2006年 9月22日(金) 朝、9時45分伊丹発の飛行機で、鹿児島空港へ。 10時50分頃到着。飛行機の中では爆睡。 何しろ、家では2時間睡眠だったのだ。 空港ではたっぷり時間があったので、待合席で 電子メール。こういうときはBMobileが役に立つ。 はっと気づいたら12時半をすぎていた。鹿屋までの バスは1時間毎。1時のバスに乗るべきか、昼ごはん を食べるべきか迷ったが、 売店で鹿屋までのバスの時間を聞いたら1時間くらいだと いうので、昼ごはんを食べる。もちろん、うどん。うまい。 ところが後で調べると鹿屋まで1時間40分もかかるという。 2時のバスだと3時40分着となり、約束の3時50分に ぎりぎりである。困った。バス会社の人にもっと早く着く 方策はないかとたずねるが、ない、とのこと。売店の人の 話を信用したのが愚かであったと反省。ちゃんとプロに 聞かないと。しかし、バスにはSterlingさんも乗ってきたので、 少し安心。バスの中では爆睡。 鹿屋のホテルに着いたのがちょうど3時50分。ぎりぎり 間に合いましたねと久しぶりに会ったGolubさんに言うと、 バスはもう出たという。愕然とするが仕方がない。どちらにせよ 人数が多すぎたそうな。外国人10人ほどにタクシーを手配、 案内し、さつき苑へ。着くと小杉さんによるSolarB計画の 説明真っ最中。ただし部屋が狭くて入れない。外国人招待客は 全部で40人くらい。次は、内之浦観測所長の中島さんによる SolarBロケットの解説。小杉さんが松葉つえをついていたのに びっくり。2週間ほど前に内之浦のホテルでつまづいて こけたときに足を骨折したのだという。奥様があきれて解説 してくれた。大事にはいたらなかったようで、不幸中の幸い。 その後、同じところで、レセプション。外国人招待客の半分くらいは 知らない人なので、Sterlingさんに紹介してもらう。 多くはエンジニア関係。NASAの Marshal Space Fight Center Dupity Director (Chitwoodさん) という偉い人もいる。 私の役目は外国人招待客の接待、世話なので、できるだけ 人の名前を覚えようとするが、30人以上もいるので、困難。 知っている外国人は、Lites, Culhane, Doschek, Weber, Deluca, Golub, Title, Tarbel, Pevtsov くらいか。新しく覚えた人は Reeves, Lundquist, ともに女性。 日本人は、渡邊さん、大宮司さん、小杉さん夫妻、向井さん、 平林さん、福島さん、井上一さん、藤井さん(宇宙研国際学術課長) など。打ち上げ後、SolarBは何と名づけられるのだろうか? とみんなでがやがや。公式募集はあったのかと聞くと、今回は しなかったとのこと。宇宙研と国立天文台内だけで、募集したのだという。 公募にして、最多得票案を選ばないと後で色々文句を言われるからだという。 内部での最多得票は「ひかり」、2位は「日輪」だったという。 小杉さんの奥さんは、日輪といううわさがある、 しかし、うわさだから本当のところは不明、とのこと。 レセプションは5時すぎに始まり早くも7時すぎに人がいなくなる。 最後は平林さんとVSOP2について色々話をする。 藤井さんのタクシーで、ホテルしらさぎ荘へ。タクシーの運転手が M5はこれで最後で、今後内之浦で大きなロケット打ち上げが ないということを、非常に心配していた。「内之浦基地のために 立派なトンネルを作ったのに、打ち上げがなくなったらどうするのか」 と深刻な意見。「中国が有人飛行をやったのに日本はやらなくて良いのか」 とも。一般人がこう思うのも無理はない。何も知らなければ私だって そう思ったに違いない。しかし、有人飛行は政治以外に何のメリットも ないのだ。「中国では政治(有人衛星)が優先されているために科学衛星が やれなくて、研究者は日本がうらやましいと言っていますよ」というと、 ちょっと納得してもらえた様子だった。 9月23日(土) 前日11時半すぎに寝て真夜中の3時に起床。 バスで内之浦へ。バスの中では、Lundquistさんと初めて話しをする。 Fisherの弟子で、昨年学位を取ったばかりの若い女性。学位論文は コロナのモデリング。nonlinear force free field modeling + hydrodynamic simulation along a loop でコロナのEUV像の再現など 試みた研究だという。今はXRTの日本駐在員として今後1年は日本 にいるのだそうだ。11月の地球シミュレータセンターでの CAWSES space weather modeling workshop にも出るという。 打ち上げ見学場には5時前に到着。風が強くて寒い。 まだ真っ暗。早くも招待客でごったがえしている。 招待客には地元の人も多数いる。 発射場から数km離れているのだろう。ロケットが小さく見える。 みな写真を撮っているが、こちらのデジカメは古くて性能が 悪くよく写らない。早く新しいのに買い換えないと。 朝ごはん弁当が出た。サンドウィッチ。スターリングさんが 食べれないとこぼす。マヨネーズが苦手のためだ。 