CMO/ISMO 2016 観測レポート#02

2015年十二月の火星観測 (λ=075°~089°Ls)

南 政 次・村上 昌己

CMO #442 (10 January 2016)


 

・・・・・・この期間には火星は順行を続けて十二月には「おとめ座」にあった。十月からは朝方の空に木星・金星と並んでいたが、だんだんと離れていった。月初には3°Sであった視赤緯Dは月末には9°Sと下がっていった。スピカとの接近は21日のことで4°Nを通過していった。視直径はδ=4.8"から月末にはδ=5.6"と少し大きくなった。季節はλ=075°Lsから089°Lsと北半球の夏至間近となっている。傾きはφ=24°Nから20°Nと北向きに大きく残留北極冠が捉えられている。位相角はι=30°から34°となって欠けは大きい。

 

・・・・・・観測報告は以下のように7名の報告者から29件の報告を拝受した。内訳は国内から19観測、アメリカ大陸側から27観測、オーストラリアから11観測、南アフリカから110観測であった。11月の追加報告がヨーロッパから11観測入っている。

    レオ・アールツ (LAt) ベルギー

        1 B&W Image (8 December 2015)  30cm Cassegrain

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

     3 Sets of RGB + 6 IR + 1 R Images  (1, 5, 11, 17, 19, 22 December 2015) 

                                           36cm SCT @f/22 with an ASI 224MC

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

       1 R Image (5 December 2015)   25cm SCT @ f/20 with a Starlight Xpress

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       6 Sets of RGB Images  (11, 21, 23, 26, 28, 29 December 2015)  31cm SCT with a Flea 3 

    森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

       9 Sets of LRGB Images  (1, 6, 8, 19, 29, 30 December 2015) 36cm SCT with a Flea 3

    モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

       1 IR Image (29 December 2015)  36cm SCT @f/20 with an ASI 120MM

 

・・・・・・ 追加報告

    ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ   

        1 Colour + 1 IR Images (2 November 2015)  36cm SCT @f/22 with an ASI 224MC

   

・・・・・・ 今回は順を追って觀測を眺めて行くことにする。

 

1 December 2015 (λ=075°Ls~076°Ls,  δ=4.8")

  Clyde FOSTER (CFs)氏はω=045°WIR像を撮った。マレ・アキダリウムの辺りの描写が好く南ではニリアクス・ラクスが見え、ニロケラスが分離しているように見える、北ではヒュペルボレウス・ラクスが北極冠に接して見えている。南端は潰れているが、マルガリティフェル・シヌスの北側とアウロラエ・シヌスは確認出來、オピールは明るい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151201/CFs01Dec15.jpg

 

  Yukio MORITA (Mo)氏はω=304°Wで良質のLRGB像を獲た。シュルティス・マイヨルが見事だが、シヌス・サバエウスはやや粗い。R像も好くヘッラスの片鱗を示している。北の暗部も分離は悪いが、濃く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151201/Mo01Dec15.jpg

 

 

5 December 2015 (λ=077°Ls~078°Ls,  δ=4.8"~4.9", φ=24°N)

   CFs氏がω=012°W (IR685)ω=014°WR610)で二像を得た。コントラストは前者がよいが、描写力は同じである。マレ・アキダリウムの形が好く、インドゥスが出ているようで、オクススも部分的に見える。クリュセの中に マルガリティフェル・シヌスとアウロラエ・シヌスの中間から暗部が降りている。これらの細部は19 Feb 2012Damian PEACH (DPc)氏のω=017°W、φ=23°Nの細部と比較すると好い。インドゥスも正常に出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151205/CFs05Dec15.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120219/DPc19Feb12.jpg

 

  Frank MELILLO (FMl)氏がω=175°Wで小さなR光像を得た。 模様がいくらか見えるが、8 March 2012DPc氏のω=184°Wと比較するとどの邊りが出ているか比較が出來る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151205/FMl05Dec15.jpg

 

 

 

6 December 2015  (λ=078°Ls,  δ=4.9")

  Mo氏がω=255°Wでワンセットを得た。RGBが好い。シュルティス・マイヨルとウトピアが濃く出ている。GB 南端がやや明るく出ている。λ=080°Ls の頃は南極冠がヘッラス側にひどく膨らんでいるときである(λ=050°Lsからλ=150°Ls邊りまで)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151206/Mo06Dec15.jpg

 

 

8 December 2015 (λ=079°Ls,  δ=4.9")

   Leo AERTS (LAt)氏がω=017°Wの像を得た(シーハン氏に依る)。そこそこに冩っている。先の19Feb2012DPc氏の像がω=017°Wである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151208/LAt08Dec15.jpg

 

   Mo氏がω=238°Wで撮った。明暗に富んで良像群である。夕方にはエリュシウムが白い。入ってくるシュルティス・マイヨルはRGBでは浅葱色である。Rではエリュシウムとケブレニアが双葉型に著しい。マレ・キムメリウムもウトピアもそこそこに出ている。 朝方のヘッラスの方も明るい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151208/Mo08Dec15.jpg

 

 

