CMO/ISMO 2016 観測レポート#07

2016年四月後半の火星観測 (λ=138°~146°Ls)

南 政 次・村上 昌己

CMO #447 (10 May 2016)


・・・・・・  今回は 2016年四月後半の半月間の観測報告をまとめて七回目のレポートとする。火星は、この期間の四月17日には「留」となり動きが鈍くなった。視赤緯D21°S台で変化は少なく。「さそり座」のはさみのところで、アンタレスと土星で三角形を作って見えていた。以後は逆行へ移り接近してくる。視直径はδ=14.0"から16.1"と大きくなって細部が捉えられるようになった。中央緯度はφ=06°Nから07°Nと少し北向きに戻っている。位相角はι=25°から17°となり丸みがついてきた。季節はこの期間にλ=138°Lsから146°Lsになり、引き続き北半球高緯度の朝方の渦状雲現象に注意が払われたが、マレ・アキダリウムにもウトピアにも、はっきり捉えらた観測はなかった。赤道帯霧もまだエリュシウムからシュルティス・マイヨル北部に掛かっているのがB光画像ではっきりしていた。山岳雲も夕方に掛けて顕著になり見事に捉えられている。特にタルシス以東の地域が夕縁に隠れてゆくときには複雑な様相を見せていた。ヘッラスは北西部が輝きを落として翳りが出てきたが、南東部はまだ輝きがあり明るく捉えられている。アルギューレも明るい。南極地は見えないが南縁は明るく捉えられて、ソリス・ラクスの南では南極フードの拡がりを感じられることもあった。北極冠は薄べったくなったがオリュムピアと共にまだ判る。

 

・・・・・・  この期間も南半球からの報告が多かったが、アメリカのレギュラー観測者からも報告が入り始めている。国内からは24観測、アメリカ大陸側から713観測、ヨーロッパから14観測、オーストラリアから528観測、南アフリカから18観測の報告で、合計では16名から57件の観測報告だった。

 

    阿久津 富夫 (Ak)  那須烏山、栃木県 (*セブ、フィリッピン)

    1 LRGB + 1 B Images (24* April 2016) 36cm SCT with an ASI 174MM

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

       3 Sets of RGB Images (17, 19, 24 April 2016)  41cm Dall-Kirkham with an ASI120MM

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

      8 Colour + 8 IR Images (16,~18, 20, 22, ~25 April 2016) 36cm SCT @f/33 with an ASI224MC

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

      2 Sets of RGB + 4 IR images (18, 21 April 2016)  36cm SCT @f/39 with an ASI120MM

    カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国

      1 Colour Drawing (23 April 2016)  23cm Maksutov-Cassegrain, 280×,350×

    マーク・ジャスティス (MJs)  メルボルン、オーストラリア

      7 Sets of RGB Images  (17, 19, 24, 25 April 2016) 30cm Spec with a DMK21AU618

    熊森 照明 (Km)  堺、大阪府

      3 LRGB + 3 B Images (19, 22, 25 April 2016) 35cm SCT @ f/30 with an ASI120MC & ASI178MM

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

      2 Colour Images (17, 24 April 2016) 25cm SCT with a ToUcam pro II

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

      1 Set of RGB Images  (18 April  2016) 31cm SCT with a Flea 3

    マイケル・ロゾリーナ(MRs) ウエストバージニア、アメリカ合衆国

      2 Colour Drawings (18, 25 April 2016)  35cm SCT, 330×, 390×

    モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

     13 Colour Images (17, 23, 24 April 2016)  36cm SCT @f/28 with an ASI224MC 

    デビッド・ウェルドレイク (DWd) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

      1 Set of RGB Images  (23 April 2016)  13cm refractor @f/40 with an ASI120MM

    アンソニー・ウエズレイ(AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

      5 Colour Images  (17, 19, 21, 24, 29 April 2016)  (41cm SCT)

    ティム・ウイルソン(TWs) ミズーリ、アメリカ合衆国

      3 Colour Images (22, 23, 28 April 2016)  20cm SCT with an ASI120MM

 

