OAA火星課OBの最新『夜毎餘言-その II

南  政 次

CMO/ISMO #409 (25 April 2013)


II-1. 要介護度4→要支援度1: 昨日(四月22)私の新しい認定書が郵便で届いた。公文書らしく、電話で、正しく届いたかどうか問い合わせがあったようだ。認定手続きは四月1日にあった。昨年の認定のときは私には記憶がないくらいで、今回はハイ元気になりました、と手振り足踏みで演出したが、ときどき目眩がくることや「ふらつき」があることなどはどう証明しようもなかった。どうやらこれで週一回以上はデイサービスなど受けられなくなったようである。実はすでに「きらめき」さんのデイサービスは卒業しており、ケアマネージャーさんに「もめた」卒業は正解でしたね、と言われた。

 とはいえ、パーキンソンは続いていて、神経内科には月一回通っている。循環器内科の先生には、一年で5キロ体重が減ったと指摘され、減ること自体は循環器内科では歓迎なのだが(腹八分目が課題である)、顔もほうれい線が二本も出來る案配で甚だやつれてきた。三国病院ではドックを勧められている。

実はそれより困っているのは、右眼がどうやら異常になってきたようで、今後、観測ができるかどうか、心配である。左眼はすでに駄目になっており、右眼だけが頼りなのだが、最近はテレビも好く見えない。昨夜かな、暗い部屋でテレビの方に赤く線香花火のように擴がったものが見えるので、近づいたら、単にOFFを示す赤チョボであった。これでは詳細観測は望めそうもない。

(23 Apr 2013)

II-2. 聴き比べ19861988年の臺北滞在のときは、ウォークマンの音をヘッドフォンで聴いていた。当然テープである。テープはあちこちの夜店で売っていた。私はもっぱら蔡琴を聴いていたと思うし、そのことは『火星通信』で何度も書いた。多分これも書いたと思うが、1986年の下宿の傍の音楽茶店で歌手の卵のような女性が楽団付きでいろいろ唄っていて、そこで蔡琴の「不曽放棄你」をリクエストしたら、知らない、ということで、もっと有名な「最後一夜」になった。いまYouTubeで調べたら、新しい投稿で次の蔡琴「不曽放棄你」が見つかった。最後のは最初と同じと思うが、まだ四回しか、鳴っていない。いまでも知られていないのかなぁ、と思うがこれは私が最初に買った蔡琴の1986年のCDにも入って居た。蔡琴はもうお年寄りで、まだ唄っているようだが、1980年代の若いときの録音を繰り返した方がいいと思う。

http://www.youtube.com/watch?v=_tZmYu4wmcw

http://www.youtube.com/watch?v=VHnZZHwnpos

http://www.youtube.com/watch?v=sYEF-E-5lA8

 これも書いたが、夜店のクラッシックはバッハに限りグレン・グールドの「ゴールドベルク変奏曲」だけだったと思う。夜店はいろいろだが、「ゴールドベルク」もいろいろ体裁がかわるものの、全部同じもののダビングのようであった。仕方がないから、これを聴き続けたが、いい加減飽きてしまった。そのことを臺灣大學の或る院生に告げたら、メンツが立たないと思ったのか、故郷に帰って、やはりグレン・グールドのブラームスのピアノ曲を買ってきてくれた。だから、探せばまだ他にあったのかもしれない。

 時がたって、今年に入ってから、NHKの改変前の「エル・ムンド」で鈴木雅明氏の「ゴルドベルク」のアリアを実演で聴いた。ハープシコードの「ゴールドベルク」は初めてで、何と素晴らしい音色か、と思ったが、やっぱりアリアがいいんでしょうね。

 ウチにはグレン・グールドの「ゴールドベルク」が二枚あって、一つは1955年のもの、もう一枚は1981年のデジタル録音。後者は、音はいいが(といっても私はベッドで聴くだけだから、小さい再生装置)、実にゆっくり弾いていて、前者の美事に速い演奏と対照的である。気分によっては、速いほうが好いときもある。

 昨年末から加減が好くなくて、寝転がることが多かったが、前回書いたように、バッハの「フランス組曲」(グレン・グールド)をもっぱら流していた。再生装置に慣れなくて、第五組曲のSarabandeだけリピートすることは未だ面倒なまま、できないのだが、やはりグールドのは独特であるようだ。YouTubeでいろいろ當たってみたが、このグールドのSarabandeで特徴的な、ときどき音を吸い込むような気配と高みの音は他の奏者の解釋ではみられないとおもう。全体の長さももちろんそれぞれである。一番長いのは、鈴木雅明氏のハープシコードによるもので二時間を越える。ただ5-IIISarabandeはとくべつ感心しなかった。グスタフ・レオンハルトのハープシコードのフランス組曲は短い方だが、甲高くちょっと聞き辛い。ジャズでも名のあるキース・ジャレットのハープシコードは音がきれいであるが、例のSarabandeは一寸退屈なぐらい遅く長い。アンドラーシュ・シッフのピアノは柔らかいけれども、あまり有機的でなく、おもしろいとは思わなかった。他にもいろいろ當たったが、もう書くのは面倒臭くなった。

問題のSarabandeは単独で内田光子がアンコールか何かで弾いたものが柔らかくて気持ちがいい。

http://www.youtube.com/watch?v=opyand4fOuo

 最後に内田光子とグレン・グールドのモーツァルトのピアノソナタ(K284)の弾き比べというか、対比を示すYouTubeの労作があるので、引用して終わりにする:

http://www.youtube.com/watch?v=lO9_s5c1e3o

http://www.youtube.com/watch?v=CnaEt_cWym8

(24 April 2013)


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