Flux Emergence Workshop (Tenerife) 2009年11月1日ー9日 出張日記 11月1日(日) 前日から徹夜して、出張の準備。 最近夜に弱くなってきて眠くてたまらない。 かろうじて頑張って準備が完了。 今回はちゃんとパスポートもチェックする。 ApJ 論文のレフェリーを終えたかったが、 飛行機の中に持ち越し。ただし、 このリコネクション論文はおもしろかった。 朝7時10分すぎに家を出る。 京阪電車で居眠りし、京橋に着いたのに 気づかず、淀屋橋まで行く。仕方がないので、 地下鉄御堂筋線、南海ラピート(特急券500円) で関西空港へ。到着は9時10分すぎ。 大体2時間かかった。JR快速を使った 時間と同じくらい。(特急券代がよぶんか?) 関西空港では磯部君に出会う。 空港の外貨交換所で スペインの通貨は何かと聞いたら ユーロだった。それなら、家にある お金を持ってくればよかった。 カナリー諸島のガイドブックを探すがなし。 スペインのガイドブック中にわずか 2ページの解説があるだけなので、 買わずに済ませる。 空港では意外と時間がなく、 うどんを食べる間もなし。 11時にルフトハンザ機(LH741)で出発。 フランクフルトまで12時間あまり。 機中、睡眠がてら、上記ApJ referee report それを理解するための他のリコネクション 論文(これもおもしろかった)を読む。 12月の学術映像シンポジウムのアブストラクト、 11月下旬の航空宇宙学会の講演要旨も ようやく仕上げる。最後に NHKブックスの原稿チェック。ただし、 途中まで。 フランクフルトで2時間ほど待ち時間。 この間磯部君と議論。太陽放射層 における磁場保持の問題をいろいろ 考える。地球生命に影響を与えたくらいの superflare を引き起こす磁束は貯めうるか という問題。ApJ観測論文で protostellar flare と同じくらいの超巨大フレアが 普通のG型星で起きた証拠があるという 論文を最近見つけたため(論文は 2000年出版、Shaefer 著)。 (その後、Tenerife でBrun さんと 話をすると、ニュートリノ観測と日震学 からコアの磁場強度については 上限がつき、10^7 Gauss 程度だと いう。10^5-10^6G 程度あれば superflare を起せそうなので、 これは良い話。要するに現在の 黒点の磁束の一万倍くらいの磁束 が浮上すればエネルギーは百万倍 のフレアが起こる。10^5−10^6Gなら、 磁束管の半径は3−10万km程度で 良いのでコアー放射層に十分 埋まりうる) 放射層ーコアにためられた磁場が 弱い磁気浮力不安定性で時間を かけてゆっくりと浮上するという シナリオを考えようということに。 成長時間が1千万年〜1億年 くらいになるようなモードが ありうることを示せば、論文に なりそう。 カナリア諸島まで道のりは長い。 フランクフルトから次は マドリードに。2時間半くらい。 そこで一泊。ホテルで磯部君と 夕食。その後、Flux emergence ws の講演の準備。今回は自分の発表 だけでなく、Archontis さんの 発表も含めて invited talk を 頼まれたので、大変。 Archontis さんから送られてきた ppt file を一応全部紹介すべく準備。 一方、自分の発表も森田君の 観測の話をメインにしたため、 普段とは勝手が違う。分かりやすい おもしろい話にするのが大変。 結局、ホテルでは眠気に勝てず 未完成に終わる。3時間睡眠ののち、 マドリードを出発。カナリア諸島へ。 11月2日(月) 朝7時のシャトルバスでホテルを出て、 マドリード空港へ。 朝8時40分発カナリア諸島テネリフェ行き の飛行機に乗るため。 マドリード空港の機内持ち込み物の チェックの際、ひげそり後に顔に塗る Skin Milk (Nivea) が100ml 以上だと 言うことで引っかかり、捨てるか カバンごとチェックインにするかどちらかに せよと言われ、チェックインすることに。 もっと小さいのを買っておかないと。 