直列(Tandem)型 Fabry-Perot Filter の、
Sub-peaks による磁場の感度に対する影響の概算

                                                 2002.08.06 上野

まず、検定に用いた Simulated Filter Profile のグラフを
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~ueno/SMART/FP/Tandem/transmittancy.html
に示します。
各エタロンについてのパラメータは、ほぼ、CSIRO社が提案してきたままの
ものを用いています。が、プレフィルタは異なる3種類の半値幅を持つもの
を用意しました。
現在のCSIRO社提案の10Å幅のものですと、センターから±約7Å離れた所
にある2番目のピークが、まだかなり高い割合を持っている事が分かります。
3番目の0.5Å幅、というのは、プレフィルタとしては非現実的ですが、
Fabry-Perotのメインピークのみの結果を知るために、故意に設定しました。


さて、これら3種類のフィルタを用いて偏光を測定した場合、太陽表面磁場
ベクトルの絶対値が1000Gの時と200Gの時の2ケースについて、
10Gずつ磁場の絶対値が増えた時に、各波長でどれだけ測定強度に変動が
あるのか、を調べた結果のグラフが
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~ueno/SMART/FP/Tandem/mag_sens.html
に示したものになります。(プロファイル変動分(差)を示しています。)

ここで、各グラフ中の縦軸と平行な4本の直線は、フィルターマグネトグラフ
において、精度良く磁場が測定できる、と言われている4波長の位置を
示しています。

SMARTにおける偏光の測定精度が丁度0.1%であるなら、これらの
グラフにおいて、±0.001の範囲よりも大きな値が出ている部分では
磁場強度の変化によるプロファイルの変化が検出可能である、と考えられ
ます。

この思考方法の下、これらのグラフを考察した結果、各々3種のフィルタに
ついて、1000Gの磁場、200Gの磁場、に対する検出可能な磁場強度
の変化分は、以下の通りとなりました。

1)プレフィルタ半値幅:10Å
 ・於1000G磁場
  視線方向:17G、視線垂直方向:29G
 ・於200G磁場
  視線方向:14G、視線垂直方向:58G

2)プレフィルタ半値幅:5Å
 ・於1000G磁場
  視線方向:9G、視線垂直方向:17G
 ・於200G磁場
  視線方向:8G、視線垂直方向:34G

3)プレフィルタ半値幅:0.5Å
 ・於1000G磁場
  視線方向:7G、視線垂直方向:11G
 ・於200G磁場
  視線方向:5G、視線垂直方向:24G

つまり、プレフィルタに10Åの物を用いると、Sub-peaks の影響により、
メインピークだけで測定した場合に比べ、2.4〜2.8倍程度、感度が
悪くなります。
従って、メインピークのみに近付くように、できるだけプレフィルタは
狭い物を使うのが良いと思われ、例えば、5Åの物が用意できれば、磁場
感度は1.3〜1.6倍程度しか悪くなりません。


註)計算上の詳細、仮定等
   ・Q/I、U/Iの計算は、太陽から来たストークスプロファイルを
    位相差127°の波長板の4角度(0°、45°、112.5°、
    157.5°)の位置で透過させた物をフィルタで測定したとして、
    その後連立方程式を解く事により各波長での値を算出しています。
   ・太陽から来たストークスプロファイルにおいて、ターゲットとなる
    鉄の吸収線以外の波長は、全て一定値の連続光になっているものと
    して計算しています。(連続光の漏れ込み量としては、最悪のセンス
    を仮定している事になります。)
   ・プレフィルタの透過曲線の形は、ガウス曲線を用いています。
   ・グラフからの測定可能磁場変分の読み取り方は、4波長において
    0.1%を越える磁場の変分量をグラフから目測し、その4つの
    大きさの平均値(小数点以下四捨五入)を採用しました。