日食国際会議およびIAU−APRIM@昆明出席 (2008年7月27日ー8月7日) 7月27日(日) 出発。関西空港に着いたところで大山君(滋賀大)に会う。 さらに、チェックインカウンターのところで 阪大レーザー研の高部さん、坂和さんにも会う。 めったにない機会だからと、一緒に昼食。うどん。 お互い近況報告。 北京空港では、吉田君(岡山所長)にも会う。 その後一人で地下鉄で市内へ。(大山君は ロシアに日食観測へ。吉田君は別に中国人と約束が あるとのこと。高部さんもレーザー実験の共同研究の 相談だとか。) さて、北京空港の地下鉄の駅(ただし地上にある) にいくと、プラットホームに エアーコンディショナーが入っておらず、まるで、 サウナのよう。最新のドームだが窓がない! しかも、トラブルで電車が30分以上 遅れ、うだるような蒸し暑さ。 汗がたらたら。待てども待てども電車は来ない。 ひたすら我慢我慢。北京の人々も辛抱強い。 こちらは怒りがほとんど爆発寸前。30分以上たって ようやく電車が来て中に入ったら涼しくで何とか 生き返る。どこで降りたら良いか、電車の中の中国人に 聞いたら親切に教えてくれて、大変助かる。 地下鉄を降りてから、目的のホテルに歩いていけるかと 思ったが、15分歩いても見つからずあきらめて タクシーを拾う。北京は広い。 夕食は一人で、ホテルの近くの店に。 英語が全く通じず、メニューの写真を見て、 苦労のあげく、ラーメンらしき麺を注文。ところが スープが入っていない!  お茶を頼むのも一苦労。やっときたら 立派なポットに大量にはいっている。 最後に勘定書きを 見てまたまたびっくり。麺+餃子で25元 (1元=17円だから、約420円)なのに、 お茶だけで25元もとられているではないか! だまされた!と、支払のときに、too expensive と 驚いてみせたら、 (英語はほとんど通じていないせいか) 「最高級品ですから」と誇らしげに 返事されたので、逆に、 あきれて怒りがしぼんでしまった。 7月28日(月) 早朝、一本君、磯部君と3人で、タクシーに乗り、 北京空港へ。敦煌には昼ごろ着く。のちバスで 酒泉へ。休憩を入れて5時間くらい。 Buechner さんに久しぶりに会う。バスの中で 色々よもやま話。最近、迷惑をかけていたので、 色々話ができて良かった。 7月29日(火) この日から、日食国際会議。正式名称は "Solar Magnetism, Corona, and Space Weather". Zhang, Hongqi さんが全体の(SOC+LOC)チェア。 Mei Zhang さんが実質の世話人。 SOCには日本から桜井さんと私も入っている。 日食を見るのが真(?)の目的の国際会議。 でも、会議はなかなかおもしろい。3日間。 中国からは、Fang, ChenPF, WangJ, LinJ, YanY, などなど。 韓国からは、Kim(元京大宇宙物理)、Choe, Moon など、 欧米からは、Sterling, Solanki, Lites, Wang,H., Cameron,R., Borrero, Carlsson, Buechner, Gibson,S., Miesch,M., Kim, I., など。 日本からは、桜井、柴田、一本、末松、花岡、原、磯部など。 Science 誌の編集者の一人のStone という人も取材に来ていた。 奥さんが日本人で色々話をする。 会議の始まり(オープニングセレモニー)はすごい儀式。 SOCは全員前に座らされる。 居眠りしていたら、前でテレビ局のカメラが撮影していて、 ちょっと恥ずかしかった。 会議ではFanさんが中国のSpaceSolar Telescope(SST) プロジェクトを紹介。1m可視光望遠鏡だけでも大変だと 思うのに、X線望遠鏡からEUV望遠鏡、コロナグラフ、ありと あらゆる装置満載で驚き。装置の数を減らしたら早く通るのではないか? というようなニュアンスの質問したら、ノー、という返事 だった。予算は通っていないが、 プランとしてはベストなものを作っておきたい、ということ らしい。KUAFプロジェクト(これは太陽風測定なども入っている) とどちらが先に決まるかもまだわからないそうだ。 Kim(韓国)さんが客員で京都(または飛騨)に来たいという。 