飛行機に入ると、切符では 31番の席なのに、 一番奥まで行っても席が 何と30番までしかない! もちろん、Where can I seat ? と乗務員にクレーム。 少し待ってようやく窓際の席に すわらせてもらう。 色んな経験があるが、機内に 入って奥まで行って、席がなかったのは 初めてだ。 飛行機の中では、ひたすら講演の 準備。2時間頑張るがなかなか大変。 まだ未完成。 予定通り現地10時半(1時間時差)ころ テネリフェにつき、タクシーで磯部君と 講演会場のホテルに。 海岸べりの立派なリゾートホテル。 Semiramis と言う名のホテル。 Puerto de la Cruzという町にある 入口が16階で、部屋が7階。 要するに崖っぷちに建っているのだ。 部屋から大西洋の眺めが素晴らしい。 温度も昼間は26度くらいで南国。 緯度は25−30度くらいらしい。 ヨーロッパのリゾート (アメリカのハワイみたいなものか) ホテルの周辺は土産物屋が いっぱい。 Flux Emergence workshop は 午前の途中で、コーヒーブレーク 中。Moreno さんにあいさつ。 Hood さん、Schmieder さんも来ている。 午前の講演は自分の講演の準備のため ほとんどうわの空で聞く。 ルビオさんの話(浮上磁場の観測の レビュー)は詳しく聞きたかったが、 あまりついていけず。浮上磁場の 下降流に見られるはずの衝撃波の 検出はどうなっているのだろう? 昼はHood さん、彼の大学院生(MacTaggert)、 磯部君、横山君とホテルの近くの レストランで食事。 Canary Kebab を食べる。 日本の焼鳥か串焼き風か。結構おいしい。 ジャガイモがおいしいのはびっくり。 その間、Archontis さんのスライドの 解説をいろいろ聞く。急きょ私が Archontis さんの講演の代役を 一部やることになったため。 午後の最初の講演はGalsgaard のジェットの レビュー。anemone jet という名前が 定着しているのは嬉しい限り。 その関係で浅井ApJ論文を引用していた。 全般的には良くレビューしていたが、 下条君のevaporation flow (2000)、西塚君のジェットの観測・シミュレーション の論文(2008)について述べられていなかった ので、手をあげてコメント。 その後、自分の講演。 元々chromospheric anemone jet の森田論文(飛騨ひので観測)を主の contributed talk の予定だったが、 直前にArchontis sanが来れなくなり、 その分を加えてレビュー講演をしてくれないかと 頼まれ、引き受けることに。ただし、これは ちょっとしんどい仕事だった。自分の 良く知っている話だけなら、直前でも 何とかなるが、他人の話は理解をするだけで 時間がかかる。まあ、他の人よりは わかるだろうということで、私のところに 来たのであるが、、、他の人も言って いたが、なぜHood さんが やらないのか?は、なぞである。 というわけで講演準備がはなはだ不完全。 森田論文紹介も実は初めてなので、 不完全であることが判明。 できるだけエッセンスだけが伝わるように 努力したが伝わったかどうか? Archontisさんの話も同様。 大急ぎで話すぎたかも。何とかムービーは 見せれた。質問は3つほど。 Schmieder: chromospheric anemone jet と サージの違いは何か? who? : 彩層は大変ダイナミックだが、 リコネクションモデルに対するその影響は? もうひとつ(Keppens ?):彩層ジェットの密度に関して 何か言えるか? 答え:観測からは難しい。 その後、Hoodさん, MacTagaart さんの 講演。ねじれた磁束の浮上の話。 激励するつもりで手を挙げてコメント: 実際の時間スケールと モデルのスケールはかなり異なるので、 フラックスチューブの軸が浮上しないという問題は わかるが、ある意味ではもっともな話。 時間スケールの違いを述べた方が良い、 というようなこと。しかし、言い方がきつかった かもしれない。がっかりしているといけないので、 後でフォローしておかないと。 