CMO/ISMO 2024/25 観測レポート#18

2025年八月の火星観測報告

 (λ=118°Ls ~ λ=133°Ls)

村上 昌己・西田 昭徳

CMO #550 (10 September 2025)


・・・・・・ 今期十八回目のレポートは『火星通信』に送られてきた八月中の火星面画像よりまとめる。下図のように、火星は八月には「おとめ座」を赤緯を下げながら順行していた。日没後の西空にあって高度を下げていった。視直径も4.5秒角台を下回り小さくなり、観測期も最終盤となった。画像報告者も少なくなり、報告画像も少なくなった。

 


 

八月には季節(λ)λ=118°Lsから133°Lsまで進み。北半球の夏の季節の観測となった。直径)δ=4.4”から4.1”まで小さくなった。傾き(φ)26°Nから月末には24°N台にまで戻ったが、まだ北向きに大きく極小になった北極冠がまだ捉えられている。位相角(ι)は、ι=28°から23°と減少した。朝方の南半球側に欠けが見られる。

 

2010年の接近時には、もう少し大きな視直径の時の観測記録が、以下のリンクで閲覧できる。

CMO#375 (16 July ~15 April 2010, λ=119~133°Ls, δ=4.9~4.5”)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/375/Report19.htm

 

 2012年の小接近時にも、視直径の大きな時の記事があり、以下のリンクから辿れる。

CMO#400 (1 June -30 June 2012, λ=118°~133°Ls, δ=7.9~6.6”)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/400/400_Repo12.htm

 

 

♂・・・・・・ 2025年八月の火星面の様子

○ 火星面概況

火星は、八月には季節(λ)λ=118°Lsから133°1sまで進み、北半球の夏の観測となった。視直径(δ)は4秒角台まで小さくなり、詳細は捉えがたくなっている。傾き(φ)は北向きにまだ大きく、縮小の進んだ北極冠が小さく確認できた。北極冠周りのサイクロンの発生する時期になっているが、今期は捉えた観測は見られなかった、また、この期間には冬至(λ=090°Ls)過ぎの南半球でヘッラスが朝方から明るく見えているようになっているが、観測数が少なく確認できなかった。

 

○ この期間の火星面の様子

以下には、フォスター氏の画像で比較的に濃淡模様が良く捉えられている画像を日付順に並べている。いずれの画像にも北極冠が小さく明るく存在が認められる。

 

6 August の画像には、夕方にマレ・アキダリウムが押し込められ、夕縁側には夕靄の明るさがある。午前側には朝靄が大きく拡がり、中の暗斑はオリュムプス・モンスの山頂のポークアウトかと思われる。北極冠周囲の暗帯の南にはオリュムピアの東端あたりの明るさが見えている。南端にも明るさが感じられる。

12 August の画像には、マレ・アキダリウムがほぼ中央に出ている。北極冠と接している暗部は、ヒュペリボレウス・ラクスで、マレ・アキダリウムとの間の明帯はアバロスと思われる。朝靄はB光でも大きく拡がっているが、夕靄は弱い。

15 August でも同様で、マレ・アキダリウムが午前側で、シヌス・メリディアニからのパイプ型の暗部が午後側に入ってきている。

 


 

下旬になって、25 August の画像は、R610 LongPass フィルター画像である。ヘッラスの朝方の様子を捉えた唯一の画像だが、強い明るさは感じられない。シュルティス・マイヨルが濃く表現されている。ウトピアあたりに変化があるようだが判然としない。

28 August の画像は、エリシウム領域中心の火星面経度のもので、B光画像には明るさの濃淡が感じられる。夕靄も強く、朝靄は北半球側にかかっている。北極域は分離が良くない。

29 August の画像では、前日同様の領域だがシュルティス・マイヨルが朝縁にまわっている。北極域では極冠の南側に分離した明部があり、オリュムピアと思われる。

 

 

♂・・・・・・ 2025年八月の観測報告

八月には報告者はさらに減って、フィリッピンの阿久津氏の1観測。アメリカ側からは2名より4観測。アフリカのフォスター氏からの13観測で、合計では4名から18観測であった。八月はフォスター氏以外の画像は少なく、一人舞台であった。

 

  阿久津 富夫 (Ak)  セブ、フィリピン

   AKUTSU, Tomio  (Ak)  Cebu island, The PHILIPPINES

       1 Colour Image  (11 August 2025)  45cm Newtonian with an Uranus-C

  https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_Ak.html

 

    クライド・フォスター (CFs)  ホマス、ナミビア

   FOSTER, Clyde (CFs) Khomas, NAMIBIA

    7 Sets of RGB + 9 R610LP Images  (6, 12, 15, 19~21, 25, 28, 29 August 2025)  

                                     36cm SCT with an ASI 290MM

  https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_CFs.html

 

      フランク・メリッ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

   MELILLO, Frank J (FMl)  Holtsville, NY, the USA

      1 Colour* + 2 642nm# Images (9#, 22# August 2025)  

                               25cm SCT with an ASI 290MM , an ASI 290MC*

    https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_FMl.html

 

   ティム・ウイルソ (TWl)  モンタナ、アメリカ合衆国

   WILSON, Tim (TWl)  Jefferson City, MO, the USA

      1 Set of RGB + 1 IR Images (20 August 2025)    28cm SCT with an ASI 678MM

   https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_TWl.html

 

 

♂・・・・・・ 今期観測の参考に (再掲) 

今期の観測とも重なるが、次回接近期にも北半球の春分(λ=000°Ls)過ぎの観測となる。一サイクル前の観測期にまとめた下記の論考を参考にされたい。

2011/2012年の火星(そのII)  CMO/ISMO #395 (25 March 2012)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/395_MNN.htm

 


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