98/99 report #07

1998/99 CMO Mars Report #07

1999年二月後半・三月前半の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・今期六番目の報告である。16Febから15Marまでの一ヶ月間の觀測を扱う。三月5日には春一番が來て、敬蟄のあとは比較的春めいて觀測が楽になったが、ただ三月はどなたも天候に惠まれず、成績は振るわない。村上昌己(Mk)氏は横浜から古巣の藤澤への引っ越しがあり、未だ落ち着かない。一方、唐那・派克(DPk)氏のところは天候・シーイングに惠まれて、大活躍である。海外からは、イギリスのピーチ(DPc)氏とブラジルのファウサレッラ(NFl)氏、フランスのタイシャート(GTc)氏が今期初見參である。
 16Febには視直徑δは9.1秒角であったが、15Marには11.9秒に伸び、急速に大きくなっている。季節は098゚Lsから110゚Lsに進捗した。位相角ιは34゚から27゚に落ちている。中央緯度も17゚Nから15゚Nへ。北極冠は端っこだが、一應下げ止まる。火星は18Marに留、それから少し昇る。

♂・・・・・・・CMOに寄せられた報告は以下の通りである。今回は天候が悪く全體に低調だが、海外からの報告は増えている。


  AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak)  栃木・烏山 Karasuyama, Tochigi, Japan               
           12 CCD Images  (15, 16, 22, 25 February; 12, 13 March 1999)                  
                                     f/60×32cm speculum equipped with a Teleris 2     

  BIVER, Nicolas  ニコラ・ビヴェール (NBv)  ハワイ Hawaii, USA                     
            4 Colour Drawings (7, 12 March 1999)   510×26cm speculum                

  FALSARELLA, Nelson ネウソン・ファウサレッラ (NFl) ブラジル Rio Preto, Brasil       
            9 Drawings (13, 19, 24 February; 4, 5, 6, 10, 14, 15 Mar) 260, 325×20cm speculum

  GRAY, David デイヴィッド・グレイ (DGr)  ダラム Kirk Merrington, Durham, UK         
            5 Drawings (21, 23, 27 February; 14 March 1999)                             
                                          260, 350, 415×42cm Dall-Kirkham               

  HIGA, Yasunobu 比嘉 保信 (Hg)  那覇 Naha, Okinawa, Japan                            
           41 Video Images (14,〜17, 26 February; 2, 3 March 1999)                       
                                    25cm speculum equipped with Sony DCR-TRV900          
 
  HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk) 長野・箕輪 Minowa, Nagano, Japan                      
           14 Drawings (16, 19, 22, 25, 28 February; 1, 3, 4, 12 March 1999)            
                                              340, 360×16cm speculum                  

  ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id)  那覇 Naha, Okinawa, Japan                        
            6 Drawings (20 February; 1, 2 March 1999)    400, 530×31cm speculum      

  IWASAKI, Tohru 岩 崎  徹 (Iw)  北九州 Kitakyushu, Fukuoka, Japan                    
           13 Drawings (16, 18, 21, 27 February; 3, 5 March 1999)  400×21cm speculum 

  MELILLO, Frank J  フランク・メリッロ (FMl)  ニューヨーク NY, USA                   
            2 CCD Images (22 February; 14 March 1999) 20cm SC  Starlight Xpress MX-5   

  MINAMI, Masatsugu 南  政 次 (Mn)  福井 Fukui, Japan                                 
           53 Drawings (16, 25, 28 February; 1, 2, 12, 13 March 1999)  400×20cm refractor* 

  MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  横浜→藤澤 Kanagawa, Japan                         
           18 Drawings (16, 21, 22, 23, 28 February; 3, 11 March 1999)                  
                                                 320×20cm Saheki speculum             

  NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Japan                                 
           30 Drawings (25, 28 February; 1, 3, 9, 11, 12, 13 March 1999)  400×20cm refractor*

  NARITA, Hiroshi 成 田  廣 (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan                   
            3 Drawings  (19, 22 February; 13 March 1999)   400×20cm refractor        
 
  PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk)  フロリダ Miami, FL, USA                 
           23 CCD Images (17, 22, 24, 26, 27, 28 February; 3, 7, 10, 12, 13 March 1999)  
                                    f/55×41cm speculum equipped with a Lynxx PC       

  PEACH, Damian デミアン・ピーチ (DPc) ノーフォーク King's Lynn, Norfork, UK          
            2 CCD Images (29 November 1998; 14 March 1999)                               
                                     f/30×31cm Meade SCT equipped with an ST-7          

  TEICHERT, Gerard ジェラール・タイシェルト (GTc) フランス Hattstatt, France          
            2 Drawings  (13, 15 March 1999)  310,330×28cm Schmidt-Cassegrain           
 
  WHITBY, Samuel R  サミュエル・ホヰットビィ (SWh)  ヴァージニア VA, USA            
            5 Drawings (9, 15, 23 February; 5 March 1999)   310×15cm speculum         
    
                                             *福井市自然史博物館天文臺 Fukui City Observatory
♂・・・・・・・・今回も項目毎に述べる。

 グレイ氏の黄塵:21Feb(100゚Ls)の朝(GMT)、デイヴィッド・グレイ(DGr)氏は火星が低いのに好いイメージを得(シーイングはアントニアヂ・スケールでV)、クリュセ南部にWr25で棍棒?コアを持つ黄雲を觀測した。2:10GMTω=012゚Wのスケッチでは、マレ・アキダリウムや北極冠が明確なのに對し、マレ・エリュトゥラエウムの朝方も暈やけ、マルガリティフェル・シヌスの大半も淡化している。シヌス・メリディアニやニリアクス・ラクスも影響を受けている。3:00GMTω=024゚W迄に、コアは別の肢を持ち、朝方の南半球を侵す。ω=024゚Wではアウロラエ・シヌスも出ている筈だから、この邊りがダスティなことは明らかなようだ。朝霧夕霧の記述はないが、朝方のほうは白雲が混じっているかも知れない。ι=34゚だから、ω=024゚Wの場合、24+34=58゚W邊りにN線があり、コアは午後に入っていて、朝霧ではない。このコアは27June1997(138゚Ls)のHST発現の黄塵の位置と似ているが、やや北であろう。東端はマルガリティフェル・シヌスに達している。
 二日後23Feb(101゚Ls)5:20GMTω=040゚WのDGr氏のスケッチでは、コアはすでに擴散したらしく、マルガリティフェル・シヌスは恢復、然しアウロラエ・シヌスは依然淡化している。ソリス・ラクス等は出ており、ω=050゚Wでは更に濃くなった由。アガトダエモン(ワッレス・マリネリス)も暗線で見える。朝方は明るい。

Left: I David GRAY on 21 Feb 1999 (100゜Ls) at ω=024゜W,φ=16゜N,δ=9.5",ι=34゜
Center: David GRAY on 23 Feb 1999 (101゜Ls) at ω=040゜W,φ=16゜N,δ=9.7",ι=33゜
Right: Don PARKER on 28 Feb 1999 (103゜Ls) at ω=046゜W,φ=16゜N,δ=10.2",ι=32゜

  パーカー氏の白塵雲:更に三日後の26Feb(103゚Ls)ω=075゚Wで唐那・派克(DPk)氏がCCD撮像。全體正常で、アウロラエ・シヌスは赤色光で復元している。クリュセは夕方で白い。
 27Feb(103゚Ls)ω=052゚W、067゚Wで矢張りアウロラエ・シヌスは見え、クリュセの白靄が不規則。28Feb(103゚Ls)にはω=033゚W、043゚W、053゚W(赤外)、061゚Wで撮像するが、良像の上、クリュセがCM近くにあり、赤道帯霧が不規則となり、特にクリュセ南側、アロマトゥム・プロモンテリウムの沖に黄塵混じりの白雲が小さく鎮座する様である。特にω=046゚Wの像に明白だが、他の像にも出ている。
 黄塵混じりというのは赤色光で強く、白雲というのは青色光で明確だからである。これが、グレイの黄塵の殘滓であるか、またオレステス沖の暗部がやや濃く出ていること(27June1997の像にもやや出ているもの)と關係があるかどうかは他に資料が無く不明である。この白雲は3Mar(105゚Ls)ω=013゚WのDPk氏の像にも出ている可能性があるが、朝霧に紛れる。