一本君とも前向きに相談。 7月30日(水) 国際会議2日目。 磯部君がいつもながら見事なレビュー。 Miesch (HAO)の講演:太陽自転のシミュレーションで 差動回転が説明できているらしい。ちなみに、 この人はS.Gibsonさんの旦那。子連れで参加。 午前の後半は私が座長。 Mei Zhang の話はおもしろかった。マルチポールに なると蓄えられる磁気ヘリシティが少なくなるという計算。 したがって浮上磁場が出てくるとマルチポールの 度合が強くなって限界がさがり、erupt しやすくなる というもの。こういう研究こそが重要。breakout model をただ支持するだけの意味のない研究が多すぎるなか、 こういう研究こそ増えてほしい。 午後、Carlssonの話には新しさはなし。 DePontieらはスピキュール研究何をしているのだろう。 私は、ひのでで観測されたジェットの話。 Scienceの話+西塚君の話(巨大ジェット、リコネクションモデル、 伝播Alfven波発見)。ちょっと早くしゃべりすぎたか、 質問時間がたっぷりあり、質問が山のように出た。 (あまり詳しくは覚えていないが、、、) その反動か、休憩時間にはあまり、私の話の関係では 個人的な質問が来なかった。 末松君のスピキュールの新しいデータにはちょっと びっくり。ひのででHalpha+−0.8Aの合成ムービーなのだ。 素晴らしい解像度。Narrow band filter image の 観測、解析が進んだ結果だ。 congratulation と言ってしまった。 解析結果もこれまでの彼のスピキュールのダブルスレッド モデルを強化する話。おもしろい。 7月31日(木) 国際会議3日目。 原君とEIS観測データについて有意義な議論ができた。 活動領域から秒速数10〜100kmの流れがあるのが 普遍的らしい。ループ中にもあるという。だから実際は 非定常なスローモードではないかと思う。それを 確認する観測・解析をしないと。 また、一様ループ加熱よりは足元加熱がありそう。 アントリン君の計算も活用して共同で研究を進めよう ということになる。 また、EISのデータ解析WS(スクール)を来年4月か 5月頃に開くのはどうか?という話をする。 8月1日(金) 皆既日食の日。 午前は、夜光杯という有名な名産品の 工場見学。(もっとも、私は知らなかったが。) 見学の最後は夜光杯が一杯陳列してある部屋。 博物館かと思ったら、値札がついていた! こうすれば売れるのかと妙に感心。 NPOもこれで行こう。 午後は、万里の長城の西の果て(嘉山谷関)見学。 明の時代に出来たのだという。そうすると モンゴルの恐怖で出来たいうより、 侵略地を守るための前線基地の防衛のためで、 ちょっとけしからんという気がしないでもない。 三国志の関羽を祭ったお寺があった。 ここら辺は中国人と話が良く通じる。 筆談で盛り上がる。 城(基地)全体は迫力がある。 上からの眺めもよし。矢の遊びもあり、私が試すと ちゃんと標的の人形に命中。誰かが 「適当に打っても当たるように作ってあるんだ」 と妙な感心の声。内心、むっとする。 らくだ乗り場もある。エジプトで乗ったので、 私は遠慮。ただし、こちらの方が乗りやすく 作ってある。降りるときも、両足同時に 曲げるので、私みたいに転倒する人はいない。 夕方にようやく、皆既日食が見えるところに。 金塔(Jinta)というところ(の近く)らしい。 さすがに暑いが、晴れて良かった。バスの近くには 他にも日食見学の人々(地元の人)がいっぱい。 日陰もないし、あまりに暑いので、バスを移動しようかという 意見もあったが、降りた人がばらばらになったので、 結局そこで自由行動に。私はバスの近くに 小さな木を見つけ、木漏れ日の観察をメインにする。 Science誌の編集のストーンさんの奥様と子供達 (2人、小学生3年と5歳の男の子)も一緒。 木漏れ日が次第に三日月だらけになっていくのを 楽しむ。奥さんは紙に穴をあけ、ピンホールカメラも 作成。子供の自由研究にするのだとか。 太陽の高度が低いので、太陽光線に垂直に レポート用紙を立てて、木漏れ日観察。 すると地元の人が一杯やってきて、 写真を撮る。WangJさんもその写真を取る。 