CMO/ISMO 2018 観測レポート#16
2018年十一月の火星観測 (λ=280°Ls ~λ=298°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#479 (
♂・・・・・・ 今回は今期16回目のレポートで、『火星通信』に報告のあった十一月中の観測をもとに纏める。
火星は、この期間は「やぎ座」を抜けて「みずがめ座」に入った。視赤緯Dは16.5°Sから9.1°Sとだいぶ北に戻ってきて、日没後の南の空高くに昇っている。わが国では、目盛環で導入すれば薄暮の16時台から観測はできると思われた。南中は18時台と少し早くなってきた。視直径はδ=11.9"から9.3"へと十一月末には10秒角を下回ってしまって、明るさもプラスの等級に落ちてしまった。
季節(λ)は、λ=280°Lsからλ=298°Lsと移り。南半球は盛夏となり、南極冠は縮小を続けて残留部分が小さく見えていた。傾きはφ=20°Sから25°Sと大きくなって、南極地方が大きく見え、十二月には26°S台と最大の傾きとなる。位相角はι=44°台で、北半球朝方が大きく欠けている。十一月中に最大の44.3°になって戻っている。
この期間を挟んでの視直径の変化や欠け具合いなどを20日毎に上のグリッド図でしめす。Oct 17の図では、予想される縮小してゆく南極冠の大きさを示している。以降は80°Sの緯度線となる。
♂・・・・・・日本では十一月にも、移動性の気圧配置が続いて安定した晴天は続かなかった。朝夕に雲の出ていることも多くなって、観測機会はだんだん少なくなっていった。視直径の落ちたこともあり、国外からの報告数も減り始めて、詳細な状況を捉えるのは難しくなってきた。
火星面は十一月には大きな擾乱現象の発生はなく、眼視観測でも暗色模様の濃度が増して、浮遊ダスト活動が落ち着いてきたことがうかがえる。視直径の落ちてきたこともあり詳細を捉えるのが難しくなってきている。南極冠は偏芯してさらに縮小を続けて小さく纏まった姿が捉えられている。南極冠の周囲には明るさがしみ出しているように見えるときが多かった。北半球の暗色模様もぼんやりと見えるようになり、エリュシウムの五角形の明るさも感じられるようになっている。
ここでは、縮小初期からの南極冠を南極方向から投影した画像に纏めてみた。ノウォス・モンスの様子とアルギュレ方向に偏芯して縮小して残存する南極冠の様子が示されている。
♂・・・・・・ MRO MARCI の画像は、十月中旬までで途絶えていたが、十一月には、2 Novから画像の発表が再開されている。こちらでもダストが薄くなってきているのが感じられて、北半球の低地の様子も日を追って垣間見えるようになっている。レポートでは、小規模なダスト活動が取り上げられているほか、季節も戻ってきたようで、低緯度のアルシア・モンス等に午後から掛かる氷晶雲の様子が指摘されている。
縮小する南極冠の様子を取り上げてみた。アルシア・モンスも捉えられている。
次には、黄雲の影響で変化の見られた、マルガリティフェルシヌスと、パシス−ダエダリア−マレ・シレナム領域の十一月下旬の様子である。
MRO MARCIの画像は、十一月末頃の画像が再び途絶えてしまったが、十二月初めからは復活している。
♂・・・・・・『火星通信』には、十一月中の観測が次のように寄せられている。日本からは4名61観測。アメリカ大陸側からは4名で23観測、ヨーロッパ側から1名2観測、南アフリカのフォスター氏から10観測。今回はオーストラリアからの報告は無かった。合計10名からの96観測であった。ペリエ氏、モラレス氏の追加報告が含まれる。
阿久津 富夫 (Ak) 常陸太田市、茨城県
11 RGB +
11 B + 11 IR + 7 UV Images (3, 5, 7, 11, 14, 15, 25, 27, 30
November 2018)
32cm Spec @f/34
with an ASI 290MM
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
9 Sets of RGB
+ 10 IR Images (3, 4, 8, 10,
16, 20, ~22, 27, 28 November 2018)
36cm SCT @ f/27 with an ASI
290MM
ピート・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
9 Sets of RGB
+ 10 IR Images (3, 4, 8, 10,
16, 20, ~22, 27, 28 November 2018)
36cm
SCT @ f/26 with an ASI 290MM
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
10 Colour
Images (2, 7, 14, 17, 22, 27, 30 November 2018) 31cm
speculum, with an ASI 290MC
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
