CMO/ISMO 2018 観測レポート#01

2017年十一月末までの火星観測 (λ=072°Ls ~λ=094°Ls)

南 政 次・村上 昌己

CMO #464 (25 December 2017)


・・・・・・  いよいよ、2003年以来の大接近の観測期が始まった。最接近は2018年七月31日で、視直径δ24.31"まで大きくなる。第一回目のレポートは十一月末までの『火星通信』に寄せられた観測を元に纏める。

嚆矢はわが国の熊森氏で、十月9(λ=072°Ls)の観測であった。この時点での視直径δはわずか3.7"で、赤色光画像にシュルティス・マイヨル、ウトピアを中央に置いた暗色模様が見事に捕らえられていた。続いて南アフリカのフォスター氏からも報告が入り始めて、十一月末までに下記の四名の方からの画像が入信している。

この期間には火星は七月末の「合」を過ぎて朝方の「しし座」から「おとめ座」へと順行を続けていた。視赤緯Dは南へ低くなって行き北半球での観測条件は悪くなって、日の出時の高度も低く、撮影時間はまだ長くは取れない。十一月にはいると視直径もδ=4.0"を越えて、月末にはδ=4.2"に達している。また季節はλ=094°Lsまで進んで、20日には北半球の夏至(λ=090°Ls)に達した。火星面の傾きはφ=25°Nと大きく北半球がこちらを向いていたが、少しずつ南へ戻ってφ=22°Nになっている。位相角ι19°から25°と南半球夕方側の欠けが増えている。後半にはカラー画像も入るようになっているが、まだ少ない。RIR光画像では詳細は難しいが、主要な暗色模様は捉えられている。

 

 MRO MARCI の破れ提灯画像を見ても、残留北極冠周辺のダストの活動や、オリュムプス・モンス、タルシス・モンテス、エリシウム・モンス周辺などの山岳雲の活動など、季節的な活動が捉えられている。ヘッラスも白く明るく見えている。大きな擾乱は起こっていない。

  右画像は、残留北極冠と、イアクサルテスからマレ・アキダリウム北部を覆う塵雲の様子。

 

 

 

 

 ・・・・・・ 十一月末までに報告のあった観測を以下のリストに纏めた。国内からは211観測、アメリカ大陸側から11観測、南アフリカから114観測で、ヨーロッパ・オーストラリアからの報告はまだ無かった。合計では4名から26件の観測報告だった。阿久津氏は今シーズンからは、茨城県の生まれ故郷ヘ戻っての観測となった。

 

 

    阿久津 富夫 (Ak)  常陸太田市、茨城県      

     1 IR Image (16 November 2017)  32cm Spec with an ASI 290MM

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

      3 Sets of RGB + 14 IR Images (12 October; 1, 3, 5,~8, 10, 17, 19, 21, 26, 27, 29 November 2017) 

                                        36cm SCT @ f/27 with an ASI 290MM

    熊森 照明 (Km)  堺市、大阪府

      2 LRGB colour* + 10 R + 2 B Images (9, 26, 31 October; 1, 4, 9, 12, 16*, 20*, 27 November 2017) 

                                        36cm SCT @ f/35, 40 with an ASI 290MM & ASI 224MC*

    ティム・ウイルソン(TWs) ミズーリ、アメリカ合衆国

      1 IR Image (26 November 2017)  20cm SCT with an ASI 290MM  

 

 ・・・・・・ 何度も述べるように、Km氏の9Oct(λ=072°Ls) ω=271°Wの像はδ4"以下の像としては秀逸で、北極冠域の明るさやヘッラスの明るさが比較できるし、夕縁も複雑に出ている様で、時間的に無理だが、夕縁近くが撮れたらもっと面白いと思う。ヘッラスはλ=100°Ls近くになれば真っ白と思われる。ウトピアのとんがりの北辺りも或るニュアンスが出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171009/Km09Oct17.png

   31Oct(λ=082°Ls) ω=060°WKm氏のR像もヒュペルボレウス・ラクスが綺麗に分離し残留北極冠との対照が好い。ニリアクス・ラクスも可成り大きく描かれガンゲスとオピルの対照も綺麗。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171031/Km31Oct17.png

