Forthcoming 2020 Mars (1)
2020年接近の火星
村上 昌己
CMO #489 (
図1− 2020年接近の火星は、「うお座」で逆S字を描いて近づいてくる。
接近後は赤緯を上げながら遠ざかってゆく
2020年は火星接近の年である。2018年に続いて視直径が20秒以上に大きくなるツインの接近の後半である。上図のように2020年10月6日に「うお座」で地球に最接近して、最大視直径はδ=22.56”に達する。赤緯も北側になり、北半球での観測条件は2018年よりは良くなることと思われる。観測の後半は翌2021年まで続いてゆく。
2003年は、記録的な大接近の年で、最大視直径はδ=25.11”に達した。今回の接近はそこまでは及ばないが、大きな視直径の火星を見ることが出来るチャンスである。次回に視直径が20秒角以上になる接近は、2033年7月の接近(最大視直径
δ=22.13”)で、13年間待たなければならない。
図2
2020年の火星の諸現象は、Almanac2020によると、以下のようになっている。
留 09 Sept. 18h,
衝 13 Oct. 23h,
最接近 06
Oct. 14h19m diameter:
22.56” distance
: 0.415a.u.
留 15 Nov. 19h,
(注:黄経による値で、赤径によるものでない。時刻はTT。最接近の値はメーウスの接近表から。)
軌道図には、視直径が5秒角以上の期間を取り上げた。
−図3−
今回の接近で、視直径が5秒角以上の期間は、2020年2月中旬から2021年4月中旬までの、約14ヶ月間に達する。眼視観測で暗色模様の確認が出来る様になる10秒角以上の期間は、2020年6月中旬から2021年1月はじめまでの7ヶ月弱の期間となる。
初心者にも表面模様が認められる15秒角以上の期間は、2020年8月はじめから11月下旬の4ヶ月弱。20秒角以上の期間は、2020年9月中旬から10月下旬の約1.5ヶ月間になる。
今回の接近では、期間を通して傾きは南半球側で、季節は、λ=148°Ls〜030°Lsと移り変わり、南半球の春分前から夏を越して秋分過ぎまでの観察となる。南半球の春分(λ=180°Ls)を過ぎる頃からは、黄雲現象の発生する季節となり、秋分となる(λ=000°Ls)頃まで注意が必要となる。
また、南極冠の消長の観測にも適した接近で、ノウォス・モンス(ミッチェル山)の分離・消失のおこるλ=270°Ls
前後は、8月から9月にかけての視直径の大きな期間にあたる。
星座間の動きとして、2020年初は「てんびん座」で迎える(Mag.=+1.6)、視直径は4.3秒角。1月17日にはアンタレスの北側を通過して、明け方の南東の低空で赤味を競うことになる(Mag.=+1.5)。
図4
2月17日には、三裂星雲(M20)と干潟星雲(M8)の間を通過する。次いで2月28日には、球状星団M23の直ぐ北を通過する。その後「いて座」から「やぎ座」にかけて、4月はじめまで木星・土星とならんで、明け方の南東の空に輝いている。木星とは3月20日に土星とは3月31日に相次いで最接近となる。
視直径8秒角には5月の上旬に「やぎ座」で達する。その後も順行を続けて、8月はじめに「うお座」で15秒角を越える。赤緯も北側に上がり、日本では南中高度は50度以上になる。
1図のように9月上旬には「留」となり逆行に移り接近期となる。視直径は20秒角を越えて大きくなり、最接近は10月6日、最大視直径はは22.56秒角となって、11月はじめまで20秒角台を継続する。11月中旬には「留」となり順行に戻る。年末には11秒角まで小さくなるが、まだ「うお座」にあり、夕方の南の空高く明るく輝いている(Mag.−0.2)。
図5
2021年となり、「うお座」から「おひつじ座」を順行する火星は、1月末には視直径は8秒角を下回り、火星面の観測シーズンは終盤にはいる。2月には「おひつじ座」、3月には「おうし座」と赤緯を上げて順行を続けて、夕方の西空高くに沈み残っていて、可能な時間は短くなるが、まだ観測を続ける事ができる。
3月はじめにはプレアデス星団(M45)の南を通過する。4月半ばには視直径は5秒角を下回り、観測期は終わりを迎える。4月28日には「ふたご座」の散開星団(M35)の北側を通過してゆく(Mag.=+1.5)。
月による火星食は、2020年中に4回起きるが、日本から観測できるものはない。
閃光現象の起きる条件として、目安となる
De=Ds となるのは、次の機会がある。
7月17/18日 De=Ds=21.8゚S,δ=13.3”
10月21日 De=Ds=21.5゚S,δ=21.8”
(WinJupos)
合致する緯度が、南に大きく、エドムあたりでの閃光現象は可能性は低いと思われる。
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