2009/2010 CMO火星通信』火星觀測ノート (13)

40分毎觀測の實際

2010223日と24日の北極冠の例

 CMO #385 (25 May 2011)

 南 政



 

CMO

が兼ねてから提唱している40分毎觀測には誤解乃至不徹底が多い。40分毎に觀測すれば好いというものではない。歸宅してドームを開けると、直ぐに觀測をし、40分毎に刻むという例がある。前の日の觀測時刻まで待てないものか。それとも忘れるのか。

 要は同じωを毎日刻むということで、それで比較が成り立たなければならない。喩え40分毎でも違ったωを並べたのでは目的は半分にも満たない。尤も、正確に彼我の自転の差が40分ではないし、近日點前と後では微妙な違いが出てくる。しかし、ccd觀測の場合は寧ろ調整が簡單である。分の單位で調整することが出來る。寧ろ眼視觀測のときの方が調整は難しい。15:32GMTのスケッチなど15:30GMTのスケッチと違う意味がないからである。何日も續けていると5分も狂ってしまう。從って、眼視觀測のときの方が40分毎觀測は難しいのである。

  此処では何故40分毎觀測が毎日同じ時刻におこなうことの意義を詳説しないが(未だ、連續觀測の重要性を認めても何故一時間毎觀測では駄目か、頭の隅で解決出來ない人達がいるであろう。詳説は別の機會に譲る)、要は毎日の比較であるが、平均化という操作も可能になる。火星には毎日變化があるということを前提にしているが、平均化すべきものとそうでないものがある。黄雲發生の場合などが、その後者の主な例であるが、例えば極冠の變化なども前者の例になる(極黄塵が出た場合は話が換わる)

  以下に、筆者が23Feb201024Feb2010の兩日に觀測した北極冠のサイズの場合を例に示そう。両方とも季節はλ=056°Lsに入り、ボームの問題からは重要な時期であり、これは既に#381Note(9)で扱っている。

 觀測時は23Feb日の場合09:00GMTが最初の觀測で、9:40GMT10:20GMT11:00GMT11:40GMT12:20GMT13:00GMT13:40GMT14:20GMT15:00GMT15:40GMT16:20GMT17:00GMT17:40GMT18:20GMT15回でお終いになる。筆者の場合觀測時間は20分だから夫々10分前から始め、10分後に終わる。この間シュルティス・マイヨル、シヌス・サバエウスが全貌を見せながら最後にはシヌス・メリディアニも沈み、ソリス・ラクスが顕れて來ている。勿論北ではマレ・アキダリウムが右から左に動いている。シーイングは然程好くなく、12:20GMTにはドーム内の氣温9°Cと記録がある。

  24Feb日には8:20GMTが最初で(實際には10分から開始している。8:37GMTには日没で、19°C)。次いで9:00GMTで、これが前日の觀測開始時刻であり、8:20GMTはその爲に選んである。以下、9:40GMT10:20GMT11:00GMT11:40GMT12:20GMT13:00GMT13:40GMT14:20GMT15:00GMT15:40GMT迄というのは前日と同じだが、此処でシーイングは極端に崩れてきたので中止した。注意するのは、24日の初めの二觀測は、全く新しい火星面を見ているということである。同じ9:00GMTでも、前日とは10°W違うわけである。從って前日と同じ面を見るのは24日の三回目からということになる。また、23日の最後の方は24日にはもう見えない範囲に入る上に(概して24日の方がシーイングは好かったのだが、後半落ち)24日は早く切り上げたために四觀測ほど不足している。結局、同じ面を觀測出來たのは10觀測ということになる。

 更にもう一つ問題が起きている。例えば、23Febには10:20GMTω=339°Wを觀測しているが、翌日40分後の11:00にはω=340°Wとなって、同じωは實現できていないことである。これは、先にも述べた事情に依るが、數日すると相當なズレになるので觀測時刻を10分早めたり遅めたりしなければならなくなる(われわれのスケッチ觀測の場合、五分のズレは取らない。煩雜になるだけである。)

 從って、以下に示す北極冠の平均値はω=339.5°Wに置いているが、これは便宜上の問題である。また、23日の結果と24日の結果は平均化して圖式化した。シーイングの違いなどによって若干の違いがあり、これも煩雜になるからである。なお、23日の最後の觀測はシーイング悪化のため上の統計から外した。尚、それでも#381Note(9)の圖のように扱えば、數値は更にばらつくことは今回の圖から明らかであろう。

  此處での結果は重要ではない。40分觀測が如何に行われるかということと、觀測時に微妙なズレが來ることを示す爲である。ccdの場合は、計算しながら調整すると好い。

 圖で、は單獨觀測、は兩日の平均である。北極冠は必ずしも圓形でなく、マレ・アキダリウムの前後では深さが違って見えることを示す。#381Note(9)の圖ではこれは出ない

 


 日本語版ファサードに戻る / 『火星通信』シリーズ3の頁に戻る