CMO/ISMO 2018 観測レポート#19
2019年二月の火星観測 (λ=333°Ls ~λ=349°Ls)
村上 昌己
CMO
#482 (
♂・・・・・・ 『火星通信』に報告された二月中の観測により今期19回目のレポートを纏める。
二月には、火星は「うお座」から「おひつじ座」へ移動して視赤緯 D は15°Nほどにまで高くなった。光度は二月中に一等級となり、霞んできた夕空に目立たなくなったが、西の空の高いところに光っていた。
季節 (λ) は、333°Lsから349°Lsと進み、南半球の秋分に近づいてきている。視直径(δ)は6.1"から5.3"とかなり小さくなってしまった。傾き(φ)は24°S台から19°Sと戻ったが、まだ南半球が大きく見えていて、北極フードの大きくなってきている姿は北縁に捉えられるだけである。位相角(ι)は38°台から34°台となり、朝方が大きく欠けていて、下記のグリッド図に示すように、火星面の午前中が大きく、午後の半球はほとんど見えていない。先月も触れたが、火星自転軸の北極方向角(Π)が大きくなっている。極冠の把握が難しくなったこの時期には、モータードライブを止めて火星の逃げる方向 p←を正確に見極めて、南北方向を正しく出してほしい。
この期間を挟んでの視直径δの変化や、欠けぐあいなどを20日毎のグリッド図でしめす。
♂・・・・・・ 二月には報告数は少なく、火星面の様子を捉えるのが難しくなった。北半球に火星が戻ってきたこともあり、イギリスの観測者は、シーイングの良いときには暗色模様を捉えている。大きな擾乱は無かったようである。
ここでは、今月のマーチン・ルゥィス氏の画像と、14年前のペリエ氏の画像を並べて比較する。季節は少し進んでいるが、ω・φは同じようなものを選んでいる。火星の季節はダスト活動の後の擾乱からは戻っているようで、似たような景色になっている。双方ともに南極冠の極小状況が捉えられているし、南半球高緯度の雲帯も認められる。北縁には北極雲の明るさが目立っている。
違っているところは、今年の黄雲で濃化したソリス・ラクス周辺、特にパシスの肥大と、マレ・シレナム東端から垂れ下がるダエダリアの濃度に変化が見られるところである。
♂・・・・・・ MRO MARCI の画像では、地表面の鮮明さはなく、高山の山頂はダストの上に飛び出した暗斑に見えている時が多いが、不鮮明になるときもあり、二月になっても浮遊ダストの影響は続いているようである。レポートでは、南半球のダスト活動は弱まっているとしている。また、アルシア・モンスでは午後の山岳雲活動が少し残っているとある。北半球では北極フードの周囲の活動が取り上げられている。画像でもマレ・アキダリウム北部には明るい雲帯がテムペ方向に延びているのが目立つようになっている。ニロケラスにはダストの明るさがかかっているように見える。
♂・・・・・・『火星通信』には、二月中の観測が次のように寄せられた。報告数はごく少なくなってしまった。
日本からは2名6観測。アメリカ大陸側からは3名で6観測、ヨーロッパ側からはギリシャの新人からを含めて3名から11観測、オーストリアのシュルツ氏からは、ナミビアのIAS observatoryの望遠鏡を使った8月の追加報告が9観測報告されている。合計9名からの32観測であった。そのうちの追加報告は3名からの11観測であった。
この期間、イギリスでは暖かい日が多かったようである。日本では、天候が周期的に早く変化するようになり、曇天傾向となった。特に関東南部では北東気流型となり、夕方に雲の出ていることが多くなって観測のチャンスは少なくなってしまった。
阿久津 富夫 (Ak) 常陸太田市、茨城県
2 RGB
+ 1 Colour* + 2 B + 4 IR Images (1, 10, 17* February 2019)
40cm Spec with an ASI 290MM, AS224MC*
イオアニス・ブラス (YBr) アテネ、ギリシャ
2 Colour
Images (19, 26 February 2019) 28cm
SCT with an ASI 224MC
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
1 Colour Image (18 February 2019) 31cm speculum, with an ASI 290MC
サイモン・キッド (SKd) ハートフォードシャー、イギリス
2 Colour
Images (14. 20 February 2019) 36cm SCT with an ASI224MC
マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、イギリス
7 Colour Images (3. 5, 16, 17, 24, 26 February 2019) 45cm Spec with an
ASI 224MC
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
4
Or(610nm) Images
(3. 5, 16,
♂・・・・・・ 二月の観測リスト
二月の観測のリストとリンク先を以下に記します。
1 February 2019 (λ=334°Ls, δ=6.1")
AKUTSU, Tomio
(Ak)氏が
ω=166°~183°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190201/Ak01Feb19.png
2 February
2019 (λ=334~335°Ls, δ=6.1")
LEWIS, Martin R (MLw)氏が ω=305°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190202/MLw02Feb19.png
3 February
2019 (λ=335°Ls, δ=6.1~6.0")
MELILLO, Frank J (FMl)氏が
ω=026°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190203/FMl03Feb19.png
5 February
2019 (λ=336°Ls, δ=6.0")
FMl氏が ω=036°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190205/FMl05Feb19.png
10
February 2019 (λ=339°Ls, δ=5.8")