 

・・・・・・  四月後半の観測を今回も日付を追ってレビューする。

 

16 April 2016 (λ=138°Ls~139°Ls, δ=13.9"~14.1")

    今回もClyde FOSTERCFs氏がトップ登場でで、歐羅巴がまだ冬季に埋もれているか。CFs氏はL-colour像とIR685像のセットでω=182°Wφ=6°Nで撮られている。前者の暗色模様はこの時期完璧であると思う。アトランチドゥム・シヌス邊りの詳細が見えているし、マレ・キムメリウムのお腹やハーシェル・クレータからゲール・クレータ邊りも最早申し分ない。朝方のアエテリア暗斑の詳細も今期初である。既に垣間見られたプレグラの北の割れ目も、プロポンティスIのチェック形も幾何学形が落ち着いてきた。オリュムプス・モンスの西山腹のロール雲が明るく、夕縁近くで捉えられたのは意義深い。われわれが待っていた像であって、オリュムプス・モンス等の雲は東面の上昇気流よりも殆ど颪(おろし)に近い斜面下降流(Katabatic wind)に支配されていることが判るというものである。この像では霧の描写が弱いのではという気がする。そのためエリュシウム・モンスの頂上雲が孤立して見えるのが好いが、中央帯に漂う霧はトリウィウム・カロンチスの南に、及び朝縁近くに見えるのみである。北極冠の南西にオリュムピアが見える。南極のキャノピーは淡いガスで、西端からヘッラスが出かかっている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160416/CFs16Apr16.jpg

 

 

17 April 2016 (λ=139°Ls, δ=14.1"~14.2")

     CFs氏が同じ方式で10°W若いω=173°Wで撮っている。些し像が粗いが、エリュシウム南部から霧が朝縁に向かっている。オリュムプス・モンスの雲に先行するタルシスの雲にも斜光が当たって些し明るい。

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      ベテランのFrank MELILLO (FMl)氏の登場(今では珍しいToucam II使用); 角度はω=238°Wで、シュルティス・マイヨルが入って居ていい形。ヘッラスの白色は入ってくるところ。南極のフードとは區別が附く。エリュシウム内部は明るく、特に東側が白みを帯びて明るい。北極冠の邊りは分解能が低い、ヘスペリアも好く分離しない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160417/FMl17Apr16.jpg

 

     Stefan BUDA (SBd)氏がω=348°WR, G, B像一組と優れたRGB像を得た。R像が良像で、シヌス・サバエウスやシヌス・メリディアニ、エドムの内部の描写が詳しく、オクシア・パルスの形やアラム・カオスが好く見えている。Oxus dark segment (Ods)もオクススとマレ・アキダリウムの間に明確である(36°N, 359°W)RGBで明らかな注目点は、アスタボラエ・フォンスとコロエ・パルスを結ぶ線の西側に特異な明點が見えることで、Mkが經緯度を計測してみたところ、(300°W~310°W36°N)であった。この辺りには高い山はなく、山岳雲ではないと考えられる。特異な白雲であろうか。二つに分かれているようだ。北極冠は明白。南極のガスは弱め。ヘッラスの本体は闇に入り、霧が些し殘っている。沈没寸前のシュルティス・マイヨルの北部に濃い霧が残る。マレ・アキダリウムの北端は、前々期のFLANAGAN氏の画像に表示された東側など地面の色が出ている。ヒュッペルボレウス・ラクスは健在。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160417/SBd17Apr16.jpg

 

