10 Years Ago (61)
10 Years Ago (61) (Japanese)
-CMO #092 (10 September 1990) & #093 (25 September 1990)-
 火星は1990年九月には「おうし座」に入り、赤緯は北20度に達して、出の後にすぐに高く登るようになった。夜半過ぎには早くも高度20度を越える様になって、観測時間も十分取れるようになり、観測者が揃ってきた。
 火星の暦は、九月はじめにはδ=11.0"、Ls=290゚、φ=8゚S となって、夏至後の南半球を中心に観測出来る季節だった。

 #092には八月後半、#093には九月前半の観測報告が纏められていて、前回に引き続き、南極冠と南極フードの様子が注目された。南氏は九月上旬まで福井に留まって中島氏と共に詳しく追跡して、状況を以下のように把握した。
 ω=270゚あたりまではフードが支配的だが、以後は自転によって朝方の縁で南極冠がフードから出てくるのが見えていた。その後、偏心した南極冠が見えないωになるが、再び夕方の縁から南極冠が見えるようになったのが九月の始めだった。その付近のωでは南極地はフードではなく、全体に淡いガスが懸かっているような状態で、明るいフードが見えた反対側の様子とは違っていた。
 暗色模様は、視直径の増大に伴いやや詳しく観測出来るようになってきた。Hellasの様子、M.Cimmerium北岸のモヤモヤ、Phlegraあたりの濃度、Aetheriaの暗斑、Solis L周辺の様子等が取り上げられている。
 
 此の期間に観測を報告された方は、阿久津氏、比嘉氏、日岐氏、岩崎氏、南氏、中島孝氏に加えて、横川秀紀氏(福井、20cm屈折)、伊舎堂弘氏(那覇、31cm反射)、松本直弥氏(佐世保、44cm反射)、宮崎勲氏(那覇、40cm反射)、中島守正氏(横浜、20cm反射)、西田昭徳氏(福井、12.5cm屈折)、矢木英樹氏(大阪、29cmSC)の各氏だった。伊舎堂氏は望遠鏡をグレードアップしての初めてのシーズンだった。
 海外からの報告は、Gérard TEICHERT(France、28cmSC)、Jean DIJON(France、20cm反射)の両氏から寄せられた。

 #092には「夜毎餘言・XVI『アイピース』」と観測・編集後記が掲載された。前者には種々の短焦点アイピースの使用感が、後者には、第5回山本一清記念研究奨励賞受賞時の事や、夏休み中の福井での連続観測のエピソードがある。

 来信には、Jean DIJON(France)、Jeff BEISH(USA)、長谷川久也、伊舎堂弘、松本直弥、岩崎徹、日岐敏明、比嘉保信、矢木英樹の各氏からのお便りが、両号に掲載されている。

村上昌己 (Mk)