近くては花岡夫妻がセミプロの日食撮影準備。 私は用意した双眼鏡をセット。双眼鏡は 花山や飛騨の観望会にも使えるようにと、仲谷君に 相談して、キャノン製(7万円)を花山と飛騨に 1個ずつ購入したもの。手ぶれ防止用つき。 今回は、前回のエジプトのときよりずっと ましなデジカメもあるので、石の上に置いて 撮影の準備もする。手ぶれがないようにと、 タイマーを使う。 太陽がどんどん欠けていき、10秒後にシャッター が降りるようにセットし、ドキドキする。 ついに皆既! コロナがさっと広がり、 美しい。色がきれい。双眼鏡で見ると まず視野に入らず焦りまくる。やっと視野に はいったが、ガダルーペで見たようなコロナループは あまりよくは見えない。肉眼でそのまま見た方が はるかに迫力があって感動する。せっかく 最新の双眼鏡を用意したのに、ほとんど 肉眼で見る。皆既の時間は1分ちょっと短かったが、 デジカメで風景写真やコロナも撮る。 (後で確認すると、ついに日食コロナ写真に成功!) 金星と水星が見えて美しい。写真に写るかな?と 何度もシャッターを切る(後で確認したら、 金星ははっきりと、水星はかろうじて写っていた。) 太陽活動ミニマムなので、ストリーマーが発達。 太陽半径の5倍くらいのところまで見えた。 ただし、デジカメ写真はそこまではっきりと 写らず。) プロミネンスがあるかどうかは肉眼では わからなかった。それは双眼鏡で確認すべきだった。 スターリングさんから後でもらった写真には 赤いプロミネンスがはっきり写っていた。 皆既の間中、ドキドキ焦っていたが、 感動の一瞬だった。 皆既日食は何度見ても感動する! 来年(7月22日@日本)がまた楽しみ。 8月2日(土) この日は徹夜で午前3時にホテルを出て タクシーで敦煌へ。スターリングさんと キムさん(ロシア、モスクワ)と一緒。 会議のエクスカーション用バスでは 敦煌の飛行機(朝10時ころ出発)に 間に合わないため。 タクシーの中では爆睡。敦煌空港には 午前7時に到着すると、何と、門が閉まっている。 朝8時にならないと明かないのだとか。 しばし呆然。結局運転手も入れて 4人で近くの地元の食堂で朝食を とる。中国風。おかゆと肉まん。 おかゆは味がついていなくて閉口する。 タクシー代は、3人で1400元。一人 約500元(=8500円)。4時間も乗ったのだから 良しとしよう。 敦煌から西安へ。さらに、西安から昆明に移動。 昆明への飛行機には、Fanさん夫妻、Linさん、 Liuさんが乗っていて、ほっと一息。 どこに泊まるか知らなかったので。 空港についたら、Fanさん(アカデミシャン)用に 迎えの車が飛行機の横まで来ていて驚いた。 Linさんに連れられて一緒に乗せてもらう。 夜は常田君、高田さん(東大数物連携特任准教授) とビールで盛り上がる。 8月3日(日) IAUアジアオセアニア地域会議 (APRIM=Asia Oceania Regiona IAU Meeting). 最初はセレモ二ー。海部さんがリーダー格。 FanさんがIAUの vice president としてスピーチ。 世界天文年の宣伝と参加呼びかけ。 講演は常田君がひのでの成果の見事なレビュー。 来てくれて良かった。 台湾のIpさんが台湾の将来計画プランを紹介。 2m望遠鏡の予算が通ったとのこと。台湾の 高地(3000mくらい)に置くそうだ。 突発天体が主眼。京大の3.8m鏡と目的は似ている。 Dopitaがマックで準備した講演ファイルの図が出てこなく なって、途中放棄。こんなの初めてみた。もちろん、 ×だ。 バンケット。すばるの高見さんとディープに話ができて 良かった。高見さんは舞原さんのお弟子さんだった とのこと。私より3つほど下。一本君と同級とのこと。 再び、夜はビール。今度は、常田君、高田さんに 加えて、高見さん、富阪君、大石君も参加。 大いに盛り上がるが、おかげで講演の準備の時間が なくなる。 8月4日(月) 午前、太陽セッションで座長。午後はトップに 招待講演。New Aspects of the Sun revealed by Hinode。30分講演+5分質疑応答。昨日、常田君が ひので全体の素晴らしいレビューをしたので、私は ジェット、リコネクション、Alfven波だけに限って 講演。