 オリュムプス・モンス白雲:17Feb(099゚Ls)のDPk氏のω=170゚W等ではオリュムプス・モンスの形はよくないが、赤色光では出ている様子である。DPk氏の22Feb(101゚Ls)ω=122゚Wでは既にオリュムプス・モンスが淡く分離し、更に夕方のタルシスは強く、白い。このタルシスの圖柄は19Feb(099゚Ls)ω=105゚Wでのファウサレッラ(NFl)氏の觀察やホイットビィ(SWb)氏の23Feb(101゚Ls)ω=119゚Wとそっくりである(ただオリュムプス・モンスは出ていない)。
 25Feb(102゚Ls)には日本でオリュムプス・モンス上の雲(以下簡單にオリュムプス・モンスと呼稱する)はω=175゚Wで夕端近くに捉えられた。綿毛のような白雲であった。ι=33゚。δ=9.9"。26Feb(102゚Ls)の比嘉保信(Hg)氏のω=202゚Wでも夕端に出ている。28Feb(103゚Ls)にはω=186゚Wになってオリュムプス・モンスが夕端で圓くなる(Mn)。中島孝(Nj)氏はω=191゚Wでオリュムプス・モンス1.0、北極冠1.5、南端2.0の濃度測定、Nj氏はω=200゚Wで夕端に乗ると見る(ι=32゚だから、(200+32-135)/15=6.5、つまり地方時で午後6時半頃、夕歿線は6.8時ぐらい)。ω=205゚Wでも殘像が見える(Mn)。

Left: ISHADOH on 1 Mar 1999 (104゜Ls) at ω=177゜W,δ=10.3",ι=32゜
Right: MINAMI on 2 Mar 1999 (104゜Ls) at ω=160゜W,δ=10.4",ι=32゜

 1Mar(104゚Ls)には伊舎堂弘(Id)氏がω=177゚Wで分離(引用)。2Mar(104゚Ls)にはMnがω=140゚Wで圓く分離、期待以上の大きさ。東側のタルシスを隔てる暗帯も明確である。ω=160゚Wでは未だタルシスがより白いが、この頃からオリュムプス・モンスも目立つようになり、ω=180゚W邊りでは非常に明るく、綿毛様の再來である。尚この時、オリュムプス・モンスの南に夕霧が出ていることに注意する。3Mar(105゚Ls)では岩崎徹(Iw)氏がω=153゚Wで辛うじて認め、東の暗帯も見る。ω=173゚Wでクッキリ。5Mar(106゚Ls)にはω=135゚Wで目立たない(地方時午後2時)が見える。炯眼である。

 壓巻はHg氏の2Mar(104゚Ls)、3Mar(105゚Ls)のヴィデオ像で、オリュムプス・モンスの見事な姿が活冩されており、寝転んで見ても悠々と見える。2Marにはω=158゚Wからだが既に明確、ω=179゚Wでは實に強い明斑。ω=197゚Wで端か?というところ。3Marにはω=139゚W(17:10GMT)から良像で、オリュムプス・モンスは勿論のこと、タルシスの内部も複雜、暗帯も明確で、アルバも出ている模様。ω=158゚Wも見事。Hg氏は加えて青色光だけで同じ動畫を作った。明斑の動きが面白い。これらのテープは後述のエリュシウムの動きの様子と共に一見の價値がある。實費拂ってお強請りしてみて下さい。
 14Mar(110゚Ls)にはイギリスでDGr氏がω=164゚Wでオリュムプス・モンスを觀測。特別明るくはないがアルバが夕端近くで可成り明るい様子。Id氏と同様プロポンティスTは明確に捉えられている。(尚、1997年の"綿毛様オリュムプス・モンス"の觀測は075゚Ls、ι=25゚、δ=11.5"邊りであった。)