休憩時間はずっとSchmieder さんと議論。 つもる話がいっぱいある。サイエンスのこと、 CAWSESIIのこと、、、 ひのでWSの直後に日本でCAWSESII がらみの太陽WSを開くかどうか議論。 その方向でとにかく考えよう、、、 午後の講演は、Hansteen さんのレビュー、 例によってあまりいただけない。浮上磁場の シミュレーションの話のはずなのに、肝心の 物理の話がない。いろんな過程を 全部入れた現実的な計算ができる 3次元MHDコードを作ったという話。 ほとんどそれだけ。リコネクションの話は 出て来なかった。昨年あれだけ、やるように と推奨していたのに。 コードでどこに時間がかかるか質問すると、 熱伝導と放射輸送とMHDが皆同じくらいとのこと。 MHDにそんなに時間がかからいのではないかと 質問すると、そんなことはない、結構かかるとのこと。 もうひとつ、計算結果と観測の比較から物理量を 導出することをしたかと聞くと、それは まだやってないとのこと、実際には色々問題が あるとのこと。彼の後、彼の学生が実際の 浮上磁場のシミュレーションを披露。しかし、 何がわかったのかわからない話。 オスロのグループはだめだ。 Buechner の弟子の話の後の質問で、 anomalous resistivity を使う理由は何かという 質問が出たので、私がコメント。そしたら 後で質問者がやってきて、Keppens さんだとのこと。 イタリアで何年か前に宇宙ジェットの会議で 会って以来。なつかしい。 私のコメントも理解し、かつ、一様抵抗で Sweet−Parkerシートが出来ても tearing untable になって乱流的になって リコネクションが速くなる可能性があるというので、 それはそうだ、まだ答えが出ているわけでは ないが、その方向の研究が重要だと 言うと、同僚のLapenta という人がやっていて 私の fractal reconnection の論文も 知っているとのこと。 そういえばfractal reconnection に関する論文を書いたからコメントがほしいという メールを誰かからもらったことがあるが、 その人だったのかもしれない。 しかし、メールを検索したら、 不明のまま。ただし、昨年AGUのセッションで 招待講演をしてほしいというメールが Lapenta と言う人から来ていた。世間は狭い。 AGU招待講演は行かなかったが。 最近は招待講演依頼に応えて実際に 行くのは半分以下。 講演後、聞けなかった Mark Cheung さんの 話を聞く。ねじれた磁束管の浮上の3次元シミュレーション だが、素晴らしい解像度。ちょっと非現実的な ところもあるが、粒状斑や黒点形成が ちゃんと解けているので見栄えが素晴らしい。 日本のおみやげにpptファイルとムービーをもらう。 夜は、Brunさんと磯部君の3人で Puerto de la Cruz の町のダウンタウンへ 夕食に。時差ボケでもうろうとしながら つきあう。景色、町の雰囲気は素晴らしい。 そこで、Brunさんから太陽コアの磁場に ついて色々教えてもらう。(前述) 11月3日(火) ワークショップ2日目。 今回のワークショップは 1回目、2回目と異なって Flux Emergence workshop だけではなく、ヨーロッパの 3rd Solaire network meeting も兼ねているため、ほとんど の太陽分野をカバー。また、 講演もレビュー(25分+5分議論)、 contributed (12分+3分議論) と普通の国際会議と同じやり方。 なので、あまりオタクの話がないし 議論もできない。分野も広がりすぎて ついていけないことも多い。 参加者数も100人弱。 日本人は、柴田、磯部、横山の 3人のみ。 午前、午後は、connectivity between atmospheric layers, というタイトルの セッション。spectropolarimetry の話など あまりついていけない話が 多い。おもしろかったのは、 Botha の話。Arbar のグループで、 中性粒子の影響でカレントシートが コラップスするという話。磯部君の 話と同じサブジェクト。