Ak氏が ω=099°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190210/Ak10Feb19.png
13
February 2019 (λ=340~341°Ls, δ=5.7")
MLw氏が ω=223°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190213/MLw13Feb19.png
14
February 2019 (λ=341°Ls, δ=5.7")
KIDD, Simon (SKd)氏が
ω=195°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190214/SKd14Feb19.png
MLw氏が ω=221°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190214/MLw14Feb19.png
15 February
2019 (λ=341~342°Ls, δ=5.7")
MLw氏が ω=192°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190215/MLw15Feb19.png
16 February
2019 (λ=342°Ls, δ=5.7~5.6")
FMl氏が ω=262°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190216/FMl16Feb19.png
17
February 2019 (λ=342~343°Ls, δ=5.6")
FMl氏が ω=285°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190217/FMl17Feb19.png
Ak氏が ω=019°, 026°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190217/Ak17Feb19.png
18
February 2019 (λ=343°Ls, δ=5.6")
ISHIBASHI, Tsutomu (Is)氏が
ω=035°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190218/Is18Feb19.png
19
February 2019 (λ=343~344°Ls, δ=5.6")
BOUHRAS, Ioannis A
(YBr)
氏が
ω=151°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190219/YBr19Feb19.png
20
February 2019 (λ=344°Ls, δ=5.6~5.5")
SKd氏が ω=139°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190220/SKd20Feb19.png
21
February 2019 (λ=344~345°Ls, δ=5.5")
MLw氏が ω=131°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190221/MLw21Feb19.png
MLw氏が ω=099°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190224/MLw24Feb19.png
YBr 氏が
ω=080°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190226/YBr26Feb19.png
MLw氏が ω=086°W で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190226/MLw26Feb19.png
♂・・・・・・ 追 加 報 告 分
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、イギリス (観測地: バルバドス)
1 Colour Image (14 May 2018) 36cm SCT
ロバート・シュルツ (RSz) ウィ−ン・オ−ストリア (観測地:IAS observatory, ナミビア)
6 Sets of LRGB + 6 Or(610nm) + 8 IR + 1 UV Images
(4,~6August 2018)
50cm Cassegrain with an ASI 290MM
シャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア
1 Set of IR-RGB
+ 1 IR Images (
追加観測のリストとリンク先を以下に記します。
14 May 2018 (λ=175~176°Ls, δ=12.6~12.8")
Damian PEACH (DPc)氏が ω=147°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180514/DPc14May18.png
4 August 2018 (λ=224°Ls, δ=24.3~24.2")
Robert SCHULZ (RSz)氏が ω=313°~334°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180804/RSz04Aug18.png
5 August 2018 (λ=224~225°Ls, δ=24.2")
RSz氏が ω=271°~333°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180805/RSz05Aug18.png
6 August 2018 (λ=225~226°Ls, δ=24.2~24.1")
RSz氏が ω=310°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180806/RSz06Aug18.png
21 October 2018 (λ=273~274°Ls, δ=13.1~13.0")
TRIANA, Charles (CTr)氏が ω=017°Wで撮影
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/181021/CTr21Oct18.png