98/99 Mars CMO Note (2)

1998/99 Mars CMO Note
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from CMO #226


-- 七月上旬のマレ・アキダリウム北の朝雲 --

◆マレ・アキダリウムの北に4 July (165゚Ls)と8 July (167゚Ls)に明白な黄色味掛かった白雲塊が捉えられた。重要な現象と思われるので、その前後のわれわれの主な觀測を羅列參照して考察する。

◆#221 (25 July 1999)に述べたように、161゚Ls邊りから北極冠が北極雲に隠れ始めたのであるが、マレ・アキダリウムが朝方にあるときは、朝雲がやや低緯度に現れる爲に、北極冠が見えているという状態が續いた。同號p2568にはこれに關して、白雲塊についての觀測も述べてある。

◆當時は梅雨明け前後で、六月下旬の觀測は多くはないのだが、マレ・アキダリウムが夕方に現れてきた29 June (162゚Ls)に既に伊舎堂弘(Id)氏は北極冠とは別に朝雲を聨續して捉えている。

 29 June (162゚Ls) δ=11.6"、ι=39゚、φ=23゚N

  Id-108D   11:00 GMT ω=066゚W
  Id-109D   11:40 GMT ω=075゚W
  Id-110D   12:20 GMT ω=085゚W
  Id-111D   13:00 GMT ω=095゚W
 但し、マレ・アキダリウムは時間と共に沈むのに對し、朝雲の圓盤内に入る速度は遅い様である。正中までは追っていないが、Id-111Dでも朝雲の中心はΩ=110゚W以西である。

◆30 June (163゚Ls)には同じくId氏やMk氏、Iw氏の觀測があるが、似た朝雲は觀察されていない。しかし、Mk氏のω=051゚W(10:40GMT)、ω=078゚Wの觀測では、北極雲域が大きく明るく、またId氏はω=088゚W(13:10GMT)などで北極冠が不明瞭、北極雲が淡く大きく擴がっているとの觀察がある。
◆この日はMGSが北極冠近邊に黄塵を見附けた日(06:52〜12:10GMT)である(#222 p2585參照)

◆1 July (163゚Ls)には主なものとして次のような觀測がある:

 1 July (163゚Ls) δ=11.5"、ι=39゚、φ=23゚N

  Mn-712D   10:10 GMT ω=034゚W
  Nj-427D   10:30 GMT ω=039゚W
  Mk-181D   10:50 GMT ω=044゚W
  Mn-713D   10:50 GMT ω=044゚W
  Mn-714D   11:30 GMT ω=054゚W 
  Id-114D   12:00 GMT ω=061゚W 
  Mk-182D   12:10 GMT ω=064゚W
  Mn-715D   12:10 GMT ω=064゚W
  Id-115D   12:40 GMT ω=071゚W
  Mn-716D   12:50 GMT ω=073゚W
  Mn-717D   13:30 GMT ω=083゚W
 この日マレ・アキダリウムが正中している頃は、北極域は大きく暈けており、北極冠は不明であった(Mn)。Id氏も邊りを大きく描いている。多分黄雲の名残があったかも知れないが、然程強くない。寧ろ、白色系(Mk氏やId氏は青白いとする)であった。Mn-716D邊りでは北極冠が見えて來た。

◆2 July (164゚Ls)にはId氏の以下の觀測しかないが、マレ・アキダリウムの北は二つ玉になっており、北極冠の南に「淡い雲が楕圓形に」擴がっている。

 2 July (164゚Ls) δ=11.4"、ι=40゚、φ=23゚N

  Id-116D    11:10 GMT ω=040゚W 

◆3 Julyは全國的に天候が好く無かったようで觀測がない。

◆4 July (165゚Ls)には比嘉保信(Hg)氏のVideo觀測が加わり、様子が聨續して紀録されている。

 4 July(165゚Ls) δ=11.2"、ι=40゚、φ=22゚N

  Mk-183D     10:40 GMT ω=013゚W
  Hg-1-47V    11:12 GMT ω=021゚W
  Id-117D     11:10 GMT ω=021゚W
  Hg-2-47V    11:50 GMT ω=031゚W 
  Id-118D     12:00 GMT ω=033゚W 
  Hg-3-47V    13:38 GMT ω=042゚W
  Hg-4-47V    13:14 GMT ω=051゚W
  Hg-5-47V    13:53 GMT ω=061゚W
 マレ・アキダリウムの北に黄色みを帯びた白雲の存在が明瞭である。1 Julyに比べてバク發している。掲載のId氏のスケッチを參照されたい。

 Hg氏の像では、マレ・アキダリウム北の黄白雲は時間と共に圓盤の内部に入ってくるのが明瞭。既にω=021゚Wで明らかで、ω=042゚Wまで可成りの濃さ。この時はテムペにも朝霧があって目立つ。ω=051゚W以降は朝雲は更に中に入ってくる。これは、これが單なる水蒸氣雲でなく、黄塵を含んでいる爲であろう。

HIGA's Green images on 4 July 1999;
from left to right : ω=031゚W, ω=042゚W, ω=051゚W, and ω=061゚W

 重要なのは青色光による像が、明白にこの雲塊を示していることで、これが單純に黄雲でないことの証左である。或いは黄雲の概念を擴げなければならい事を意味するかも知れない。

