CMO/ISMO 2018 観測レポート#02

2017年十二月の火星観測 (λ=094°Ls ~λ=109°Ls)

南 政 次・村上 昌己

CMO #465 (25 January 2018)


・・・・・・  2018年接近の第二回目のレポートは十二月中の観測を取り扱う。この期間の火星は先月末にスピカの北を通過して、「おとめ座」から「てんびん座」へと順行を続けた。視赤緯Dは上旬には10°Sを下回りさらに南下していった。月末にはだいぶ「てんびん座」の木星に近づいて並んで光っていた。

十二月には視直径はδ=4.2"から4.8"に増加した。季節はλ=094°Lsからλ=109°Lsになり、ヘッラスが降霜で一日中明るく見えるピークとなっている。北半球の山岳雲の活動も活発な時期である。火星面の傾きはφ=22°Nから16°Nとまだ北半球がこちらを向いている。位相角ι25°から39°と夕方側の欠けが大きくなってきた。

まだ観測密度が低く現象の追跡は難しいが、ヘッラスの明るさは捉えられている。今期はδ=4"台とは思えない解像度の画像が入信していて、カラー画像も増えてきて今後が楽しみである。十二月にはオーストラリアからの画像が入るようになっている。

 MRO MARCI の画像では、南半球高緯度は見えないが、白く明るいヘッラスが捉えられている。山岳雲の活動も活発で、日替わりで様子が変わるエリシウム・モンス周辺、オリュムプス・モンスから北西に長く延びる山岳雲の様子や、タルシス・モンテスやアルバ・パテラに懸かる雲の様子などが等が連日認められる。赤道帯雲はシュルティス・マイヨルに懸かっているときには認められるが、淡くなったとおもわれ、後半にはマルガティフエル・シヌスからアウロラエ・シヌスにかけての暗色模様が判別できるようになっている。残留北極冠周辺では、オリュムピア雪原がまだ融け残って判別できる。この期間も大きな擾乱は起こっていない。

 

 ・・・・・・ 十二月中の観測を以下のリストに纏めた。国内からは214観測、アメリカ大陸側から23観測、南アフリカから18観測、オーストラリアから14観測で、ヨーロッパからの報告は入っていない。合計では6名から29件の観測報告だった。ピーチ氏はチリの望遠鏡を遠隔操作しての観測でアメリカ大陸側の集計に含まれる。

 

    阿久津 富夫 (Ak)  常陸太田市、茨城県      

     1 IR Image (23 December 2017)  32cm Spec with an ASI 290MM

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

     4 Sets of RGB + 8 IR Images (1, 9, 12, 14, 17, 18, 28, 31 December 2017) 

                                        36cm SCT @ f/27 with an ASI 290MM

    熊森 照明 (Km)  堺市、大阪府

     4 Colour* + 8 R + 4 B Images (5, 6, 12, 16, 17, 19, 20, 21, 29, 31 December 2017)

                                       36cm SCT @ f/35, 40 with an ASI 290MM & ASI 224MC*

    デミアン・ピーチ (DPc)  ウエストサセックス、英国    

     2 Sets of RGB Images (23, 26 December 2017)   Chilescope (100cm Ritchey Chretien)

    アンソニー・ウエズレイ (AWs) クイーンズランド、オーストラリア

     1 Colour + 3 IR Images  (12, 14, 19, 29 December 2017) 

(51cm Spec with a PGR GS3-U3-32S4M)

      ティム・ウイルソン(TWs) ミズーリ、アメリカ合衆国

     1 IR Image (1 December 2017)  20cm SCT with an ASI 290MM  

 

 ・・・・・・ 以下に各観測を短評する。

1 December 2017 (λ=095°Lsδ=4.2")にはClyde FOSTER (CFs)氏が36cmSCT使用のもとω=208°Wφ=22°NIR像を得た。マレ・キムメリウムの西部が可成り出ている。中央にエリュシウム(・モンス)が明るく西側はアエテリアの暗斑で仕切られ、東側はプロポンティスTと連結するプレグラでバウンドされているように見える。ウトピアのとんがりも明瞭でアルキュオニウス邊りの暗斑とアエテリアの暗斑の間も明るく抜けている。ウトピアも濃淡を示す。然しそれぞれの模様にはシャープさが無い。北極冠域には明るさがあり、前号のLtEMcKIM氏やVENABLE氏が指摘したような割れ目が見えないことはない。然し北極域全体が巧く表現されているという保証もない。

