CMO/ISMO 2016 観測レポート#08

2016年五月前半の火星観測 (λ=146°~153°Ls)

南 政 次・村上 昌己

CMO #448 (25 May 2016)


・・・・・・  八回目のレポートとなる今回は五月前半の観測報告を取り扱う。日本ではこの期間も天候は周期的に変化して、低気圧が通過する度に天候は崩れて風雨の強まることも多かった。火星は「さそり座」のはさみのところで逆行してδ星に近づいている。光度はマイナス1等級を上回りアンタレスを凌ぐ明るさに輝くようになっている。視直径はδ=16.1"から17.9"とさらに大きくなり、位相角もι=17°から06°と一桁台におちて接近時の姿になっている。東からの出現も20時台と夜半前からの観測が可能になっているが、視赤緯D21°S台で変わらず東京での南中高度は33°ほどと低く、シーイングのよい機会になかなか恵まれない。

 季節はλ=146°Lsから153°Lsになり、傾きはφ=07°Nから09°Nとなった。この期間に赤道帯霧は、クリュセからタルシスやエリュシウムからシュルティス・マイヨル北部にかけてで顕著に認められ、夕縁のシュルティス・マイヨルには濃い夕靄が観測されている。赤道帯霧とは別に北半球中緯度にもB光で明帯が見えていて、テムペからアルバ・パテラに伸びるものは、アルバの第二のピークといわれるλ=145°Ls付近での活動とも関係があるように思える。山岳雲は午後遅くから夕方に掛けてがはっきりするようになってきた。南半球のアルシア・モンスの活動も活発になっている。南極フードには明るさに差が出てきた。アルギュレあたりや朝方が明るく見える。ヘッラスは明るさを落として北半分は地肌色になっている。視直径の大きくなってきたこともあり北極域に残っているオリュムピアあたりの詳細が見え始めている。5May6Mayには北極地からマレ・アキダリウム北東部へ白い吹き出しが捉えられ北半球高緯度の擾乱と思われたが、観測数が少なく詳細は不明である。

 

 ・・・・・・この期間にもヨーロッパ、アメリカからの報告はあまり増加しなかった。南中高度の低いことに拠るものと思われる。また、南半球からの報告の少なくなっているのは天候のためと思われる。国内からは430観測、アメリカ大陸側から615観測、ヨーロッパから33観測、オーストラリアから720観測、南アフリカから16観測の報告で、合計では21名から76件の観測報告だった。阿久津氏の4月下旬にセブ島で撮影した17画像の追加報告も含まれる。

    バリー・アドコック (BAd)  ビクトリア、オーストラリア

      1 RGB Colour + 2 B Images (15 May 2016)  25cm refractor

    阿久津 富夫 (Ak)  那須烏山市、栃木県       (#宇都宮大学天文台)