空は曇りで何とか発射は行けそう。 次第に夜が明けてくると周囲が見え出した。海がよく見える。 写真にも写るようになる。天気は曇りだが、打ち上げには 問題なさそう。そうこうしていると国会議員5人くらいが がやってきた。VIP特別待遇。見た顔もある(河野太郎氏)。 向井さんと平林さんが説明役。彼らは一番良く見える場所に 連れていかれる。われわれは普通の招待客なので、遅れて 次の場所へ。打ち上げの時刻は午前6時36分。 予定通り秒読みが始まり、ちょっとどきどき。 発射のときはカメラのファインダーごしに見る。0になる前から 煙が出始め、0の瞬間に突然明るくなる。さてどこでシャッターを 押そうかと迷う。少し上がったところでシャッターオン。 噴射の炎はファインダーごしでもあまりに明るいので、 カメラから目を離して肉眼で見る。無茶無茶明るい。迫力満点。 そのうち轟音が聞こえだす。すごい。その時点で拍手がわく。 かなり上がった時点でもう一枚撮る。 何だか日食の感じに良く似ている。雲の中に消えていくまで 数分(もっと短い?)しかなく、あっという間のできごと。 最後にもう一度みんなで拍手があったような、ないような。 放送で2段ロケット切り離し成功というようなことは 逐一報告あり。こちらは1周してくるまで心配なのだが、 みな、おめでとう!、congratulations ! とはしゃぎまわっている。 渡邊さんはオーストラリアのバースで受信したとのことだから まず大丈夫だろうとのこと。しかし、3段目を切り離したとの 放送がない。心配だ、という。ヘルメットをかぶった 中桐さんも同様に不安そう。そのうち、向井さんに会って聞くと 3段目も大丈夫だとのこと。ここでようやく一安心。 聞くと、近年まれに見る、順調な打ち上げだったそうだ。 8時15分から、Culhane さんと Hill さんは小杉さんらと記者発表の席へ。 その後、外国人ゲストグループは発射場見学。 発射台は黒いすすだらけ。すぐ横の金網が倒れている。 噴射ガスの風圧で倒れたのだろう。 噴射台は近寄ると大きくて迫力満点。 その辺りでスターリングさんやタイトルさんと記念撮影。 帰りのバスの中で、スターリングさんにCoronal Mass Ejection を「コロナ質量放出」と訳すことについてどう思うかと質問。 R. Schwenn がCoronal Mass Ejection のMass はMass Extinction (大絶滅の意、生物大絶滅のときに使う、Massは大量、大規模の意) とMassと一緒だから、大規模の意味がある、としばしば講演で 解説しているのを受けて、日本語訳は「コロナ大規模噴出」と訳すべきだ と主張している人がいるからだ。しかし、スターリングさんは 「コロナ質量放出」の訳で何の問題もないという。Schwennの話を 説明すると、そういう意味は思いもよらなかった、という。 普通のアメリカ人は Mass = 質量の意味だと思っている、とのこと。 しかし歴史的には Schwenn のような意味で名づけられたことが あったのかもしれないと、一応、年配の人にも聞いてみようということに なり、J. Davis さんに聞く。すると、Mass = 質量だとのこと。 Mass Extinction のMassの意味と考えたことはない、とのこと。 ということで、Coronal Mass Ejection (CME)をコロナ質量放出と 訳すことに関しては、何ら問題がないことが判明した。 ホテルには午前9時スギに戻ると、部屋の清掃中。普通は これから部屋を出る時間なのだが。 清掃しなくても良いのに思うが、おばちゃんたちは すでに大慌てで部屋を清掃している。しばらく待って 部屋に入り、まずインターネット。SolarBの名前は何と 名づけられたのか調べるため。見ると、「ひので」だという。 なるほど、そういう言葉もあったのか。以前学生諸君と議論していた ときにも出たような気がする。日輪やひかりよりは、かなり良い。 後で、小杉さんに聞くと、今後宇宙科学が日の出の勢いのごとく 育っていくことを願って名づけた、とのこと。 11過ぎまでインターネットや電子メールをやって、再びベッドへ。 3時半頃まで昼寝。 その後、バスで内之浦港へ。ここで、地元の人主催の祝賀会。 最初会費2000円と言われたが、大宮司さんがそんなことは 聞いていなかった、、、とねばっていたら、1000円にまけて くれた。外国人グループ一人一人回って1000円を集める。 これが今回の私の最大の仕事。祝賀会は港の中。屋根はあるが、 吹きさらしの場所。普段は魚の競り市でもやるような場所。 そこにビニールのゴザを敷いて宴会。取れたての、はまちの刺身や さつま揚げなど山のように出る。刺身はうまい! 太鼓の演奏に始まり、国会議員、県会議員、町長?のあいさつが 延々と続くがマイクの音が反射して良く聞こえない。途中、 小杉さんも挨拶したが、これも全く聞こえない。 Weberさん、小杉奥さんと色々話す。途中で、渡邊さん、常田君 に会って色々話す。常田君は久しぶり、元気で何より。 その直後、生存研の松本さんの後任の山川さんに会ってびっくり。 若くて誠実そうな方。京大宇宙グループぜひ連携しましょう、 とのことで、心強い限り。