     Maurice VALIMBERTI (MVl)氏がω=351°W359°W004°W011°W014°W016°Wでの6枚のカラー画像を提出した(224MC)CFs氏のような処理を工夫しない所為か、相変わらず、 暗色模様の濃淡の開きがなく、単調な火星面に見える。但し、ひとつ一つのディテールは甚だ行き届いている。例としてω=014°Wを採ると、アリュンの後方の爪は二つに分かれているようにみえる。これは1954年のG P カイパーや1960年のJ H フォキアの例を思い出させる(それ以前には左側の爪が割れているような觀測があったが)。アラム・カオスが明確である。クリュセの南端の下がりも美事である。Odsも明確である。マレ・アキダリウムの北端の詳細も好く描かれイアクサルテスに構造があり、ヒュペルボレウス・ラクスも比較的濃く出ている。マレ・アキダリウムは西北の三角形暗部の他は退色したような印象を与えるが 、そうではなく、模様の色彩表現の再現性が低いのだと思う。この像では南極のヘーズの濃淡がでている。尚ω=351°Wではシヌス・サバエウスの中・西部が見えている。また、東北端近くの白雲が最後のω=016°Wでは可成り小さく輝いている。SBd氏のω=348°Wで見えたものと同じである。但し、この小白雲は、比較すると244MC像の方が色が褪せているのが明瞭である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160417/MVl17Apr16.jpg

 

   Mark JUSTICE (MJs) 氏は三単色R,G,B像から角度ω=019°WでのRGB像を作った。RGBの色彩も出て骨太の暗色模様を構成した。Rでの暗色模様がもう少し繊細ならば完璧な像になったであろう。南半球ではマレ・エリュトゥラエウムが青黒色で太く横たわり、その両側は淡い霧が出ている。その南はアルギュレの領域で濃い白雲の不規則な塊が流れている。ソリス・ラクスが入ってきており、チトニウス・ラクスも斜め視線で見える。ユゥウェンタエ・フォンスもガッチリ見える。オピルは赤く地肌、カンドルの後方には白い朝霧が強い。この朝霧はニロケラスの北側に沿って白い筋を走らせている。なお、Odsは明確で、エデンの邊りには淡い白霧が窺える。Bでは擴がって見える。南極の白霧も二段構え。Bではブランガエナの周りに淡い白霧が取り巻いている。マレ・アキダリウムの北端も豪快で、地肌をイアクサルテスが太く走って、濃いヒュッペルボレウス・ラクスが北極冠を取り巻いている。北極冠は白く端正。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160417/MJs17Apr16.jpg

 

   Anthony WESLEY (AWS)氏はω=033°WRGB合成のまろやかな火星像を提出した。夕端のシヌス・メリディアニから朝方のチトニウス・ラクス迄の赤道帯の詳細が好く出ている。ブランカエナやインドゥスなどの細線も明確。マレ・アキダリウム南半分は淡く、イアクサルテスは複雜、ヒュペルボレウス・ラクスは濃く北極冠の南を押さえている。アルギュレと関係して小さめの白雲。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160417/AWs17Apr16.jpg

 

 

18 April 2016 (λ=139°Ls~140°Ls, δ=14.2"~14.4")

   CFs氏が何時もと同じ画像をω=162°Wで捉えた。マレ・シレヌムの些し崩れかかった西端を巧く捉え、アトランチドゥム・シヌス關係の暗斑が見えており、カラリス・フォンス(ニュートン隕石孔) が確認出來る。オリュムプス・モンスの西山腹の雲は真っ白。アルバも小さいが白く濃い。プロポンティス I の形が少し意外。プレグラもシャープにでている。エリュシウム・モンスはエリュシウム内に小さな白斑點。南極は白霧が覆っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160418/CFs18Apr16.jpg

 

  Peter GORCZYNSKI (PGc)氏の登場、ω=225°WRGB像作成、他にω=224°WIR685, ω=228°WIR742像を得ている。RGB像は稍シャープさに欠け、エリュシウム内部は明るいだけだが、シュルティス・マイヨルがっぽい姿で円盤内に入ってきている。ヘッラスは朝方縁で白い。マレ・キムメリウムは詳細がない。但し、IRでは稍細かいところが窺える。IR742の方がコントラストは弱い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160418/PGc18Apr16.jpg

 

