2014年3月16日ー23日 ブラジル・サンパウロ近くで開催された Parker Reconnection Workshop に出席 3月16日(日) 夕方6時すぎに自宅出発。今回は 最初からタクシー利用。ちょっと荷物が多いので。 といっても衣服が主だが。ブラジルは南国なので、 薄着を用意する必要がある。Parker 先生のお祝いの会でも あるので、スーツも用意。しかも日本はまだ寒く 真冬の格好。一週間前には雪も降った。 飛行機は、夜中の11時半に関西空港発の エミレーツ便。アラビア半島のドバイ経由。 エミレーツ便はドバイを根拠地とするアラブの航空会社で 初めての経験。 関空ードバイが10時間、ドバイーサンパウロが 15時間。途中休憩が5時間、その前後の移動時間を 考慮すると、片道35時間の人生最長の旅行。 3月17日(月) 飛行機の中では、Gravity を見る。CGを駆使してデブリの恐ろしさを 余すところなく表現。見ている者をあきさせない、ハラハラドキドキの 演出。デブリのために宇宙機が破壊され、宇宙空間に投げ出された 宇宙飛行士2人の生存にかける冒険の物語。一人生き残った女性宇宙飛行士が 最後に中国の宇宙ステーションにたどりつき、帰還機で 地上に帰り着くという結末。中国の宇宙ステーション、というのが 時代を感じさせる設定。中国機の操縦装置の説明が 全部中国語なので絶望。ここでちょっと笑ってしまう。 しかし、中国機はロシアのソユーズのコピー であることを思い出して、動かすのに成功。無事帰還。 25時間も飛行機内にいたのに、あまり仕事はせず。 Carrington の伝記物語 The Sun King の一章を読む。 この本は知らない単語が山のように出てくるので、少しずつ ゆっくり読んでいる。Carrington の奥さんの悲劇のところ。 ちょっと涙。 途中のドバイ空港で家内のみやげもの(免税品店で化粧品) を買う。ドバイ空港は一大ショッピングセンターのような 新しい空港。砂漠の楼閣。エミレーツ空港の女性添乗員の 半分顔を隠そうと準備だけはしたと主張しているような 中途半端な格好はあまり感心しない。 夕方6時ころ、サンパウロ空港に着く。 ワークショップの開催研究所(INPE)から若い人が車で 迎えに来てくれる。空港から研究所近くのホテルまで 結構遠い。1〜2時間はかかる。 イタリアから来た、xxxさんと 一緒。磁気圏の観測が専門の人。 Retino さんは今回は来れなくなったらしい。残念。 3月18日(火) 朝9時からセレモニー。INPE(ブラジルの スペース研究所)の所長があいさつ。 ブラジルはすでに人工衛星を何機か 打ち上げているとのこと。 のち、workshop 開催の世話人代表の Gonzales さんが挨拶。 最初の講演者はParker 先生。86歳とは思えない元気さ。 奥様も同伴。講演は、nanoflare model の基礎理論 spontaneous current sheet の話。 かなり数学的な話をしっかり話されたのには驚き。 その後、午前は、Mozer, Priest, Semenov, Buechner, Forbes の各氏が得意の話をする。chairperson の Vasyliunas さんは初めて会う。しかし英語がわからない。 何をしゃべっているのか全然聞き取れない。 Mozer, Semenov さんも初めて。Mozer さんは磁気圏で 有名らしい。大体この研究会は半分以上、磁気圏分野の人で 初めて会う人ばかり。日本人は、 プリンストンの山田さん、銭谷君(国立天文台 PostDoc)、 オーストリアの中村るみさん(Baumjohan の奥さん)、 INPEで PostDoc の Koga さん(元は 九州大の羽田さんの研究室出身とのこと)の5人。 中村るみさんは、お名前は長らく聞いていたが、お会いするのは 今回が初めて。 出席者の数は招待講演者が40人弱、現地の院生やPDが30人くらい というくらい。 午後は、Rappazzo, Hornig, Shibata, Bhattacharjee, Zenitani, Hudson, Kaufmann, Galsgaard, Gomez, という面々。 一応太陽関係というセッションだが、そうでない人もいる。 私の講演(質疑応答込みで25分)は、最初は20日に予定されていたので 準備は現地に到着してからでもたっぷりあると思っていたのが、 出発直前のプログラムを見たら、18日に変更されており焦る。 飛行機の中で有る程度準備しようと思ったが、結局、睡魔に負けて 出来ず、主たる準備は、前日ホテルで。結局、寝たのは1時間のみ。 講演内容は、Parker 先生との出会いの話や写真(最初に撮った写真は ピンボケで、2回目はカメラが盗まれた、3度目にようやく成功、という 話は爆笑で大うけ)を見せ、サイエンスの中身は、フレア、マイクロフレア、 ナノフレアの統一的描像、plasmoid-induced reconection and fractal reconnection という話。珍しくスーパーフレアの話はしなかった。 講演は結構評判が良かった。質問もたくさん出る。 後で、Priest さんが"terrific talkだった、プレゼンファイルを 送ってほしい”、とメール。Abdala さんは、”用事があって聞き漏らした がxxさんが18日のbest talk と言っていたので、プレゼンファイルを ほしい”とのこと。 私の話の後、Bhattacharjee さんは、プラズモイド不安定性 で、レイノルズ数Sが大きいとき、リコネクション率がSによらなくなる、 というシミュレーション結果を紹介。