の北極冠の縮小状況をみた。特に、これは2012年観測で明らかになったのであるが、この窓はどのようにリマ・ボレアリスが出現するか美事に探査することが出來た。キーになったのはプエルト・リコのエフライン・モラレス(EMr)氏のω=173°Wの映像で、λ=069°Ls(11Feb 2012)の時點で、北極冠の多くの部分が些し高温と思われる黄塵に覆われ、後にオリュムピアとして分離するコーナーのみ純白で、中央や西側には亀裂を暗示させるように砂色の箇所があって、これが北極冠の分裂前の最終状態であるように思わせる(31cm SCT使用)。この圖は上のMarsNote (16)にはFig.1として大きく掲げてある。すぐ後のデミアン・ピーチ(DPc)氏の12March2012(λ=082°Ls)ω=178°Wの画像では すっかりリマ・ボレアリスが露わになり、EMr図の北極冠の西端部は既に溶けている事も明白である。この二つの圖の比較は11/12 Mars Note (16)Fig.4に示してあるが、今回も以下のFig.3の最下段でもう一度示している。

 

ところで、2012年の場合、大まかに言って、EMr氏のλ=069°Ls(11Feb 2012)に至るまではほぼ北極冠はこんもりと見えていたのであるが、しかし、些しさかのぼって7Jan2012(λ=054°Ls)のビル・フラナガン(WFl)氏のω=190°Wの画像では既にリマ・ボレアリスの前方の切れ目を透かして見せているので、シーイングと解像力が揃えば、λ=057°Ls以降でも割れ目は見えた可能性がある(という意味で、ここではFig.1としてピーター・ゴルチンスキー(PGc)氏のω=167°Wと一緒に並べて示した(この日PGc氏はR像をω=152°Wからω=170°W迄六葉拵えているが、ω=170°Wなどには朧気ながら、中間の筋が見えている)。


 

  一方、2014年の接近期には大勢としてはリマ・ボレアリスとオリュムピアの対峙が見える形で推移し、永久極冠の形に近づいていたので、Fig.2として代表的なイメージをほぼ同じ窓(ω=176°W~178°W)から得られたものを並べて示す。但し、最初の画像は2012年のDPc氏のλ=082°Lsの像である。以下、λ=106°Lsでのマノス・カドラシス(MKd)氏、λ=125°Lsのリシャルト・ボスマン(RBs)氏の画像、そしてλ=138°Lsのマーク・ジャスティス(MJs)氏の画像である(MJs氏は30cmニュートニアンを使っている)


 

 尚、ここのFig.3にはλ=082°Lsに至るまでの2012年の圖を同じ窓から見たものをλ=057°Lsからλ=082°Lsまで並べたものである。 なお、次のFig.4のシリーズは2014年に撮られたもので同じ窓からのものを同じ頻度で集めたもので当然上のFig.2の画像と重複する。再度繰り返すと、これらが示すことは、リマ・ボレアリスとオリュムピアの關係が持続するということで、最早永久極冠に近いと言うことである(昔は佐伯恆夫氏の本などではλ=145°Lsで北極冠が消滅するとあるが、そんなことはない)。なお、このFig.4のシリーズではギリシャのマノス・カルダシス(MKd)氏の画像が三葉入っているのは特筆することである。たぶんこれは偶然ではなく、この窓に注視したからであろう。Fig.3で寄与している観測者は、フレッド・ウィッレム(WFl)氏、森田 行雄(Mo)氏、阿久津富夫(Ak)氏、ショーン・ウォーカー(SWk)氏、そしてEMr氏とDPc氏である。一方、Fig.4に寄与した観測者は、Fig.2におなじい。

 


 

   Fig.4の中でMKd氏の活躍と裏腹なのはリシャルド・ボスマン(RBs)氏で、3May2014(λ=125°Ls)の画像を採り上げたが、かれは2014年中に五セットの観測しか提出していない。ω=176°Wはその一葉で、オリュムピアとその前方を魅力的に作像した。そこでFig.5としてMRO-MARCIからの画像を抽出し、これとRBs氏の画像と比較した。コロレフなどの描冩はMRO-MARCIには敵わない。

 


 

 

   最後に、今回取り上げた窓に関係なく、むしろ反対側でどのように見えるかをDPc28April2014(λ=123°Ls)の秀逸な画像三葉を並べて示し、これをFig.6とする。

 



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