8月3日(月) IAU総会@リオデジャネイロに向けて出発 伊丹のチェックイン・カウンターで、パスポートの 提出を求められ、家でパスポートをカバンに 入れた記憶がないことに気づく。 普通は最低、切符とパスポートだけはチェックするのだが、、、 今回はそれすらもしなかった! さあ大変。茜が家にいたら、もってきてもらおうと 電話するがすでに電車の中とのこと。 早くも1日遅れになることを覚悟。 旅行社の渡部さんに電話しかけたところで、 切符と同じ袋の中に入っているのに気づき、ほっと一息。 しばらくしたら渡部さんから電話がかかってきた。 「パスポートを忘れたと思ったんで、、、」 と話をはじめたら、「ああ、肝を冷やした」、とのこと。 余分な心配をかけて申し訳なし。 しかし、近い将来ありそうな話。 今まで一度も忘れたことがないのが不思議なくらい。 こういうときは、どうなるのだろう? 8月4日(火) 成田ーニューヨーク間の飛行機(AA)の中で、 最後に少し映画を見る。 Race to Witch Mountain (Disney) 途中から、しかも英語で見たので、 ストーリーがなかなかわからない。 しかし、どうやら、宇宙人の少年少女 が主人公であることがわかる。 いいところで、ニューヨークに到着。 ニューヨーク空港の中は寒くて死にそうになる。 電子メールを1時間(5ドル)する。 次のニューヨークーサンパウロ便(やはりAA)の中で 続きをみる。今度は日本語で見たので 筋は良くわかった。音が聞き取りにくかったが。 内容はまあまあおもしろかった。主人公の少女は 以前別の映画で見たような気がする。 (やはり飛行機の中で見た Disney のファンタジー映画) でも、どうして宇宙人はいつも 人間にそっくりなんだろう? (人間の限られた想像力では それもしかたないかという気もするが。) リオに到着して、さて何でホテルまで 行こうかと考えていたら、結局、タクシーの 誘いに負けてしまう。あまりに、空港での公共交通の 案内が少なかったから。値段を聞いたら 80ブラジルドルだと聞き、なんだ安い、と 勘違いをしてしまったのが間違い。 1000円くらいだと思ってしまったのだ。 良く考えたら4000円以上。 換金率をちゃんとおさえておかねば。 今回はガイドブックも持ってこなかった。 レセプションで、Gopalswamy さんと CAWSESIIについて相談。 8月5日(水) 朝一番の全体講演の場所で海部さんに会う。 海部さんは、今回でIAUの vice president になり、3年後には president になる予定だと のこと。全体講演は、 The Sun and stars as the primnary energy input in planetary atmospheres, by Ribas, I. 講演者は若い人で 星の分野らしい。私は知らなかった。内容は まあまあ。要するに太陽系外惑星系における 宇宙天気・宇宙気候だ。最近私が強調している 分野だが、世界的にも盛り上がりつつあるらしい。 何というタイムリーな、、、海部さんも、これは 重要な分野だ、と力説。ちなみに、質問の時間に 若い星でのCMEの惑星大気への影響は きわめて重要だと講演者は言っていたが、 本当だろうか?  その後、IAUシンポジウムNo.264の Solar and Stellar Variability and their impact on Earth and Planets に出る。最初はNordlund の3次元MHDシミュレーションの 話。何と1000の3乗のMHD計算をやっているんだという。 昔のGalsgaard and Nordlund の発展。しかし、電流シート がいつも細長いままで、tearing が起きている様子はなし。 それで質問、tearing が起きても良さそうなのが、 起きていないようだ、どうなっているのか?というような質問。 答えはまともに答えず、ミクロな物理がカップルしてきて 話は簡単ではない、、、、というような、ぐちゃぐちゃの ながーい答え。後で、昼ごはんを一緒に食べながら もう一度議論したら、今度は反論せずに神妙に聞いていた。 昼はPetrovay (ハンガリー)も一緒。 CO2温暖化説への懐疑の話をしたら、正統派らしい反応だった。 町のレストラン(バイキングみたいなところ)で たくさん「すし」を食べる。 上記のIAUシンポジウムで印象に残った話に Kitashvili さん(+Kosvichev さんとの共同研究) のダイナモ理論の話がある。αωダイナモ的な モデルの中に勝手に履歴的な非線形項を入れて 過去のサイクルのデータを使って、未来のサイクルの 黒点数を予言するというモデル。これによれば 今始まったばかりのサイクルの黒点数は100以下という。 つまりダルトンミニマムの再来になりそう。 論文(ApJレター)のPDFファイルをもらった。 夜、日本人食事会に誘われていたのが、 犬塚君と話(私の講演で紹介する予定の犬塚君の 研究の話)をしていたら約束の集合時間に遅れてしまい、 結局は夜は犬塚君と一緒に食事。 (誘ってくれた海部さんに申し訳なし。) 8月6日(木) ようやく発表が終わる。 JD7: Astrophysical Outflows and Associated Accretion のセッションでの招待講演。 発表時間が質疑応答を入れてわずか20分(15分講演+5分議論) なので、内容を短縮するのが大変。 もちろん、発表は1夜づけ。 最近、私の研究室ではあまり宇宙ジェット関係の 研究について新しい進展がないので、 日本での宇宙ジェットシミュレーション研究の紹介という 感じで、前半は歴史的、基本的なことのレビュー (Kudoh-Shibata 1997の理論(磁気圧加速と遠心力加速 におけるスケーリング則の違いなど紹介)、 後半は最近の進展として、 Ibrahim-Shibata (2008)ーリコネクションによる quasi periodic mass ejection を強調 Machida-Inutsuka, ー星形成における2段階のアウトフロー Ohsuga-Mineshige ーradiation MHD simulation of jets などのシミュレーションを紹介。  (Matsumoto, Koide, Mizuno, Nagatakiの各氏の 新しい論文/ppt file も送ってもらっていたが、 詳しく紹介する時間がなくて、 名前を紹介したのみで申し訳なし。) 質問は時間もあまりなかったので、3つ。 Raga : 質量噴出率の時間変化のグラフの 時間のユニットは何か?、 Mirabel : microquasarでもジェットは2重構造で 外側は遅く、内側のジェットは速い。 もう一人はわけのわからない質問だった。 時差ボケもあって舌が流暢にまわらず、また、 一夜漬けのいいかげんな発表ということもあり、 終わってからの反響はなし。 ちょっとがっかり。まあ、部屋には人がいっぱいいて、 話の前半で笑いが2回とれ、聴衆は真剣に聞いて いたようだったから良しとするか。 (笑いのひとつは、magnetorotational instability (MRI)の 効果の説明のところで、「1980年代にMRIに相当する 現象を見つけていたが、愚かにも論文を書かなかった。 This is the biggest failure in my life.」 と言ったとき。 このとき、Hawley がすかさず「Thank you !」と言ったので また大笑い。) DalPino さんが唯一、interesting talk と言ってくれたが、 もちろんお世辞だろう。(もっとも DalPino さんの 講演にはリコネクションがいっぱい出てきて、私の アイデアと関係は深い。Liu, Mineshige, Shibata の応用版もあった。また、その後のSoker の話にも 降着円盤の表面におけるCME的質量放出の アイデアもあったので、それを考えると、もう少し リコネクションのことを詳しく話しても良かったかも しれない。Soker の話は初めて聞いたが、 既存の説に(確かな根拠なしに)反対するような 過激な話が多くてびっくり。) その後は時差ボケでひたすら眠くなり、せっかくの Ferrari, Raga 氏らの講演中、ほとんど意識を 失ってしまった。 なお、朝一番はHawley の話。流暢な講演。 最後にブラックホール accretion+jet の見てきたような3次元ムービーで 喝采をとる。ここら辺はうまい。内容は、 初期磁場は何であっても円盤中は大差ないが、 ジェットは異なる、というもの。ジェットができるには net poloidal flux が必要という話。 これはしかし磁場が弱くなれば、ジェット (質量放出率)も弱くなるというKudoh-Shibata (1997)の理論と同じではないか。 講演直後の質疑応答では、MRI の saturation mechanism はどういう理解か? と質問。答えは、リコネクションとのこと。 (ただ、その直後のVishniac の講演では リコネクションだけでなく、浮力も効くという 話だったが、犬塚君によると、あまり 信用できないとのこと。最近のシミュレーション によるとメッシュを細かくすればするほど saturation level が下がる、つまり磁場が 弱くなる、らしく、その解釈やconsequenceが まだ100%理解されてないらしい。) その他、休憩時間にHawleyに色々質問。BHから BZ効果で飛び出すpoynting flux jet の最大ローレンツ因子はどれくらい?  答え、McKinney によれば10くらい。 ただし、数値誤差の 影響があるので、確かなことは言えない。 とのこと。ディスクから飛び出す matter dominated jet の最大速度は 0.3-0.4c とのこと。これは磁場強度依存性 があるのではないか?と聞くと、 そうだろうと思うとのこと。 昼は、Belloni(イタリア、X線連星) と フランス人女性(星形成の観測で、 犬塚君の知人。