     2 RGB Colour + 2 B + 2 IR Images (12 May 2016)  40cm Cassegrain# with an ASI174MM

    浅田 正 (As)  宗像、福岡県

      1 Set of RGB Images (15 May 2016)  PPARC# 60cm Reflector with an ASI120MM

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

      1 RGB Colour Image (1 May 2016)  41cm Dall-Kirkham with an ASI120MM

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

      6 Colour + 6 IR Images (2, 5, 6, 9, 11, 13 May 2016)  36cm SCT @f/33 with an ASI224MC

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

      3 Sets of RGB + 6 IR images (9, 12 May 2016)  36cm SCT @f/39 with an ASI290MM

    カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国

      1 Colour Drawing (13 May 2016)  23cm Maksutov-Cassegrain, 280×,350×

    石橋 力 (Is)  相模原市、神奈川県

      4 Colour Images (12, 14 May 2016)  31cm Spec, with a SONY HC9 Video Cam

    マーク・ジャスティス (MJs)  メルボルン、オーストラリア

      2 Sets of RGB Images  (6, 14 May 2016) 30cm Spec with a DMK21AU618

    熊森 照明 (Km)  堺市、大阪府

      6 LRGB + 6 B Images (1, 7, 11,~14 May 2016) 35cm SCT @ f/30 with an ASI120MC & ASI178MM

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

      2 Colour Images (9, 12 May 2016) 25cm SCT with a ToUcam pro II

    フィル・マイルズ(PMl) クイーズランド、オーストラリア

      1 IR Image (13 May 2016)  51cm Spec, with a Grasshopper3 GS3-U3-3254M

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

      3 Sets of RGB Images (2, 5, 6 May 2016) 31cm SCT with a Flea 3

    ミカエル・ロゾリーナ(MRs) ウエストバージニア、アメリカ合衆国

      1 Colour Drawing (14 May 2016)  35cm SCT, 330×

    クリス・スメト(KSm) ベルギー

      1 Colour Drawing (4 May 2016) 31cm Spec, 310×

    ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ    

      1 RGB Colour Image (4 May 2016) 36cm SCT @f/18 with a QHY5L-II

    モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

      7 Sets RGB + 7 IR Images (1, 6, 15 May 2016)   36cm SCT @f/24 with an ASI120MM

    ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン

      1 Sets of RGB Images (5 May 2016) 22cm speculum @f/23 with a DBK21AU618

    デビッド・ウェルドレイク (DWd) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

      2 Sets of RGB Images  (6 May 2016)  13cm refractor @f/40 with an ASI120MM

    アンソニー・ウエズレイ(AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

      4 Colour +1 B + 1 IR Images  (5, 6, 10, 12,~14 May 2016)  (51cm Spec)

    ティム・ウイルソン(TWs) ミズーリ、アメリカ合衆国

      3 Colour + 2 IR Images (6*, 7**, 11, 13, 14 May 2016) 28cm, 20cm*, 25cm** SCT with an ASI120MM

 

 # Planetary Plasma and Atmosphere Research Center (PPARC) 東北大学: ハレアカラ山、マウイ島、ハワイ

 

 

 ・・・・・・ この半月間の観測報告を、今回も時間を追ってレビューする

 

1 May 2016 (λ=146°Ls, δ=16.1"~16.2")

   Maurice VALIMBERTI (MVl)氏がカラーカメラASI 224MCからASI 120MMに戻り、(ω=194°Wφ=07°N)で、RGBの分解像から綺麗なRGBコンポジットを作像した。他にω=195°WでのIR像。 MVl氏の前の画像は24 April (λ=142°Lsι=21°) ω=272°Wω=280°Wφ=06°Nであった。これは詳細には富むものの、われわれの觀點からは荒れた像に見えたが、今回の合成像は穏やかで、ニュアンスに富み、気持ちのいい像である。R像にはハーシェル・クレータが明白でゲール・クレータを先端に持つアリンコの脚も程よく描冩され、ヘスペリアからマレ・テュッレヌム に掛けての濃淡も素晴らしい。アエテリアの暗斑も旧来の姿を見せているが、プロポンティスIは何故か詳細に欠ける。オリュムプス・モンスの西山腹はRでも出ているので、寧ろ固形物に近いのだろう。Gで南極のフードになる前兆のcanopyが著しくなっているが、これはB像で綺麗である。やや波打つので浮遊物であろう。Bでは特にエリュシウム・モンスの笠雲が小さく白く抜け出ている。RGB合成像では、北極冠はシャープではない。Rで見ると、縁から些し離れた場所に横たわる平たいものがある。夕端のオリュムプス・モンスの白壁はRGBでは各分解色が揃っているので純白で盛り上がったように見える。砂漠の色合いも綺麗である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160501/MVl01May16.jpg

 

     Stefan BUDA (SBd)が続いてω=210°W 120MMによる合成像一像を提出した。

MVl氏より一時間違いで 、オリュムプス・モンスはターミネーター上まで動いた。ハーシェル・クレータはMVl氏像より中に入って よりやや濃淡差が出ている。北極冠あたりの詳細(雲状帯など)もキレが好い。エリュシウム内部の明部の色彩の違いに注目。プロポンティスIMVl氏同様、惚けている。MVl氏像と共通する像の緩みは位相角の減少で衝効果が出始めているのかもしれない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160501/SBd01May16.jpg

 

   Teruaki KUMAMORI (Km)氏はω=251°W L-colour像、ω=255°WB像を撮った。LRGBは色が綺麗だが、暗色模様の輪郭は惚けてキレがない。全體粒子が粗い感じだが、シュルティス・マイヨルの紺色は綺麗。、エリュシウムの内部の色彩は分離している。南極のcanopyはっぽい。Bではエリュシウムと南のcanopyが明るく冩り、北極冠は出ない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160501/Km01May16.jpg

 

 

2 May 2016 (λ=146°Ls~147°Ls, δ=16.2"~16.4")

   Efrain MORALES (EMr)氏はω=066°W RGB成分を撮り、RGBコンポシットを作った。Rは好く出ていると思うが、合成像は擴大されている爲、暗色模様など惚けている(R のチトニウス・ラクスの締まりと擴大RGBでの弛みを比べると判る)GB像が素晴らしく、夕方からの赤道帶霧が好く表現されている。オピルの北側には霧があるが南部は些し晴れていて、RGBでも目立つ。霧はガンゲスの邊りにも漂う。アスクラエウス雲は出ているらしい。 RGB ニリアクス・ラクスに先立つ濃い夕霧には注目。北極冠も所在が判る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160502/EMr02May16.jpg

