2008年9月28日〜10月5日 ひのでII国際会議出席日記 9月28日(日)leave Kansai 13時すぎ自宅出発。17時15分関西空港発のUAの便で デンバー(最終目的地はボールダ―)へ向けて出発。、 サンフランシスコ経由。 サンフランシスコ空港では西塚君に会う。 すると西塚君が京大エネルギー研究所の大学院生と 話をしている。核融合装置の関係の研究を しているとか。会話に加わっていたら、偶然、 阪大レーザー研の西原さんに会う。今日は プラズマの人と縁のある日だ。鷲見さんの ことを尋ねられる。 デンバーでは柴崎さん、下条君、、、、など 日本人多数に会う。柴崎さん、下条君、西塚君らと スーパーシャトルでボールダ―へ。27ドル。 ボールダーは、数えてみたら、何と6回目の訪問だ。 何しろ、初めてアメリカに来たときに訪れた町の 一つがボールダーなのだ。 にもかかわらず、ボールダーの町のことは あまり覚えていない。一つには、訪問先のHAO (High Altitude Observatory)の場所が来るたびに 変わっているせいもあるのだろう。今回のHAOも 初訪問。CenterGreenという地名のところで 新しい建物。宿泊場所はその近くの Residence Inn。 申込が遅れたのでHPでは満室で予約できず、 Litesさん(のところのAmyさん)に予約してもらう。 すごく広い部屋。ほとんどアパートの一室だ。 長期滞在用の人のためのキチンもある。過ごしやすい部屋。 流石アメリカ。ただし、一泊150ドル余り。 夜、柴崎さんと一緒に夕食へ。ホテルに一番近い レストランへ。近いと思ったら結構遠い。 20分くらいは歩いたろうか? しかも、お薦めの ハンバーガーを頼んだらアメリカ流の超でかいのが 出てきた。しかも味はもう一つ。仕方がない。 ビールも飲んだので、時差ボケもあり、帰りの歩きは よれよれで、実につらかった。 柴崎さんとは野辺山太陽電波の将来など色々議論できて 良かった。 9月29日(月)Hinoce science working group meeting この日は、ひのでチームのサイエンスワーキンググループ 会議。ひのでミッションの重要事項を決める会議。 こちらはもっぱら聞くのみ。ひのでの状況を知るのに 良い機会。Xbandの問題はアンテナ局を増やしたり、圧縮 を増やしたりで何とか元の何分の1かにはできそうとのこと。 ショックだったのは、カルシウムフィルターの透過率が 次第に減少しており、このまま直線的に減少すれば、 3年後には使えなくなるとのこと。これでは太陽活動マキシマム のときに使えないではないか。 フレアが発生したときの観測プログラムの方針について議論。 ようこうと比べて機器が複雑で観測モードも色々あるので 難しい。 来年のひのでIII国際会議は東京で11月10日〜13日ころに 開催することが正式に決定。(ところが、後日、桜井さんから 12月1日〜4日へ変更するとの連絡あり) 夜はレセプション。今回は参加者数も200名近くと多いうえ、 ひので会議だから知人友人が多い。しゃべるのに超忙しい。 富山大の坂井さんに久しぶりに会う。10年ぶりくらいか? そしたらRyutovaさんにも会う。ちゃんと話すのは やはり10年ぶりくらいだろうか? 夜は、数時間仮眠の後、1時くらいから朝までずっと講演準備。 何も準備をしていなかったうえに、講演時間がわずか 15分。しかも、質疑応答込だ。その上、タイトルは Ubiquitous Reconnection in the Solar Atmosphere 方針すらもさだまっていない。色々思案したあげく、 西塚君のApJレター論文を中心に ミニレビュー講演にして、コロナ加熱の ナノフレア―アルベン波統一モデルの提案をすることに した。 9月30日(火)1st day of Hinode II meeting DePontieuのスピキュールの講演の後に長年の疑問の 質問:「タイプIとタイプのIIの分類は納得できない。 バイアスなしに統計解析したらどうなるのか? 本当に二つに分類できるのか?」 答えが一杯返ってきたが、要するにバイアスなしの 統計はまだしていないし、今、ヒストグラムも 持ち合わせていない(タイプIはPASJ論文に載っている とのこと)。