2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#19

2015年三月と四月中旬までの火星観測(λ=300°Ls~325°Ls)

今接近の報告集計

CMO #433 (25 April 2015)

村上 昌己・南 政


・・・・・火星は三月には「うお座」を順行して太陽に近づいてゆき、月末には離角は19度と小さくなった。視直径はδ=4.2"から三月末には3.9"と四秒角を下回って観測期は最終盤である。季節はλ=300°Lsから月末には318°Lsと南極冠は消失の時期となり、南半球の黄雲発生の季節は続いていた。傾きφは南に大きく傾いていた26°Sから三月末には少し戻って21°Sとなった。位相角はι=18°からι=13°と欠けが小さくなっている。

 

・・・・・この期間には、観測報告は南アフリカのフォスター(CFs)氏からだけとなった。観測時刻も日没頃の薄明時となりR光とIR光の報告だけとなっている。四月に入っても報告があるが、もはや暗色模様の輪郭もはっきりしなくなっている。

 

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

       1 R + 8 IR Images  (5, 8, 12, 15, 16, 26 March; 6, 13 April 2015) 

                    36cm SCT @f/33, f/27 with an ASI 120MM

 

・・・・・次にフォスター氏の各観測を日付順に短評する。

  5 March 2015 (λ=303°Ls, δ=4.2"): Clyde FOSTER (CFs)氏がIR画像をω=004°Wで撮影。シヌス・ メリディアニが濃く、シヌス・サバエウスやシュルティス・マイヨルもわかる。南半球には明るい特徴は捉えられておらず、南極冠もはっきりしない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150305/CFs05Mar15.jpg

 

   8 March 2015 (λ=305°Ls, δ=4.1"): CFs氏がω=332°WIR画像を撮影。シュルティス・マイヨルが午後側にある。ヘッラスあたりは明るいベルト状に見えるが、ノアキスに掛けても特に変わった様子は見られない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150308/CFs08Mar15.jpg

 

  12 March 2015 (λ=307°Ls, δ=4.1"): この日はCFs氏がR画像とIR画像をω=289°Wで得た。シュルティス・マイヨルが中央近くに出てきた。IR画像では、ヘッラスとアウソニアがやや鮮明に写っているが、両方ともそれほど明るくない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150312/CFs12Mar15.jpg

 

  15 March 2015 (λ=309°Ls, δ=4.1"): CFs氏がω=259°WIR画像を撮影。シュルティス・マイヨルが午前側に動いた。マレ・キムメリウムが夕方に入ってきていて、アウソニアがやや明るい。これは近内令一(kn)氏がMRO-MARCIの当日の画像からダストの活動であると指摘している。またKn氏は1314日のMars Express VMC/ESAにもダストの活動が捉えられているとしている。このCFs氏の画像では南極冠は不分明だがMars Expressの画像では小さい南極冠がはっきりと見えている

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150315/CFs15Mar15.jpg

 

  16 March 2015 (λ=309°Ls, δ=4.1"): この日もCFs氏が前日同様にIR画像をω=251°Wで撮影している。シュルティス・マイヨルは朝のターミネーターに近く、マレ・キムメリウムは全体が入ってきている。アウソニアはかなり明るく、おそらくダストの活動がこの日もあったと思われる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150316/CFs16Mar15.jpg

 

 近内氏は、この期間の三月21日のMars Expressの画像から、パエトンチスからエレクトリスに拡がったダストの活動を指摘している。

 

26 March 2015 (λ=315°Ls, δ=4.0"): 十日ぶりにCFs氏がω=153°WIR画像を撮すが、何も特徴は捉えられていない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150326/CFs26Mar15.jpg

 

   6 April 2015 (λ=322°Ls, δ=3.9"): 四月に入ってもCFs氏は撮影を続けて、この日はω=042°WIR画像を得る。中央部に暗部があるが、一目見ただけでは何を示しているのかはわからない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150406/CFs06Apr15.jpg

 

  13 April 2015 (λ=325°Ls, δ=3.9"): CFs氏の最後の画像は、ω=333°WIR画像だった。シュルティス・マイヨルなどが夕縁近くにあるのがわかるが、この種の画像からは、もう何か意味のあることは言えなくなっている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150413/CFs13Apr15.jpg

 

 

・・・・・ 観測集計: 今回の接近は2014 Apr 08に「対衝」となり、Apr 14に「最接近」を迎え、最大視直径はδ=15.16"に達する中接近であった。観測報告は2013 Julyから寄せられ2015 Aprまで続いた。今年四月15日までに寄せられた今接近の観測報告は国内から320件、国外から870件の1190件を数えて、各地域別・国別の内訳は下記のようになっている。国内では森田(Mo)氏の122回の観測数が群を抜いている。国外では南半球のオーストラリアから多くの報告が寄せられ、北半球高緯度のサイクロン現象の解析などに貢献した。来期も多くの観測が寄せられることを願っている。

なお、観測数のカウントは、眼視観測はω10°ごと、画像では5°ごとを一観測としている。

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 日本     8名 320観測

 

 ヨーロッパ 8カ国 20名 292観測        

  フランス 3名 90観測                            

  イギリス 6名 89観測                             

  ギリシャ 1名 36観測                             

  ベルギー 2名 31観測                                                        

  スエーデン2名 16観測                  

  オランダ 2名 15観測                         

  スペイン   2名  9観測                        

  イタリア   2名  6観測                          

アメリカ大陸 3カ国 14名 234観測

アメリカ合衆国 12  170観測

プエルト・リコ  1名 56観測

コロンビア         1名  8観測

南半球    2カ国  8名 320観測 

オーストラリア    7名 257観測

南アフリカ            1名  65観測

中近東    イラン      1名  22観測    

 


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