有名な人らしい)と昼食。 夜はまたしても 名古屋の教授になったばかりの 犬塚君と夕食(+ビール)を食べながら よもやま話。天文学界のヒミツ話で 盛り上がる。 8月7日(金) Belloni によると、 X-ray binaries では、質量降着率が 大きくなるとジェットは見られなくなる、 とのこと。本当か? Astrophysical Outflows and Associated Accretion のセッションは、午前のみで 終わる。久しぶりに宇宙ジェットのサイエンスを 聞き、議論したので、ちょっとリハビリになった。 Bisnovatyi-Kogan さんがこんにちはと、 握手してきたのでびっくりやら、嬉しかったやら。 数年前の佐藤勝彦さんの超新星の研究会でお会いした ので、覚えておられたようだ。 新しい人に色々会う。Cabrit さん(フランス人女性) の発表(原始星ジェットの観測)は 良くまとまってなかなか良かった。 ジェットの回転はまだ観測の空間分解能が十分でなく、 確定的ではないようだ。ALMAに期待とのこと。 Lisanoさん (メキシコの女性、F.Shuの弟子、代わりに 発表)はX wind の話。朝、会場に行く途中の道で 挨拶しに来られた。以前会ったことがあるかもしれないが ちゃんと話したのは初めてのよう。 ちなみに、今やX wind は旗色が悪いらしい (言外にそういう含みの質問が出た)。 Springer の本売り場で、Punsly の改訂版を購入。 そのとき、Khanna さん(Camenizind の弟子ーBH ダイナモをやっていた人)が挨拶してきたのでびっくり。 Springer に勤めているのだそうだ。 かつてクレタ島の会議で一緒だったらしい。 昼3時ー4時は、IAU comission : Sun and Heliosphere buisness meeting に初めて出る。 しかし、特に議論がなく、拍子抜け。 Gopalswamy さんによると、こんなものらしい。 夕方はホテルで少し休んだのち、 夜は Ferrari, Dal Pino, Lisano, Raga の各氏、 および彼らの友人と総勢19人くらいでdinner party。 場所はイパネマのMioという店。 イタリアンスパゲッティを食べる。ただし、肉が多すぎ。 (大体、ここブラジルは肉が多すぎ。毎日 IAU総会会場のレストランで「Yakisoba」 を食べているが、beef だけでなくpork も 入っており、肉だらけ。肉が多すぎだ。) dinner はFerrariさんとは20年来の知己なので、 話が色々弾む。また、DalPino さん、Lizanoさんとは 漢字話で盛り上がる。新しい人にも色々会う。 Sanz-Forcada (Spain) 星のコロナをやっているが、 最近は astrobiology をやっているとのこと。それで 話が盛り上がる。 Micela (Italy, Palermo)やはり星のコロナ。Vaiana の弟子とのこと。Bob Rosner のところ(Harvard) に行っていた。最初の論文が彼との共著論文のようだ。 二人に、3.8m 望遠鏡計画のことを話し、ぜひ、 恒星フレアや惑星探査などで共同研究したいと 話をする。 You-Hua Chu (朱有花、台湾生まれの中国人女性) イリノイ大学の天文の教授。分野は聞きそびれた。 8月8日(土) 1日中ホテルにこもって仕事。 夕方にスーパーで買い物、食事。 中華料理屋をさがすが、なかなか 見つからない。結局、yakisobe どうやら yakisoba が定番メニュらしい。 ただし、肉が多すぎ。 8月9日(日) 今日も、1日ホテルこもって仕事。 今日はちゃんと中華料理屋の 場所を聞いていく。ビーチ沿いに ある。ホテルから歩いて20分くらい。 焼き飯13リアル、ワンタンスープ13リアル。 満足。 8月10日(月) 今日も、1日ホテル。 夕食は、地下鉄駅の近くで 目玉焼きのついてる 肉料理。(ハンバーガーだと 思ったらビフテキだった。) テレビを見ていると、 鋼の錬金術師をやっていた。 また、NHK放送もある。 日本は台風と地震で大変なことに なっているらしい。 8月11日(火) 久しぶりに会場へ。 午前は、special session 6 の planetary systems as potential sites for life に出る。 なかなかおもしろい。 F. Allard 氏が惑星大気のモデリングの話。 メールをしながらなかばうわの空で 聞いたが、惑星大気の流体シミュレーション のムービーが印象的。対流が ジャンジャン起きている。 星の大気・対流層の流体シミュレーション と似ている(当り前か?) non LTE radiation hydro が大事とのこと。 これも星の大気と同じ。 草野さんを探すが見つからず。 昼に関井さん、柴橋さん、 彼らの外国人友達と昼ごはんに 行くが、当レストランで Beckさん、Hanasさんに 会い、結局、Beckさんらと 一緒に食事。