コロナ加熱は、ナノフレアーAlfven波統一モデルで 解明できるのでないか?と挑発的な講演を試みる。 昨夜ビールの後1時過ぎから準備。 1時間睡眠だった。で、何とか終了。中国の若い人が 終わってから質問攻め。講演を引き受けて良かった。 出席者数は20~30人くらいでこじんまりしていたが、 キムさん、Choudhuri san, Fan-san, Lin-san、常田君 などいて活発に質疑応答があったので、全体としては 良いセッションだった。 午前の最後には、太陽活動のせいで、交通事故が増えるとか、 人類の健康に影響があるとか、驚くべき講演があった。ロシアの人。 発表PDFファイルをもらう。論文はCOSPARの集録、AdvSpRes の The Sun-Earth Connection に出ているという。 夜は、海部さんと少しビール。 3.8m計画の愚痴を聞いてもらう。 のち、プール横でIAU会議 talking party 。 井上允さん、小林さん、縣さんらと 楽しく歓談ののち、 小山勝二さん、松岡勝さん、常田君と 日本のスペースサイエンスの将来について 深刻な議論。 8月5日(火) 嶺重君と昼飯後少し5分ほど相談。 今回は嶺重君とはディープに話をする時間なし。 午後、雲南天文台の40m電波望遠鏡と 太陽のHα望遠鏡を見学。日本人6人 (井上允、小林、高野、他二人、柴田)と、 キムさん、ステパノフさんが参加。 大学院生の王さんと、 天文台の王教授(?)が親切に案内してくれた。 夕食は、矢治くん、佐藤勝彦先生夫妻と一緒になる。 途中から、富阪夫妻も。関西TVの痛快エブリディのビデオを 見せて博物館の宣伝。 のち、タクシーで中国インド太陽会議用のホテルへ移動しよう と、道路に出てタクシーを捕まえようとするが、 タクシーがなかなかつかまらず一苦労。 結局、ホテルに戻って捕まえる。すっかり疲れて、 寝てしまい、はっと気づいたら、目的地についていた。 渋滞もあったので、30分以上はたったであろう。 数字を見ると、292と書いてあったので、300元(〜5000円) 払うとタクシーの運転手はすごく嬉しそうに「謝謝!」ちょっと 心配になってホテルマンにこれで正しいか?と聞いたら YESというので、そのままホテルに入る。タクシー代が 300元だったとリンさんに言うと、びっくりして、 「タクシー代は30元のはず!」とのこと。何と10倍も 余分に払ってしまった!! こちらも 寝ぼけていたので、レシートをもらうのも忘れていた。 タクシーの会社名なども全く記憶にない。 リンさんは、タクシー会社に連絡して取り戻そうと思った ようだが、後の祭り。ホテルマンはタクシー1日借り切り みたいなものだと思ったらしい。 8月6日(水) 中国ーインド太陽ワークショップのエクスカーションに 参加。主目的は、中国で建設予定の1m地上太陽望遠鏡の 建設予定地の見学。 午前中は九郷、、、という秋吉台の巨大版の 洞窟観光。洞窟の中を激流が走り迫力満点。 石器時代の遺跡も出ているらしい。 ここで雲南ローカル色豊かな人形を買う。58元。 ジェインさんと一緒にリフトに乗り記念写真に。 午後、昨日飲んだ便秘止めの薬(要するに下剤) を飲んだ効果が表れすぎて、昼ごはんの後、腹痛(便意) で大変なことになる。実は昼ごはんの前にトイレに行ったのだが あまりに簡易なトイレにびっくり。 これがうわさの中国式トイレかというしろもの を目のあたりにして、たじろいでしまう。 何しろ、自分の便が他人のトイレに流れていく仕組み になっているのだ。これで便意をそこねてしまった。 我慢してしまった。それが間違いのもと。昼食後、バスの中で 腹痛と便意に悩まされ、30分くらい七転八倒する。 しかし、何とかトイレには間に合い、 かろうじて大事にいたらず済む。 人生最大の苦痛と思えるほどの苦しみだった。 中国(雲南天文台)の新1m太陽望遠鏡建設地(Fuxian湖のほとり) は、本当にまだ何もなかった。南京大学の28cm望遠鏡3本 (全面、部分両用)望遠鏡用地もまだ、未整備。両方とも 1年半以内には建設を完了する予定だという。 湖は立派で、気流も安定していそう。標高は1800m。 昼間は風が湖から岸に向かって吹くという。 1年間の晴天日数は200数十日だという。 8月7日(木) 帰国。