Great 2003 Mars Coming (07)j

Great 2003 Mars Coming
(7)


南極冠の内部の觀察

南 政 次


 ★2001年は最接近前後は中央緯度φが赤道近くにあった爲、南極冠の内部を詳しく觀測する事は殆ど適わなかったが、2003年接近は南極冠の全體像の觀測に適している。ウッカリすると折角の機會を逃がす虞があるので、スケジュールを示し取っ掛かりを注意する。

λ=180゚Ls (5 May 2003)が南極冠出現に目安だが、その直前から注意する。筆者(Mn)の1986年の經驗ではλ=176゚Lsで南極冠(南極雲)内部の輝度一様でなく周邊部がより明るく見えていた(1986年の場合はこの時φ=11゚Sであった。2001年には3゚Nであったから相當な違いである)から、2003年にもこの邊りでは重要な觀測期間がある。28 April 2003邊りである(φ=16゚S)。尚、何度も注意するように、ヴァイキングのデータもこの季節からであり、1999年にはMGSの結果もある。
★1986年にはλ=180゚Lsではφ=10゚Sであったが、南極冠内は濃淡が見えていた。今回はφ=17゚Sであるから、更に有利である。但し、1986年にはδ=17.1"であったが、今回は9.8"程であるから、余程のシーイングが必要かも知れない。1988年にはδ=7.6"程であったから、難しかった。
λ=185゚Ls になると南極冠の中央部、見かけの南端は薄暗くなる。白夜に入って中央部の溶解が速まっているわけである。1988年にはλ=190゚Lsを過ぎてから見えてきた。δ=8.7"程度であった。今回はλ=190゚Ls (21 May 2003)でδ=11.2"、φ=19゚Sであるから可成り有利である。

★1988年に筆者が次の段階、南極冠内の明確な亀裂状暗條を観察し得たのは臺北での初觀測の日3 June 1988でλ=208゚Ls、φ=23゚S、δ=10.5"からであった。今回はλ=208゚Lsは22 June 2003、φ=21゚S、δ=15.2"であるから、もう少し早く捉えられるであろう。δ=10.5"に合わせれば五月中旬、λ=185゚Lsから注意する。ただ梅雨と重なるから機會を逃さないようにする。眼視では亀裂は方向や長さなどに注意する。ccdではIRでの露出を好く調節する。
λ=220゚Ls から230゚Ls までは亀裂が常時見えるであろうから、方向や形状を詳しく紀録するようにする。これはその後の不齊溶解との關聯を突き止めるために是非必要である。λ=210゚Lsが26 June 2003、δ=15.9"、φ=21゚S、λ=230゚Lsが28 July 2003、δ=22.4"、φ=20゚Sであり、申し分ない状況である。沖縄は颱風さへ來なければ完全な觀測が出來るし、本州も後半梅雨明けに入るかもしれない。
λ=230゚Ls (28 July 2003)を越えると南極冠の溶解に不齊性が起こって中心が偏芯する可能性が出てくるので、南極冠全体の濃度のニュアンスを注意深く追跡する。精密なスケッチより略圖によるメモが重要だろう。偏芯の問題については#240 p2923の罵詈雜言をもう一度ご一讀願いたい。ωの問題もあるから10゚W毎に出來る限り幅廣く紀録したい。λ=240゚Lsは13 Aug 2003に來る。もう最接近に近いから怠りはないであろう。


 ★ところで注目するのは暗條や早い翳りだけではない。CMO #115 p1004の1988 CMO Note (18)には南極冠内の亀裂について1988年のデータを紀録してあり、上の状況を可成り圖示してあるのだが、同時に輝点についても記述してあるので參照されたい。圖1にはλ=227゚Lsでまだ南極冠から分離していないノウュス・モンス(ミッチェル山)が検出された例を擧げてある。δ=13.5"のでω=236゚Wの方向からである。どの圖も比較されており、この場合は1986年のλ=188゚Lsでのω=236゚Wから矢張り南極冠内部に輝部があり、これがノウュス・モンスであることが示されている。2003年の場合、λ=188゚Lsはδ=11.2"に過ぎないから無理であるが、λ=227゚Ls (24 July 2003)には既にδ=20.9"であるから、それまでに何度か注視すると好いだろう。

 
★圖2、圖3には矢張りλ=210゚Lsとλ=240゚Ls (250゚Ls)の比較であるが、後者では勿論ノウュス・モンスは分離している。後者は今回の場合時期的には問題がない。最接近日にはλ=249゚Lsとなり、朝方には見えるはずである。尚、ミッチェル山分離については、先の罵詈雜言の英文の部、及びCMO #007を參照されたい。

Back to CMO #268 Home Page
Back to the CMO HP / Back to the Façade