  Michael ROSOLINA (MRs)氏がω=236°Wのカラースケッチを送ってきた(追加報告)。エリュシウムが夕方で真っ白(#80Aなど使用。シュルティス・マイヨルも朝方に入ってきている。)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160418/MRs18Apr16.jpg

 

  Efrain MORALES (EMr)氏がω=237°WR, G, B要素とそのRGB合成を送ってきた。Rを見るとノドゥス・アルキュオニウスで過剰コントラストが感じられ、一方Bは緩く、結局RGBに不満が出るが、エリュシウム内の色分けはきちんと出來ている。北極冠は描冩されない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160418/EMr18Apr16.jpg

 

 

19 April 2016 (λ=140°Ls,  δ=14.4"~14.5")

   SBd氏がω=329°W120MMワンセットとRGB合成を得た。RG, Bも適正で、Rではシヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニの細部が出て見事である。アリュンの爪の右側の端の小班点がクッキリし、フォキャスの圖を思い出させる。ブランガエナも綺麗で、オキシア・パルスからのインドゥスもクッキリ。Rではネウドルス I, IIも綺麗に見えており、Odsもこれまでのイメージの中で最高に美事である。ただ、RGBになると強調はされなくなる。ただ、17Aprilにアスタボラエ・フォンス近傍で見えた輝白斑は見えなくなった。但し、B像は甚だ上等で、夕端からの夕霧がシュルティス・マイヨルの北部を侵す だけでなく霧/雲の幾つかの斑點になって北へ流れている。その一つは17Aprの輝点に対応するかもしれない。Bでは北極冠もバッチリである。夕方のヘッラスの描冩も貴重。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160419/SBd19Apr16.jpg

 

   熊森 照明 (Km)氏はω=003°WでカラーLRGB單獨像とω=005°WB像を与えた。L178MMで、RGBカラーは224MCで撮った。カラー像の詳細は捨てがたい程、様々な暗色模様に亙っているが、(たとえばアラム・カオスが出ている)カラー像には独特の暈けがあるようだ。上のSBd氏の例を見るとR單獨像も馬鹿にならない細密度を示すので、やはりR, G, Bをそれぞれに確保するのが好いように思う。マレ・アキダリウムの西北端の三角暗部とイアクサルテス、ヒュッペルボレウス・ラクスの描冩は興味深い。178MMに依るB像は未だ宜しくない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160419/Km19Apr16.jpg

 

    MJs氏がω=003°Wω=014°WRGB像による二組のRGB像を合成した。DMK30cmに依る像だが優秀である。注目するのはω=003°Wでもシュルティス・マイヨル(既に隠れたが)発の夕雲の斑點が幾つも殘っていることで(これは優秀なGB像による)ω=014°Wでも白斑點が二個見えている。この角度になると、マレ・アキダリウムの西北端の三角暗部とイアクサルテス、ヒュッペルボレウス・ラクスの描冩は完璧に近いだろう。Odsが淡いのは口徑差であろう。朝方のオピルとユウェンタエ・フォンスの北側は地肌色で明るい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160419/MJs19Apr16.jpg

 

    AWs氏が ω=009°W41cm余裕のRGBである。Rが見たいところであるが合成像だけの投稿である。Odsは当然見えるし、マレ・アキダリウムの北部も淡く描かれている。ユウェンタエ・フォンスの北側は明るい。夕霧斑點は二つ残っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160419/AWs19Apr16.jpg

 

 

20 April 2016 (λ=140°Ls~141°Ls, δ=14.5"~14.6")

    CFs氏がいつもの画像をω=146°Wで撮った。オリュムプス・モンスの周りは大きく典型で描かれ、タルシス山系も頂上と西側雲共に判りやすい描冩。アルシア・モンスの周りにも雲が出ている様子。アルバの邊りに小さく濃い雲。マレ・シレヌムの西端あたりの描冩は注目。カラリス・フォンスは濃斑點でその南には南極冠のガスが淡く擴がっている。プロポンティス I のあたりの描冩もOK