そこで カレントシートのHarris 解 が出てきたところまでは 良いのだが、Yokoyama-Shibata current sheet が出てきたのは びっくり。2001年の論文で、 縦磁場以外はハリス解になるような フォースフリー磁場を仮定していたのだが、 それをYokoyama-Shibata current sheet と呼んだというわけ。Bohta は 縦磁場の強さをパラメータにして perpendicular current の散逸 (ambipolar diffusion) の効果を調べていた。 (field alined current は散逸しない) ApJに出ているとのこと。 後で調べよう。 昼は、Schmieder さん、Branさんと近くの レストランで昼食(ピザ)。12月の ひので会議の直後の土曜(12月5日)に SCOSTEP/CAWSESII ワークショップを 開くことに。主題は origin and consequence of the present low solar activity。 夏にそういう可能性をGopalswamy さんとも 議論していたのが伝わった結果らしいが、 Schmieder さんが積極的なので、急きょ 決定。Cheung さんにも話と出るとのこと。 Shibata, Schmieder, Brun, Cheung の4人が出発点で、急いで何人かの 日本人にメールを書く。すると、すぐに 荻野さん、草野さん、片岡君、宮原さんから 出るとの返事。横山君には口頭で了承を 得る。磯部君はSolarCの会議と重なって いるので不可とのこと。 場所は下条君に国立天文台の可能性を 検討するメールを送ったが未返事。 もしだめなら東大はどうかと横山君に 聞くと、20人くらいならOKとのこと。 午後は、午前の続き。Pariatのレビューは ムードンの伝統的セパラトリックス・モデルの 議論が主。話の流れは分かりやすかったが、 リコネクションのダイナミックス、リコネクション・レイト を決める物理の話がないので、それを質問。 そしたら予期しない質問だったのか、相当 困った様子。やっとのことで、「カレントシートが 大きなサイズになれば リコネクション・レイトが大きくなるだろう」、 と安易に答えるので、「この問題はそんなに簡単では ないのは良くは分かっていますよ、、、」と 余分の一言。だんだん、質問の際の一言が 嫌味たらしくなってきた。自己嫌悪。 Delanee (フランスの女性)がEITwave のMHDモデル。 CMEの計算をして観測としたら良く合っていて、 EITwave はMHD波動ではなく、CMEの表面付近が圧縮されて 膨張しているのが伝播しているように見える現象、というのが 結論。電子メールをやりながらうわの空で聞いたので、 質問はしなかった。Chenさんのモデルと同じ路線の 結論なので、反論があるわけではなし。 夕方最後に、Martinez Pillet が SUNRISE ミッション(バルーン) の最新結果報告。これはおもしろかった。そういえば 数週間前、夜中にNHKで赤外線天文のバルーンミッションの ドキュメンタリーをやっていて見たことがあったので、 舞台裏がすごく良くわかる。1m望遠鏡を30数kmの 上空に持っていって、紫外(2000Aくらい)から 可視光までカバー。磁場も観測。結果も素晴らしい。 手をあげて congratulation と言ってから、質問: 予算はいくらか?horizontal jets とは? 予算は30ミリオンダラーくらいらしい。打ち上げるだけで 10ミリオンダラーはかかるそうだ。準備に9年かかったという。 観測日数は5日半。quiet Sun の観測なら、これでも 十分だろう。horizontal jets とは、光球のhorizontal magnetic field が見かけ上 5-10km/s くらいの高速でジェット状に動く 現象のこと。新発見。ただし、本当のプラズマ運動かどうかは 要検討。 夜は、横山君を探したが見つからず、磯部、Cheung, Fang Fang (方芳)の3人と近くのレストランで夕食。 