 

    Clyde FOSTER (CFs)氏はω=337°W224MCによるL-colour像とIR685像を得た。暗色模様は細かい斑點まで強調されている。些し過剰気味で、色彩の方が壊れ、白が濁っている。詳細は朝方ではアラム・カオスや、アリュンの右側の爪の先の斑點、オクスス斑點(Oxus dark segment=Ods)など明確、夕方ではシュルティス・マイヨルの北先端のアントニアヂ・クレータ、南部のホイヘンス・クレータ、シュレーター・クレータがチェックできる。ヤオニス・フレートゥムも濃い。注目すべきはシュルティス・マイヨル北部の「上の」霧が 滑らかではなく、分裂気味であることで、これがアエリアの方へも流れている様だが、白斑點が黄色く地から区別し難い。残留極冠も黄色い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160502/CFs02May16.jpg

 

 

4 May 2016 (λ=147°Ls~148°Ls, δ=16.5"~16.7")

     Kris SMET (KSm)氏は31cmドブソニアンでω=356°Wの火星面をスケッチした。地面は黄色く表現されている。シヌス・サバエウス+シヌス・メリディアニとマルガリティフェル・シヌスの東岸がアラムでクッキリと分かれている。マレ・アキダリウムにも濃淡を見ようとする努力が顕れている。δ=16.5"であった。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160504/KSm04May16.jpg

 

     John SUSSENBACH (JSb)氏のω=013°WでのRGB合成像單像である。些し、ブレがあるようで、細かい模様は出ていないが、アリュンの爪やブランガエナは出ている。マレ・アキダリウムの北端もイアクサルテスの近くの雲までリアルだが、北極冠は出ていないか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160504/JSb04May16.jpg

 

 

5 May 2016 (λ=148°Ls, δ=16.7"~16.8")

     CFs氏のこの日はω=333°Wφ=8°N L-colourIR685像。出来は2Mayの像に劣るが、Odsなどは出ている。色の悪いシュルティス・マイヨルの北部の上に霧の塊があるが、アエリアへの出っ張りは鮮明ではない。イアクサルテスの西隣の雲は明るい。北極冠とは独立。南端の靄は切れぎれ、夕端のヘッラスも鈍い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160505/CFs05May16.jpg

 

     EMr氏のω=049°Wに於ける三色成分とRGB合成像。今回はRに鮮鋭度がなく、重たそうな模様ばかり。但しブランガエナなどは見える。B画像が好く、夕端近くの夕霧のニリアクス・ラクスの東に地肌が出ているところが見える。南極のcanopyは青白く綺麗。イアクサルテス西の雲は発達してイアクサルテスを隠し、場所は違うが、1Mayω=210°Wで北極冠と雲が二枚に見えたのと同じ現象がここでも起こっていると考えられる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160505/EMr05May16.jpg

 

     Anthony WESLEY (AWs) ω=225°WでのRGB画像を一枚提出。円盤に入ってきたばかりのシュルティス・マイヨルを朝霧が覆っているのが綺麗である。CM近くではエリュシウム・モンスの雲が些し詳しくなった。北極冠地域の二枚構造はオリュムピアの所爲で、黒い筋はリマ・ボレアリスであろう。画像處理は無理をしていないように見えるが、ゲール・クレータの脚などにはゴーストが出ているようだ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160505/AWs05May16.jpg

 

   Johan WARELL (JWr)ω=312°Wの三色分解像とRGB合成像を送ってきた。われわれの古い友人だが、今はプロの天文家である。火星はアマチュア風に観測する。夕端からシュルティス・マイヨルまで夕霧が濃く伸び、ヘッラスの南部はλ=148°Lsでも霧状であることを示している

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160505/JWr05May16.jpg

 

 

6 May 2016 (λ=148°Ls~149°Ls,  δ=16.8"~16.9")

      CFs氏がω=323°Wでいつもの像を作った。L-colour像は見事なものなのだが、白色の再現が弱いと思う。もしこれが巧く描ければ、シュルティス・マイヨル北部の上のひねくれた霧か雲の塊も、ヘッラスから南極へ走る白色ガスも綺麗に出たであろう。キレの悪い暗色模様のぼけ具合はシヌス・メリディアニで判断できる。なお、マレ・アキダリウムの北側の雲の塊は依然強く殘っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/CFs06May16.jpg

 