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160420/CFs20Apr16.jpg

 

 

21 April 2016 (λ=141°Ls, δ=14.6"~14.8")

  PGc氏が120MMによるRGBワンセットとRGB像をω=198°Wで与え、更にIR685像とIR742像をそれぞれω=201°Wω=202°Wで与えた。RGBでは夕端にオリュムプス・モンスの西山腹雲が白く明るく出て、エリュシウム内の明部も稍詳細が見えているが、マレ・キムメリウムなどの詳細はなく、これはIR742で補っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160421/PGc21Apr16.jpg

 

   AWs氏がω=348°WRGB合成像一枚。流石Odsが明確に出ていて、後の詳細は推して知るべしというところ。注目点はシュルティス・マイヨル北部越えの夕霧斑點の最後の白斑點が濃く、これは17Aprのものと同じであろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160421/AWs21Apr16.jpg

 

 

22 April 2016 (λ=141°Ls~142°Ls, δ=14.8"~14.9")

    CFs氏がω=123°WL-colourIR685像を撮ったが、L-colourは大きすぎてシャープさがない。ソリス・ラクスが夕端に見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160422/CFs22Apr16.jpg

 

    Tim WILSON (TWl)氏がω=226°W20cmSCT120MCでカラー單像。シュルティス・マイヨルが右端から入ってきているが些し濃すぎる気がする。北極冠がでない。右上に色収差。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160422/TWl22Apr16.jpg

 

     Km氏がω=322°W LRGB像、ω=319°WB画像。RGB224MCL178MMで撮っている。 LRGBはそこそこの画像。シュルティス・マイヨルの北部は濃い藍色。その北には白霧が漂っている。これはB像にも出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160422/Km22Apr16.jpg

 

 

23 April 2016 (λ=142°Ls, δ=14.9"~15.1")

    CFs氏がω=112°WL-colourIR685像を撮った。マレ・シレヌムが朝方に移り、ソリス・ラクスが夕縁から中に見えるが、詳細は未だ。チトニウス・ラクス邊りは暗點の集まりが明確で、IR像でも同じ。アスクラエウス・モンス周邊の雲オリュムプス・モンスの雲も見えるが、白色の處理が誤っているようだ。フォルトゥナ二重リングも出ているようだが、白い部分に違和感がある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160423/CFs23Apr16.jpg

 

    Carlos HERNANDEZCHr)氏が丁寧なカラースケッチを描いた。觀測時刻は5h30UTと記載されているのでω=156°Wとなるが、同時にω=097.9°Wとも記載されている。しかし、この角度は南アフリカのCFs氏の観測時より前で普通に考えればおかしいので、ω=156°Wを採用する。すると朝方にある明斑はエリュシウム内部の白部と見做すのが自然である。(實際には、この位置ならω=170°W180°Wぐらいではないかと思うが。)南には横たわる暗色模様はω=156°Wならマレ・シレヌムである。ただ、オリュムプス・モンスに懸かる雲の様子が不明になるんですなぁ。この邊りの配置はMJs3Aprilω=157°W画像があるので、參照されたい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160423/CHr23Apr16.jpg

 

    TWl氏がω=209°W120MCによるカラー像。マレ・キムメリウムの詳細が出掛かっているが、全體に色彩が貧弱。IR像も使っているのか、コントラストは高い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160423/TWl23Apr16.jpg

 

   David WELDRAKE (DWd) 氏が高橋のTOA-130NSを使ってω=259°WRGBの各像とRGB合成像を得た。夕方のエリュシウムの白雲が濃いほか、朝方南半球に入って居るヘッラスを青白く表現している。赤道帶霧はBで窺えるがRGB合成像で些し活きているか?、というところ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160423/DWd23Apr16.jpg

 

   MVl氏がω=290°Wからω=328°Wまでの224MCによるカラー像を六ッ個並べる。どれも細かいところが出ているが、どれも荒れた粗い感じで色彩の貧弱なイメージばかり。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160423/MVl23Apr16.jpg

