2009/2010 CMO火星通信』火星觀測ノート (8)

暗色模様の濃度は2007/2008年と2009/2010年ではどの様な違いがあったか。

CMO #380 (25 January 2011)

南 政


 

 

0° 前書き2007年の火星は22June頃にエオス地方で起こった黄雲がノアキス方面に再生産されてから火星全面を覆うようになり、火星の模様がまるで荒廃して行くような姿を呈したのだが(グローバルな黄雲としては強くなかった)2009年に至ると平常に戻る様子が見られた。ここでは二三の例を擧げて比較をする。

 

 

1° マルガリティフェル・シヌス邊りの様子: ccd撮影者には然程感じられなかったかも知れないが、眼視觀測者には2007年、マルガリティフェル・シヌス邊りが酷く淡化して、逆にマレ・エリュ�トゥラエウム邊りが濃く見えたというのは異常であった。アウロラエ・シヌス邊りも濃い方であったが、マルガリティフェル・シヌスの淡化は眼視觀測魂を疎外するほどのものであった。このことは例えば、ロランド・チャベス(RCv)氏の12 Dec (λ=001°Ls) ω=030°Wφ=04°N像を見ると顕著に証明される。

  そこで2007/2008年の場合と比較するために、デミアン・ピーチ(DPc)氏の11 Dec 2007の像と26 Jan 2010の像を並べる。φに異同があるが、ほぼ同じωで選んである。從って、マルガリティフェル・シヌスの構成や濃度の違いは明瞭であろう。2007年に於いては酷く淡化してることは明らかである。これに對してマレ・エリュトゥラエウムの方には然程の違いがない。從って、マルガリティフェル・シヌスの違いは上空による黄雲の存在に依るよりもマルガリティフェル・シヌスには塵埃が落ちていたと見た方がよい。ニロケラスやイゥエンタエ・フォンスに稍違いがあるのは、2007年の場合未だ上空に黄塵が舞っているからであろう。

 

 

2° ダエダリア方面: ダエダリア地方は2009/2010年の場合、φが南に上がって見難くなっているため、前回と比較することは容易ではないが、ここに並べた畫像では然程の違いはないように思う。左端のJPp_2009としたのはジャン=ジャック・プーポー(JPp)氏の3 Oct 2009 (λ=348°Lsι=40°) ω=112°Wφ=12°Nの像であり、右端のDPc_2007DPc氏の同程度の18 Sept 2007 (λ=316°Lsι=44°) ω=110°Wφ=01°Nの像であり、兩者を比較するためである。結論から言えば、ダエダリアの邊りは必ずしも見分け簡單ではないが、然程の違いがないように思う。 真ん中に森田氏のMo_2008と銘打ったのは27 Jan 2008 (λ=024°Lsι=25°) ω=109°Wφ=03°Sで、DPc氏の後になるが、位相角が小さくなってソリス・ラクスが明確なので比較の爲に途中に挾んだわけである。ダエダリアも勿論出ている。多分、高緯度までは黄雲の影響は無かったかと思われる。

  尚、注意しておくのはDPcの像(DPc_2007)ではオリュムプス・モンスが黑點となって出ていることである。これはまだ上空に黄雲が立ち籠めている爲こういう現象を齎していると考えられる。2001年に好く見られた現象である。DPc氏の4 Dec 2007 (λ=357°Ls) ω=113°Wφ=05°Nには最早見られない。黄雲が去っているからであろう。このDPc像はダエダリアの邊りも遺漏無く描冩しているのであるが、殘念乍ら對應する2009/2010年のDPc氏以外の畫像が見附からず(というより比較は全てDPcの像になって仕舞うからである。火星觀測者はDPc氏に倣って、機會がある毎に5°W乃至10°W違いで連續して追求しておくのが望ましい)、比較から外したものである。強いて擧げれば DPc氏の16 Dec 2009 (λ=024°Ls) ω=113°Wφ=19°Nが對應するかと思われるが、矢張り南は縁に追いやられている。

 

 

3° マレ・セルペンティス: マレ・セルペンティスのあたりは2003年大接近の7月以來異變し、太く濃化を持續しているが(例えば、

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmohk/news/2003News.html

F項參照)2007年の擾亂にも拘わらず2009/2010年に於いては全く影響を受けず、從來の姿を見せているようである。

 今回、早期にはMo氏の31 Aug 2009 (λ=331°Ls) ω=312°Wで垣間見られるし、JPp氏の像では19 Oct 2009 (λ=356°Ls) ω=322°Wでマレ・セルペンティスの割と詳細が明確である。ゴルチンスキ(PGc)の像では9 Jan 2010 (λ=035°Ls) ω=321°W10 Jan 2010 (λ=036°Ls) ω=312°Wで濃く出ている。DPc氏の像では14 Mar 2010 (λ=064°Ls) ω=321°Wでは可成り上部にあるが淡くはない。

 一方、2008年の例としてはDPc氏の16 Jan 2008 (λ=019°Ls) ω=322°W337°Wを擧げておこう。細かいところまで出ているが、全體の構成には大きな變化はなく淡く捉えられている。近くに強調畫像が見られるが、DPc氏は未だ上空黄雲の残滓を捉えていると思われる。

 


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