    EMr氏はω=030°WRGB作業を行った。オキシア・パルスからアラム・カオス邊りを見ると上等な描冩だが、全体的には相変わらず暗色模様は骨太にみえる。但し、Bの働きが好く、エデン近くが夕縁に掛けて濃い霧が見え、北極冠の南の雲が直立して、GB 共に好く出ていて、Rではイアクサルテスの東側ということを示している。初めて見る光景である。南ではアルギュレ邊りをガスがcanopyを作っている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/EMr06May16.jpg

 

     Tim WILSON (TWl)氏がω=067°W120MCカラー像。色収差を依然感じるが、これまででTWl氏最上の像であろう。ニロケラスやチトニウス邊りは好い。大きなソリス・ラクスも出ている。もう少し早い時刻ならシヌス・メリディアニも夕辺に見えたであろう。南極や北極冠近くで白が足りない。白がないと朝方を描けない。 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/TWl06May16.jpg

 

     David WELDRAKE (DWd)氏がω=118°Wω=129°Wで二組のRGB像を撮り、二葉のRGB像を合成した。両者では40分ほどの違いがあるが、オリュムプス・モンスに付随する白雲の濃度が後者の方が強いのが、B像で判る。また、アスクラエウス雲は後者では見えているが、前者では殆ど見えない。位相角13°の時點で、アスクラエウス雲がどの辺で濃くなるかの判断が出來る。一方、λ=134°Lsの時點でω=115°Wで撮られたMark JUSTICE (MJs)氏の画像が8 Aprilで既に發表されているので状況を比べてみると好い(これはω=105°W の像と対になっている)MJs氏とDWd氏では口徑差が大きく、またιMJs氏の場合29°であるから、地方時が16°も違う。今の場合LCM(ω)3°の差があるから角度にして19°の差があり、時間にすると1時間20分ほど違う。DWd氏の方のアスクラエウス・モンスはこの時間だけ夕縁から遠い、太陽の高度は20°程未だ高いと言うことである。当然、雲の活動も遅くなる。もう一つ、ιが小さくなるということは衝効果が顕れるということがあり、薄い雲の見え方は違ってくるということもある。更にλ134°Lsから148°Lsに進んでおり、アスクラエウス・モンスに関わる雲活動のピークはλ=110°Lsであり、λ=120°Ls以降は下降気味であるから、MJs氏の場合に比べて雲は弱くなっているはずで、口徑差を除いてもDWd氏の画像はその結果を示していると思う。DWd氏のω=129°WGB像では未だ夕方の白斑の並びが綺麗で、両者比較できることは好いことである。ただ、像のサイズがやや小さすぎて、オリュムプス・モンスの全体像が浮かばないのは仕方のないことか。なお、ソリス・ラクスが雲を被らずに没してゆく。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/DWd06May16.jpg

 

    MVl氏が120MMからの合成法でω=154°W159°W164°W167°W172°Wで五連作を齎した。13:18GMTから14:33GMT迄の労作である。なお、それぞれにIR像が付随している。ここで新しい様相を示すのは、オリュムプス・モンスである。ω=154°Wで既に午後側に移っているが、オリュムプス・モンスのカルデラの外に光輪が見えている。衝が近づいて太陽光線がオリュムプス・モンスの山麓から反射光が均等にやって来ていると思われる。衝効果の一種だろうが、これがこんなに美事に見られるのは珍しい。ι=13°で、オリュムプス・モンスが夕方に來て、好い位置に入ったのだと思う。特に、ω=164°W~165°WB光像とIR像を対比出來るのは興味深く、IRは雲には鈍感なはずで、IRの示すところでは反射光が見えているわけだから、西山腹の雲も幾らかフロスト状であるかもしれない。しかし、IRでは矢張り弱いから、夕方では浮遊物が勝っているかもしれない。オリュムプス・モンスは衝前後に輝くことは知られている。2014年の衝直前の場合は、John SUSSENBACH氏やRichard BOSMAN氏の1 April 2014 (λ=111°Lsι=06°) ω=113°Wω=121°Wほか、衝直後にはEMr氏の9 April (λ=114°Ls) ω=129°W--特にR像、衝直後Mo氏やKm氏の夫々24 April (λ=121°Lsι=13°) ω=124°W/134°Wω=129°Wなどで光輪像は見えていたが、今回のような浮き上がったような、まるでHSTで撮った環状星雲M57のような綺麗さはなかった。所謂山岳雲も斜光でなければ想像以上に淡いものかもしれない。ω=164°W以降ではタルシス山系の雲も目立ち、オリュムプス・モンスの光輪も更に綺麗になり、最後ω=172°Wではタルシス山系もターミネータ近くになって微細が判らなくなる。最後はエリュシウムもそっくり円盤に入り、アエテリア暗斑の後続境界も綺麗に見え、エリュシウム・モンスの雲はまだシッカリしない。朝霧はエリュシウムからリムまでかすかに出ている。朝方にはハーシェル・クレーターがよく見え始めた。南極のガス雲は大きな広がり。すべてでマレ・シレヌムの南のカラリス・フォンスが見えている。マレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの繋がりも窺える。北極冠邊りは黄色みが強く、もっと白くならないかと思うが、オリュムピアが最後は(リマ・ボレアリスを挾んで)北極冠に被さるように出ている。 IR像はプロポンティスIの形を探るのに好い(特にω=165°W)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/MVl06May16.jpg