22 Colour*
+ 21 B + 21 IR Images (1, ~3, 6, ~8, 11, 15, 17, 20, 24, 27, 29,
30 November 2018)
36cm SCT @ f/40 with an ASI
290MM & ASI 224MC*
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
4 Colour +
5 Or* Images (5, 9, 12, 23, 24 November 2018)
25cm SCT with an ASI 120MC&
DMK21AU618AS*
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
1 Set of IrGB
Images (20 November 2018) 31cm SCT with an ASI 290MM
尾崎 公一 (Oz) 稲沢市、愛知県
7 Colour + 3 L +4 IR images (20, 24, 29
November 2018) 44cm Spec with an
ASI 290MC
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、イギリス (チリ・テレスコープの遠隔操作)
4 Colour Images
(1, 9, 26 November
2018) Chilescope (100cm Richey
Chretien)
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
1 Colour* +
2 B Images (15 November
2018) 31cm speculum
with an ASI224MC* & ASI290MM
♂・・・・・・ 追 加 報 告
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
1 Colour* + 1
B Images (24 October 2018) 31cm speculum with an ASI224MC* &
ASI290MM
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
1 Set of IrGB
+ 1 IR Images (12, 17 October 2018)
31cm
SCT with an ASI 290MM
♂・・・・・・ 十一月の観測リスト
十一月の観測のリストとリンク先を以下に記します。短評は、しばらくお待ちください。
1 November 2018 (λ=280°Ls,
δ=11.9~11.8")
KUMAMORI, Teruaki
(Km) 氏が
045~054°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/181101/Km01Nov18.png
2 November
2018 (λ=280~281°Ls, δ=11.8~11.7")
Km 氏が 010~035°Wで撮影。
ISHIBASHI, Tsutomu (Is)氏が 013, 031°Wで撮影。
3 November
2018 (λ=281~282°Ls, δ=11.7~11.6")
Km 氏が 357~036°Wで撮影。
AKUTSU, Tomio
(Ak) 氏が
024~036°Wで撮影。
FOSTER, Clyde
(CFs)
氏が
126°Wで撮影。
4 November
2018 (λ=282°Ls, δ=11.6~11.5")
CFs 氏が
107, 121°Wで撮影。
GORCZYNSKI, Peter (PGc)氏が 198~218°Wで撮影。
5 November
2018 (λ=282~283°Ls, δ=11.5~11.4")
MELILLO, Frank J 氏が 213, 218°Wで撮影。
Ak 氏が 006°Wで撮影。
6 November
2018 (λ=283~284°Ls, δ=11.4~11.3")
Km 氏が 327~006°Wで撮影。
7 November
2018 (λ=284°Ls, δ=11.3~11.2")
PEACH, Damian A 氏が 205°Wで撮影。
Km 氏が
317~359°Wで撮影。
Is 氏が 332°Wで撮影。
Ak 氏が 344°Wで撮影。
8 November
2018 (λ=284~285°Ls, δ=11.2~11.1")
Km 氏が 320~326°Wで撮影。
CFs 氏が
069°Wで撮影。
9 November
2018 (λ=285°Ls, δ=11.1~11.0")
DPc 氏が 190°Wで撮影。
FMl 氏が 195°Wで撮影。
10
November 2018 (λ=285~286°Ls, δ=11.0~10.9")
CFs 氏が 060°Wで撮影。
11
November 2018 (λ=286~287°Ls, δ=10.9~10.8")
