CMO/ISMO 2020 観測レポート#02
2020年二月の火星観測報告
(λ=144°Ls ~λ=159°Ls)
村上 昌己
CMO
#491(
♂・・・・・・『火星通信』に報告のあった二月中の観測を取り上げて、今期二回目のレポートとする。
火星は二月中には、「へびつかい座」から足早に順行を続けて「いて座」にはいり、17日からは例年通りに二大散光星雲の間を抜けて、月末には南斗六星の北側まで進んだ。赤緯が南に最低になり、北半球からは朝方の東南の低空になっていて、なかなか地平高度が高くならず、天候や冬場のシーイングの悪さもあって、撮影は難しそうであった。
季節 (λ) は、144°Lsから159°Lsと進んで、地球の北半球でいえば八月下旬の処暑の頃になっていた。この季節の火星面では、まだ山岳雲の活動が活発で、南半球のアルシア・モンスも明るくなる。赤道帯霧も朝夕の辺縁部に明るく見られる。反して、ヘッラスは明るさを落としてくること等があげられる。傾きが南よりに動いたこともあり、小さくなった北極冠も捉えるのが難しくなっていた。南極部にはまだフ−ドが掛かり、南極冠の出現は170°Ls過ぎの事となる。傾き(φ)は02°Nから07°Sと南を向いてきている。視直径(δ)は4.8"から5.5"と増加した。位相角(ι)は30°から35°とさらに欠けは大きくなっていった。
この時期の、ヘッラスに関しては以下のリンクが参考になる。
「1996/97 Mars Sketch (5)- 顕著期から衰退期に掛けてのヘッラスの動向」CMO #203 (25 May 1998)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/97Note05j.htm
♂・・・・・・ 二月には、日本では、天気の周期変化が続いて晴天が続かなかった。寒気の南下もあって、シーイングは勝れず、皆さん御苦労の多い撮影だったと思われる。熊森氏とフォスター氏のルーチンワークで、ほぼ全日の画像が記録されたが、まだ報告は少なく、火星面全面の様子は連続しなかった。
この期間も暗色模様は正常に見えていて、大きな擾乱は見られなかった。月末近くにピーチ氏がチリテレスコープで、視直径δ=5.4”で捉えた画像は、2018年5月の黄雲の影響のあった地域の、今季初のやや鮮明な画像だったのでここに引用する。
左の2枚は黄雲以前の画像を並べた。あまり永年変化の見られない場所であった。三枚目は黄雲後の画像であり、ChryseからAramに延びる明帯で、Margaritifer SとOxia palusの間が切れている。S Meridianiから延びる細いBrangaenaは見えている。また、IndusやOxiaが濃化してNilliacus Lとの間が繋がってしまっている。右端が今回取り上げた画像で、2018年の黄雲後の画像と大きな変化はなく、黄雲による変化は今年も持続しているようである。今後視直径の大きくなってきた時の詳しい画像が待ち望まれる。
この付近の変化の様子は、下記のリンクに、MOLAの高低図と共に取り上げている。
「CMO/ISMO 2018 観測レポート#11- 2018年八月前半の火星観測」CMO #474 (25 August 2018)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/474/2018repo_11.htm
季節による変化も順調に進んでいるようで、ヘッラスは明るさを落として南極雲と区別がつくようになってきた。夕方の山岳雲の活動もみられ、朝夕縁では赤道帯霧の明るく見える事が多い。
♂・・・・・・『火星通信』に寄せられた二月中の観測は、以下のようである。日本からは、熊森氏から16観測。森田氏から5観測(追加報告2観測)があった。国外からは、アメリカ大陸側の、モラレス氏とチリテレスコープ遠隔使用のピーチ氏から追加観測を含めて報告が入り始めていて、2名から10観測、南アフリカのフォスター氏から11観測、オーストラリアからは、ウェズレイ氏の1観測の、合計6名からの44観測であった。
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
FOSTER,
Clyde (CFs) Centurion,
11 Sets of RGB + 5 IR Images
(2,~5, 13,~15, 17, 21, 26, 27 February 2020)
36cm SCT @ f/27 with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_CFs.html
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
KUMAMORI,
Teruaki (Km) Sakai, Osaka, JAPAN
7 Colour* + 6 B + 9 IR
Images (1, 3, 7, 8, 10, 19, 20, 22, 23 February 2020)
36cm SCT @ f/37 with an ASI 290MM & ASI 224MC*
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Km.html
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
MORALES
RIVERA, Efrain (EMr) Aguadilla,
1 Set of RGB
+ 3 IrRGB + 1 IR Images (2, 15, 18, 28 February 2020) 31cm SCT with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_EMr.html
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
MORITA,
Yukio (Mo) Hatsuka-ichi,
3 Sets of LRGB Images (3, 10, 18 February 2020) 36cm SCT with
an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Mo.html
デミアン・ピーチ (DPc) ウエスト サセックス、英國
PEACH,
Damian A (DPc) Selsey, WS, the
3 Sets Colour
+ 1 Colour Images (1, 15, 27 February 2020) Remote controlled the Chilescope (100cm
Richey Chretien)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_DPc.html
アンソニー・ウエズレイ (AWs) クイーンズランド、オーストラリア
WESLEY,
Anthony (AWs)
1 Colour Image
(6 February 2020) (51cm Spec)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_AWs.html
♂・・・・・・ 追 加 報 告
MORALES RIVERA, Efrain (EMr) Aguadilla,
1 Set of RGB +
1 IR Images (31 January 2020)
31cm SCT with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Mo.html
MORITA, Yukio (Mo)
Hatsuka-ichi,
2 Sets of LRGB
Images (4, 18 January 2020) 36cm SCT with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Mo.html
PEACH, Damian A (DPc) Selsey, WS, the
1 Set of RGB + 1
Colour Image (30, 31
January 2020)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_DPc.html
Remote controlled the Chilescope (100cm Richey
Chretien)
♂・・・・・・ MRO MARCI の Mars Weather Reports 画像は、まだウエッブページの更新がない。
http://www.msss.com/msss_images/subject/weather_reports.html