などなど。後で、個人的にゆっくり議論。 タイプIは活動領域、タイプIIは コロナホールで多いとのこと。それなら、柴田末松の 話と同じではないか。タイプIとタイプIIは別の現象ではなく 物理は同一の現象ということになる。 そんな話をしているうちに、だんだんこちらの 意見に同意してきた。「タイプII(速いスピキュール)が 見かけが違うのは、ひょっとしたら、衝撃波そのもの を見ているのかもしれない」と言ったら、それはおもしろい、 とあいずちを打っていた。 Tomczykのマウナロアコロナグラフによるアルベン波発見の 講演、ムービーは感動的。よくぞあれだけ観測できたものだ。 ただし、エネルギーはコロナを加熱するのに足りないとのこと。 おそらくもっと空間分解能が必要。 Moreno-Insertisは、X線ジェットの3Dシミュレーション。 素晴らしい。思わず手を挙げて congratulation と 言ってから質問。アルベン波はどれほど放出されているのか? 自分の講演は、短い時間の上に、あまり新しい 話がなかったので、受けた形跡なし。ちょっと方針を 間違えたかもしれない。ひのでの素晴らしいムービーを多用すべき だったか。まあ、オリンピック精神ー参加したことに意義ありーで 良しとしよう。(アブストラクトには、フラクタル構造、 コロナ加熱、リコネクション物理、粒子加速への応用についても 述べると書いたのに、実際は、コロナ加熱について少しのべただけで、 リコネクション物理や粒子加速には全くふれず。それが聴衆の 期待にそむいたのかもしれない。) 質問は3つほど。Velli(ジェットのアルフベン速度が200km/s というのは 遅いのでは?=>これは彩層プラズマのアルフベン速度だと言ったら すぐに納得してくれた), ??(Nakariakovのところの 人ー後でメールをくれたージェットのアルフベン波はキンクモード ではないのか?)、??(顔は覚えているが名前は不明、良く質問 していた人ープラズモイドが大事というが、ぺナンブラのジェット ではどうなのか?など) Steinerさんと久しぶりに会う。ハイデルベルグでの国際会議以来か? 3Dシミュレーションで水平磁場を再現する話をやっている。 Steinさんとも久しぶり。親しげに話しかけていただいて、 光栄そのもの。圧力にして6桁もダイナミックレンジのある 3次元MHDシミュレーションの話。すごい計算。これで圧縮性がフルに はいっている。音波の生成も再現。このスケールの対流もすべて はいっているという驚くべき計算。最速スパコンを何か月も動かしたとか。 終わってから韓国のChaeさんと長々と彩層リコネクションについて 議論。のち、真柄君、Lowさんと、会議のバーベキュー夕食。 バーベキューサンドイッチは悲惨な味だった。Lowさん節を いっぱい聞く。今、本を書いているとか。 テーブルにはスペインの若者たち。 Hegglandさんも現実的太陽大気の下での リコネクションの2DMHD計算をやりだした。 終わってから、スローショックや熱伝導の効果のことを 色々教えてあげる。 10月1日(水)2nd day of Hinode II meeting 午前の最初のチェアマン。8時半〜10時半ころ。 多くの講演時間が短い(質疑応答入れて15分) 上に、チェアマン用のマイクがなくて、往生した。 しかも内容は磁場の測定の話が主。 Trujillo Buenoさんの講演はハンレ効果の基礎的な 話。内容は全くついていけなかったが、Nature論文二つに、 PhysRevLett論文一つを最近出版したとのことで、 少しびっくり。 日本人若手が多数出場。彼らがあまり質問を 聞きとれていないので、助けてあげたかったが、 質問も英語もややこしく、単純なものでは なかったので、あまり助けてあげられなかったのが ちょっと残念。 石川さんは、よくやっている。岡本君も、まあまあ。 Martinさんに批判されてちょっと苦戦中だが、 こういう経験も必要だろう。何しろ世界のMartinさんに 本気で相手してもらえるのだから。 会議の最後に一つ質問したのは良かった。 