◆5 July (166゚Ls)にはId氏とIw氏の觀測がある。Iw氏の觀測は比較は出來ないが、北極域はトンでいる。Id氏の場合は、4 Julyと同じように楕圓形の雲塊がマレ・アキダリウムの北に存在している。Id-120Dは前日のId-118Dと同じωであって、比較が出來る。

 5 July (166゚Ls) δ=11.1"、ι=40゚、φ=22゚N

  Iw-103D    11:30 GMT ω=016゚W
  Id-119D    11:40 GMT ω=019゚W
  Iw-104D    12:10 GMT ω=026゚W
  Id-120D    12:40 GMT ω=033゚W

◆6 July (166゚Ls)には筆者(Mn)が聨續觀測を行ったが、マレ・アキダリウムの北の雲塊の強さについてはId氏とIw氏の觀測の中間という感じであった。この日、黄白雲はそれ程顕著ではなかったと考える(Mn-723Dがω=033゚WでId氏と比較が出來るが、最早低くシーイングが悪くなっている):

 6 July (166゚Ls) δ=11.1"、ι=41゚、φ=22゚N

  Mn-718D   10:00 GMT ω=345゚W
  Mn-719D   10:40 GMT ω=354゚W
  Mn-720D   11:20 GMT ω=004゚W
  Mn-721D   12:00 GMT ω=004゚W 
  Mn-722D   12:40 GMT ω=024゚W 
  Iw-105D   12:50 GMT ω=026゚W
  Mn-723D   13:20 GMT ω=033゚W
  Iw-106D   13:30 GMT ω=036゚W
  Mn-724D   14:00 GMT ω=043゚W
◆7 July (166゚Ls)にもマレ・アキダリウムの北の雲塊は顕著ではなかったと考えられる。觀測は次のようである:

 7 July (166゚Ls) δ=11.0"、ι=41゚、φ=22゚N

  Mn-725D   10:00 GMT ω=335゚W
  Mk-184D   10:40 GMT ω=345゚W
  Mn-726D   10:40 GMT ω=345゚W
  Ak-1-77C  11:16 GMT ω=353゚W
  Mk-185D   11:40 GMT ω=000゚W 
  Mk-186D   12:20 GMT ω=009゚W 
  Ak-2-77C  12:23 GMT ω=010゚W
  Mn-727D   12:30 GMT ω=012゚W
  Mn-728D   13:10 GMT ω=021゚W
  Mn-729D   13:50 GMT ω=031゚W
 Ak氏のCCD像では當該朝方は霧?に覆われているように見える。Mn-726Dでは北極冠は白く、周りはoff-whiteである。Mn-728Dでは北極冠とその南に小さな雲塊があって二つ玉。然し、然程顕著ではない。

◆ 8 July (167゚Ls)には状況が一變して、既にω=333゚W(Mn-731D)からマレ・アキダリウムが濃い朝方の雲塊に覆われているのが瞥見された。白色系である。ω=002゚W(Mn-734D)では圓盤の中に入っている。中心はΩ=040゚W邊りで、Id氏の4、5 Julyの觀測と同程度か、それよりも顕著であったと思う。

 8 July (167゚Ls) δ=10.9"、ι=41゚、φ=22゚N

  Mn-730D   09:50 GMT ω=323゚W
  Mn-731D   10:30 GMT ω=333゚W
  Mk-187D   10:40 GMT ω=335゚W
  Mn-732D   11:10 GMT ω=343゚W
  Mk-188D   11:20 GMT ω=345゚W 
  Iw-107D   11:30 GMT ω=348゚W 
  Mn-733D   11:50 GMT ω=352゚W
  Mk-189D   12:20 GMT ω=000゚W
  Mn-348D   12:30 GMT ω=002゚W
  Mn-735D   13:10 GMT ω=012゚W
  Mn-736D   14:10 GMT ω=024゚W

 Mk-189Dでは、「北極域は大きく青味のある白さ(3/11)が拡がる」とされ、二つ玉で「朝方が薄紫に色調が違うようである」とある。

◆ 9 July(168゚Ls)は福井ではシーイングが悪化したのであるが、ω=316゚W(Mn-737D)から、マレ・アキダリウムに掛かる朝霧は觀測されている。ω=336゚W(Mn-739D)では好く見えている。

 9 July (168゚Ls) δ=10.8"、ι=41゚、φ=22゚N

  Mn-737D   10:00 GMT ω=316゚W
  Nj-428D   10:20 GMT ω=321゚W
  Mk-190D   10:40 GMT ω=326゚W
  Mn-738D   10:40 GMT ω=326゚W
  Ak-1-97C  10:48 GMT ω=328゚W
  Nj-429D   11:00 GMT ω=331゚W
  Mk-191D   11:20 GMT ω=336゚W 
  Mn-739D   11:20 GMT ω=336゚W 
  Nj-430D   11:40 GMT ω=341゚W
  Ak-2-97C  12:58 GMT ω=345゚W
  Mn-740D   13:20 GMT ω=010゚W
  Nj-431D   13:40 GMT ω=015゚W
  Mn-741D   14:00 GMT ω=020゚W
 福井は一時曇っている。14hでω=020゚Wであるから、最早追跡は不可能になっている。然し、10 Julyでもまだ朝霧は出ている様であった。

◆ 以下、解説は英文の部

( Mn / 南 )