Ten Years AGO  (77)   - CMO #113 (25 January 1992) -


 

1992

年の火星は、年末にかけてだんだんと近づいてくる年であった。次の接近は1993年の年初であり、1992年後半には観測の好期となる状況だった。十月には「ふたご座」で「西矩」となり、十一月末には同じ「ふたご座」で「留」を迎える。
 とはいえ、年初の火星は「いて座」にあって朝方の東南の空に低く、太陽と の離角もひらかず、観測再開はまだ先のことであった。

 今号には申年新年の挨拶に続いて、「日本語講座」が、南(Mn)氏と中島孝(Nj)氏の共著で始まった。第一回目は日本語に於ける「漢字」の用法を『火星通信』紙面に頻出する漢字を例に挙げて、英文の読者に解説をしている。

 次いで、1990 OAA Mars Section NOTE (3) 199012月のHellas "Hellas in Dec 1990 (around 345°Ls)"がある。1990年十二月に観測されたHellasの異様に関しての考察である。
 この期間Mn氏とNj氏は福井で集中観測があり、Hellas北西部の明部からYaonis Frの東岸に沿って南西走する明帯が、棍棒のように見えHellas本来の円形ではない、という様子を連日捉えて追跡している。他にも同時期に国内の観測者から寄せられた報告が取り上げられている。此のHellasの異様は既に十一月後半にはアメリカのパーカー氏(D Parker, Florida)によって視直径の大きい内に捉えられていて、概要が紹介されている。十二月後半にも観測があるが、最早、詳細は捉えることは出来なかった。
  同時期に注目されたHellas西南からNoachisにかけて見られた強い朝雲 ("1990 OAA Mars Section NOTE (2)", CMO#108 p933) との連動が考えられるとの結論である。

 「夜毎餘言XXVは。道元禅師著『典座教訓』からの引用を文頭に配して、観測の心得に繋がる禅宗修行の話である。含蓄の多い話で、俄には理解しが難たく思う。繰り返し熟読されたい。

 LtEは、Marc GÉLINAS (Canada), Audouin DOLLFUS (France), 長谷川一郎氏、村山定男氏、大澤俊彦氏、沼澤茂美氏、熊森照明氏、白尾元理氏、松本直弥氏、伊舎堂弘氏、日岐敏明氏、岩崎徹氏、蔡章献氏、Gérald TEICHERT (France)の各氏および筆者から寄せられた年末年始の挨拶が掲載された。
 巻末には、シ−・エム・オ−・フクイの中島孝氏からカンパ受領のお礼がある。

村上 昌己 (Mk)


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