Forthcoming 2020 Mars (1)

2020年接近の火星

村上 昌己

CMO #489 (20 December 2019)

 


 


 

図1− 2020年接近の火星は、「うお座」で逆S字を描いて近づいてくる。

接近後は赤緯を上げながら遠ざかってゆく

 

2020年は火星接近の年である。2018年に続いて視直径が20秒以上に大きくなるツインの接近の後半である。上図のように2020106日に「うお座」で地球に最接近して、最大視直径はδ=22.56”に達する。赤緯も北側になり、北半球での観測条件は2018年よりは良くなることと思われる。観測の後半は翌2021年まで続いてゆく。

2003年は、記録的な大接近の年で、最大視直径はδ=25.11”に達した。今回の接近はそこまでは及ばないが、大きな視直径の火星を見ることが出来るチャンスである。次回に視直径が20秒角以上になる接近は、20337月の接近(最大視直径 δ=22.13”)で、13年間待たなければならない。

 


図2

 

2020年の火星の諸現象は、Almanac2020によると、以下のようになっている。

               09 Sept. 18h,      

               13 Oct. 23h,

        最接近 06 Oct. 14h19m  diameter: 22.56”  distance : 0.415a.u.

               15 Nov. 19h,    

(注:黄経による値で、赤径によるものでない。時刻はTT。最接近の値はメーウスの接近表から。)

 


軌道図には、視直径が5秒角以上の期間を取り上げた。

−図3−

 

今回の接近で、視直径が5秒角以上の期間は、20202月中旬から20214月中旬までの、約14ヶ月間に達する。眼視観測で暗色模様の確認が出来る様になる10秒角以上の期間は、20206月中旬から20211月はじめまでの7ヶ月弱の期間となる。

初心者にも表面模様が認められる15秒角以上の期間は、20208月はじめから11月下旬の4ヶ月弱。20秒角以上の期間は、20209月中旬から10月下旬の約1.5ヶ月間になる。

 

今回の接近では、期間を通して傾きは南半球側で、季節は、λ=148°Ls030°Lsと移り変わり、南半球の春分前から夏を越して秋分過ぎまでの観察となる。南半球の春分(λ=180°Ls)を過ぎる頃からは、黄雲現象の発生する季節となり、秋分となる(λ=000°Ls)頃まで注意が必要となる。

また、南極冠の消長の観測にも適した接近で、ノウォス・モンス(ミッチェル山)の分離・消失のおこるλ=270°Ls 前後は、8月から9月にかけての視直径の大きな期間にあたる。

 

星座間の動きとして、2020年初は「てんびん座」で迎える(Mag.=+1.6)、視直径は4.3秒角。117日にはアンタレスの北側を通過して、明け方の南東の低空で赤味を競うことになる(Mag.=+1.5)

 

 


図4

 

217日には、三裂星雲(M20)と干潟星雲(M8)の間を通過する。次いで228日には、球状星団M23の直ぐ北を通過する。その後「いて座」から「やぎ座」にかけて、4月はじめまで木星・土星とならんで、明け方の南東の空に輝いている。木星とは320日に土星とは331日に相次いで最接近となる。

視直径8秒角には5月の上旬に「やぎ座」で達する。その後も順行を続けて、8月はじめに「うお座」で15秒角を越える。赤緯も北側に上がり、日本では南中高度は50度以上になる。

 

1図のように9月上旬には「留」となり逆行に移り接近期となる。視直径は20秒角を越えて大きくなり、最接近は106日、最大視直径はは22.56秒角となって、11月はじめまで20秒角台を継続する。11月中旬には「留」となり順行に戻る。年末には11秒角まで小さくなるが、まだ「うお座」にあり、夕方の南の空高く明るく輝いている(Mag.0.2)

 


図5

 

2021年となり、「うお座」から「おひつじ座」を順行する火星は、1月末には視直径は8秒角を下回り、火星面の観測シーズンは終盤にはいる。2月には「おひつじ座」、3月には「おうし座」と赤緯を上げて順行を続けて、夕方の西空高くに沈み残っていて、可能な時間は短くなるが、まだ観測を続ける事ができる。

3月はじめにはプレアデス星団(M45)の南を通過する。4月半ばには視直径は5秒角を下回り、観測期は終わりを迎える。428日には「ふたご座」の散開星団(M35)の北側を通過してゆく(Mag.=+1.5)

 

月による火星食は、2020年中に4回起きるが、日本から観測できるものはない。

 

閃光現象の起きる条件として、目安となる De=Ds となるのは、次の機会がある。

  717/18日 De=Ds=21.8Sδ=13.3”

    1021日     De=Ds=21.5Sδ=21.8”  (WinJupos)

合致する緯度が、南に大きく、エドムあたりでの閃光現象は可能性は低いと思われる。

 


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