CMO/ISMO 2020 観測レポート#18
2021年四月の火星観測報告
(λ=025°Ls ~λ=039°Ls)
村上 昌己
CMO
#507 (
♂・・・・・・ 『火星通信』に報告のあった2021年四月の観測をもとに、今期18回目の観測レポートを纏める。この期間には火星は順行を続けて「おうし座」から下旬には「ふたご座」へ入った。赤緯は最大の24.9゚Nに達して、27 Aprには散開星団M35の北を通過した。日没後の西空にあり、冬の星座の明るい星々と共に夜半には沈むようになっていた。視直径は四月中旬には四秒台に小さくなってしまった。報告数も少なくなったが、主な暗色模様は捉えられていて、大きな擾乱は見られなかった。
四月中に視直径(δ) は、δ=5.3” から4.6”まで小さくなった。季節(λ) は、λ=025°Lsからλ=039°Lsまで進んだ。中央緯度(φ)は、4.4°Sから中旬には北向きとなり、末日には3.9°Nまでになった、北半球の観測時期の始まりである。北極域も見えるようになり、北縁には常に明るさがあり、北極冠も見え始めているようである。位相角(ι) は、34°台から29°台と変化した。
♂・・・・・・ 四月の火星面の様子
今月も火星面の様子を中央経度(ω)順に並べたものをご覧いただく。報告数も減って、画像の大きさを揃えることが難しくなってきた。メリッロ氏(FMl)は小さな画像だが暗色模様はほぼ捉えられていて。シーイングの良さが窺える。近内氏は、シーイングの悪い中、短い露出の多くの画像から絞り出している。(LtE参照)
傾きが戻ってほぼ正面から見ている火星の姿となっている。北縁は白く明るく北極冠が見えているように思える。南半球の高緯度には靄が拡がっているように思える。元画像はギャラリーを参照されたい。
♂・・・・・・ VMCが捉えた欠け際の様子
欧州宇宙機関(ESA)の火星周回衛星マーズ・エクスプレス・オービターに搭載されている、The Visual Monitoring
Camera (VMC)が、四月の始めにターミネーターの夜側にいままで見たことのない様子を捉えたと近内氏から連絡が下記の画像と共に送られてきた。(和文LtE四月の項を参照)
近内氏はこれまでにも多くのVMCの画像をチェックしているが、初めて見た現象だったとのことである。VMCは火星を周回しながら多くの撮影条件を変えた画像を撮影していて、欠け際の露出オーバーの画像も多く見られる。
連続していくつもの画像に写っていて、切り出して時系列で並べたものが次の画像である。自転で動いてターミネーターに近づいて行くと共に明るさや形状が変化をしている。
(南が上になるように画像は回転させてある。)
次には、場所を特定するために、同じシリーズの中で適正露出で撮影された画像と並べてある。適正露出画像には S MeridianiからS Sabaeusにかけての暗色模様が判別でき、EdomにあたるSchiaparelli クレーターもわかるところから、MOLA (The Mars Orbiter
Laser Altimeter/MGS)の地形図と比較してみた。
クレーター(E)の位置からして、Argyreの東の地域のようであるが、うまく位置の同定は出来ていない。近内氏は送られてた上の画像のコメントでは、夜明け前の雲の様に判断をされていて、露出過多の画像であり相当に淡いものだとされている。自転と共に動いて行くところから、ターミネーター夜側の標高の高い地形の所に薄い朝日が当たっているのではないかとも思われる。
此の現象は、続く3 Aprにも捉えられていて、gif動画にしたものを以下に並べてご覧いただく。
1
April 2021
/
3
April 2021
面白い現象が捉えられたが、実像はまだはっきりしていない。
此の、The Visual Monitoring
Camera (VMC)の画像は、次のURLから閲覧できる。
https://www.flickr.com/people/esa_marswebcam/
連日のように更新されているので、ご覧いただきたい。日付は年初からの通日も使用している。
♂・・・・・・ 四月の観測報告
『火星通信』に寄せられた2021年四月の観測の集計は、日本からの報告は、二名の方から4観測あり、伊舎堂(Id)氏からは昨年六月末日から今年一月始めまでの報告がDVDで寄せられた。今回は九月末日までの114観測を追加報告として加えた。国外からは、アメリカ大陸方面からはメリッロ(FMl)氏だけとなって、8観測、ヨーロッパ側は、三名から8観測 (追加報告 2)があった。南半球からは報告がなかった。合計して、6名からの20観測で、伊舎堂氏の追加報告は含まれない。
それぞれの観測者の画像は次のリストのリンクから辿れる。
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
ISHIBASHI, Tsutomu (Is)
1 Colour Image (
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Is.html
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
KONNAÏ
Reiichi (Kn) Ishikawa,
1 Colour
+ 3 IR Images (7, 10,
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Kn.html
マーチン・ルウィス (MLw) セント・アルバンス、英国
LEWIS, Martin (MLw)
3 Colour Images
(11, 13,
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_MLw.html
フランク・メリッロ (FMl)
ニューヨーク、アメリカ合衆国
MELILLO, Frank J (FMl) Holtsville, NY, the
8 Colour
Images (3/4, 6/7, 8/9, 14,
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_FMl.html
デミアン・ピーチ (DPc)
ウエスト・サセックス、英國
PEACH, Damian A (DPc)
Selsey, WS, the
1 Colour Image
(
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_DPc.html
ヨハン・ワレッル (JWr) スキヴァルプ、スウェーデン
WARELL, Johan (JWr) Lindby,
2 IR
Images (1,
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_JWr.html
♂・・・・・・ 追加報告
伊舎堂 弘 (Id) 那覇市、沖縄県
ISHADOH Hiroshi (Id)
114 Sets of RGB images
(29 June; 10, 12, 18, 20, 21, 27, 29 July; 1, 6, 7, 14, 15, 17,~21, 28 August;
7, 9,~12, 14,~18, 20,
22, 23, 28,~
31cm Newtonian (F/6.5)
with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Id.html
マーチン・ルウィス (MLw) セント・アルバンス、英国
LEWIS, Martin (MLw)
1 Colour Image
(
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_MLw.html
ヨハン・ワレッル (JWr) スキヴァルプ、スウェーデン
WARELL, Johan (JWr) Lindby,
1 Colour
+ 1 IR Images (
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_JWr.html