JSb:  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/JSb01Apr14.jpg

RBs:  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140401/RBs01Apr14.jpg

EMr:  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140409/EMr09Apr14.jpg

Mo:  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Mo24Apr14.jpg

Km : http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Km24Apr14.jpg

 

   お待たせMark JUSTICE (MJs)氏はω=186°Wで三色分解によるRGB合成像を得た。B像の働きによるか、白霧の分布が特に周邊で綺麗である。ケブレニアの一部にもガスが見える。オリュムプス・モンスは通常の西山腹に白雲が強い。もう80分前から更に二組取っていれば面白かったろうと思う。エリュシウム・モンスの白雲が形を成してきた。北極冠の南にオリュムピアが鎮座する。トリウィウム・カロンティスの邊りは廣く伏す褐色で擴がっている。全體綺麗な像である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/MJs06May16.jpg

 

    AWs氏がω=221°Wで詳細を伴う綺麗な像を一葉提出した。シュルティス・マイヨルが朝端で霧の下である。ハーシェル・クレータなど好く出ているが、ゲール・クレータの 前方の筋はゴーストであろう。ゴーストの出るような強調処理は感じられないのですがね。オリュムピアのあたりの描冩も優れている。ケルベルスはよわいが、アエテリア暗斑はあたかも二本筋のようである。極雲の走りを見るのにAWs氏の像は有用だろう。(1986年にはλ=148°Lsの時にはδ=9"しかなく、φ4°S程度であった。2001年にはδ=12.6"ぐらい、φ=01°S邊りであった。)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160506/AWs06May16.jpg

 

 

7 May 2016 (λ=149°Ls, δ=16.9"~17.0")

    TWl氏がω=044°WIR807の單像を与えた。些し明部の輝きがないが、暗色模様は標準以上に示せている。夕端近くのアリュンも二股に分かれているし、クリュセの南端のモヤモヤ模様もイウエンタエ・フォンスも含めて完璧に押さえている。チトニウス・ラクスもOK。イアクサルテスに後続の二本目の運河も出ている。ただ、北極冠などIRでは出ないので、B像を作ることを先ず考えるべき。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160507/TWl07May16.jpg

 

    Km氏がω=195°WL-colour像、ω=196°WB像を与えた。L-colour像は好い色彩でサムネールでは好い感じだが、實際の大きさでは模様は暈け気味である。ガスの拡がりは好く捉えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160507/Km07May16.jpg

 

 

9 May 2016 (λ=150°Ls, δ=17.2"~17.3")

     CFs氏がω=297°WL-colour像と ω=299°WIR685像を与えた。前者は夕霧がシュルティス・マイヨルのクロケア邊りから中央付近に及んでいることを示すが、白色が黄色く汚れた感じである。ヘッラスの濃白色も黄色い。北極冠も黄色い。IR圖も繊細な描冩がない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160509/CFs09May16.jpg

 

     Peter GORCZYNSKI (PGc)ω=008°Wω=014°Wで二組のRGGセットから二葉のR-RGB像を合成し、更に二×二組のIR685(ω=011°Wω=016°W)IR742(ω=012°Wω=018°W)を与えた。ASI 290MMの使用だが、シーイングの所爲か、R像が平凡で、たとえばブランガエナの痕跡も見られない(一方IR像ではいずれにも見えている)。從って、R-RGB像は詳細からほど遠く、暗色模様のキレも色合いも感心しない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160509/PGc09May16.jpg

 

     Frank MELILLO (FMl)氏はω=020°Wで單カラー像を作った。マレ・アキダリウム、マルガリティフェル・シヌス、クリュセの南部などは様子が判る。南極のフードも好く見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160509/FMl09May16.jpg

 

 

10 May 2016 (λ=150°Ls~151°Ls, δ=17.3"~17.4")

      AWs氏がω=125°W IR(685)を一個送ってきた。オリュムプス・モンスの裾野が中央に光輪として見える。タルシス三山も頂上が淡く見えるが、光輪は誤差の範囲。マレ・シレヌム南のカラリス・フォンスは淡い。        