何しろこの会議、岡本君が質問するまで 日本人で質問していたのは私だけだったのだ。 30代、40代の連中(日本人中堅)は 何をしているのか! 永田君の講演はプレゼンに問題あり。 折角の良い研究なのにあれではちょっと 異なる分野の人には伝わらないのでは。 Bergerさんのプロミネンスのバブルの話は おもしろかった。何かわかったわけではないが、 そもそも静穏型プロミネンスのムービーが おもしろいのだ。そのおもしろさを存分に 伝える講演。地上(ハワイのコロナグラフ)でも 似たようなバブルが観測されているとのこと。 理論を考えないといけない。理論家へのチャレンジだ。 勝川君のぺナンブラマイクロジェットも おもしろい。ついに足元で下降流が見つかったとのこと。 ただし、1km/s程度。光球で起きているらしい。 それはぺナンブラフィラメントの位置とも 合っているとのこと。だとすると、リコネクションジェット の速度はたかだか10km/s程度か。下向きは小さくなるので 1km/sは良いとしても、上向きの100km/sはどうするか? 結局、彩層アネモネジェットと同じようなこと (磁気リコネクションで噴出したジェットでは なくて、それが前面につくるスローショックが 上方に伝わってショックが成長して、彩層上部プラズマを 加速するという描像)を考えないといけないかもしれない。 この後、Ryutovaさんとも議論。最初はかなり異なる 描像かと思ったがそれほどでもなし。 議論はなかなか楽しかった。 下条君のポーラーX線ジェットの話もよかった。 強いkGパッチではなくて、浮上磁場(エフェメラル領域) やキャンセリング磁場が足元にあるとのこと。 全体的な描像も良く考えている。 ポーラープルームとの関係を質問しようと思っていたら、 次のRauafiさんがまさにその話を展開。何と、ジェットの 90%以上はポーラープルームと関係があるとのこと。 ジェット(の領域)がプルームに進化する、プルームで ジェットが起きる、のだそうだ。おもしろい。 清水君のライトブリッジからのジェットの話は 先日の天文学会で最もおもしろかった話。 勝川ジェットと少し似ている。 いよいよ光球+彩層リコネクションが、詳しく 見えてきたようだ。 ここまでわかれば、リコネクションレイトも 定量的に測れるのではないか? (と後日質問) 午後はコロナの話。 Klimuchuk の話は明快だが今一つ感心せず。 アントリン君の講演は良かった。 ちょっと量が多くて早口気味だったが、 結構きっちり話した。私の採点では、 午後の講演の中でベストだった。 内容は、ナノフレア加熱では足元加熱が 観測と良く合う。ひのでの原君の ブルーシフト検出と一致。 アルベン波加熱はなぜかループ足元で レッドシフト。原因は不明だが、 おもしろい。静穏領域コロナの観測と 比較すべき。(今のところ、低温は 合っているが、高温が合わない。) 質問は、アルベン波はなぜ散逸するのか? (Klimchuck)。Ryutovaさんが phase mixing で散逸するじゃない、と 言ったら座長のAntiochos さんがそれを 入れなくても散逸するという話ですよ、 それはそれで意味がある、とサポート。 夜は横山君とボールダーのダウンタウンへ タクシーで日本料理屋(sushizanmai)へ。 うどんが食べたくて、メニューを見たら、 野菜焼きうどん、鍋焼きうどん、の2種類。 「野菜焼き」とは、あまり聞いたことがないなと 思いながら注文。そしたら「焼きうどん」が 来てしまった。おつゆが入っているうどんだと ばっかり思って注文したので、すごいショック。 普通のうどんを食べに来たのに。 あまりにがっかりしたので、ダメ元でお店の 人に陳情。鍋焼きに変更するには余分にお金が かかるという話だったが、マスターと相談するとのこと。 こちらは、サイドメニュの お寿司を食べながら横山君と彼の3次元リコネクションの おもしろい話を聞きながら、待つこと数十分。 おなかがすいてきたので、「横山君、あきらめて焼きうどん も食うか?」と言ったら、「いえ、もっと待ったら どうですか」というので、我慢。そしたら、 マスターのおばさんがやってきて、日本語で、 「こんなことは普通認めないのですが、 今日だけはお金の追加なしに 特別で鍋焼きうどんを作ってあげます」と半分 怒り顔で言いにきた。 