同日Tim WILSON (TWl)氏がω=337°WIR像を得た。シヌス・メリディアニの様子が鮮明でないがゲホンが流れているか。20cmSCT使用。 

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171201/CFs01Dec17.png

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171201/TWl01Dec17.png

 

  5 December (λ=097°Lsδ=4.3")にはKUMAMORI (Km)氏が36cmSCTω=090°Wφ=21°NでのR像を得た。残留北極冠が小さく見えている。マレ・アキダリウムが夕方に寝ている。その北端には北極冠の周りのヒュッペルボレウス・ラクスも濃く見えている。マレ・アキダリウムの南部に連なってニロケラスとガンゲス邊りも濃く出ており、明るいオピルの南西にはチトニウス・ラクスがクッキリし、その南にはソリス・ラクスが暗示される。その西方のタルシス邊りの暗點部は淡く多様に見えるが鮮明ではない。

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171205/Km05Dec17.png

 

 

6 December (λ=097°Lsδ=4.3")にはKm氏がL-colour(ω=064°W)B(ω=067°W)そしてR(ω=077°W)を並べた。まず、R像は前日のω=090°Wと比較出來るので、面白い。先ず前日は10分のderotation 15000駒のコンポジットであったが、6 December には27分のderotation30000枠をコンポジットしている。約1.4倍ぐらい細かくなりコントラストも強くなる。ソリス・ラクスがより明確。27分は可成り長く、端っこで7°Wぐらいは 信頼性が落ちるだろう。B像にはコメントのしようがない。L像は18000フレーム、一方Colour像は 6000frである。L-colour像ではマレ・アキダリウムの南部からルナエ・ラクス邊りや舊タルシス台地に白霧が漂っているのが描冩されている。北極冠も白く小さく孤立して綺麗。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171206/Km06Dec17.png

 

 9 December (λ=098°Lsδ=4.4")にはCFs氏がω=132°Wφ=20°N R,G,B像からRGB合成像を作った。北極冠部は暈けているが、夕端のタルシス山脈は真っ白である。これはB Gによる効果。オリュムプス・モンスも中央に白く見えるようだが強くはない。IR685ではプロポンティスTの邊りの暗斑群が出ている。

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171209/CFs09Dec17.png

 

   12 December (λ=100°Ls, δ=4.4")CFs氏がω=100°WIR像を作成。マレ・アキダリウムが夕端に來ているか。次いでAnthony WESLEY (AWs)氏がω=335°Wの像をIRで撮った。シヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニが明確。マルガリティフェル・シヌスも朝方に明確で、その北にはマレ・アキダリウムが細長く見えている。残留北極冠は小さい。シュルティス・マイヨルは夕端に來ている。

  更に同日Km氏はL-colour像をω=012°W で、B像をω=014°W で撮った。 L 像は6分のderotation30000frを合成。マレ・アキダリウムはどっしりと午前方にみえるが、イアクサルテスなど北極冠との関係は鮮明ではない。北極冠は白く核を示す。シヌス・メリディアニも然程綺麗ではない。マルガリティフェル・シヌスからクリュセに掛けて薄い霧か

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171212/CFs12Dec17.png

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171212/AWs12Dec17.png

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171212/Km12Dec17.png

 

14 December (λ=101°Lsδ=4.5") にはCFs氏がω=081°WIR像。マレ・アキダリウムは夕方、ソリス・ラクスもしかりだが、夕端は削ぎ落ちたようで印象の悪い像。北極冠はぼやけて大きい。

  一方AWs氏はω=315°Wφ= 19°NIR像。シュルティス・マイヨルが夕方に、朝方にシヌス・サバエウス+シヌス・メリディアニが見える。マレ・アキダリウムの一部が朝縁近くに見える。北極冠は小さく円い。ヘッラスが夕端にあるはずでλ=100°Ls を越えたからもう少し明るくても良いはず。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171214/CFs14Dec17.png