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160510/AWs10May16.jpg

 

 

11 May 2016 (λ=151°Ls,  δ=17.4"~17.5")

     TWl氏が28cmSCT採用でω=005°Wの画像。120MM使用の合成像である。6Mayの画像より数段優れている。ブランガエナも出ているし、ネウドルス二本も見えていて、詳細描冩は申し分ないが、暗色模様も含め色合いがおかしい。夕縁の霧と南極の靄は見えるが白さが弱く、IR807の使いすぎかもしれない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160511/TWl11May16.jpg

 

      Km氏が ω=161°Wφ=9°Nで、L-colour像とB画像。カラー像では白が好く出ているが、 オリュムプス・モンスの雲は6May(λ=148°Ls)MVl氏のω=164°W167°WRGB画像の表現と比較すると違和感がある。ただ、基本的には西山腹には雲か固形物があって、場合によってはこのように盛り上がった通常の形が見えるのかも知れない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160511/Km11May16.jpg

 

     CFs氏がω=261°WL-colour 像とIR像を与えた。暗色模様は濃淡に富んで詳細を与えているように見えるが、アントニアヂ・クレータ邊りを チェックすると模様にキレが無く、また全體に白さに乏しく、色合いが汚れている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160511/CFs11May16.jpg

 

 

12 May 2016 (λ=151°Ls~152°Ls,  δ=17.5"~17.6")

      PGc氏がω=335°W339°Wφ=9°N 290MMワンセットとR-RGB合成像、それに二種のIR像を与えた。R-RGBというのは初期によく見られた方法だが,R像がよほどメリハリが効いたものでないとおかしいのではないかと思う。この場合のRは宜しくない。ただ、B像が好く効いて、夕霧がシュルティス・マイヨルを侵している様子は好く出ている。ただし、南極のフードは殆ど見えない (Bでは出ているが、Rを被せて消した格好)IRでヘッラスからシュルティス・マイヨルまで夕端でずんべらぼうに見えるのは興味深い。(PGc氏は昔からのメムバーで、2014年は120MMで良質の画像を撮っていたのですがね。たとえば、δ=11.7"の時の2June 2014 ω=320°Wなど。) 高度が低いのは、Km氏なども同じだからね。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/PGc12May16.jpg

 

   FMl氏は ω=352°Wで綺麗な気持ちの良い色合いの像を得た。夕霧のシュルティス・マイヨル上への浸透、アラムの明るさ、南極フードの様子など押さえている。オクシア・パルス邊りも暗示的。アリュンの爪も分かれそうな感じ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/FMl12May16.jpg

 

   Tsutomu ISHIBASHI (Is)氏が参加、Videoからの作像で、ω=112°Wω=120°Wの像。後者の像で、オリュムプス・モンスが些し判るか、というところ。南極フードの濃い部分がよく判る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/Is12May16.jpg

 

     Km氏がω=127°WL-colour像とω=128°W178MMによるB像。LRGBは白の配置が好いのだが、シーイングによるか、模様は些しぼけ気味。CM附近のオリュムプス・モンスの光輪は真ん中の暗點が些し判る程度。夕端オピルあたりで濃い夕霧が目立ち、沈んだマレ・アキダリウム後方にも夕霧。南極のガスは青白い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/Km12May16.jpg

 

   Tomio AKUTSU (Ak)氏が宇都宮大学天文台の40cmカセで撮ったω=129°Wω=140°Wでの二葉のRGB合成像と付随する分解像(B)IR像を提出された。オリュムプス・モンスは南中近くと南中後だが、BでもRGBでも稍明るいという程度。惑星状星雲のようには見えない。二葉の内、前者が阿久津色だと思う。前者の夕端のオピル邊りとマレ・アキダリウム後方に濃い夕霧(前者の方が濃い)。南極フードにも濃い白の部分がある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/Ak12May16.jpg

 

    AWs氏は ω=151°W RGB單像。圧巻はクッキリ浮き立つ惑星状星雲のようなオリュムプス・モンスの光輪の輝き。全體、白の分布も好く、パウォニス・モンスも光輪か。アルシア・モンスは些し霧が掛かったような感じ。北極冠の暗帯の外には小さな白点が五個以上並んでいる。プロポンティスIはチェック型で見えている。アエテリアの暗條は見えているのでエリュシウムは完全に中に入っているが、エリュシウム内は朝霧が然程ではない。ι=8°の所爲かもしれない。λ=151°Ls での南極地での白靄の拡がりの見本。

 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/AWs12May16.jpg

 

 

