2009/2010 CMO火星通信』火星觀測ノート (7)

春分後ウトピア邊りはどの様に變化したか。

CMO #379 (25 December 2010)

南 政


 

 

トピアはマレ・アキダリウムと並んで北の春分前後に北極地方の雲の擾亂等を觀察するのに好適地であるが、ここで2009/2010年の北の春分後にウトピアがどの様に北極雲から現れてきたか見ることにする。期間はλ=001°Lsからλ=067°Lsにわたる。特に、ガーベット(PGb)氏の29Oct2009 (λ=001°Ls)ω=258°Wの畫像はたいへん興味深く、季節も春分ピッタリで、ウトピアの南先端だけを遺して殆どが淡い北極雲に覆われている(勿論北極冠域は濃い)様子を好く傳えるので、以下にその後の季節のω=253°W~258°Wの畫像を集めて示す。

ここで名前のコードは、出てくる順番に記すと

 

PGb:  Peter GARBETT

WFl:    Bill FLANAGAN

AWs:   Anthony WESLEY

Ak:     Tomio AKUTSU

NFt:    Nicolás FONTANILLAS LOPEZ

Km:    Teruaki KUMAMORI

DPc:    Damian PEACH

 

である。PGb氏の畫像には少し黄雲が混じっているかも知れない。WFl氏の觀測は既にCMO#373 p.Ser2-1377Note (1)aで扱ったように、345Nov2009と連續してこの部分をカヴァーし、3Novにはボレオ・シュルティスの北に白雲を溜め込み、4Novには明らかにウトピア周邊に奇妙な三角のダストを描冩している。ここで引用する5Nov(λ=005°Ls)の畫像は前日より落ち着いて居るが、未だ黄雲をウトピアの南方に明るく見せているほか、ウトピア内にも北極雲の遺物があり、この邊りが激しい状況にあることを示している。AWs氏の17Nov(λ=011°Ls)では落ち着いたようであるが、澳大利亞からは火星が低く、像の北極冠部は一寸ハッキリしないが、可成り正常である。Ak氏の24Dec2009(λ=028°Ls)では北極冠がシッカリしていて、ウトピアも全貌を見せているようだが、細かく見ると北極冠内からウトピアに掛けてダストが滲んでいるように見える。朝方の北極冠が白いのと對照している。但し此の黄雲は後にAk氏が31Jan2010(λ=045°Ls)に捉えた逆くの字型の明確なダスト(これもCMO#373Note(1)f.で扱った)よりは遙かに弱い。NFt氏の9Jan (λ=035°Ls)の畫像は少しウトピアが弱々しいが北極冠も中心部を除いて像周邊部ではが明るさを落としている。朝方のヘッラスはAk氏の畫像で白いがNFt氏の像では落ちている。ヘッラスはWFl氏の18Jan 2010(λ=039°Ls)でもやや白さを落としている。ウトピア邊りは北極冠と共に正常に綺麗になっていると思われる。Km氏の28Jan(λ=044°Ls)は既に衝に近く視直徑は充分である。ヘッラスは殆ど出ていない。ウトピアは正常であると思われるが東部が淡い。但し、先に注意したように31Jan(λ=045°Ls)にはAk氏が捉えたようなダストの擾亂があったので、未だ大氣的な活動が停止しているわけではない。DPc氏の10Febは既にλ=050°Lsに來た。衝を過ぎている所爲もあろうがヘッラスは見えない。ウトピアは稍東側が茶系統で淡い。最後のDPc氏の21Mar (λ=067°Ls)では既に西側の欠けが、位相角ι31°迄進み、ヘッラスは埋没している。ウトピアは正常に見えるが、流石DPc氏の像は内部のニュアンスを好く傳えている。北極冠は可成り小さくなっている。

 

 なお、最初のPGb氏の像に倣ってω=255°Wをその近邊にして、像を並べたが、實際にはウトピアの像はω=260°Wから275°Wまで擴げれば未だ可成りの像が對象になる。例えば、WFl氏の4Nov (λ=004°Ls) のダストの像はω=265°Wであるし、ピート・ゴルチンスキー(PGc)氏には7Dec (λ=020°Ls)ω=274°Wの像がある。Ak氏の像と重なるので避けたが、Km氏には22Dec(λ=027°Ls)ω=254°Wの像がある。マーチン・ルイス(MLw)氏は3Jan(λ=033°Ls)ω=265°Wで撮像しているし、スティーファン・ブダ氏には27Jan(λ=044°Ls)ω= 261°Wの像があり、28Jan(λ=044°Ls)にはAk氏の像と重なるので、Km氏を採用しているが、Ak氏のはω=262°Wである。イアン・シャープ(ISp)氏は9Feb(λ=050°Ls)ω=266°Wで撮っている。17Feb(λ=053°Ls)にはエフライン・モラレス(EMr)氏がω=269°Wで、19Feb(λ=054°Ls)にはPGc氏がω=266°Wで撮像しており、これらの像は先の像を補完して、ウトピアの様子を傳えているし、北極部の様子も窺える。


 


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