Great 2003 Mars Coming (02)j

Great 2003 Mars Coming
(2)


2003年の閃光現象の可能性

( CMO Ina Meeting Report (4) )

村上 昌己


  ★本年夏の伊那での懇談会席上でも取り上げたことだが、2003年接近時にSolis L、Tithonius Lあたりに発光現象が、日本の含まれる経度域で観測される可能性があることが予想されている。
 前回2001年接近時にEdom付近で観測された発光現象は過去の日本等の観測例を参照・考察し、何か「反射体」を想定し、(De=Ds)となる時とその値を条件として、アメリカで予報された。Sky & Telescope誌にはドッビンズ氏とシーハン氏の共著でその詳細が掲載され (Tom DOBBINS & BillSHEEHAN, The Martian-Flares Mystery, S&T, May 2001 (101,No5) p115)、本誌でも取り上げている (CMO #242 p2973 Forthcoming 2001 Mars (10)「火星面がピカるとき」、CMO #260 p3337 "Interview with Sanenobu FUKUI")。
 この予報に基づきパーカー (Don PARKER)氏やムーア (Dave MOORE)氏を含むALPOの観測隊はフロリダ半島南端のフロリダ・キーズに遠征し滞在して、六月5日から9日までEdomの観測を行い、最初の二夜は何も起こらなかったが、7日と8日に間歇的な閃光現象を捉えて、衝撃を与えた(直ぐにCMOからemailで通知された。CMO #245 p3013 Newsflash, p3016 LtE, CMO #246 p3025 CMO Mars Report #10 参照)。観測隊は二台の望遠鏡で交替しながら連続した眼視観測を遂行し、もう一台にはビデオカメラを取り付けての撮影態勢をとり、どちらでも現象を捉えることに成功している。但し、8cmでは駄目であった。


 ★さて、2003年にこのような現象の可能性があるか、また日本からの観測はどうか、が問題である。2003年の The Astronomical AlmanacのEphemeris for Physical Observation の表によると、(De=Ds)となる期間は、次の二回存在することが分かる。


(1)
(00h GMT)    De      Ds        δ      ι
 01 Aug   20.12゚S  19.91゚S   22.4"  23.0゚
 05 Aug   19.91゚S  20.60゚S   23.0"  20.3゚

(2)
(00h GMT)   De       Ds        δ     ι
 01 Nov   23.58゚S   23.79゚S  15.0   38.0
 05 Nov   24.01゚S   23.38゚S  14.3   38.9
 (De=Ds)の値は、それぞれ20゚Sと24゚Sであり、Solis L辺りに発光現象が起きる可能性が考えられる(註1)

 そこで、ω=90゚Wになる時刻を見てみると


  (1)   01 Aug  16h20m GMT ω=090゚W
        02 Aug  17 00      ω=090゚W
であるから、日本から当該地域が観測出来ることが判る。この頃の南中は夜半過ぎで好条件である。一方、後者は

  (2)   02 Nov  00h20m GMT ω=091゚W
であって、日本で火星が南中するのは同日11h20mGMTでω=246゚WであるからSolis Lあたりは観測不可能である。

 前者(1)の機会は視直径・位相角・天候を勘案しても条件がかなり好いので、少し詳しく紹介すると、先ず(De=Ds)になる時刻は補間法で、01 Aug 23h GMT (De=Ds)=20.1゚S と出てくる(註2)
したがって、1 August前後が候補である。しかし、2001年の例を見ると、必ずしも正確に(De=Ds)では起こらないので、相当な幅が必要であろう。

 そこで、前後数日のωを示すと、以下のように、この期間には連日Solis L、Tithonius L辺り(Ω=080゚W〜090゚W)の範囲が火星面に見えている(南中時は夜半過ぎ17h GMT頃)


         13:00    14:00   15:00   16:00    17:00    18:00    19:00    20:00   21:00  GMT 
29 July   067゚W    082゚W   096゚W   111゚W    126゚W    140゚W    154゚W    169゚W   184゚W
30        058      073     087     102      117      131      146      160     175
31        049      064     078     093      108      122      137      151     166
01 Aug    040      055     069     084      099      113      128      142     157
02        031      046     060     075      089      104      119      133     148
03        022      037     051     066      080      095      110      124     139
04        013      027     042     057      071      086      101      115     130
★以上、条件は良く、確認観測の意義は重要であり、この期間の共同集中観測を諸氏の協力を得て是非とも実行したいと考えている。今回はデータの確認で諸氏の興味を大いに喚起するだけだが、現象に向けて観測の態勢作りがこれからの課題である。
 尚、「反射」現象は(De=Ds)の時だけが幾何学的には可能な分けではない。(Ds+De)/2の緯度に水平に置かれた「鏡」があればこれに太陽が反射して地球のわれわれの眼に届く。もしこれを考慮し、更に「鏡」の水平からのずれを勘案すると可能性は無限に多くなり、計画を立案するのは煩雑になりすぎるので、ここでは考えない。それに今回の(De=Ds)は2001年の現象の追試として意味があると考えるわけである。

(註1) 1958年の福井實信氏の時はDeやDsは12゚S〜14゚Sであったから事情がやや違う。その他、季節も1958年の場合は325゚Lsあたりであったのに対し、1 Aug 2003は232゚Lsあたりである。

(註2) ビーシュ(Jeff BEISH)氏のプログラム "WIMP v4.0"においては少し違って


      01 Aug  12hGMT   (De=Ds)=19.5゚S
となっている。
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