 朝方のタルシス:アスクラエウスの大きな圓い白雲が、24Feb(102゚Ls)のDPk氏のω=083゚WのCCDに出ているようである。7Mar(107゚Ls)のビヴェール(NBv)氏のω=081゚Wでも白くはないが、明部として出ていると思われる。

 夕霧とエリュシウム:お昼頃のエリュシウムは地肌が目立ち、夕方になると白くなるが、この點を25Feb(102゚Ls)に福井で觀察した。エリュシウムはω=194゚Wで形が見えてくる。ω=199゚WでNj氏は地肌色と紀録。ω=204゚Wではアエテリア暗斑が入ってくる爲、明確(15Febω=204゚Wで、ホイットビィ(SWb)がWr80Aでエリュシウムを明るく描いている)。ω=214゚Wでやや明るいが然程白くはない。この時、オリュムプス・モンスの南に夕霧が這っていて、ゼピュリアの方に流れている。同じ様な状態がω=233゚Wまで續くが、ω=243゚W邊りで合流、ω=253゚W、262゚Wではエリュシウムが夕端で眞っ白である。エリュシウムは單獨で白霧を被るのでなく、可成り南方の夕霧に侵されて被って行くのが觀測されたのは初めてではないかと思う。
 26Feb(102゚Ls)のHg氏のヴィデオではω=222゚Wでエリュシウムは白い。ω=232゚Wで更に白くなる。他に、21Feb(100゚Ls): Iw氏は明るいエリュシウムをω=256゚W、266゚Wで夕端で捉えている。23Feb(102゚Ls)には日岐敏明(Hk)氏がω=240゚Wでエリュシウムの外の夕霧を捉えている様だが、追跡がない。13Mar(109゚Ls)ω=271゚WのDPk氏の像では當然夕端でエリュシウムは明るい。NFl氏は5Mar(106゚Ls)ω=257゚Wでも捉えられないようである。(Hg氏のB光は肉眼に比べて非常に白に強い。)

 朝方のエリュシウム: 實はω=190゚W邊りが境で、例えば阿久津富夫(Ak)氏の25Feb(102゚Ls)のω=194゚Wでエリュシウムは赤色光では明るいが青色光では殆ど出ていないと判断される。2Mar(104゚Ls)のMnの觀測ではω=160゚W、170゚Wで朝霧に覆われているが、ω=189゚W(20:00)迄。一方、同日Hg氏のω=187゚Wの像では、エリュシウムは朝霧に半ば覆われていると同時に、アエテリアの暗斑の存在の爲に朝霧は二つ玉の様相をしている。ヴィデオではω=197゚Wでも未だ白く、次第に弱くなる(21:30迄)。3Mar(105゚Ls)のHgのヴィデオ像ではω=178゚Wではエリュシウムに朝霧が出ている。ω=187゚Wでは二つ玉が明瞭で、エリュシウムは可成り白く、青色光で見ると、明部は可成りコンパクトである。從って、エリュシウム・モンスの可能性もあるが、前回アスクラエウス・モンスで懲りているので、この際は断定を保留する。Hg氏のヴィデオ像では、可成りこの白い部分は殘り、ω=197゚Wでもω=202゚Wでもチェック出來る。
 尚、この二つ玉は、20Apr1997(107゚Ls)のHg氏の觀測と對應する様に思う(#204p2285參照)。アエテリアの暗斑が可成り南まで張り出している爲にその様に見えるのであろう。この時はN線が夕方側に來ているので地方時は異なる。