   1Nov(λ=082°Ls)でのCFs氏の像はω=155°Wで、甚だ位置取りが難しいところだが、北極冠外周の暗部が出ており、残留北極冠は割れているようにも見える。黄塵がが横切っている可能性もある。Km氏は同日ω=050°Wで撮り、ニリアクス・ラクスが大きく見える事も前と同じだが、クリュセに暗線が奔るようにも見える。残留北極冠の大きさも手頃、ヒュペルボレウス・ラクスが淡い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171101/CFs01Nov17.png

   3Nov(λ=083°Ls)でのCFs氏のω=135°W像でも北極冠域が分裂している様に見える。こういう場合、時間が取れるようになれば、廿分以上離して最低二枚が必要。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171103/CFs03Nov17.png

    4Nov(λ=083°Ls)Km氏のω=019°W像も秀逸である。マレ・アキダリウムの本体が微妙に良く、イアクサルテスが奔っている。残留北極冠 も好い形。アルギュレは目立っていない。オキシア・パルスが明確で、北に運河が奔っている。矢張りクリュセに暗線が走っているように見える。δ=3.9"の像とは思えない程素晴らしい。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171104/Km04Nov17.png

6Nov(λ=084°Ls) ω=102°WCFs氏の像は可成り詳細が出ているが未だ分かり難い。ただ北極冠域では本体が出ているようである。次の日でも同じ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171106/CFs06Nov17.png

    9Nov(λ=086°Ls)Km氏のω=335°W像はメリハリが効いて好い感じ。残留北極冠が明るい。マレ・アキダリウムのこういう姿はなかなかお目に掛かれない。アラムが明るく良いコントラストである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171109/Km09Nov17.png

   12Nov(λ=087°Ls)ω=308°WKm像は9Novの像よりコントラストは落ちるが、エドムの明るさが出ていて、暗部としてはデオスクリアからキュドニアにかけて暗點の点在が美事。そろそろヘッラスである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171112/Km12Nov17.png

   Km氏の16Nov(λ=089°Ls)ω=261°Wの像はカラーで、見る方も気分がいい。ヘッラスは真っ白ではないが、白く入って來ている。夕端のエリュシウム・モンスによる白さは際立っている。アエテリアの暗斑がそのあとを追う。残留北極冠は穏やか。他にヘスペリアが切れていて美事。ウトピアも大きく濃淡があり秀逸。derotation6°Wぐらい行っている。同日ω=263°Wで阿久津(Ak)IR685像を撮っている。シュルティス・マイヨルが見える程度で、ウトピアも淡い。Km氏像と殆ど同じアングルだが、細工に差があるのだと思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171116/Km16Nov17.png

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171116/Ak16Nov17.png

   20Nov(λ=090°Ls)でのω=222°WKm氏像は前回より少し落ちるがエリュシウムは好く出ているし、マレ・キムメリウムの詳細も判るような感じである。残留北極冠は可成りの白さであるようだ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171120/Km20Nov17.png

     CFs氏の21Nov(λ=090°Ls)ω=307°WIR像にはシュルティス・マイヨルが可成り濃く出ている。シヌス・サバエウスも全体が垂れて見えている。残留北極冠も小さく見えている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171121/CFs21Nov17.png

   26Nov(λ=093°Ls)ω=258°W CFs氏像はカラーで分解像から造られている。ヘッラスは白く、エリュシウムも夕端で白い。残留北極冠は白さは落ちるが、ピンク色に暈けている。

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171126/CFs26Nov17.png

  CFs氏の 27Nov(λ=093°Ls)ω=250°W像もカラーで、ヘッラスは感じの好い白。エリュシウムも白い。北極冠域は暈けている。沙漠の赤味は好い感じ。

     http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171127/CFs27Nov17.png

    CFs氏は29Nov(λ=094°Ls) ω=233°Wでカラーコンポジット。ヘッラスは白く入ってきており、朝縁近くのシュルティス・マイヨルが浅葱色は出來すぎの感じ。エリュシウムは全体がピンク色。北極冠は寧ろ白い。ヘスペリアも切れ上がっている。 

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171129/CFs29Nov17.png

 


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