11 December 2015 (λ=080°Ls,  δ=5.0")

  CFs氏はω=310°Wでカラー像を撮った。ASI224MC使用。RIRは似た感触で朝方のシヌス・メリディアニが濃い。マレ・セルペンティスの邊りも情報を持つ様子。マレ・アキダリウムも出てくるところで、朝霧の所爲でやや青味を帯びている。GBで北極冠地区の白が目立ち、カラー像の北極冠は白さには欠けるが安定している様子。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151211/CFs11Dec15.jpg

 

   Efrain MORALES (EMr)氏はω=054°Wで撮った。マレ・アキダリウムが午後に見えるが北極冠もままならない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151211/EMr11Dec15.jpg

 

 

17 December 2015 (λ=082°Ls~083°Ls,  δ=5.1"~5.2", φ=22°N)

 

CFs氏がω=245°Wで撮った。Rが微細に富んでいるように見えるが、Bなどは枚数が足りないのかひどく粗い。從ってカラー合成も汚いが、Rでは眼を見張るような描写もある。シュルティス・マイヨルの可成りの微細が捉えられている。


これと同じ画角の像は10March 2012Don PARKER (DPk)が得ている(ω=245°Wφ=22°Nδ=13.9")。これと比較すると特にシュルティス・マイヨルの西岸に新しい動きがあるかのようであるが、この構図はどこかで見た気もする。Rでのウトピアの描冩も好く、概略近いが、ノドゥス・アルキオニウスの描冩はぼけすぎである。然しマレ・キムメリウムやマレ・テュッレヌムなどは5.1秒角の像にしては細かい部分に再現が見られる。DPk氏の画像と比べて視直徑以上に劣るのはGBでの描写で エリュシウム白雲などが顕れないことである(季節はほとんど変わらない)。北極冠の描冩もまだ改善されそうである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151217/CFs17Dec15.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120310/DPk10Mar12.jpg

 

 

 

19 December 2015 (λ=083°Ls~084°Ls,  δ=5.2")

  CFs氏がω=228°Wで撮った。Rは好いが、Bの所爲か北極冠などの白が出てこない。IR像はR像より分解力がない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151219/CFs19Dec15.jpg

 

  Mo氏が ω=133°Wω=143°Wの二セットを撮った。北極冠が出ないほどに全體dullである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151219/Mo19Dec15.jpg

 

 

21 December 2015 (λ=084°Ls~085°Ls,  δ=5.2"~5.3")

  EMr氏がω=323°W L,R,G,Bを揃えた。Rでは朝方のマレ・アキダリウムの格好が好い。シヌス・サバエウス、シヌス・メリディアニも濃く出ている。シュルティス・マイヨルは東端陰に近い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151221/EMr21Dec15.jpg

 

 

22 December 2015 (λ=085°Ls,  δ=5.3")

   CFs氏がω=193°WIR685像のみ。ノイズが多い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151222/CFs22Dec15.jpg

 

 

23 December 2015 (λ=085°Ls~086°Ls,  δ=5.3")

   EMr氏がω=298°Wでワンセット。シュルティス・マイヨルが可成り入ってきた。北極冠はB像がしっかりしなくてカラーではオフホワイト。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151223/EMr23Dec15.jpg

 

 

26 December 2015 (λ=086°Ls~087°Ls,  δ=5.4")

    EMr氏がω=270°W。シュルティス・マイヨルは明瞭。ヘッラスはやや明るい程度。  ウトピアのあたりは 北極冠に北面してほぼ覗える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151226/EMr26Dec15.jpg

 

 

28 December 2015 (λ=087°Ls~088°Ls,  δ=5.4"~5.5")

    EMr氏がω=246°Wでセットを得る、R像以外は悪化しているが、夕端にエリュシウムが確認される。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151228/EMr28Dec15.jpg

 

29 December 2015 (λ=088°Ls,  δ=5.5", φ=21°N)

    EMr氏がω=240°Wで撮像。シュルティス・マイヨルは朝方へ。 南端はGBで明るくいくらか良質だが、R像がしっかりしないか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151229/EMr29Dec15.jpg

 

    Maurice VALIMBERTI(MVl)氏がω=356°Wで優れたIR像を提出した。マレ・アキダリウムが形好く捉えられており、シヌス・メリディアニのあたりもマルガリティフェル・シヌスからの分離が好く、クリュセ内部の描冩も好い。インドゥスもオクシア・パルスとともに出ていると思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151229/MVl29Dec15.jpg

 

   Mo氏はω=034°W038°W043°Wの三セットを撮った。北極冠の表情からすると最初のセットが良好で、南半球の様子がいくらか判る。またクリュセの輝度が高いことが全體から読み取れる。但し、マレ・アキダリウムをはじめ主な模様の輪郭は相当ぼけている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151229/Mo29Dec15.jpg

 

 

30 December 2015 (λ=088°Ls~089°Ls,  δ=5.5")

    Mo氏がω=034°W ワンセット。マレ・アキダリウムの存在は中央で判るが、詳細はなく、南半球の暗色模様も存在のみ。L像の処置が不好。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151230/Mo30Dec15.jpg

 

 

追加報告;前回報告後、John SUSSENBACH (JSb)氏の報告があった。2Nov2015(λ=063°Ls)ω=359°Wでの觀測でマレ・アキダリウムが午前、夕方にシヌス・サバエウスが出ているという構図である。マルガリティフェル・シヌスも明確で、インドゥスも出ていると想われる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151102/JSb02Nov15.jpg

 


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