 ケブレニア: Hg氏の2Mar、3Marのヴィデオではケブレニアは地肌色である。Ak氏の22Feb(101゚Ls)ω=260゚Wでも赤色光では明るい。イギリスのピーチ(DPc)氏の14Mar(110゚Ls)ω=200゚W、208゚Wの赤色光ではエリュシウムと共にY字形で出ている(DPc氏からは17Mar、19Marの像が來ているが、次回報告、19Marでは青色光使用)。DPk氏の13Mar(109゚Ls)ω=271゚W等ではエリュシウムは端で白いが、ケブレニアは地肌色である。 ノアキス: 村上昌己(Mk)氏は16Feb(098゚Ls)ω=312゚Wでヘッラスと分離してノアキスの南端がやや明るいのを感じ、ω=322゚W、ω=332゚Wで確認している(Mk氏はこの日四十分ごと六枚觀測)。Mnも同日ω=315゚Wでヘッラスと並んで見えるノアキスに注目。ω=322゚Wではヘッラスが減衰し、ノアキスが南端で大きくなっているのを觀察している。Hg氏のヴィデオでもω=312゚Wで分離、ω=323゚Wでノアキス明瞭。然し、7Mar(107゚Ls)のDPk氏のCCDではノアキスは顕著ではなく、朝方にやや明部があるのみである。

 クリュセの朝霧: 14Feb(097゚Ls)、16Feb(098゚Ls)のHg氏のヴィデオではそれぞれω=329゚W、ω=334゚W前後で、クリュセが朝方密度濃く白く顕著であるが、眼視でも16FebにMk氏がω=332゚W邊りで指摘(この時東端テュミアマタの地方時は午前11:45分の由)、Mnの同日の觀察でもω=334゚W邊りがピークであろう。24Feb(102゚Ls)のFNl氏もω=000゚W邊りで見ている。一方、7Mar(107゚Ls)のDPk氏のω=331゚Wでは朝霧を透して、オクススなどが(赤色像から)濃く出ている。12Mar(109゚Ls)にはNBv氏がω=340゚Wで白く描く。

 リビュア霧からクリュセ:16Feb(098゚Ls)には前回報告の通り、筆者(Mn)はヘッラスを追ったが、同時にリビュア霧にも注目した。ω=290゚Wではエリュシウムからの夕霧が見られるが、ω=310ではリビュア霧である。ω=310゚Wではシュルティス・マイヨルを侵し始め、ω=320゚Wではシュルティス・マイヨルを淡化させ、アエリアへ出ている。ω=334゚Wでもまだ未だその様子がみられ、ω=339゚Wでは朝方のクリュセ霧と繋がって淡い赤道帯霧になっている。ω=349゚Wでは最早シュルティス・マイヨルが見られないが、リビュア霧は夕霧となって残っている、という状況であった。この日はι=34゚であった。
 Mk氏も同日、ω=303゚W〜ω=332゚Wまで追い、最後の方では、リビュア霧とアエリアの霧に挟まれた淡いシュルティス・マイヨルを見る形になっている。20Feb(100゚Ls)にId氏がω=302゚W、ω=314゚Wで明るいリビュア夕霧を捉えているが、その後の追跡はない。DPk氏は7Mar(107゚Ls、ι=30゚)でシュルティス・マイヨルの北部を侵すリビュア霧をω=321゚W、331゚W、342゚Wで捉えている。10Mar(108゚Ls、ι=29゚)ではω=293゚W、ω=304゚W等シュルティス・マイヨルが可成りディスク内になるにも拘わらず、リビュア霧がシュルティス・マイヨルを越えて北赤道帯に延びていることが示されている。

 シュルティス・マイヨル: 筆者は16Feb(098゚Ls、ι=34゚)ω=322゚W等で夕方のシュルティス・マイヨルの霧に侵されている部分がやや淺葱色で、南部の付け根は端まで非常に濃い暗部であることを見ている。一方朝方では、21Feb(100゚Ls)ω=236゚Wで、Mk氏はシュルティス・マイヨルを眺め、朝霧がその朝方アエリアで濃いことを觀察している。ω=253゚Wではウトピアより濃くなっている。25Feb(102゚Ls)にはMnがω=223゚Wでシュルティス・マイヨルを朝霧の中で捉えた。ω=233゚Wでは未だ弱いが、ω=243゚Wでは淺葱色になる。26Feb(102゚Ls)のHg氏のヴィデオではω=222゚Wでシュルティス・マイヨルは出ている容子である。ω=232゚Wでは朝霧の中で明確である。