 

 

24 April 2016 (λ=142°Ls~143°Ls, δ=15.1"~15.2")

    CFs氏がω=075°WでいつものようにL-colourIR685像を撮った。L-colour像は餘り綺麗ではない。白が浮き立っていないからだろう。夕霧も冴えない。オピルの色も明るさも一寸違う感じ。注目点はニリアクス・ラクスの先方夕端に濃い雲塊があることと、ニロケラスの根っこに霧が固まっているらしいこと。アルバがもっと白いだろうが、幾らか明るいこと。ソリス・ラクスはIR像で可成り判る。北極冠が白と言えないことに注意。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/CFs24Apr16.jpg

 

    FMl 氏が ω=177°Wで單カラー像。エリュシウムが朝方にあって、内部が明るい。プレグラからプロポンティスIが出て、朝方にはアエテリアの暗斑も出ている。夕端には タルシス系の名残があって、オリュムプス・モンスの西山麓雲は最も明るい。南極あたりは稍淡くCanopy。北極冠も見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/FMl24Apr16.jpg

 

    MVl氏がω=272°Wω=280°Wのカラー像二葉。シュルティス・マイヨルがCM近くで、ホイヘンス・クレータなど近傍も好く見えるが、全體に粗く見え、ノドゥス・アルキオニウスのところなどでは押し気味の處理が感じられるが(ゴーストが見える)、濃度は低い方である。ヘッラスの北側は以前よりガス状になっている。一枚目ではエリュシウム内部の色分けが出来ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/MVl24Apr16.jpg

 

    SBd氏がω=288°WRGBの各像とRGB合成像を与えた。合成像には落ち着きがあって、精神衛生上此方の方が好い。シュルティス・マイヨルのホイヘンス・クレータ、シュレーター・クレータ邊りの詳細も綺麗で、特に北端のアントニアディ・クレータ、バルデ・クレータの邊りの描冩は抜群である(アントニアヂ・クレータの中央の斑點は寧ろG像で鮮明)。シヌス・メリディアニもディスクに入ったところだが、エドムなどと共に綺麗に見える。ヘッラスも南部の白さの濃い筋と南側のガス状態の區別が出來る。B像で窺える北部ウトピア内の筋雲の走りや、マレ・キムメリウムの北側からドッドッドと北西に滴り落ちるガスの小さな塊の連鎖が興味深い。2014δ=15秒角の時のSBd氏の6April2014λ=113°Lsω=303°Wのシュルティス・マイヨルの描冩と比較すると今回の像の素晴らしさが判る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/SBd24Apr16.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140406/SBd06Apr14.jpg

 

   MJs氏が ω=307°Wω=318°Wω=326°Wで三組のRGB合成像を齎した労作である。三者とも西端にゴーストarcが見えるのは殘念だが、前二者まではパンドラエ・フレトゥムの直ぐ南のノアキスに太いガス状の雲/霧の流れているのがはっきりしてきた。またホイヘンス・クレータの南の方にヘッレスポントゥスがジグザグに南に走っていて、先行してヤオニス・フレトゥムもクッキリ見えている。後二者の像では、東端からの夕霧がシュルティス・マイヨルの北部を複雜に侵している様子がB像で活写されている。 また後者二像ではシヌス・メリディアニが可成り内部に入り、ネウドルスのペア運河が見えてきたし、オクシア・パルスまでの詳細を朝霧の広がりと共に傳えている。オクシア・パルスの北は霧の塊である。ウトピア北部の筋雲は最後まで殘っている。最後の像ではOdsが見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/MJs24Apr16.jpg

 

    阿久津 富夫 (Ak)氏がフィリッピンに出掛けての作像で、ASI 174MMによるRGB合成像とB像である。詳細は十分に出ているが、白が出ていなくて、ヘッラスの描冩も悪く、北極冠さへ濁った色で、砂漠の阿久津カラーも見えない。B像はピンぼけではありませんかね。詳細といえどもキレが必要で、シュルティス・マイヨルの北端はSBd像と比較すると何かが多く、何かが抜けている。アリュンの右爪の分離は悪いが、Odsは見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/Ak24Apr16.jpg