13 May 2016 (λ=152°Ls, δ=17.6"~17.7")

      CFs氏がω=260°WL-colour 像とIR像を与えた。暗色模様地帯は濃淡に富んで、魅力的だが、マレ・キムメリウムの西北端の様子やシュルティス・ミノルの詳細などそろそろ出ても好いのではと思う。南極フードの範囲は好く判るが、フロストか浮遊物かの判定にはもう少しデリケートな描写が必要。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/CFs13May16.jpg

 

     EMr氏がω=313°Wω=330°Wで二組のセットを作った。両者ともヘッラスの北部が干しあがっていて異様であり(EMr氏の8 April (λ=134°Ls) at ω=316°Wなどと比較すると好い)12MayPGc氏のIR像で、夕端のヘッラスからシュルティス・マイヨルに掛けてずんべらぼうに見える理由が解る。二つの像で夕霧がシュルティス・マイヨルの北部に入ってくる様子が判る。イスメニウス・ラクスの北に東西に棚引く雲帯が見られる。いずれもBで顕著。ω=331°WではOdsが見える。北極冠健在。

 


http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/EMr13May16.jpg

 

   Carlos HERNANDEZ (CHr)氏はω=327°Wでカラースケッチを行った。夕霧がシュルティス・マイヨルを侵す様子が描かれている。アリュンの爪が朝方で見えるようだ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/CHr13May16.jpg

 

    TWl氏はω=346°W120MMによるRGB合成像、然しIR807をどこかで使ったようで折角の暗色模様に精彩が無く、白が生きてこない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/TWl13May16.jpg

 

   Km氏の好い角度ω=124°Wの良像。好い角度というのはオピルに霧の懸かる様子が出ている(Bに依れば可成り濃い)。チトニウス・ラクスも明確。それと、マレ・シレヌムの尻尾が長く、O=120°W邊りまで伸びている。ニロケラスの二つ爪も殘っている。オリュムプス・モンスの光輪も見える。タルシス三山も辿れないことはない。北極冠の邊りの微細も出ている。南極のフードの拡がりも綺麗。過剰處理でないため、フロストのようには見えない。                             

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/Km13May16.jpg

 

    Phil MILES (PMl)氏がω=140°WIR(700nm)單像。大きな像で、オリュムプス・モンスの光輪がCM附近に見える。これは霧状ではなく盾状台地からの反射であろう。

 北極冠の南の斑點群も雲ではなくフロストなのであろう。12Mayω=151°WでのAWs氏像に冩った白點群も雲ではなくフロストであろう。プロポンティスIはチェック型。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/PMl13May16.jpg

 

    AWs氏がω=142°W B光像を提出し、PMl氏のIR像との対比が面白い。AWs氏のB光ではオリュムプス・モンスはリングに見えない。西山腹にIRに引っ掛からないような雲かフロストがあるということか。面白い現象である。前日のAWs氏のRGB像は10°W違いだが、これにも西山腹の雲かフロストがあるという風に考えるべきかと思う。このあたりの考察には 6 May(λ=148°Ls)VMl氏の諸像と勘案して考察する必要がある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/AWs13May16.jpg

 

 

14 May 2016 (λ=152°Ls~153°Ls, δ=17.7"~17.8")

    TWl氏のω=307°WでのIR807赤外画像。ヘッラスが底を見せているらしい様子。ホイヘンス・クレータは見えてます。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/TWl14May16.jpg

 

   Michael ROSOLINA (MRs)氏のω=336°Wのカラースケッチ。ヘッラスは夕端で明るいらしい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/MRs14May16.jpg

 

    Is氏の ω=089°Wω=096°Wvideoによるカラー像。ソリス・ラクスの存在は解る他南極フードの明るさも出ている。オリュムプス・モンスを狙ったものだろうが、両者とも不明確。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/Is14May16.jpg

 

   Km氏のω=107°Wでの良像のL-colour像とB像。ソリス・ラクスはBでも濃いというのは晴れているということか。オピルはBでも明るい。オリュムプス・モンスはBでは殆ど見えないほど。L-colourでは ソリス・ラクスは内部構造も判るようになった。確かに霧は見られない。南極のフードの描冩は白の案配が好く綺麗である。マレ・シレヌムの東側の尻尾は長いが、フードの端と引っ掛かる様になった。オピルの霧は北部に強い。 アウロラエ・シヌスは夕霧に中に細かく見える。クサンテは夕端で白い。ニロケラスの二本つめは明確。オリュムプス・モンスの光輪は朝方だが見える。タルシス三山の頂上も把握できる。パウォニス・モンスも光輪か。フォルツナ二重リングも微かに冩っている。北極冠の暗帯の南の氷化した斑點の並びが見える。