そんなに怒らなくても良いのに。せっかくサービス してくれるというので、ありがたく受けることに。 鍋焼きうどんはなかなかおいしかった。 「待て」と言ったくせに、横山君が「恥ずかしい」 というのにはちょっとムカッ。 結局、二人で、寿司(16ドル)、鍋焼きうどん(21ドルくらい)、 焼鳥(6ドルくらい)で、ティップは少しはずんで、全部で50ドル。 10月2日(木)3rd day of Hinode II meeting Rempelさんの黒点のシミュレーションには感動。 ついにやられてしまった。見事なものだ。 少し質問。ぺナンブラはcomb structure は 再現していますか?(答えはイエス)では、 リコネクションは? 勝川ジェットはできませんか? (よくわからないとのこと) おそらく分解能が足りないのだろう。(と言ったら 会場から笑いが起きた。) Readonさんが、勝川ジェットの地上(SacPeak)観測の報告。 ついにCaラインプラファイルを観測するのに成功。 そしたらEllermanBomb的プロファイルをしている! これこそ、磁気リコネクションの証拠では? ここでも質問。速度場は?ラインは対称的、とのことだが 普通のエラーマンボムもそうなので、詳しい解析を 推奨。夜はバンケットでテーブルの横にすわり 色々質問し、議論。 一本君の講演の後、うしろからTitleさんが 「一本は大変クレバーだ。大変良い研究者だ。 彼に飛騨などの観測装置の発展開発を 全部まかせたら良い」とのこと。「だから彼を京大に 引っぱったんですよ」と返答。 夜は山の中腹のNCAR本拠地で、バンケット。 このとき、酔ったいきおいで、Athay さんと記念撮影。 KnoekerさんもLitesさんも参加。 大学院生の頃、Athay さんの彩層コロナの教科書をさんざん 勉強したので、初めてお会いできて感激。 そういえば、今回、Simonさんとも初めてお会いできて 感激。Leighton, Noyes, Simon の有名論文の共著者。 どうやって5分振動や超粒状斑を発見したのですか? といろいろ昔話を教えてもらう。 Leighton先生の太陽の弟子には、 Noyes, Simon, Sheeley, Title と続くのだという。 錚々たるメンバーだ。Noyesさんが5分振動が博士を 取り、Simonさんが超粒状斑、TitleさんがHαを やったとのこと。 10月3日(金)4th day of Hinode II meeting 4日目となると、 セッションは疲れがたまり、あまり集中できない。 フレアの話だが、太陽活動が低いせいもある。 午前で国際会議が終わり。 昼はMorenoさんと色々議論。 午後はNOAA見学ツアー。 地球の球面ムービーはおもしろかった。 海流、津波、大陸移動のムービーには 感動。日本円で2000万円くらいという。 意外と安い。京大でも導入を考えたらどうだろう? 夕方は疲れがたまっていたので、ホテルに 帰ってコーヒーを飲みながら WangTさんと長々と議論。結構おもしろい 研究をやっている。リコネクションアウトフロー、 コロナループ振動、ダウンフローなど。 夜はホテルの店でピザ(小型)を買ってすませる。 10時ころ渡邉さんから電話。北井さんがスーパー で倒れたとのこと。びっくり。急いで病院に 電話すると、本人が出てきて、気がついたら病院に いたとのこと、点滴を打って、 安静にしているが、何とか明日か明後日には帰れると思う とのこと。しかし保険には入っていない、というので、 心配だ。 10月4日(土)leave Boulder 心配だったので、出発前の翌朝4時ころ渡邉さんのホテルに電話するが つながらなかったので、早朝(4時すぎ)にも関わらず 病院にもう一度電話。病院の人としばらく話をしたのち、 本人を起こしますとのことで、恐縮したが、北井さんと 話ができてほっと一息。「検査をしてから帰るとのこと。 飛行機は遅れるが、渡邉さんが同じ便で付き添ってくれる」とのこと。 ということでこちらも、ちょっと安心してホテルを出発。 10月5日(日)arrive Kansai