 

     AWs氏がω=324°Wでカラー合成一像。そこそこに出ているが、目を見張るようなところは見当たらない。ただ、Odsは本日の中で一番宜しい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/AWs24Apr16.jpg

 

 

25 April 2016 (λ=143°Ls, δ=15.2"~15.4")

     CFs氏がω=089°WL-colourIR685像を撮った。暗色模様は十分に出ていて、特にソリス・ラクス本体が十分摑める位置に来ている。IR像と重ねると焦げ茶色の内部の構造も摑める。チトニウス・ラクス邊りでもノクチス・ラクス、その南のポエニキス・ラクスの斑點が鮮明に出ている。フォルトゥナ二重リングも見えているが、タルシス山系などは見辛い。多分白色の発色が 悪いからであろう。アルバには白い部分が見えるが、オリュムプス・モンスを取り巻くリングには白さがない。マレ・アキダリウム、ニロケラスにもガスが懸かっているが、白さは過少。北極冠も然程白くはないがヒュッペルボレウス・ラスクは北極冠に接続していて濃い。南極の淡いガスはデプレッシオネス・ポンチカより南に擴がるか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160425/CFs25Apr16.jpg

 

     MRs氏がω=178°Wでカラースケッチ。 南極の白いcanopyの北にマレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの暗色の帶。左端にはオリュムプス・モンスの白雲などの殘りが出ているものと思われる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160425/MRs25Apr16.jpg

 

   MJs氏がω=300°W 三単色R,G,B像からRGBを合成した。ヘッラスの内部の白色部の濃淡の変化がMJs氏自身の20 March 2016 (λ=125°Ls) ω=301°WRGB像と比べると判る。三月に支配的であった内部西端のこんもりした白い筋は薄れ、内部南東部がより青白く輝いている。シュルティス・マイヨル北部に流れ込んだ霧はB像で形作る。シヌス・サバエウスの南のノアキスにも霧の太い帶が在り、(未だ出ていないがニリアクス・ラクスに先行する)朝縁邊りもBでは明るい。こうしたところがRGB像で全體を生気づけている。Rではホイヘンス・クレータの中心核が矢鱈濃く、ヤオニス・フレトゥムもシッカリした線。アエリアの南部、シュレータ・クレータの西の暗色斑點も目立つ。


 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160425/MJs25Apr16.jpg

 

     Km氏がω=332°WLRGB+B像。(昔風にいえば)粒子が粗い感じがするが、シヌス・サバエウスやシヌス・メリディアニの詳細は切れが良く、シュルティス・マイヨルの北部を侵す霧による効果が平坦でなく、實に味がある。南極のcanopyは薄く擴がり、ヘッラスも薄くなり、ひとり朝方に霧が大きく擴がる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160425/Km25Apr16.jpg

 

 

28 April 2016 (λ=144°Ls~145°Ls, δ=15.7"~15.8")

    TWl氏がω=167°Wφ=07°N120MCによるカラー單像。朝方にエリュシウムの明部と先行するプロポンティス I が濃く、後行するアエテリア暗斑も見えている。、夕方にタルシスとオリュムプス・モンスの雲がぼんやりと見える。南の暗色模様はマレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの一部であろう。南極のcanopyが淡く見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160428/TWl28Apr16.jpg

 

 