Fang Fang さんは北京のTu教授のグループ出身で 今はManchester (ミシガン)の大学院生。 研究はCheungさんの3次元MHDコードで ねじれた浮上磁場のシミュレーションをやっている。 11月4日(水) 午前はリコネクションセッション。座長。 Parnell (review) separator and non-null reconnection トポロジーのことを強調しすぎ。最後に multiple reconnection point における リコネクションがお互い助け合って速いリコネクション に至る話が少し出てきたが、これをもっと 話せば良かったのに。Schmieder さんが 「あなたの話には時間が入っていないが 時間は重要ではないのか?」と質問されて あわてていた。そのような印象を与えるような講演。 Pontin (review) reconnection at 3D null points これはダメ。プレゼンもへた。 Isobe (contributed) reconnection in weakly ionized solar chromosphere 磯部君は分かりやすく話していた。聴衆のくらいつきも良し。 Yokoyama (review) turbulent reconnection 結構、最近の研究をきちんとレビューしていたのに感心。 ただし、もっと批判的にコメントしても良いのに。 横山君自身の計算はおもしろい。反応も良し。 午後はフレアセッション。 Barta (Karlicky, Buechner との共同研究)の話が良かった。 cascading reconnection の2次元MHDシミュレーション。 AMR(1段だが)カレントシートを10倍の細かさで解いて Shibata-Tanuma のフラクタル・リコネクションを 調べたもの。朴訥とした話ぶりだったが、大変面白かった。 手をあげて very interesting talk とほめる。 夜、conference dinner。 最後に会場に行ったので、空いている席がほとんどなく、 最後の席にすわる。Poedt さん夫妻(Belgium)、 彼の学生夫妻の横。 前にはGrappin(France), 右前には Rappazo (Italy-IAC) すぐ横に横山君が来る。横山君とはひさしぶりなので 色々話がはずむ。横山君も講演が無事終わり 評判も良かったのでほっとしたのであろう。 11月5日(木) WSは午前で終わり。CMEの話。 Aulanier の話が良かった。 torus instability が起きているという話。 これは magnetic buoyancy instability と同じ物理ということを指摘したのも 良かった。 光球境界条件を基に非線形フォースフリーを計算すれば Z方向の磁場強度分布がわかるので、これより 経験的にどこが危険か(CMEが起きやすいか) 予測できるのではないか。 Flux emergence workshop は Solaire network meeting と融合したので 分野も広がりすぎ、つっこんだ議論もできず、 あまり成功したとは 言えないのではないかと横山君らと寸評。 次回は2011年にCheung さんが bay area で開催するとのこと。Berkley に 行ったことがないので、そこはどうかと 提案。 午後は Puerto La De Cruz の町並観光。 みやげもの買い物がてら散策。 途中、中華料理屋上海による。 noodle soup を特別注文。 味が濃すぎ。肉が多すぎ。 採点すると50点か。 のち、海岸沿いからダウンタウンへ。 この町はなかなかきれいでよろしい。 2時間以上かけてのんびり歩く。 人形などの買い物も済ませる。 夕方は、横山、磯部の両君と一緒に夕食。 昼と同じ中華料理屋上海。 ワンタンスープ、焼き飯、などなど。 今度はまあまあ。 11月6日(金)  午前10時、Prof Rebolo が迎えにくる。 ホテルからIAC (Instituto de Astrofisica de Canarias) まで車で30分くらい。 