10 Years Ago (90) (Japanese)
- CMO #129 (10 Feb 1993) & #130 (25 Feb 1993) -


 CMO #129は、1993年二月10日に発行された。火星は一月末には22hに正中となり、視直径も14.6秒角から13.3秒角に落ちている。季節はλ026°Lsから033°Lsに推移した。観測者は国内十一名、国外四名である。悪天候のため観測数は低調であるが、岩崎徹(Iw)氏や森田行雄(Mo)氏等の活躍が目立っている。マレ・ヱリュトゥラエウムが東西に非常に濃く、アルギュレ以南の明部を囲っている様相やアウロラエ・シヌスとマルガリティフェル・シヌスを結ぶバンドとの間に 東西の淡い明帯ができていたこと等がこの時のポイントとなった。季節が進めば観測の重要な対象となるヘッラスは、この頃夕端でも鈍かった。北極冠上のフードはもはや無いものの溶解に伴う霧は弱く出ていた。追加報告として阿久津富夫(Ak)氏、宮崎勲(My)氏、岡野邦彦(Ok)氏等が十二月から一月前半の画像を送付している。

 1992/93 CMO NOTEでは「唐那・派克氏の最近の火星写真(そのII)」および「CCD火星撮像 岡野邦彦氏の場合」の二つが掲載されている。後者は岡野氏ご本人の原稿である。パーカー(DPk)氏の写真について南政次(Mn)氏は、カラー合成については未だ問題ありとしながらも、白色系の雲や靄が表面を覆っている様をこれほど明確に示した像は今までの記憶にないと評価し、このような像が時間的系統的に得られれば火星表面の気象の推移の把握に役立つとしている。岡野氏は、CCDが惑星撮影に有利な理由や画像処理の要点、ハードコピーの問題についてご自身の実践から論じておられる。

CMO #130は、二月25日に発行された。二月前半の観測記録を扱っている。視直径は11.6秒角にまで落ち、季節はλ034°Ls~040°Lsまで推移した。φ4°Nで北極冠はやや見にくい。厳寒期の観測ながら、国内十名国外五名の観測が寄せられた。Iw氏の活躍が傑出している。Iw氏はプロポンティスI付近の様相について密度の高い観察を行い、Mo氏はプロポンティスIからケルベルスまでの暗曲線を捉え、ケブレニアからプロポンティスIにかけて7 Feb頃から変化に気づいている。北極冠は大方クリアーである。Mn氏はこうした緊急状態とはいえない場合にも活用できる迅速なFAX通信網の必要性が出てきたと記している。まだemailの出現前である。尚、追加報告として、松本直弥(Mt)氏、成田広(Nr)氏の他国外三名の報告があった。

 巻頭は「春の北極冠」と題して、春季における北極冠の動向について、諸文献からピックアップし、今後の北極冠の観測ポイントを示している。北極冠はλ055°Lsまではほぼ極大径を保ち、それから急激に縮小する。この縮小の停滞状態をボームのプラトーと仮称する。λ025°Ls~035°Ls間は極雲がなく、ボームのプラトー後半のλ042°Ls~050°Lsでは再び雲が現れる。そろそろこの時期に当たるとして注意を促している。LtEでは村上昌己(Mk)氏、神崎一郎(Kh)氏、伊舎堂弘(Id)氏等十一名が便りを寄せている。

日岐 敏明 (Hk)


Back to CMO #269 Home Page / Back to the CMO HP / Back to Façade