10 Years Ago (85)

10 Years Ago (85) (Japanese)
- CMO #121 ( 25 September 1992 ) -


 1992年八月半ば、火星は「おうし座」にあった。視直径は八月末には7秒台 に達した。その頃、中央緯度は南から北へ移る。季節は306゚Lsから324゚Lsに推 移した。南半球の黄雲発生の季節が終わろうとするところである。比嘉保信 (Hg)氏はビデオ報告、村上昌己(Mk)氏はスケッチで観測を開始している。尚、 Mk氏は『火星通信』への初報告である。他に伊舎堂弘(Id)氏、岩崎徹(Iw)氏、南政 次(Mn)氏、中島孝(Nj)氏および日岐(Hk)の観測がある。国外では、カーミト・ レア氏、ジェラール・タイシャート氏、ハロルド・ヒル氏から、三者共スケッ チの報告である。

 この期間、火星の南半球は可成り汚れた様相を見せていた。南極地には覆い 状のヘーズが存在しており、ソリス・ラクスが東、マレ・シレヌムが西とい う構図において、明るく境界が明瞭なヘーズが観測されている。ニリアクス・ ラクスは北極雲に侵される形で見えていた。但し詳細は分からない。八月末に はヘッラスが姿を現した。夕端では極地と連動し白く明るい姿を見せていた。 但し、中央部のヘッラスはId氏の観測では「全体dullで、寧ろ地肌が見える か」とコメントしている。また、朝方は、Mk氏やHkが「朝縁で白いが、次第に 鈍くなる」と観測。尚、Id氏は、九月の観測で北極雲が南側と北側で二重に なっていると観測している。

 今号では、「1990 OAA Mars Section NOTE(8)」として295゚- 360゚Lsにおけ る南極地の大気的状況が考察されている。Lsを区切って、折々の状況について 述べた後、Mn氏は次のように纏めている。 
    1.既に300゚Ls以前に於いて南半球の大気は汚れている。
    2.(汚れが)夕方で肉眼で明瞭であるのは、水蒸気が関係していると思われる。
    3.汚れは局在的であり、局所的に大気的様相が持続している。

最後に、「最近の接近に見られるように徐々に埃が放出されて大気に定常性が 保たれる場合は、(黄雲のような)カタストロフィは起こり難いのであろう」と 推測している。

 来信(LtE)では、長谷川一郎氏、Hg氏、Iw氏、Mk氏、Id氏およびHk等からの 便りが紹介されている。Hg氏はカラーによるビデオ撮像の開始、Mk氏は15p反 射(苗村鏡)を使用して継続観測を開始したことがわかる。

日岐敏明(Hk)

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