IACは飛行場の近く。 博物館が付随している。local government が 維持費を提供。1.5Mドル/年。 IACの研究者数は、150人くらい、技術系を入れると300人規模。 150人中、院生は50人、PDも50人。パーマネントの 研究者は55人だという。 予算は、15Mユーロ/年。 他の国の望遠鏡運営費も全部合わせると同じくらい。 したがって、カナリ−諸島全体では、30Mユーロ/年 10m望遠鏡(GTC)は、建設費は130Mユーロ 90%はスペイン。5%フロリダ大、5%メキシコ (フロリダ大は、7Mユーロの半分で装置を開発) 運営費は5Mユーロ/年。上とは別。 色々案内してもらったのち、 12時半から1時間ほど講演。タイトルは "Kyoto 3.8m segmented telescope project" この内容で講演をするのは海外で初めて。 日本でもないのでは。これで1時間も話をするのは 大変なので、前半は、 京大天文グループ(宇宙物理+天文台)の 紹介、とくに天文台の設備と研究の紹介をし、 後半に長田さんからもらったスライドを紹介。 途中に、藤原さんとのいきさつも、ナノオプトニクス・ エナジーのHPのコピーを見せて読んでいくと、 笑いが起きた。grinding やらCGHなど 質問されても答えられないようなことを英語で しゃべる。スライドに書いてあることを棒読みするだけだが。 しかしとにかく、講演は意外と受けた。 質問がいっぱい出る。スライドでは面精度が 100nmくらいの精度だったが、どれくらいまで 精度は良くできるのか? 2つ目の望遠鏡は 予算はいくらいでできるのか? などなど。 3.8m望遠鏡の全地球ネットワーク構想も 受けた。ぜひ、国際共同で一緒にやりたいとのこと。 カナリア諸島に置いてほしい、インフラは すでに整っており、観測装置は スペインで担当できるとのこと。 講演は30人くらい。IACの談話会では 多い方とのこと。Sanches Almeida さんが やってきて握手。「分野を変えたのですね、、、」 と言われてちょっと苦笑。 講演はオンラインでインターネットで流されたらしい。 また、録画データを公開して良いかと 聞かれたので、日本の仲間に聞いてから返事すると 答える。録画DVDをもらう。 後で見るとちょっと恥ずかしい。 のち、ランチ。2時〜4時。昼間から、 ワインが出る。ゴージャスなランチ。 食べきれない。参加したのは、 ホスト役のRebolo さん(Prof. Rafael Rebolo Lopez)、 vice-director のMartines-Pilletさん (太陽観測、10年以上前に三鷹に1週間いたことがあり、 毎晩一本君に連れられて夕食・飲み屋にいったとのこと)、 Dr Casiana Munoz-Tunon (galaxies star forming region が専門の lady)、 Dr Carlos Martinez Roger (subdirector, globular clusters)、 Rebolo さんの大学院生の女性で講演を手伝ってくれた 女性、の計6人。 研究所の中にレストランの別室みたいな部屋が あり、そこでもてなしを受けた。 Rebolo さんは、exoplanet search の他は 宇宙論観測もやっている。宇宙論的観点の リシウムの研究が学位論文だったとか。 後で聞くと、1961年生まれ。 なんだ、私より若いではないか!? ずっと年上だと思っていた。 1987年にIACで博士号をとったとのこと。 そのころに宇宙背景放射の観測もやっていたとのこと。 最近、Natureに出版したという論文の話を聞く。 惑星の付随している星はリシウムが少ないのだそうだ。 惑星が対流を活性化している可能性があるという。 対流が発達するとリシウムが300万度以上のところに 運ばれて燃え尽きてしまうらしい。 宇宙磁場の観測もプランクミッションでやっているという。 マイクロ波宇宙背景放射の電波望遠鏡も 作っている。1cm、2cm、3cmの波長で観測予定。 建設中の電波望遠鏡を見せてもらった。 今は、それと系外惑星探査がもう一つの研究テーマ。 