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171214/AWs14Dec17.png

 

   16 December (λ=102°Ls)にはKm氏がω=342°W18分のderotation15000frの合成。シヌス・メリディアニの形が巧く出ていない。マレ・アキダリウムは普通の形。オクススがマレ・アキダリウムに平行に流れる。残留北極冠は見え、マレ・アキダリウムの底とは可成り離れて見える。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171216/Km16Dec17.png

 

   17 December (λ=102°Lsδ=4.5")にはCFs氏がω=054°WRGBの合成像を作成した。RGBでは残留北極冠の周りの薄い霧も出ているし、クリュセ・クサンテのGBで顕著な白霧も見えている。R像がコントラスト良く、明るい残留北極冠を描写し、ヒュッペルボレウス・ラクスも捉えられている。RGB像も少し杳いが多彩である。北極冠近くの暗部は青味を帯びている。IR685でテムペは明るくRGBでは沙漠色。オピルは稍白くガンゲスに沿っている。チトニウス・ラクス邊りもRの寄与で詳細が判るが、ソリス・ラクスは南により過ぎているため明確ではない。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171217/CFs17Dec17.png

     この日Km氏はω=322°WL-colourの良像を得た。L像は4分のderotation 13500frの合成像。Colour-camの像は10000frで作っている。沙漠は赤味を帯びた黄土色。ヘッラスが夕端に來ていて弱い白色を明確に見せている。R像はω=331°W11derotation30000frの合成で、非常にコントラストの強い畫像を作っている (L像とR像とは別處理で暗色模様の様子はR像の方が細かいと思う。例えばイスメニウス・ラクスの邊りなど。Rではエドムが明るい。)

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171217/Km17Dec17.png

 

   18 December (λ=102°Lsδ=4.5")にはCFs氏がω=046°Wで各要素像からRGB合成像を得た。R像の暗色模様がゴーストも含め可成り細かく出ていて、RGB像も派手さのない落ち着いた感じになっている。マレ・アキダリウムはニリアクス・ラクス部、中央部、北底部 に別れ北底には三角形の暗部が見えている。ニロケラス、ガンゲスも見え、複雑なチトニウス・ラクスも見えて居る。テムペと北極冠は同じ明るさだが、テムペは沙漠色、北極冠は白色である。北極冠に接してヒュッペルボレウス・ラクスが濃いが、これから発する朝縁に沿う運河はゴーストであろう。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171218/CFs18Dec17.png

 

   19 December (λ=103°Lsδ=4.6")には AWs氏がω=266°W IR-GB合成像を作った。疑似色の像だが全体綺麗な色合いでイシディス・レギオ邊りが赤味で明るい。特にヘッラスの明るさが 目立つ。λ=103°Lsでは當然である。この像では少し青味を帯びている。エリュシウム・モンスも夕端で白い。北極冠一体は白霧らしいが残留核は見える。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171219/AWs19Dec17.png

   Km氏がω=315°WR derotation14分で18000fr合成。いろいろ暗色模様は濃淡取り混ぜ出ているがどれも締まりがない。シヌス・メリディアニが形を成せば基準になる。感心なのは残留北極冠が可成り円い部分を描写していること。ヘッラス内にはこのような核は見当たらない。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171219/Km19Dec17.png

 

  20 December (λ=104°Lsδ=4.6")にはKm氏がω=301°WR像を撮った、しかし、前日とは比べて更に悪くシュルティス・マイヨルも形を崩している。合成枚数も6000frに下げている。エドムが案外明るい。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171220/Km20Dec17.png

 

   21 December (λ=104°Lsδ=4.6")Km氏が色の綺麗なL-colour像をω=277°Wで作る。4分のderotationL像は13500Frで作る。一方R像は11derotationで、30000frを合成している。ただしシュルティス・マイヨルの濃淡が見え、ウトピアの様子がそれらしく見えるが、締まりはなくホイヘンスクレーターの形などは出ているとは思えない。ヘッラスはB(20000fr)では大きく見え、L-colourでは内部構造が出ているような感じ。Rでのヘッラスは内部濃淡の影響が見られる。この視直徑でシュルティス・マイヨルの北端の形はLでもRでも格好が好くニロシュルティスが飛び出して、好い形で出ている。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171221/Km21Dec17.png

