10 Years Ago (84) (Japanese)
- CMO #120  ( 25 August 1992 ) -


 

1992年八月には、火星は「おうし座」にあった。視直径は漸く6秒台に達し、午前2時半からの観測が可能となってきた。季節は288°Lsから306°Lsに推移し、南半球の黄雲発生の可能性を孕んでいた。梅雨も明け、伊舎堂弘(Id)氏や岩崎徹(Iw)氏が観測を開始したこともあり、観測数が増してきている。他に南政次(Mn)氏、中島孝(Nj)氏、日岐(Hk)の観測がある。南氏は一部大津での観測である。国外からはカーミト・レア氏から。 

 

  七月後半の観測ではマレ・エリュトゥラエウムやシヌス・サバエウスが非常に濃いことを各氏指摘しており、Id氏は、北極雲の下にマレ・アキダリウムを濃く見ている。北極雲は全体に活動的である。ヘッラスは白色に輝き、マレ・セルペンティスも濃い。南極冠も確認されている。八月前半には、マレ・シレヌムが濃く孤立して見えること、ソリス・ラクス付近に黄雲らしい攪乱は認められないこと等が観測されている。

 

 今号には「1993年の火星の見掛けの大きさや位相の変化」と題して、本格的な観測開始を前にしてのガイダンスがなされている。それによれば、對衝は1993年一月8日で視直径は14.9である。この観測シーズンの課題として、まず1992年十、十一月頃の北極雲と北極冠の見極めを挙げており、さらに030°Ls辺りに見られる混乱や040°Ls辺りで極地が複雑になり朝方のマレ・アキダリウムへの注意などポイントが示されている。なお、例によって火星面の経緯度グリッドの見掛けの具合が図示されている。

 

 来信(LtE) では、IdIw各氏およびHkからの便りが紹介されている。Iw氏は天候について「夏場に太平洋高気圧の周辺部にあたって、大気の不安定な状態が続くよりも、春や秋に移動性高気圧で周期的に晴れる方が(観測には)好いのでは」と述べている。Hkは、朝方の観測を続ける中で、毎朝東の空が真っ赤であり、ピナツボ火山噴火の影響ではないかと指摘している。Id氏は、視直径は小さいものの沖縄の好気流下では模様がよく見え、八月9日には南極冠らしきものを確認されたことが述べられている。

 

 「夜毎餘言」は、頼武揚氏の夜毎餘言として、氏からの便りを紹介している。主に台湾語、北京語と日本漢音の比較と考察について。なお、「日本語講座」は事情により休載となった。

                                            日岐 敏明 (Hk)

                           


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