夕方、飛行機でラパルマへ。 ラパルマ島のGTC(Gran Telescope Canarias) 10m望遠鏡のある 天文台に宿泊。ハワイに匹敵する望遠鏡密集地帯に やってきて圧倒される。望遠鏡は16台。 1985年に最初の望遠鏡4台ができたという。 高度は2400m程度なので 高山病はなし。10m望遠鏡の観測風景を 見学させてもらう。観測したばかりの10秒露出の image中の遠方銀河を拡大してくれる。銀河の端が 少し明るく超新星がありそうな感じ。最近はこうやって 観測するのかとおもしろかった。 外に出ると素晴らしい天の川。 はくちょう座と夏の大三角がわかる。 木星が明るすぎてじゃま。 夜は部屋の中でも さすがにちょっと肌寒い。 インターネットは使えたが、あまり 仕事に集中できず。 11月7日(土) 朝、8時すぎに起きて Rebolo さんと朝食。 のち、昔から念願のスウェーデン太陽望遠鏡 を一緒に見学。Rebolo さんも 初めてとのこと。エンジニアの人が 一人で管理している。名前は Rodolfo Kever。1980年代以来30年 くらいやっているとのこと。 ラパルマで結婚したと言っていた。 今は太陽観測はしていないという。 観測シーズンは3月から10月ころまでらしい。 冬は条件が悪いので、観測は しないとのこと。ちょっとびっくり。 しかし、望遠鏡や設備は詳しく説明してくれた。 建物ができたのは1985年ころ。 初代の望遠鏡は50cm屈折鏡。 今は2003年に出来た1m屈折鏡。 屈折鏡というのが驚き。ただし、 途中に平面鏡が二つ入っていて 光路は真空にしてある。 レンズのある塔のてっぺんまで 案内してもらうが、階段が 急で最後の階段は垂直で きわめて危険。命がけの 見学。しかし塔のてっぺんからの眺めは 素晴らしい。のち下に降りて、 AO,分光器,SOUP(スペースシャトルで 観測した器械),計算機、、、 を見せてもらう。狭くて、ちょっと古い ところに最新(らしい)機械が所せましと 置かれているのが不思議な感じ。 これで世界最高の解像度の 太陽像を観測したとは、ちょっと 意外な感じ。よっぽど飛騨の方が 立派に見えるが。 今は観測していないので、何をしているのか と聞くと、装置をクリーンに掃除しているとのこと。 Dutch Open Telescope がすぐ横にあったが、 そこには一切近寄らず。 その次は、GTC10m望遠鏡見学。 ニュージーランドのParliament の presidentでHon Margaret Austin という 名前の年輩の女性が見学に来たので 一緒に案内を受ける。偉い人らしい。 来週、夜空を都市の光から守るための 国際会議か何かのためにラパルマに 来たらしい。日本からだというと、 名大のモア・プロジェクトを知っていると 言っていた。 GTC10m望遠鏡はちょっと感動的。 ミラーも良く見える。36枚の6角形の鏡が、 6枚、12枚、18枚と3重に配置されている。 鏡の間のすき間は思ったより狭い。 望遠鏡の周りにはあまり物がないので、 全体がよくわかる。しばらくしたら、 望遠鏡を動かしてくれた。思ったより 速く動く。床も回転。すばらしい。 数分で目的の天体が入れられるとのこと。 これならガンマ線バーストの初期も 何とか観測できるかも。 ハワイのすばるやケックを見たときよりも 望遠鏡の構造が良くわかり感動した。 最後は、William Herschel 4m telescopeの 見学。UK, Netherlands, Spain の国際協力 による望遠鏡。 3.8m望遠鏡の完成後の姿だと 思って見学。ただしこれは1枚鏡。 思ったより大きい。 ドームは30mあるという。ちょっと大きめに 作ってある。ここでも望遠鏡を動かしてくれる。 速い。Rebolo さんはテネリフェの80cm望遠鏡と この望遠鏡の二つの観測から、 brown dwarf の証拠を得たのだという。 その後、宿舎に帰り、荷物を整理して Rebolo さんのレンタカーに乗り、 ラパルマ天文台(Observatorio del Roque de Los Muchachos) に別れを告げる。 すぐに雲の中に突入。 雨になる。