[ 付記:北極冠がλ=150°Ls過ぎても健在ということはφ9°Nとなると小口径の眼視では判らないことかもしれないが、佐伯著では北極冠はλ=145°Lsで消失となっている。しかし、2014年の22June(λ=150°Ls)のデュポンさんの18cm反射による画像ではφ=25°Nということもあって、北極冠はマルマルと見える。OAA火星課の觀測は綿密ではなかったということであろう。]

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/Km14May16.jpg

 

   MJs氏はω=109°Wで、エレメントをワンセットとRGB合成像を得た。B像が好く、RGBでは白い靄状のところがソリス・ラクス辺りを除いて周辺部に目立つ。Bではオピルが濃く明るいが、實際にそうなのか、先行のアウロラエ・シヌス邊りは地が濃いから霧があってもBに弱く反応するのか、どっちでしょう。Bでオリュムプス・モンスは稍明るい。テムペには東西に靡く白霧。Rではソリス・ラクスなど内部構造が感じられるし、チトニウス・ラクスの諸斑點もリアルなのだが、R像の全體に亙ってコントラストが低いのは衝が近いからか、コントラストの強調を避けているからか、どちらでしょう。穏やかな好い像ですな。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/MJs14May16.jpg

 

     AWs氏はω=132°WRGB合成像を示した。分解像が示されないが、B像の霧表現はMJs氏より弱く、R像では些しコントラストが高いのではないかと想像する。マレ・シレヌムは斑點の集合体であるが、カラリス・フォンスは何處か。東側に尻尾は相当延びている。ソリス・ラクスは沈み掛け。オリュムプス・モンスはCM近くで、光輪型。パウォニス・モンスも光輪がた。アスクラエウス・モンスもそれに近い。矢張り衝効果でしょう。オピルは雲一杯。プロポンティスIはチェック型。

 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160514/AWs14May16.jpg

 

 

15 May 2016 (λ=153°Ls, δ=17.8"~17.9")

     Tadashi ASADA (As)氏が遠隔操作で(日本の夕方に)ω=047°Wの火星を撮り、RGB像を並べた。R像では暗色模様は何れも揃っているが、調整不足か輪郭がどれもシャープではない。B像も南極フードを除けば明部の分布も曖昧で、ニリアクス・ラクスの先行部の霧の配置などが判らない。エドムの北(像の端)に一寸分布しているようだが。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160515/As15May16.jpg

 

   Barry ADCOCK (BAd)氏から25cm屈折による像を頂戴した。像としては不十分でボケボケだが、夕縁のシヌス・メリディアニからチトニウス・ラクスまで冩っている。オピルは明るい。マレ・アキダリウムも結構判りますな。ニロケラスに敬服。どういうプロセスの像かは判らない。アドコックさんは『火星通信』の古くからの付き合いで、2009年にパリでMnはお会いした。Mnより年配に見えたが、そうでないかもしれない。MVl氏などの親分。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160515/BAd15May16.jpg

 

   MVl氏が 三組のRGB画像を得、それから三葉のRGB画像を、それぞれω=062°Wω=069°Wω=072°Wで作像した。ただ、どのR像もメリハリの効かない感じで、ω=061°WR像ではソリス・ラクスが潰れてマレ・エリュトゥラエウムのあたりも暗色模様ながら平板に潰れて奇妙な感じである。但し、チトニウス・ラクスの邊りやアウロラエ・シヌス近く、マルガリティフェル・シヌスの北先端などはブランガエナと共に詳細は摑める。マレ・アキダリウムも輪郭はおぼろげながらそれぞれは存在している。マレ・アキダリウムの北部から二本脚が出てヒュペルボレウス・ラクスと繋がっている。これは角度が進んでも変わらない。ブランガエナはだんだん薄くなるのが角度が進むということと対応している。どれからもタルシス山系は窺えない。南極フードはガスが覆っている感じで、北極冠は案外明確に見える。結局RGB像は靄が懸かったような印象である。IR像だけが詳細を示すが、これとて、弱い感じである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160515/MVl15May16.jpg

 

  ・・・・・・ 追加報告

    阿久津 富夫 (Ak)  那須烏山市、栃木県 (セブ、フィリッピン)

   17 RGB Colour +1 R+ 17 B + 16 IR Images (24, 25, 27,~ 30 April 2016)

                             36cm SCT with an ASI 174MM

    チャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア

    1 Set of LRGB Images (10 April 2016)   25cm SCT @f/27 with an ASI120MM

 

  Ak氏からはセブ・シリーズの17画像と、CTr氏より上記のように追加報告をいただいていますが、レビューは次号といたします。ご了承ください。


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