 

  23 December (λ=105°Lsδ=4.6")にはDamian PEACH (DPc)氏がω=093°W φ=18°NChilescope天文台の1 meter Ritchey Chretien望遠鏡を遠隔操作してRGB成分を撮り、RGB像を合成した。ソリス・ラクスなどは南に傾いて形が不明だが、北のマレ・アキダリウムは夕端近くに寝ているのが見えている。赤道帯は白く濃く出ており、特に夕方のクリュセとその西の延長上の朝方には濃い朝霧が出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171223/DPc23Dec17.png

Chilescopeについては  http://www.chilescope.com/  を見られたい。地所は (30°27'S, 70°45'W)にある。

 同じ日、Tomio AKUTSU (Ak)氏は32cm specω=253°W φ=18°NIR685:一番のシュルティス・マイヨルの形も出ていないし、ヘッラスも明白ではない。北極域も暈けている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171223/Ak23Dec17.png

 

 26 December (λ=106°Lsδ=4.7")にはDPc氏がω=052°Wで同じくChilescopeに依ってRGB合成像を作った。RGBの色彩は綺麗である。クリュセの赤道帯霧はクサンテ側に寄り、マレ・アキダリウムも立ってきて、R像では形も把握できる。アウロラエ・シヌスも濃く確認出來、ニロケラスとガンゲスも把握できる。Rではチトニウス・ラクスが明確で、ソリス・ラクスの片鱗も辛うじて判る。オピルは明るいが白霧とは独立していることが分かる。北極冠域は白霧が暈けていて核は見えない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171226/DPc26Dec17.png

 

   28 December (λ=107°Lsδ=4.7")にはCFs氏がω=302°Wφ=17°Nで優れたRGB(+IR685像)を提出した。BaaderRGB セットを使っている。朝方のシヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニは美事で、後者の詳細は出ないが、球面に張り付いて居る姿である。シュルティス・マイヨルも北端の赤道帶霧による色も出て南部の色合いとは違う。赤道帶霧は夕端に発している様子が見える。ヘッラスが白く綺麗、南端方向の白さに切れ目が見える。北極冠も白く円い。これはRGBで残留北極冠が揃ったからであろう。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171228/CFs28Dec17.png

 

   29 December (λ=108°Lsδ=4.8")にはAWs氏がω=164°Wφ=16°NIR(>750nm)像を撮った。プレグラとプロポンティスTが見えエリュシウムは朝方に細く見える。南方にマレ・キムメリウムらしいものが濃く見え、北ではパンカイア邊りが濃い。北極冠はうまく同定できない。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171229/AWs29Dec17.png

  この日Km氏はω=221°WR像を撮った。14分のderotation24000frを重ねた。暗色模様は多く出ているが、コントラストが勝っていて、綺麗な描冩ではない。プレグラは淡くプロポンティスTも弱いが夕方に見える。アエテリアの暗斑が濃く、先行してエリュシウムの内部の西端が明るい。北極冠はチョイト暈けている。赤道近くの朝方に出ているむやみに濃いのがシュルティス・マイヨルか。14分で濃くなったか。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171229/Km29Dec17.png

 

  31 December 2017 (λ=108°Lsδ=4.8")には CFs氏がω=268°Wφ=16°NIR685像。シュルティス・マイヨルはほぼ出ておりウトピアあたりも普通の描冩。IRで北極冠は殆ど見えない。ヘッラスは割と明るく見えている。

   Km氏はω=196°W R像、2分のderotation10000frを合成。北極冠の核は見えている。エリュシウムの内部が明るい。プロポンティスTとプレグラ、ケルベルスは昨日より濃い。マレ・キムメリウムは全貌が入って居る。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171231/CFs31Dec17.png

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/171231/Km31Dec17.png

 


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