プラズモイドのサイズスペクトルは 指数がー1でUzdenski san のー2よりハード。かつて、 resistive MHD から collisionless MHD への転換があったが、再び resistive MHDが重要な時代になったと、過激トーク。 そこで、Shibata and Tanuma が大変重要な 貢献をした、と持ち上げてくれた。 Galsgaardさんはジェットの素晴らしい3次元シミュレーションの話。 浮上磁場にともなう3次元リコネクション。私の予想が見事に証明されたとのこと。 おもしろいのは、5回 intermittent にジェットが噴出すること。 ジェットのシミュレーションの話なので、私の名前が頻繁に出てきた。 ひとり Hudson san が例によって"Shibata and Magara のレビューは 理論的な見方に偏りすぎ”と、いちゃもん。(そんなの当然やで、と 一人心の中でつっこみ。) もっともそれより、Hudson さんは、私の講演の後で、 ”フレアやCMEのMHDシミュレーションは境界条件でエネルギー保存を満たして いない”、”Implosion (Hudson論文)を説明できない”からダメだ と言ってきたのには、びっくり仰天。 これにはさすがに、私は強く反論。Priest 先生も Hudson さんにそんなことはないと丁寧に説明。山田さんも応援。 というわけで、あまり Hudson san に対してかっかすることもなし。 しかし、"too stimulating talk" (according to Priest san)だった。 Parker さんも苦笑していた。 Hudson さんは、最近のリムにおける硬X線や白色光観測で結構高さの 低いところ(光球上部〜彩層底部)で、ともにエミッションが見えるのが 不思議、高エネルギー電子はそこまで深いところには行けない、 number problem、硬X線の強度が等方的(Kane et al. 1998) thick target model が、もはや正しくなくなった、という、 過激で、おもしろい話もしていたのだけど。そちらをもっと議論したかった。 個人的に、プロトンではどう?と聞いたら、それは ありうる、とのこと。Fletcher and Hudson は Alfven wave で エネルギーを運び、光球上部〜彩層底部でその場で電子を加速する というアイデアを考えている。オーロラのモデルの応用である。 夜は、Parker 夫妻、山田夫妻と、ホテルの近くのモールで 夕食。ブラジル(アルゼンチン)の素晴らしいビーフステーキ。 80リアル(〜40ドル)ほど。 翌日のビーチのエクスカーション用に海パンとTシャツを 買う。合わせて100リアル(〜50ドル)ほど。 3月19日(水) 近く(と言っても車で数時間)のビーチへExcursion。 ビーチから船に乗り、近くの島へ。 カリバニーナ?という強い甘いお酒を飲む。 これで酔っ払い、さらに船酔いで、死にそうになる。 以前、リオの近くのビーチであった国際会議の Excursion でも似たようなことがあった! (今度はこれに花粉症+咳止めの薬による便秘が 重なり、最悪。何度もトイレに行って、張っている おなかを小さくする。それで、少し気持ち悪さが減少) しかし、あまり気持ち悪いし、みんなが島の近くで船から 海に飛び込んで泳いでいるので、自分も救命具つきで 少し泳ぐ(というより、浮かぶ)。このときは気持ちよし。 もっともただじっと浮かんでいても、波のせいで やはり船酔いみたいに気持ち悪くなった のには自分で苦笑い。体は動かした方が良いらしい。 昼ごはんは食べずにコーラのみ。睡眠不足や 疲れがたまっている。帰りのバスも、エリザベートさんが すごく熱心に話しかけてくれるのに、意識がもうろうとして 申しわけなし。ついに一人にしてもらって少し寝た。 夜はモールの日本風焼きそばを食べる。中村るみさんと 銭谷君と一緒。 3月20日(木) ワークショップ2日目。内容は実験室、磁気圏dayside、 乱流リコネクション。例によって Lazarian san が絶好調。 夜はバンケット。Lazarian, DalPino Elizabeto、Uzdenski, Gurrero の皆さんが回りのメンバー。チキンなんとかをOKと 言ったら、チキンハートだった。食べれず。 3月21日(金) 3日目 磁気圏尾部のリコネクションの話は細かい話が多く、 ついていけない。疲れもある。 昼休みに、INPE のクリーンルーム見学。 なかなか立派な大きな設備があるのでびっくり。 日本の宇宙研の部屋より大きい。 山田さん、パーカーさんと一緒。 午後一番で座長。最後のディスカッションは山田さんが 座長でよかった。私も一言コメント。MHDリコネクションでは Alfven wave generation とユビキタスMHD shock 形成が 今後の重要課題であることを強調。 ただし、多くの磁気圏の人とは話がかみあっていない。 多くの人は、diffusion region の定義を問題としていた。 22日もサンパウロにいると思っていたら、予定は 違って、21日の夜中(22日)に出発だった! peru 出身のデニス君とマリヤさんに 久しぶりに会う。サンパウロのKaufmann さんのグループで 大学院生をやっている。22日にサンパウロに 連れて行ってもらう約束をしていたのだけで、 予定変更で申しわけなかった。