Ak
氏が
274, 299°Wで撮影。
Km 氏が 279~330°Wで撮影。
12
November 2018 (λ=287°Ls, δ=10.8~10.7")
FMl
氏が
170°Wで撮影。
14
November 2018 (λ=288°Ls, δ=10.6")
Ak
氏が
277°Wで撮影。
Is 氏が 301°Wで撮影。
15
November 2018 (λ=288~289°Ls, δ=10.6~10.5")
Km
氏が
247~254°Wで撮影。
Ak 氏が 266°Wで撮影。
PELLIER, Christophe 氏が 019°Wで撮影。
16 November
2018 (λ=289~290°Ls, δ=10.5~10.4")
CFs 氏が 351°Wで撮影。
17
November 2018 (λ=290°Ls, δ=10.4~10.3")
Is 氏が 217°Wで撮影。
Km 氏が 243~253°Wで撮影。
20
November 2018 (λ=292°Ls, δ=10.1~10.0")
OZAKI, Kimikazu 氏が 180~186°Wで撮影。
Km 氏が
189~234°Wで撮影。
CFs 氏が
312°Wで撮影。
MORALES RIVERA, Efrain
氏が
051°Wで撮影。
21
November 2018 (λ=292~293°Ls, δ=10.0")
CFs 氏が 309°Wで撮影。
22
November 2018 (λ=293°Ls, δ=10.0~9.9")
Is 氏が 179°Wで撮影。
CFs 氏が
297°Wで撮影。
23
November 2018 (λ=293~294°Ls, δ=9.9~9.8")
PGc 氏が 359~026°Wで撮影。
FMl 氏が
008~014°Wで撮影。
24
November 2018 (λ=294~295°Ls, δ=9.8~9.7")
FMl 氏が 040, 048°Wで撮影。
Oz 氏が
141~148°Wで撮影。
Km 氏が 150~159°Wで撮影。
25
November 2018 (λ=295°Ls, δ=9.7")
Ak 氏が 152°Wで撮影。
26
November 2018 (λ=295~296°Ls, δ=9.7~9.6")
DPc
氏が 008, 025°Wで撮影。
27
November 2018 (λ=296°Ls, δ=9.6~9.5")
Is 氏が 115, 127°Wで撮影。
Km 氏が 138~142°Wで撮影。
Ak 氏が 142°Wで撮影。
CFs 氏が 246°Wで撮影。
28
November 2018 (λ=296~297°Ls, δ=9.5~9.4")
CFs 氏が 231°Wで撮影。
29
November 2018 (λ=297~298°Ls, δ=9.4")
Oz 氏が 089~097°Wで撮影。
Km 氏が 106~116°Wで撮影。
30
November 2018 (λ=298°Ls, δ=9.4~9.3")
Ak
氏が
084, 091°Wで撮影。
Km 氏が 091~100°Wで撮影。
Is 氏が 092, 103°Wで撮影。
♂・・・・・・ 追 加 報 告 分
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
1 Colour* + 1
B Images (24 October 2018) 31cm speculum with an ASI224MC* &
ASI290MM
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
1 Set of IrGB
+ 1 IR Images (12, 17 October 2018)
31cm
SCT with an ASI 290MM
7 May 2018 (λ=171~172°Ls, δ=11.8~11.9")
Damian PEACH (DPc)氏が ω=222°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180507/DPc07May18.png
23 September 2018 (λ=255~256°Ls, δ=17.1~16.9")
MORALES RIVERA, Efrain (EMr) 氏が ω=274°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180923/EMr23Sept18.png
EMr氏が ω=248°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180923/EMr23Sept18n.png
26 September 2018 (λ=257~258°Ls, δ=16.6~16.3")
FLANAGAN, William D (WFl) 氏が ω=289°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180926/WFl26Sept18.png