来週、唐牛さんと常田君が IACに来るという。それは奇遇な。 Rebolo さんは彼らを良く知らないとのこと。 3.8m望遠鏡の複製を世界各地に置いて 突発天体や惑星探査の連続観測をする 国際協力プロジェクトを車中色々議論。 議論しながら、 曲がりくねった道を下りたので 途中から乗り物酔いに。 一気に2400mから0mまで 降りたことも関係があるかも。 海岸横のレストランで軽い昼食。 スパゲッティを食べる。 途中、3.8m望遠鏡をカナリア諸島に 置く計画を色々議論。 2015年ファーストライトを目標にしようとのこと。 すると2011年には望遠鏡を作りださないといけない。 IACは高分散分光器を提供するとのこと。 lambda/delta lambda = 10万、 赤外が可視より難しいが可能とのこと。 地球型惑星の探査をする。北半球での システマティックな探査はないので チャンスらしい。Mayor のグループは 南半球をやっている。 突発天体も同時にやれる。 ガンマ線バーストの分光は低分散に せざるを得ないだろうとのこと。 あまり明るくないから。 ドームは日本の予算で作ってほしいとのこと。 ただし、ヨーロッパの業者に頼めば 1.5Mユーロ(<2億円)でできるだろうとのこと。 大学連携の概算要求に組み込むか、 新たな概算要求を考えるか、 それとも別の予算をねらうか? とにかく15億円くらいのプロジェクトにするか? 今回出した新学術領域がダメな場合、 これを入れて目玉にする手もあるかもしれない。 夕方、ラパルマの空港からテネリフェへ。 帰りの飛行機の中ではほとんど睡眠。 テネリフェの空港で待ち時間、色々仕事をしたのち、 夜にマドリードへ。遅いので夕食はマドリード空港で サンドイッチ、すしなど買う。すしは置いてあった ので嬉しくなって衝動買いしてしまったが 何と16ユーロも取られた。サンドイッチや コーラ、水など含めて26ユーロもした。 これならレストランで普通の食事をした 方が安かった。空港近くのホテルまではタクシー。 これも26ユーロもかかった。 11月8日(日) 前日メールの返事書きなどで忙しく、 結局2時間睡眠。こんなのばかりだ。 帰りの飛行機は午前9時すぎ出発なので、 2時間前に行けば良いだろうと、午前6時半前に ホテルのカウンターに行く。6時半の シャトルバスに乗りたいと言ったら、それは ないという。時刻表に書いてあるではないかと しばし押し問答。話がなかなか通じない。 やっと通じ、相手の言うことがわかったら、 何と時間がすでに7時すぎだった。 カナリ−諸島とマドリードで1時間の時差 があるのを忘れていた! 6時すぎだと 思った時間が、実は7時すぎだった。 次のバスが6時半ではないのも当然だ。 要するに1時間遅れたのと同じことに。 間に合うかどうか急に心配になる。 幸いマドリード空港では特に混雑もなく 遅れなかったが、朝ごはんを食べる時間を 逸してしまった。 フランクフルトで乗り換え。そういえば テネリフェでもマドリードでも おみやげのお菓子を買うのを 忘れていた。仕方がないので、 フランクフルトで made in Germany のチョコレートを買う。(我が家では 意外と評判が良かったー後記) 待ち時間の1時間あまり、ひたすら NHKブックスの原稿チェック。 大阪の高校生らしき団体がいて うるさくて困る。結局同じ飛行機に。 ふと、きづくと野村英子さんがいる。 ミュンヘンで惑星形成の国際会議が あったとか。 11月9日(月) フランクフルトから関西空港まで12時間ほど。 半分くらいの時間はやはりNHKブックスの 原稿チェック。残り6時間くらいで、電源が なくなる。がっかり。そこから寝ようと思ったが、 意外と眠れず。食事のいなり寿司が硬くで びっくり。こんなのは食事ではないと男性の 乗務員にクレーム。日本食だったら 質は何でも良いと思っているのか? それとも、どういうものが 良い日本食だかわかっていないのか? 朝9時すぎに関西空港について そこから直接、京大へ。ハードな生活。 パソコンも携帯も電源がなくなって帰国直後の 連絡ができず困る。次回の出張では 帰国直後の電源問題を解決しないと、、、 (おわり)