 ヘッラス : ヘッラスの輝部の觀測については前號で纏めた。再びアメリカでも捉えられており、DPk氏の良像があるが、12Mar(109゚Ls)ω=292゚Wの赤色光ではヘッラスの南部に翳りが見られる。DPk氏の像では赤色光と青色光でのヘッラスの大きさ・明るさは可成り違う。

 アルギュレ:傾きの所爲で、アルギュレが南端に見えてきた。ヘッラスと同じ動きをすると考えられる。日本では12Mar(109゚Ls)など。NBv氏の7Mar(107゚Ls)ω=059゚Wではアルギュレから朝方に靄が出ている。DPk氏の像では28Feb(103゚Ls)の像にこの朝方の靄は見えている。

 北赤道帯霧:どれも強くないが可成りの觀測に引っかかっている。例えば15Feb(098゚Ls)のHg氏のω=333゚W。27Febω=311゚WではDGr氏がWr47Bを用いて、リビュアから朝方へ掛けて霧が横たわる様子を觀察している。Int及びWr15ではシュルティス・マイヨルは正常である。7Mar(107゚Ls)のDPk氏の像のどれにも出ている。Ak氏の12Mar(110゚Ls)ω=097゚W、同日DPk氏のω=292゚W等で横たわる霧が見られる。その他にも多い。例の28FebのDPk氏の良像に點在する塵白雲も北赤道帯霧に含まれる。雲と呼べるようなものはこれだけであろう。

 北極部:傾きが変わってきている爲、北極冠は薄っぺらくなって、最早ディスク内部には見えないが、充分明るい。オリュムピアなども瞥見できるし、ヒュペルボレウス・ラクスも見える。後者は5Mar(106゚Ls)でSWb氏がω=014゚W、028゚Wで検出している。DPk氏のCCDでも顕著である。DGr氏に依れば、27Feb(103゚Ls)北極冠がややWr15でやや大きく感じるとのことである。またNBv氏のLtE參照。ω=317゚W〜321゚Wでは北極冠の周りに薄いヴェールの層が見られるとのことである。ただ、オリュムピアの記述がない。NBv氏の12Mar(109゚Ls)ω=340゚Wでも北極冠の外に白いヘーズがあるようである。

 その他:マレオティス・ラクスからアスクラエウス・ラクスに掛けてはHSTの赤色光では然程濃くなく、青色光で出ることから、前に赤黒い地帯と呼んだが、7Mar(107゚Ls)ω=059゚W、ω=081゚WでNBv氏がやや淡く捉えている。12Mar(109゚Ls)に日岐敏明(Hk)氏はω=075゚W、087゚W、097゚Wで濃く捉えている。Mnも同日ω=060゚Wから095゚Wで、また13Mar(109゚Ls)でもω=060゚Wからω=089゚Wで追った。強く出ている。13MarにはAk氏のω=059゚W等で出ている。この日、Ak氏はω=020゚W、040゚W、049゚W、059゚W、070゚Wと聨續して撮ったが最後の像など秀逸である。ただ北極冠の描冩が不満である。14Mar(109゚Ls)にはメリッロ(FMl)氏がシュルティス・マイヨルを赤色光で撮った。Wr25でもヘッラスが可成り強く出ている。ただ、シュルティス・マイヨルの像に安定性がない。

♂・・・・・・・追加報告:ピーチ(DPc)氏の29Nov1998(063degsLs)のCCD像はLCM=159degsWで、大きい北極冠とその周りの暗帯が出ている。アルバが夕端に明るいようである。δ=5.2"。9Feb1999(095degsLs)のSWb氏のスケッチはLCM=247degsWで、エリュシウムが夕方で、ヘッラスが朝方で明るい。シュルティス・マイヨルは完全に出ている。


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