29 April 2016 (λ=145°Ls, δ=15.8"~16.0")

     AWs氏がω=285°Wφ=07°Nでカラー合成單像。この像は暗色模様の詳細だけでなく、ガスのような薄い霧が表面に漂う様子を好く傳えていて今期これまでの像の中で抜群の像であると思う。詳細で注目するのはシュルティス・マイヨルの西北端にあるアントニアヂ・クレータで、内部の斑點は綺麗に冩っていて、24 AprilSBd氏以來である。ホイヘンス・クレータ、シュレータ・クレータなどは適正に表現されている。ヘッラス内部の描冩もλ=145°Lsの典型として記録されて好いと思う。ウトピアの内部にも様々なディテールがあるようである。ウトピア北部には矢張り夕霧に繋がるガスが出ている。エリュシウムの南側には明白に霧が流れていて、クロケアに潜り込んでいて、それがシュルティス・マイヨル北部を、さらにはアエリアを覆っているようである。北極冠の東側にはオリュムピアの後部が些し見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160429/AWs29Apr16.jpg

 

  ・・・・・・  追 加 報 告

    デミアン・ピーチ (DPc)  バルバドス (ウエストサセックス、英国)

      1 Set of RGB + 3 Colour + 3 B Images (18, 19 March 2016)    (36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)

    マイケル・ロゾリーナ(MRs) ウエストバージニア、アメリカ合衆国

      1 Colour Drawing (13 April 2016)  35cm SCT, 230×

    チャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア

      1 Colour Image (26 March 2016)   25cm SCT @f/27 with an ASI120MM

 

(1) DPc氏が18 March 2016 (λ=124°Ls) ω=136°W148°W170°WRGB像を拵え、それぞれにB像を添えた。δ= 10.3"φ=8°Nι=35°であった。これらの觀測はオリュムプス・モンス以東のタルシス山系などに懸かる白雲を追求した連作であると思う。オリュムプス・モンスの西山腹の明るい雲は二時間強の間然程変わりがないが、裾野に流れる雲は次第に長く靡いている。ω=136°Wではタルシス山系の頂上は巧く捉えられていて、アスクラエウス・モンスには西山腹の明るい雲が出ているのみならず東側にも明るい雲があること、それがアスクラエウス・モンス側にあるのか、タルシス・トルスに関係する雲かフォルトゥナ二重リングに関わっているのか、一寸判断がつかない。一方、アスクラエウス雲は、西山腹雲と切れる形で西北方向に強く流れている。この邊りを判断するにはCFs氏の22 April at ω=123°W (ι=22°)の像や、As氏の2 April at ω=123°W133°Wを參照しなければならないが、前者CFs像は稍ぼけが強く、As氏のB像もキレが十分ではない。ただ後者から、アスクラエウス・モンスの西山腹雲とアスクラエウス雲は離れていることが判るし、アスクラエウス・モンスは孤立型というよりパウォニス・モンスの方にridgeが続いているらしいことが、DPcの観測と併せて言えるのではないかと思う。その意味でDPcのこの観測はsuggestiveな働きをしていると思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160318/DPc18Mar16.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160422/CFs22Apr16.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/As02Apr16.jpg

 

2DPc氏は引き続き翌19 March 2016 (λ=125°Ls) ω=158°WRGB三像とRGB合成像を並べた。 プレグラの二股やトリウィウム・カロンチス、ケルベルスが茶系統なのに対しプロポンティス I はっぽい。アエテリアの暗斑も朝霧の下で青い。オリュムプス・モンスの山頂は暗點である。山腹雲と裾野の雲は切れている。プロポンティス I の形は18 April ω=162°WCFs氏の像に見られる形と違っている。

 逆にCFs氏の像にはBから得られる情報が少ない感じを受ける。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160319/DPc19Mar16.jpg

 

(3) ロゾリーナ氏 (MRs) 13 April 2016(λ=137°Ls)ω=306°Wでカラースケッチを行っている。ヘッラスが夕端で大きく描かれているが、内部の詳細はない。シヌス・メリディアニは円盤の中に入っている如し。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160413/MRs13Apr16.jpg

 

(4) トリアーナ氏 (CTr)26 March 2016(λ=128°Ls) ω=100°WLRGBの像を撮った。タルシス附近に散らばる雲の分布がよく表現されているが、像が小さい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160326/CTr26Mar16.jpg

 


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