彼らは、すしを 食べたことがないらしく、 食べ方を教える。Hanas さん(ポーランド)は、 銀河ダイナモのフル3次元 MHDシミュレーションを やっているという。宇宙線圧力の 効果もちゃんと入れているという。 それは大したもの。 パーカー不安定性の非線形発展が より強くなるとのこと。(そうだと 思っていた) ダイナモにとって パーカー不安定性は重要とのこと。 後で、ポスターの解説も聞く。 できた磁場はモノポーラーだとのこと。 先日の講演は準備不足で いいかげんだったので、 今日は早めに夕方に戻り、 講演準備。 8月12日(水) 今日からJD15 Magnetic fields in diffuse medium のセッション。で、トップバッターが私。 昨日しっかり準備したかいあって、 今日の講演はまあまあうまくいく。 Coronal heating and solar wind acceleration and new data of Hinode Satellite 最近の研究室の新しい成果(松本君や 西塚君の成果)や ひので魅力的なムービーのおかげもあった のであろう。聴衆の反応はわりと良かった。 質問は、 1)速度場の時間変化はゆっくりすぎるのでは ないか? (これは実際の観測もそうだと、 松本君の光球速度場のパワースペクトル解析の 結果も見せる。) 2)Lazarian: 彩層の速いリコネクションは 乱流が原因ではないか?(答え、イエス) ジェットが単なる 加熱のせいで見えている可能性はないか? (答え:いくつかについてはドップラー速度場 観測で検証している) もう一人か二人質問が出たが、忘れた。 Chianさんの教え子(Pablo Munoz) からPPTファイルが ほしいと言われ「了解」とすぐにあげる。 その後、地下鉄の中でウクライナの Tsap さんという人からも、ひのでの ムービーがほしいと言われ、翌日 発表に使ったムービーやpptファイルは すべてあげる。Tsap さんはStepanov さんの仲間でballooning instability をフレアに応用する研究をしているようだ (翌日IHYセッションで発表) Brandenburg に久しぶりに会う。 太陽ダイナモは表面すぐ下の シアー流(ヘリオサイスモロジー で見つかったもの)によると、 言っていた。 夜は草野さんとCentralの近くのダウンタウンの マクドナルドで夕食。 8月13日(木) 休もうかと思ったが、今日は 犬塚君や草野さんの講演と IAU総会(海部さんが次期の次期の IAUプレジデントに選出される投票) があるので、出席。 総会の後、A. Chian さん(台湾出身の ブラジル在住プラズマ物理学者: スペースプラズマ乱流専門) に連れられて草野さんとNiteroi観光。 リオの湾にかかる長い橋を バスで超えていく。海がきれいで 眺めが素晴らしい。コパカバーナの 対岸あたり。ここにUFFという大学が あり、Chianさんは2年ほどいたことが あるとか。今は教え子がそこで教授に なっているそうだ。Chianさん自身は、 もともとケンブリッジでCMAダイアグラムの Cの人のもとで、博士号をとったとのこと。 帰りは船でダウンタウンの近くまで 帰り、その後はタクシーに乗り 犬塚君との約束には20分遅れほどで到着。 夜は、草野さん、犬塚君と3人で食事。 途中から偶然メキシコ人のEnrique Vazquez-Semadeni (星形成分野の人)という人も加わり、4人で色々盛り上がる。 その後は、犬塚君とビーチ横の夜店街と お土産ショッピング。夜11頃に閉店。 メールが山のように来て、返事しきれない。 何とか返事しようとするが4時にダウン。 それでも積み残しあり。 8月14日(金) 朝9時起床。メールの残り+新しいものに 対応しつつ、パッキング。結局、ホテルを 出たのが1時前。ところが、バス停が 良くわからない。30分くらいうろうろしたのち、 元のホテルに戻ると、45リアルで送ってあげるという タクシードライバー。行きの80リアルよりは だいぶ安いので、それで行くことに。 途中景色の良いところで止まってくれたり サービス満点。結局+5リアルはずんで、 50リアル払う。 18時5分発のAA便に乗ってニューヨークへ。 サンパウロで一端止まる。同じ飛行機なのに、 なぜ一度降りなければならないのだろうか? 乗り遅れたら大変と不安。 8月15日(土) リオ〜ニューヨークは、約13時間。 半分以上寝ていた。 ニューヨークでの待ち時間は、約5時間。 待ち時間もパソコンの電源を見つけ、 そこでひたすら仕事。 8月16日(日) ニューヨーク〜東京も、約13時間半。 NHKブックスの原稿書き。パソコン電源 がなくなった後は、XXの審査。 50数件の重い書類をカパンの中に入れていたのが ようやく役にたった。今度は全然眠らず。 14時25分に成田着、のち、国内便に乗り換えて 伊丹に着いたのが、17時55分。 空港でうどんを食べてから、ようやく 20時すぎに自宅着。期間は 長い出張だったが、あっと言う間だった。